弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主        文
 被告人を懲役2年に処する。
 未決勾留日数中390日をその刑に算入する。
        理        由
(犯罪事実)
 被告人は,Aと共謀の上,Aが金員を借用していた知人のBから金員を詐取しよ
うと企て,平成9年2月中旬ころ,兵庫県三田市ab番地所在の同人方において,
Aが,上記Bに対し,真実は,大阪市c区de丁目の地番f番g及びf番hの各土
地はCの所有で,同各土地上の家屋番号i番及びj番の各建物はD有限会社の所有
であり,上記各不動産の売買契約が締結された事実もないのに,上記各不動産を所
有しているのがE屋株式会社であり,同社が上記各不動産の売買契約をF株式会社
と締結し,Aが代表取締役であるG株式会社及びH某が代表取締役であるI株式会
社がその売買契約の仲介業務を行っているように装い,E屋株式会社を売主とし,
F株式会社を買主とする虚偽の不動産売買契約書のコピーを呈示した上,「B先
生,実は今心斎橋で呉
服屋をしているE屋が東京で中華料理店をしているFに41億円で土地を売却する
話が持ち上がっていて,その仲介を俺のGとIのHの2人でやっているので,その
売買がまとまればE屋からGとIが仲介手数料としてそれぞれ6億円もらえるの
で,その金でB先生への借金の支払いもできます。」などと嘘を言った上,同年4
月ころ,上記B方において,Aが,上記Bに対し,上記F株式会社から上記G株式
会社宛ての支払約定書を呈示した上,「実は俺はE屋とJとKさんともう1軒の合
計4軒分の土地をFが買う仲介もしていてE屋とJの2軒の売買だけが残ってい
て,その2軒の売買が終われば,俺はFから4軒分の仲介料として3億600万円
もらえるようになっている。」などと嘘を言い,平成10年5月8日ころ,上記B
方において,Aが,上記
Bに対し,「先生,E屋とKさんの境界問題で,E屋がKさんに支払うことになっ
た5200万円のうち,私が2600万円を払えと言われていたという話がありま
したでしょう。結局,私も2600万円をKさんに支払わせられたんですが,その
支払いのために1000万円は手形で知り合いの会社の社長から借りてお金を作り
ました。あとの1600万円は街金融から借りたんですが,実はその街金融にFの
3億600万円の支払約定書を担保として差し入れてしまったんです。それが取り
返せないとFからもらえる3億600万円がもらえなくなってしまうんです。」な
どと嘘を言い,同月13日ころ,上記B方から大阪市k区lm丁目n番o号所在の
L1ホテルまで走行中の普通乗用自動車内において,被告人が,上記Bに対し,
「Mに任しとったら,
Mという男は,不動産屋としては手管のしっかりした男やから,大丈夫や。」など
と嘘を言った上,上記L1ホテル喫茶店に上記Bを連れて行き,同所において,同
人を上記E屋株式会社代表取締役になりすましたNに面談させるなどし,更に,同
月14日ころ,上記B方において,Aが,上記Bに対し,「Kさんに支払うために
知り合いの街金融から1600万円を借りたが,FからE屋の件を含めた4軒分の
不動産売買の仲介料として3億600万円をもらう支払約定書を担保に入れてお
り,借金を返さないとその権利を取られてしまうんです。1000万円は知り合い
の社長から手形で借りたが,その決済が18日にある。社長からその日の12時ま
でに借金を返してくれないと不渡りを出して倒産してしまうと言われたんです。先
生,何とか2000万
円を貸してください,あとは私の方で何とか都合しますから。」などと嘘を言っ
て,同人にそのように誤信させ,よって,同人から,同月18日ころ,兵庫県三田
市p町q番r号先路上に停車中の普通乗用自動車内において,現金1000万円
の,引き続き,大阪府堺市stu番地のv所在のO銀行P支店において,現金10
00万円の各交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた。
(証拠の標目)
 省略
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,①被告人は,Bから金員を詐取する意思はなく,Aと詐取を共謀し
たこともない,②被告人は,AがBに話していたE屋とFの不動産取引が事実であ
ると思っており,この取引に関してAがBに説明していることも事実であると思っ
ていた,③被告人は,平成10年5月18日ころ,AがBから2000万円を受け
取ったことは知らず,被告人自身が現金を受け取ったこともないので,被告人は無
罪であると主張し,被告人も,これに沿う供述をするので,以下,検討する。
2 関係各証拠によれば,本件に至る経緯及びその前後の状況として以下の事実が
認められ,これらの点については,おおむね被告人も争わない。
 ① Bは,自らが理事長を務める土地改良区に誘致したR工業に多額の保証や融
資をし,R工業から,その所有する茨木の土地を譲渡担保に取った。Aは,平成6
年3月ころ,Bから,茨木の土地の売買を任され,4億円で売ると請け負って多額
の資金を引き出したもののなかなか売却できず,ようやく平成9年10月20日,
6500万円で売買契約が成立したが,Bは,多額の損失を抱えたのみならず,土
地改良区の資産にも手を付け,進退窮まる状況になった。
 ② 平成9年2月10日ころ,Bは,Aに対し,詐欺ではないかと叱りつけたこ
とがあり,Aは,Bに言われるまま,同月24日に4億2500万円を支払う旨の
念書を作成した。その数日後,AがB方を訪ね,同人に対し,偽造の不動産売買契
約書や登記簿謄本のコピーを呈示し,「B先生,実は今心斎橋で呉服屋をしている
E屋が東京で中華料理店をしているFに41億円で土地を売却する話が持ち上がっ
ていて,その仲介を俺とIのHの2人でやっているので,その売買がまとまれば仲
介手数料として俺が6億,Hが6億,それぞれE屋からもらえるので,その金でB
先生への借金の支払いもできます。」などと言った。
 ③ さらに,同年春ころ,Aは,Bに対し,「FはE屋の土地を含めて合計4軒
分の土地を買おうとしていて,その売買が4軒分まとまればFの方からも仲介手数
料も3億600万円もらえることになっています,それでこれまで先生に損をさせ
た分や借りている分についても返済します。」などと言った。
 ④ 同年10月下旬ころ,Aは,Bに対し,「E屋の土地の境界が隣地に食い込
んでいてFの支払ができない,その精算に5200万円いるので,これをIと半分
ずつ負担するということになった。」などという話をし,2600万円の借用を申
し込んだが,Bに断られた。
 ⑤ 同年12月18日ころ,Aは,B方において,同人に対し,「E屋は,50
00万円をE屋に貸さないと取引の権利をIのHに渡すと言っています。5000
万円貸してください。5000万円用意しないとE屋からもらえることになってい
た6億円の仲介手数料も入ってこなくなって,全部Hのものになってしまうんで
す。1100万円貸してください,後の3900万円はこっちでがんばって資金繰
りします。」などと言い,同月22日ころ,Bから,現金1100万円の交付を受
けた。
 ⑥ 平成10年1月27日ころ,Aは,B方において,同人に対し,「E屋がお
金を貸してくれとやいやい言ってきています,これまで残りの3900万円の金策
に走り回ってきましたが,どうしても無理でした。E屋に何とか待ってもらえるよ
う交渉したところ,E屋が明日中に2000万円を貸してくれたら1900万円は
ちょっと待つと言ってくれました,その代わり明日までに2000万円貸してくれ
ないとGの6億円の仲介手数料の権利をIに渡してしまうと言われました,先生の
方で何とか2000万円を作ってくれたら,後は私の方で何とかします。2月25
日にFの支払があるので,それでE屋からお金を返してもらって,先生に必ずお返
ししますから2000万円を貸してください。」などと言い,同月28日ころ,B
から額面2000万
円の小切手の交付を受けた。
 ⑦ 同年3月19日ころ,Aが,B方に電話をかけ,Bに対し,「Fの支払いが
4月17日に延期になったんです。E屋には3月20日のFの支払いがあるのでそ
れで何とかしてほしいと頼んでいましたが,E屋もその支払いをあてにしていたの
に,それがだめになったので,私に残りの1900万円を明日までに貸してくれと
言ってきました。残りの1900万円をE屋に貸さないとE屋はIに取引の権利を
渡してしまいます。そうなれば6億円がパーになってしまいます。先生,お願いし
ます。4月17日にFの支払いがあるので,それで間違いなくお返ししますから,
1900万円を貸してください。」などと言い,同月20日ころ,Bから現金19
00万円の交付を受けた。このとき,Aは,Bに宛てた6億2000万円の借用書
を作成し,被告人は
,これに立会人として署名指印した。
 ⑧ Aは,FのE屋に対する21億円の上記売買代金残額の支払が同年7月31
日に延期された旨の同年5月6日付けE屋作成名義の「お支払念書」を作成した
上,同月8日ころ,B方において,同人にこれを示し,そのころないし同月14日
ころ,同人に対し,「先生,昨年E屋とKの土地の境界問題で,E屋が私とHにE
屋に代わって土地代の5200万円を払えと言ったことがあったでしょう。結局,
E屋から私とHとでKに2600万円ずつ払わせられたんですが,その支払いをす
るために1000万円を手形で知り合いの会社の社長から借りました。1600万
円は金融屋から借りました。街金融には担保としてFの3億600万円の支払約定
書を取られました。支払約定書がなくなれば3億600万円がパーとなりますので
何とか取り返します。
」,「Kさんに2600万円を支払うために街の金融屋から1600万円を借りた
のですが,Fから仲介料としてもらえる3億600万円の支払約定書を担保に入れ
ているんです。5月18日までに金を返さないとこの支払約定書を取られてしまう
んです。そうなれば3億600万円はパーになってしまいます。知り合いの社長か
ら手形で1000万円を借りたのですが,その決済が5月18日にあって,その日
の12時までに返さないとその会社が倒産してしまうんです。先生,何とか200
0万円を貸してください,金融屋の600万円は自分で作ります。」などと言い,
Bに,2000万円の借用を求めた。
 ⑨ Aは,度重なるFの支払い延期に疑問を持ったBから,E屋の社長に会わせ
るよう求められ,知人のNにE屋社長に成りすますことを依頼し,同月13日こ
ろ,Aは,Nを伴って判示L1ホテルへ行き,NはE屋社長と名乗り,被告人とと
もに同ホテルに来たBと面談するなどした。
 ⑩ 同月17日ころ,Bは,Aに対し,前記⑦の現金2000万円の準備をする
ので,知り合いの社長に返す1000万円の支払場所まで同行すると言い出したこ
とから,Aは,当時同棲していたSに,その社長夫人に成りすますよう依頼し,S
は,これを承諾した。同月18日,Bは,迎えに来たAが運転し被告人が同乗する
自動車に乗り,三田市内で,T及びUから,それぞれ1000万円を借り受けた
上,Aに1000万円を渡し,さらに,被告人及びAとともに判示O銀行P支店ま
で赴き,同所で,社長夫人に成りすました前記Sに,Aを介して現金1000万円
を手渡した。その直後,同所で,Aは,Sからその1000万円を受け取った。
3 A証言について
  証人Aは,公判廷において,Bから金員を詐取するについて,被告人との間に
共謀があったとして,その状況等につき,おおむね 以下のとおり供述している。
 ① 平成9年2月10日ころ,前記2②の念書を書いた帰り,被告人と2人で,
まずBを安心させるための方法として,以前,Aが,V株式会社が心斎橋にある土
地の買収に関与したことがあったことから,「Aが社長をしているG株式会社とH
という男が社長をしているI株式会社の2社がFがE屋の所有している土地を41
億円で買う仲介に入っていて,すでにFは20億円を支払い済みだが,残金21億
円の支払いは済んでおらず,E屋がFからその21億円の支払を受ければGとIが
それぞれ仲介手数料としてE屋から6億円もらえることになっている。」などとい
う話を作り上げた。被告人は,「先生はこれはびっくりして腰抜かすやろうな。」
「Mちゃん,書類を作ってよ,作った方がええで。」などと言っていた。
 ② 同月14日ころ,Aは,偽造した売買契約書等を持って被告人とともにB方
を訪ねたが,その途中,偽造書類を被告人に見せたところ,被告人は,「よっし
ゃ,それでええ,それで行こう。そやけど,先生に絶対コピーさせたらあかん
で。」などと言った。Aと被告人は,B方で,この6億円が入ってくれば借金は返
済できるなどという話をしてBを信用させた。その帰り道で,被告人は,「Bさ
ん,あの話をやっぱり信用しよったな。」などと言っていた。
 ③ 同年4月か5月ころ,被告人とAの間で,E屋の売買の相手方であるFから
も仲介料として3億600万円が入ってくるという話を作り出し,被告人とともに
B方へ行き,Aが,Bにこの話をした。
 ④ 同年10月下旬から11月ころ,Aは,被告人と一緒にB方に行き,E屋の
土地の境界が食い込んでおり,その補償金として金が要るという話をして,その支
払いのために2600万円を用立ててほしいと頼んだが,Bに断られた。
 ⑤ その二,三日後,Aと被告人は,川西市内の喫茶店で話し合い,先の境界問
題に代えて,「Fの支払がどんどん延びるので,E屋が資金繰りに困り,1億円ほ
ど貸してくれと言ってきている。E屋は,GとHのIに1億円の資金繰りを申し込
んできた。E屋は,その5000万円をGがE屋に貸さないと,Gがもらえるはず
の6億円の仲介料を払わないと言っている。」などという筋書きを考え出した。
 ⑥ 同年12月18日ころ,Aは,被告人とともにB方に行き,Aが,Bに対
し,前記2⑤のような嘘を言い,Bから,1100万円を出させる約束を取り付け
た。被告人は,Bに,「ここまで来たら,Hと同等にやっといたほうがいいです
よ。私も協力しますから。」というようなことを言っていた。
 ⑦ 同月20日ころ,Aは,Bから,1100万円用意するから取りに来いとい
う連絡を受け,同月22日ころ,被告人とともにB方へ行ったが,その途中,被告
人は,1100万円のうち500万円をくれと言い,Aは了承した。その後,Bと
ともにW方へ行き,1100万円の現金を受け取り,その帰りに,被告人に500
万円を渡した。
 ⑧ その後も,平成10年1月28日,B方で,同人から2000万円の小切手
を受け取り,その日のうちに換金して被告人に600万円を手渡した。同年3月2
0日ころ,B方で,現金1900万円を受け取り,このとき,Aは,6億2000
万円の借用書に署名したが,被告人も,Bに求められ,立会人として署名した。そ
の帰途,Aは,受け取った1900万円のうち800万円を被告人に渡したが,被
告人は,「これで5000万全部取ったな。次の口実何か考えてよ。」などと言っ
ていた。
 ⑨ このころから,Bは,Aに,E屋社長と会わせるよう要求するようになり,
Aと被告人は,その対応を考えていたところ,被告人が,その知り合いのNをE屋
社長に仕立てることを提案し,同年5月初旬ころ,Aが,NにE屋社長に成りすま
してBと面談することを依頼し,Nは承諾した。Aは,その一,二日後のうちに,
Nが承諾したことを被告人に伝え,被告人は,BにE屋社長と会うように伝えると
言った。
 ⑩ Aは,同年5月6日ころ,その日に予定されていたFの支払が7月31日に
延期になった旨の支払約定書を偽造し,同月8日ころ,被告人とB方を訪れて,同
人に支払約定書を示した。このとき,Bは,この話は嘘ではないかなどと言い出し
たことから,Aと被告人は,それぞれ,Bに,E屋社長と会うことを勧めた。ま
た,そのころ,さらにBから金を引っ張る口実として,被告人とAは,前記2⑧
の,E屋とKのと土地の境界問題で,E屋から2600万円の支払を求められてい
るという話を持ち出すことを打ち合わせた。
 ⑪ 同月9日ころ,Aは,Nと会って,あらためてE屋社長に成りすましてBと
会うことを依頼し,同日ころ,心斎橋のE屋店舗前で,偶然を装ってBと会わせ,
その後,喫茶店で短時間話をさせるなどした。
 ⑫ ところが,Bは,それでは納得しなかったため,Aは,被告人と相談しても
う一度BをNに会わせることとし,その手順を話し合った。その際,被告人は,
「前もってわしはBさんをL2ホテルへ連れて行くけど,おまえは,L2ホテルへ
行ってNと早めに打ち合わせをして,Nにはっきり話をしとけよ。」などと言って
いた。
 ⑬ 同月13日,Aは,NとL1ホテルで会って打ち合わせをした上,被告人が
連れてきたBと4人で面談し,簡単なあいさつ程度の話をし,Nは,すぐに席を立
った。Bは,まだ納得した様子ではなく,被告人は,Aに,BとNをもう一度会わ
せて話をさせるよう言った。
 ⑭ 同月14日ころ,Aは,被告人とともにB方へ行き,B方で,前記⑩の話を
持ち出し,2000万円の借用を求めた。被告人は,「ここまで来て,みすみす担
保取られることないし,わしも走り回るから,先生も何とか力貸したってよ。」な
どと言っていたと思う。同月17日も,Aと被告人は,B方へ行き,被告人は,
「わしも走り回ったけども,日にちがないから無理やった。先生,何とか助けてや
ってくれませんか。」などと話してくれ,Bは,何とかすると答えた。同日夜,B
から,2000万円を用意し,自分も銀行に一緒に行くという電話があったことか
ら,Aは,Sに社長夫人に成りすますことを依頼した。Aは,被告人に電話し,B
が金を用意したことを伝えると,被告人は,「こっちへもかかってきた。よかっ
た,よかった。やっぱり
お金を用意しよったな。」などと言った。
 ⑮ Bの指示により,同月18日朝,Aと被告人は,B方へ行った。その途中,
被告人は,今回は,折半でくれと言っていた。前記2⑩のとおり,Bを自動車に同
乗させて借受先から現金を受け取り,O銀行P支店へ行った。銀行の建物には,A
とBと被告人の3人で入り,AがBから1000万円を受け取って,社長夫人に成
りすましたSに渡し,銀行を出た。その後,Aが銀行に戻ってSから1000万円
を受け取り,被告人とともにBを大阪駅まで送り,被告人を川西まで送っていき,
その途中で,被告人に1000万円を渡した。
 ⑯ 同月19日,L1ホテルで,重ねて,BをE屋社長に成りすましたNに面談
させることとし,AとNが早めに同ホテルに行って打ち合わせ,被告人が,Bを迎
えに行き,同ホテルで,4人で約10分程度会談した。
 ⑰ このようにして,Aは,Bから,合計約3億2000万円を受け取り,その
うち1億五,六千万円は,被告人に渡した。Bに出させた金を,一番最後に被告人
に渡したのは,平成12年11月か12月ころで,このとき,Bから受け取ってき
た1500万円のうち,200万円を被告人に渡そうとしたところ,こんなはした
金は要らないと言って,金を投げつけられたことがあったが,結局,300万円に
して受け取らせた。
4 被告人の供述内容
  他方,被告人は,①しばしばAに同行してB方へ行ったこと,②上記2の⑨の
とおりBをL1ホテルへ伴っていったこと,③上記2の⑩のとおりBをO銀行P支
店へ連れて行ったことなどは認めながら,Aと本件を共謀したことはなく,金員を
受け取ったこともないと主張している。その趣旨は,要するに,①Aが,Bに対
し,上記のE屋とFの取引に関し,仲介手数料としてE屋から6億円,Fから3億
600万円もらえるという話をしていることは知っていたが,それが本当のことと
信じていた,②被告人は,Aに3000万円以上の債権があり,その回収のため,
儲け話をしていたAについて回っていただけであって,Aと一緒になってBを騙す
話しをしたことはなく,Aらから敬遠されるようになってからは,同人とB方に出
入りすることもやめた
,というのである。
5 その他の証拠との関係
 ① Bの証言について
   証人Bの公判供述の要旨は,以下のとおりである。
  ア 上記2①の茨木の土地について,その処分をAに委ねたが,被告人は,そ
の当時から,Aと一緒に,B方に出入りしていた。この件で,Aに対し,詐欺では
ないかと怒ったことがあったが,その際,被告人は,Aは不動産屋として凄腕だか
ら,彼に任して心配はない,という趣旨のことを言っていた。
  イ その後,Aから,上記2②の6億円の話や,2③の3億600万円の話を
聞き,更に,2④のとおり2600万円の借用を申し込まれたが,断った。
  ウ その後,Aから,上記2②の話を前提として,E屋に5000万円を貸さ
ないと,6億円の仲介手数料の権利が取り上げられるというような話を聞き,平成
9年12月22日ころ,1100万円,平成10年1月28日ころ,2000万
円,同年3月20日ころ,1900万円を,Aに貸し付けた。
  エ 被告人は,このような話をするときや金を取りにくるときはAと一緒に来
ていたが,被告人が,FとE屋の取引の件について口を挟むことはなかったし,そ
ういう話をしたこともなかった。同年3月20日,Aから6億2000万円の借用
書等を書せた際,被告人に,その内容を証明してもらおうと考えて,立会人として
署名してもらった。
  オ 同年5月13日ころ,被告人に迎えに来てもらってL1ホテルへ行った。
その車中で,被告人は,E屋とFの不動産売買の話をしたことはなく,この件がと
いうことより,Mは,不動産屋としては手管のしっかりした男で,大丈夫やという
話はしていた。また,被告人は,Aに金を貸しており,Aの取引ができたら,金を
もらうと言っていた。
  カ 上記2⑩の支払に際し,同月18日ころの朝,Aと被告人が迎えに来て,
現金の準備をした上,O銀行P支店に行った。そのとき,被告人は,銀行の店内に
入ったが,社長夫人という女性とあいさつはせず,はたにずっと立ち会っていたと
いうほどのこともなく,その間に,どっかおらんようになり,金の受け渡しをして
出てくると,被告人が出てきた。
   以上のとおりであって,Bの供述からは,被告人が,本件の各取引に際し,
Aと行動をともにしていることが多かったこと,被告人がAに金を貸していると聞
いていたこと,Aは,不動産取引については凄腕であるなどと説明していたことが
認められるが,被告人が,上記のE屋とFの取引について,Aの話を補完したり,
これに同調するような言動をしていたという供述はしていない。
 ② Nの証言について
   Nは,上記2⑨について,NにE屋社長に成りすますことを依頼したのは,
Aであって,実際に,L1ホテルで被告人の姿を見るまでは,被告人が関与してい
るとは考えていなかったと述べ,その面談の際の状況について,「Mからは,被告
人が来るとははっきり聞いていなかったのに,L1ホテルで待っていると,被告人
とBが来た。Mに質問すると,話はちゃんとしてあるから余り言わずにあいさつだ
けしてくれということで,その場はあいさつだけした。被告人は私の姿を見て驚い
たようには見えず,何か変だと思った。」などと供述している。
 ③ Sの証言について
   Sは,上記2⑩について,Aから依頼されて,社長夫人に成りすますことに
なったと述べており,被告人の関与をうかがわせるような供述はないが,O銀行P
支店での状況について,Sは,「一番最初にAが入ってきて,先生と被告人さんが
続いて入ってきました。」,「Aから,前もって,銀行にBと被告人が来るが,被
告人を見ても知らない顔をしておけと言われた。それで,被告人が入ってきたのを
見たとき,ちょっと笑いそうになった。被告人は何も言わなかった。」などと供述
している。
 ④ 被告人の口座への金銭の流れについて
   被告人が管理し,現金の出し入れに利用していたX農業協同組合Y支店のZ
名義普通貯金口座(捜査関係事項照会回答書添付の取引履歴明細表)には,平成1
0年1月28日,現金550万円の入金があり,これは,上記2⑥に時期的に符合
するものであるところ,被告人は,捜査段階で,これについては説明できないと供
述していることからすると,これが,Aが,Bから騙し取り,被告人に交付したと
供述する600万円の一部である可能性は否定できない。また,同口座には,同年
5月19日,他店手形による250万円の入金があり,これについては,上記2⑩
の本件犯罪事実にかかる1000万円と時期的に符合するが,その入金が,他店手
形によるものであることからすると,本件との関連は必ずしも判然としない。そし
て,同口座には,ほ
かにAの供述に明らかに見合う入金の記載はなく,本件犯罪事実にそう1000万
円の受領を明確に裏付けるに足りる証拠もない。
 ⑤ いわゆる「甲(注・被告人の氏)ふりわけ件」と題する茶封筒在中の書面
(平成15年押第65号の2)について
   同書面には,感熱紙に手書きで「甲」「甲’(注・被告人の氏と類似の氏)
2」「甲’3」などと記載された上,6年から13年までの年数と,月日を表すと
思われる数字に,丸で囲んだ数字,末尾に約1億5000万円という文字が記載さ
れている。そして,その中には,9年1/28600,3/20800,5/
18100012年12/18300などの記載があり,上記3⑧,⑮,⑰の
A供述に符合している。
   同書面について,Aは,平成14年5月ころ,金の出入りなどを記載した手
帳をカレンダーに書き写し,そのカレンダーと手帳から作成したものであり,これ
を見せて,被告人にこれだけ金が流れたことを示して,金を借りようと思っていた
と供述するが,その作成経緯には不自然なところがあり,また,その作成動機も明
朗ではない。他方,同書面には,記載を抹消した跡や,マイナスの記載もあり,そ
の体裁からみて,何らかの資料を反映したものである可能性はあるが,いずれにし
ても,それ自体の証拠価値は高いとはいえない。
6 A供述の信用性について
 ① 上記のとおり,被告人とAの間に共謀があったことを示す直接的な証拠は,
上記のA供述以外にはない。また,Aから被告人に金員の流れがあったことを示す
証拠としては,独立した証拠価値が高いとはいえない上記「甲(注・被告人の氏)
ふりわけ件」と題する茶封筒在中の書面のほか,上記の貯金口座,S及びN証言が
あるが,A供述を全面的に裏付ける証拠はない。
   そこで,被告人とAの共謀の有無については,もっぱらA供述によることに
なるので,A供述の信用性について,以下,検討する。
 ② Aは,公判廷において,被告人との共謀状況,特に,Bを騙す方法を話し合
ったり,騙し取った金員の分配方法を決めたりした状況等について詳細な供述をし
ている。その供述内容は,相当具体的である上,弁護人の詳細な反対尋問によって
も,ほとんど揺るがない。
   他方,Aの公判供述は,捜査段階の供述と比較すると,(a)茨木の土地の件
で,Bから金員を騙すつもりがあったかどうか,(b)Bに,E屋とFの取引の話を持
ち出したり,E屋社長に成りすましたNと面談させたのは,Bからの追及を当面逃
れるためであったのか,最初から金員を騙し取るつもりがあったのか,(c)E屋とF
の取引話に,Aが本当に関与していたのかどうか,(d)Bを騙す文言を考えたりする
中で,Aと被告人がそれぞれどのような言葉をやりとりしたかなどの点で,変遷の
あることがうかがわれ,Aの公判供述は,自己の責任を軽減しようとする傾向のあ
ることは否定できない。また,公判供述においても,NをE屋社長に仕立てること
について,その話を最初にNに依頼したとき,被告人がいたかどうかちょっと記憶
にない(第7回公判)
と言ったり,頼んだとき被告人はいてなかった(第10回公判)と言ったり,ある
いは,L1ホテルでBとNを会わせたとき,その場に被告人が来ることを言ってい
たかどうかについて,「事前にNの方も被告人が来るというようこと分かってまし
たから」(第8回公判)と述べたり,被告人を連れてくることをNには言ってなか
ったと思う(第10回公判)と述べたり,判示事実と密接に関わる事柄について,
かなり混乱した供述をしている部分もある。
   しかし,上記(a)については,証拠上どちらとも確定することはできず,上
記(b)については,むしろAの公判供述にそうかのようなBの供述もあり,一概に,
虚偽とはいえない上,上記(c)については,Aは,結局,ブローカーとして,取引の
末端に関与していたことをほのめかしているに過ぎず,E屋やFから多額の仲介手
数料をもらえるということ自体は,虚偽であることを一貫して供述していることが
認められ,これらの点に関するAの公判供述が全く不合理であるとはいえず,この
ような供述の変遷があるからといって,直ちに,同人の供述の信用性が全く否定さ
れるとまではいえない。また,同人の公判供述は,相当長期間にわたる複雑な経過
について,通算8回の公判期日にわたって事細かな尋問を受け,ある程度混乱が生
じることもやむを得な
いと考えられるところ,同人は,質問の趣旨を取り違えたり,先走ったりして,い
ささか性急に答えようとする傾向が見受けられるものの,基本的には,その当時の
状況を思い出して必死に答えようとする供述態度が認められる。
   そして,Aの公判供述は,以下③ないし⑤のとおり,本件に関わるその根幹
部分において,他の証人の証言と整合する状況が認められる。
 ③ 平成10年5月13日ころL1ホテルでの状況(上記2⑨)
  ア 証人Nは,平成10年5月13日ころ,L1ホテルで,E屋社長に成りす
ましてBと面談した状況について,上記5②のとおり供述している。
  イ 関係各証拠によれば,被告人は,Nとは以前からの顔見知りであって,E
屋社長でないことを十分知っていたことは明らかであり,被告人も認めるところで
ある。
    被告人は,この点について,公判廷では,あいまいであるが,要するに,
Nが来ているのは分かったが,そのときはE屋と名乗ったのは聞かなかったと思
う,E屋やFという話は出なかった,2回目に,L1ホテルで会ったときに,E屋
ですという言い方をした,などと供述している。他方,被告人は,捜査段階では,
「E屋の社長に会ったとき,それがNであるとは分からなかった」とか「分かった
が,おかしいとは思わなかった」(平成14年9月1日付け警察官調書),「Nが
E屋の社長であることは分かったが,Nが,昔,Eという通称名を使っていたこと
から,えらい出世したものだと思った」(同月5日付け警察官調書),「E屋の社
長と紹介された男性がNだと分かったが,Nの服装を見て,もともとE屋の社長を
していた人だと思った
」(同月6日付け検察官調書)などと,極めて不合理な供述をしている。
    しかし,被告人の公判廷供述を前提とすると,被告人は,NがE屋社長と
して行動していることは理解できたのであり,他方,Aが,Bと関わりながらE屋
とFの大きな取引に関与していると信じ,そこから自らの債権を回収するためにA
について回っていたというのであるから,なぜNがE屋社長を名乗っているのか,
強い疑問を持つはずであり,その場で,AやNに問いただすなり,少なくとも,後
日,Aに事情を尋ねるのが当然であると思われるのに,そのようなことは一切して
いない。弁護人は,被告人が捜査官からこの点を強く追及され,「自分はNがE屋
の代理と思った。」という弁解が聞き入れられず,やむを得ず嘘の供述をしたと主
張するが,被告人がNをE屋の代理人と思ったということ自体が不自然である上,
被告人は,それ以外
にその際の心理を合理的に説明していないことからすると,被告人は,NがE屋社
長に成りすましていることをあらかじめ了解していたと考えざるを得ず,NにE屋
社長を装わせることについて,Aとの間に何らかの意思の連絡があったことを強く
推認させるものというべきである。
 ④ 平成10年5月18日ころO銀行P支店での状況(上記2⑩)
  ア 証人Sは,同月18日ころ,O銀行P支店で,社長夫人に成りすましてB
から現金1000万円を受け取ったときの状況について,上記5③のとおり供述し
ている。
  イ 被告人は,この日の状況ついては,一貫して,O銀行P支店へは,Bと二
人で被告人の自動車で行ったと思う,被告人は,ロータリーで自動車を止めて待っ
ていて,銀行の中へ入った記憶はなく,AとBの金の受け渡しは分からない,など
と供述している。しかし,この供述は,B,A及びSの各供述と明らかに相反して
いるところ,被告人が,Bと一緒にPへ行ったことは1回しかないというのであ
り,しかも,B及びAの一致した供述によれば,この日は,Bが,三田市内の2か
所を回ってそれぞれ1000万円を調達し,そのうちの1000万円を,P支店で
待ち受けている社長夫人に渡すということになっていたというのであるから,その
ような特異な行動について記憶違いをしているとは考えにくい。そうすると,被告
人は,意識的に虚偽の
供述をしている可能性が高く,その理由としては,当時,被告人は,Aの内妻であ
ったSとは,しばしばその自動車に乗せてもらうなどして顔を合わせていたのであ
って,前記③の場合以上に,銀行の店内で会ったSが,本当に社長夫人であると思
ったなどという弁解が通用しないと考えたからではないかとも推測される。そうす
ると,被告人は,BがSを社長夫人と誤認していることを知りながら,そのことを
AやSに問いただしたり,Bに忠告するなどしなかったのであるから,このこと
も,被告人が,Bを欺罔することについて,Aと何らかの意思を通じていたことを
強くうかがわせる事情ということができる。
 ⑤ その他の付随事情
  ア 上記Sは,(a)時期は特定できないものの,三田へ行った際,自動車の中
で,Aが,被告人に帯封をした100万円の束二つと端数を渡していた,これにつ
いて,Aから,「乙ちゃん(注・被告人のこと)がお金要るから先生に借りたんや
というふうに聞いてます。」と述べ,また,(b)当時のAとSの自宅で,Aが電話で
被告人ともめているのを聞いたが,後で,Aは,「いつも仕事をするのはおれ
や。」と言ってぼやいていたと供述している。
  イ Aや被告人の供述に照らすと,Aや被告人が三田へ行くのは,B方へ行く
以外に理由は考えられないのであるから,Sが供述する上記(a)の状況は,被告人と
AがB方へ行き,現金を受け取った帰りのことであると考えるのが自然であり,そ
うすると,被告人は,Bから受け取った現金であることを認識しながら,Aから現
金を受け取っていたものと認められ,このことも,被告人が,Bから金員を騙し取
るについてAと意思を通じていたことを示す重要な間接事実ということができる。
  ウ また,S供述の(b)の状況については,Aのぼやきは,同人が,当時の内妻
であったSとの普段の生活の中でふと漏らしたものであることからすると,全く作
為性が感じられず,Aの内心をそのまま吐露したものと思われる。Aと被告人の電
話の内容は具体的には明らかでないものの,当時,被告人とAが,共同して何らか
の事業に取り組んでいたような状況はうかがえず,他方,Aは,被告人と共謀して
Bを騙すについて,偽造書類を準備したり,B方で話をするのはもっぱら自分であ
るのに,その分け前が多くないことに不満を抱いていたと述べているところ,Sが
聞いたAのぼやきは,まさに,その状況に符合するものである。そうすると,この
ことも,被告人とAの共謀を推認させる事情の一つである。
 ⑥ 以上のとおり,Aの公判供述は,自己の刑責を軽減しようとする傾向があ
り,また,相互に整合しない部分のあることは否定できないが,他方,被告人が,
本件につきAと共謀があったと考えなければ説明のつかない事実のあることが認め
られ,それについて,被告人は,合理性のある説明を全くしていないのであるか
ら,それらの事情と符合する限りにおいては,Aの供述を信用することができるも
のと判断した。
7 弁護人らは,被告人がAに3000万円以上にのぼる債権を有しており,被告
人は,その債権を回収するため,Aについて回り,B方に出入りしていたに過ぎな
いと主張し,被告人もこれにそう供述をしている。
  押収してある手形,小切手合計23通(平成15年押第65号の4ないし2
6)は,いずれもAが代表者を務めていたG株式会社が振り出したかあるいは裏書
きしたのものであり,それが決済されていないこと,Aは,公判廷において,Gの
倒産に絡んで被告人に相当額の負債があったことを認め,それが,自己の所有不動
産の処分により全額返済しているというのであるが,その返済内容は極めてあいま
いで,何ら裏付けもないことなどからすると,被告人が,Aに債権を有している蓋
然性は否定することができない。
  しかし,被告人が,Aに債権を有し,これを回収する目的で被告人とともにB
方に出入りしていたとしても,そのことは,被告人がAと共謀してBから金員を騙
し取ることと矛盾するものではなく,上記の認定を左右しない。
  また,本件の金員の流れが十分解明されておらず,Aが供述するとおりの金員
の流れがあったかどうかは疑問の余地がある。しかし,他方,上記のS証言等に照
らすと,何らかの金員が被告人に渡っていたことが推認され,A供述に見合うとお
りの金員の流れを示す明確な証拠がないからといって,そのことから,直ちに,被
告人の本件への関与に合理的な疑いが生じるということはできない。
8 以上のとおりであって,Aの公判供述は,本件判示事実に関する部分について
は信用性が認められ,これに上記の各証拠を総合すると,判示事実は,十分認定す
ることができる。
(法令の適用)
罰       条  刑法60条,246条1項
未決勾留日数の算入  刑法21条
訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,共犯者Aと共謀して,架空の不動産売買仲介手数料に関する
嘘を言い,市議会議員をしていた被害者から現金合計2000万円をだまし取った
という詐欺の事案である。
 本件被害は,多額にのぼっているところ,現在のところ,被害弁償は一切なされ
ておらず,その見込みも乏しい。また,被告人は,共犯者とともに,本件犯行を長
期間にわたって計画し,架空の不動産売買の仲介話を被害者に信用させるため,被
告人に対する被害者の信用を利用し,知人や共犯者の内妻を関係者に仕立てあげ,
内容虚偽の書類を作成するなどの周到な工作を繰り返しており,その態様は悪質と
いわざるを得ない。さらに,被告人は,本件犯行を否認し,不合理な弁解に終始し
ていることなどの事情に照らすと,被告人の刑事責任は重いというべきである。
 他方,本件被害者は,金銭に窮し,個人的な貸付資金の返済に充てるため公金を
不正に流用するなどしており,自らの犯罪の発覚を免れたいという願望から被告人
らの嘘を安易に信用した側面もあるなど,被害者側にも落ち度のあることは否定で
きないこと,被告人には,前科前歴はなく,これまで相応の社会生活を営んできた
ことなど,被告人に有利な情状も認められる。
 しかし,これらの情状を十分しん酌しても,前記の犯情に照らすと,実刑は免れ
ないが,前記の情状に加え,共犯者の起訴事実との相違や果たした役割の軽重等を
考慮し,主文の刑を定めた。
(求刑 懲役3年6月)
  平成16年3月19日
    神戸地方裁判所第4刑事部
          裁判官  笹  野  明  義

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