弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人八尋伊三の上告趣意第一点について。
 しかし、原判決の事実摘示と挙示の証拠とを対照すれば、原判決は、判示贈賄を
単に過去に行われた賭場開張並びに賭博行為のみの捜査の抑止方を依頼する趣旨で
あると限定して認定したのではなく、将来行わるべき賭博に関する行為の検挙をも
免るべき趣旨をも含めて為されたものとしたものであること明らかであるから、原
判決には所論の違法は認められない。
 同第二点について。
 しかし、賭博行為は健全なる文化国家の基礎を成す勤労の美風を破壊し風俗を害
する罪であつて、現下の我国における状勢に照し濫りに看過すべきでない。ことに
本件においては賭博行為の外贈賄をも伴つているのである。その他所論は、原審の
裁量に属する量刑を非難するに過ぎないものであるから、適法な上告理由ではない。
 被告人Bの弁護人鈴木常吉の三管趣意について。
 所論は、結局原審が適法に為した共同正犯の事実認定並びにその裁量に属する量
刑を非難するものと解せられる。されば、適法な上告理由とは認め難い。なお、所
論老齢又は疾病の点は、刑の執行に当り考慮されるところであつて、上告理由とは
ならない。所論一点乃至三点はすべて採ることができない。
 被告人Cの弁護人鈴木常吉の上告趣意について。
 所論は、すべて事実誤認の主張であるから、上告適法の理由ではない。
 被告人Dの弁護人久保田由五郎の上告趣意第一点について。
 しかし、原判決の説示のごとく挙示の証拠と、判示前科があるのに累ねて本件賭
博を敢行した事跡とを綜合すれば原判示の事実認定を肯認するに足りるから、原判
決には所論の違法はない。その他事実誤認の主張は適法な上告理由ではない。
 同第二点について。
 原判決は、被告人の供述の外その挙示のA、Eの供述記載を証拠として判示事実
を認定したものであつて、所論のように単に被告人を訊問しただけで事実を認定し
たものではないから、原判決には所論のような審理不尽は認められない。
 被告人Fの弁護人久保田由五郎の上告趣意について。
 しかし、原判決の事実認定は、挙示の証拠で肯認できるから、原判決には審理不
尽の違法は認められないし、その他事実誤認の主張は適法な上告理由ではない。
 被告人G、同E、同Hの弁護人久保田由五郎の上告趣意第一点乃至第三点(被告
人G関係)について。
 しかし、原判決挙示の証拠によれば、原判決り事実認定を肯認することができ、
原判決には所論のごとき証拠上又は審理上の違法は認められない。その他事実誤認
の主張は適法な上告理由ではない。
 同第四点(被告人E関係)について。
 しかし、被告人Eに対する所論公判請求書には「被告人Eは常習として昭和二十
三年六月二十七日頃より十月二十二頃迄の間添附別表其の二記載の通り俗にコイコ
イ、後先、追丁株と称する賭銭博愛を為し」と記載し、その添附別表其の二には公
判請求書が特に指摘した六月二十七日以降の賭博行為の外原判示のごとき一月四日
以降の賭博行為をも記載しており且つ原審において検察官は公訴事実として原判示
と同一事実を認定した第一審判決の事実摘示と同趣旨の事実を陳述している。従つ
て、原判決が判示賭博行為をすべて起訴の範囲に属するものと認め且つその一部は
常習賭博でありその一部は単純賭博の併合罪であると解したからといつて、不告不
理の原則に反する違法があるとはいえない。なお刑法五五条は昭和二二年一一月一
五日以降は適用されないのであるから、同日以降判示昭和二三年七月二二日以前の
単純賭博の犯行は、それぞれ併合罪の関係にあること明白である。それ故同被告人
が右七月二二日賭博罪により罰金の確定判決を受けたからといつて、その判決の既
判力がその以前の併合罪に及ぶ道理がないから、これを既判力の範囲外の行為であ
ると認めて有罪としても違法とはいえない。論旨は、それ故に採用し難い。
 同第五点乃至第八点(被告人E関係)について。
 しかし、原判決は、被告人の原審における所論供述を証拠としていない。そして、
その挙示の証拠並びにこれによつて認められる判示事跡によれば、その事実認定を
肯認することができるから、原判決には虚無の証拠によつて事実を認定し又は審理
を尽さない違法は認められない。その他事実誤認の主張は、すべて上告適法の理由
ではない。
 同第九点乃至第一一点(被告人I関係)について。
 しかし、原判決は、常習の点を判示昭和二二年一二月九日松本簡易裁判所におけ
る賭博罪により罰金刑に処せられた前科のあるのに累ねて判示(イ)、(ロ)の賭
博の回を重ねて敢行した事跡に徴しこれを認定したもので所論のごとき十年前の前
科を以て認定したものではなく、そして、その認定は挙示の証拠と右説示のごとき
事跡とによりこれを肯認するに充分であつて、毫も矛盾は存しない。されば、原判
決には所論のような違法は認められないし、また、その他事実誤認の主張は適法な
上告理由ではない。被告人Jの弁護人鈴木常吉の上告趣意について。所論は、結局
事実誤認並びに量刑不当の主張に帰するものと解せられるから、上告適法の理由で
はない。被告人Kの上告趣意について。所論は、事実の誤認と量刑不当の主張であ
るから、上告適法の理由ではない。よつて、旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一
致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二六年一月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    岩   松   三   郎

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