弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求の趣旨
一 被告は、別紙被告物件目録(三)及び(四)記載の各冷蔵庫用脱臭剤を製造
し、販売してはならない。
二 被告は、その所有にかかる前項記載の各冷蔵庫用脱臭剤を廃棄せよ。
三 被告は原告に対し、金八〇〇〇万円及びこれに対する平成五年九月九日から支
払済まで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 原告の意匠権(争いがない)
1 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録
意匠」という。)を有している。
(一) 出願日 昭和六二年二月一八日
(二) 登録日 平成二年八月二七日
(三) 登録番号 第八〇二四七一号
(四) 意匠に係る物品 脱臭剤容器
(五) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(1)」という。)及び本件意匠登
録出願願書添付図面代用写真のとおり
2 本件登録意匠には、次の(一)ないし(三)の類似意匠(以下順次「本件類似
意匠1」「本件類似意匠2」「本件類似意匠3」といい、これらをまとめて「本件
類似意匠」という。)が登録されている。
(一)(1) 出願日 平成元年一二月二九日
(2) 登録日 平成四年一二月一〇日
(3) 登録番号 第八〇二四七一号の類似第1号
(4) 意匠に係る物品 脱臭剤容器
(5) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(2)」という。)記載のとおり
(二)(1) 出願日 平成元年一二月二九日
(2) 登録日 平成四年一二月一〇日
(3) 登録番号 第八〇二四七一号の類似第2号
(4) 意匠に係る物品 脱臭剤容器
(5) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(3)」という。)記載のとおり
(三)(1) 出願日 平成元年一二月二九日
(2) 登録日 平成四年一二月一〇日
(3) 登録番号 第八〇二四七一号の類似第3号
(4) 意匠に係る物品 脱臭剤容器
(5) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(4)」という。)記載のとおり
二 原告の冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」シリーズ商品の販売(甲三の1・
2、六~二八、三二~七五、検甲二~五、一一~一五、検乙一~六、一三、弁論の
全趣旨)
1 原告は、昭和五七年一〇月頃、別紙原告商品写真(一)の容器と同一意匠の容
器本体に、緑色に着色した、冷蔵庫内の悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイ
プの脱臭剤を充填した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」を発売し
(但し、別紙原告商品写真(一)の表面の包装ラベル表示は昭和六三年に商品名を
「ニオイのみはり番 スーパー」に変更後のものである。)、その後そのシリーズ
商品を左記のとおり順次発売した。なお、容器本体に充填する脱臭剤の着色は、彩
度等については若干の変動があるものの(検乙第一号証と検乙第二号証、検乙第三
号証と検乙第四号証、及び、検乙第五号証と検乙第六号証の各対比)、ほぼ緑色と
いう点では当初から現在まで一貫している。
2 昭和五八年九月、別紙原告商品写真(二)の容器と同一意匠の容器を使用した
吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 ビッグ」(検甲第三号証)を発売
した(但し、別紙原告商品写真(二)の表面の包装ラベル表示は、昭和六三年に商
品名を「ニオイのみはり番 スーパービッグ」に変更後のものである。)。
3 昭和六一年三月、別紙原告商品写真(四)の載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイの
みはり番 野菜室用」(検甲第四号証)を発売した。
4 昭和六二年二月、別紙原告商品写真(三)の載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイの
みはり番 #4000」(検甲第五号証、検乙第三号証、第四号証)を発売した。
5 昭和六三年、別紙原告商品写真(一)の吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイの
みはり番 スーパー」(検甲第二号証、検乙第一号証、第二号証)及び別紙原告商
品写真(二)の吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番スーパービッグ」
(検甲第三号証)を発売した(共に商品名の変更に伴い包装ラベル表示を変更した
ものにすぎず、容器の意匠は従前の「ニオイのみはり番」及び「ニオイのみはり番
 ビッグ」と同一である。)。
6 平成四年、別紙原告商品写真(五)の「ニオイのみはり番 ハイパーS」(検
乙第五号証、第六号証)及び別紙原告商品写真(六)の「ニオイのみはり番 ハイ
パーL」を発売した(但し、「ニオイのみはり番 ハイパーS」については平成五
年に表面の包装ラベル表示を検乙第一三号証のものに変更した。)。
7 原告が現在発売中の「ニオイのみはり番」シリーズ商品は、「ニオイのみはり
番 スーパー」、「ニオイのみはり番 スーパービッグ」、「ニオイのみはり番 
野菜室用」、「ニオイのみはり番 #4000」、及び「ニオイのみはり番 ハイ
パーS(包装ラベル表示変更後のもの)」の五種類である(以下、過去に販売実績
のあるものを含め、原告販売の前記各「ニオイのみはり番」シリーズ商品をまとめ
て「原告商品」と総称し、それらの商品に使用されている容器をまとめて「原告容
器」と総称する。)。
三 原告商品の形態(別紙原告商品写真(一)~(六)、検甲二~五、検乙一~
六、一一、一三、一六)
 原告商品の形態は、別紙原告商品写真(一)ないし(六)のとおりであるが、次
のとおり分説するのが相当である。
1 多数の透孔(スリット)が穿設された白色不透明のかぶせ蓋と半透明の本体
(但し、ハイパーLのみ本体の一部に白色不透明部分があり、その余が半透明部分
となっている。)とからなり、蓋の上部に櫛の歯状の透孔(スリット)を多数穿設
した原告容器を使用し、
2 原告容器本体に緑色に着色した、使用時日の経過に従い揮発して量が減少し、
悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した、
3 冷蔵庫用脱臭剤。
四 被告の行為(検甲九、検乙七~一〇、一二、一四、一五、一八、弁論の全趣
旨)
 被告は、業として、
1 平成元年四月頃、中国・四国地方において、別紙被告物件目録(二)記載の容
器(以下「被告容器(2)」という。)と同形の容器(但し、若干小振りであっ
た。)を使用し、その内部に薄い黄緑色と薄い青色の中間色に着色した、使用時日
の経過に従い揮発して量が減少し、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの
脱臭剤を充填した載置型冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク小」(検乙第一八号証)
を発売し、続いて同年一〇月同地方において、別紙被告物件目録(一)記載の容器
(以下「被告容器(1)」といい、「被告容器(1)」と「被告容器(2)」をま
とめて「被告容器」という。)を使用し、その内部に右と同じゲル状タイプの脱臭
剤を充填した載置型冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク大」を試験的に発売し、
2 その後、右試験発売に際し消費者から寄せられた、脱臭剤の着色がトイレ洗浄
剤の青色着色を連想させるとの意見などを参考にして、平成二年二月、被告容器
(1)を使用しその内部に着色を緑色に変更したゲル状タイプの脱臭剤を充填した
別紙被告物件目録(三)記載の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク ジャンボ」(以
下「被告商品(1)」という。但し、容器表面の包装ラベル表示は、発売後、検乙
第七号証→検甲第九号証・検乙第八号証→検乙第一四号証の順に順次変更してお
り、別紙被告物件写真(三)の正面図、背面図、右側面図及び左側面図に撮影の蓋
部下部外周に貼付されて赤色帯状シール及び同正面図に撮影の蓋部正面上部に貼付
された緑色シールの貼付態様は、平成四年春に変更後のもの〔検甲第九号証・検乙
第八号証〕であり、発売当初は蓋部正面上部(透孔部分)に赤色のシールを貼付し
たもの〔検乙第七号証〕であった。)を本格発売するとともに、同時に、被告容器
(2)を使用しその内部に右と同じゲル状タイプの脱臭剤を充填した別紙被告物件
目録(四)記載の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク」(以下「被告商品(2)」と
いう。但し、容器表面の包装ラベル表示は、発売後、検乙第九号証→検甲第八号
証・検乙第一〇号証→検乙第一五号証の順に順次変更しており、別紙被告物件写真
(四)の正面図、背面図、右側面図及び左側面図に撮影の蓋部下部外周に貼付され
た赤色帯状シール及び同正面図に撮影の蓋部正面上部に貼付された緑色シールの貼
付態様は、平成四年春に変更後のもの〔検甲第八号証・検乙第一〇号証〕であり、
発売当初は蓋部正面上部(透孔部分)に赤色のシールを貼付したもの〔検乙第九号
証〕であった。なお、以下では「被告商品(1)」と「被告商品(2)」をまとめ
て「被告商品」と指称する。)を本格発売し、
3 原告が平成四年春に被告商品と同様蓋部の正面に赤色のシールを貼付した「ニ
オイのみはり番 ハイパーS」(別紙原告商品写真(五)、検乙第五号証、第六号
証)の販売を開始したため、被告は、その頃被告商品と原告商品との差異を明確に
する目的で、それまで貼付してきた前記赤色シールの貼付を中止し、被告容器の蓋
部下部の包装ラベル表示を赤色の帯状に変更した被告商品〔検乙第一〇号証〕を発
売し、
4 その後、原告が原告商品の蓋部の頂面から正面及び裏面にかけて赤色シールを
貼付した商品(検乙第一三号証)の販売を開始したため、被告は、被告商品と原告
商品との差異の明確化をさらに図るため、被告商品の蓋部下部外周に貼付していた
赤色帯状シールの正面上部に黄色横長の表示帯を挿入し、同所に「においがうつら
ない」と表示した商品(検乙第一四号証)を発売し、以後右商品を現在まで継続し
て製造販売している。
五 原告の請求の概要
1 ①被告容器の意匠(以下「被告意匠」といい、被告容器の意匠を個別に指称す
るときは「被告容器(1)意匠」「被告容器(2)意匠」という。)が本件登録意
匠に類似すること、②原告商品の形態は、前記三の1ないし3記載の販売時の単な
る外観形状の特徴点のみに限られず、商品として店頭に陳列されている際には、容
器本体の半透明部分から内部を透かして緑色の脱臭剤が容器本体に一杯充填されて
いる状態を看取することができ、使用を継続するにつれて、充填されていた緑色に
着色した脱臭剤の量が次第に減少する様子が容器本体の半透明部分から内部を透か
して見えるという、原告容器の機能的特徴点をも包含するものであり、そのような
意味での原告商品の形態は、遅くとも昭和五九年頃には、不正競争防止法(平成五
年法律第四七号、以下同じ)二条一項一号にいう「商品等表示」として、中間取引
者である流通関係者及び最終需要者である消費者の間に広く認識されるに至ったこ
と、被告商品の形態は原告商品の形態と類似し、原告商品と混同を生じることを理
由に、①意匠法三七条一、二項及び②不正競争防止法三条に基づき、被告商品の製
造、販売の停止及び被告所有の被告商品の廃棄を請求。
2 民法七〇九条及び不正競争防止法四条に基づき、被告の本件意匠権侵害行為及
び不正競争行為により原告に生じた損害八〇〇〇万円の賠償を請求。
六 主な争点
1 被告意匠は本件登録意匠に類似するか。
2 原告商品の形態がいわゆる商品表示性及び周知性を取得したか。
3 被告商品の形態は原告商品の形態に類似するか。両商品に混同が生じるか。
4 原告の出所混同の主張は信義則上許容されないか。
5 被告の行為が不正競争行為に該当する場合、被告に故意又は過失があったか。
また、原告は営業上の利益を害されたか。
6 それらが肯定された場合、被告が賠償すべき原告に生じた損害の金額。
第三 争点に関する当事者の主張
一 争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似するか)
1 原告主張
(一) 本件登録意匠の構成
 本件登録意匠の構成は次のとおりである。
(1) 本体を透明体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型
の脱臭剤容器である。
(2) その基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された横長
で扁平な直方体形状である。
(3) 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されて
おり、平面視において、櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている以外の残余
部が扁平なH字形状として看者の目に映る。
(二) 本件登録意匠の要部
(類似意匠の参酌)
 本件登録意匠の類似範囲を画するためには、その類似意匠の登録状況を参酌しな
ければならないが、本件登録意匠と被告意匠とを全体として観察すると、両意匠
は、具体的構成態様の一部又は一部分につき本件類似意匠と本件登録意匠(本意
匠)との間にも存する差異とほぼ同程度の、被告主張の左記ⅠないしⅤの差異が認
められるのみであり、被告意匠は全体として本件登録意匠に類似する。被告主張の
各差異は、本件登録意匠の要部に関するものとはいえず、それが意匠の全体観察に
占める比重は低いものと評価せざるを得ない。詳細は次のとおりである。すなわ
ち、
Ⅰ 被告は、本件登録意匠は、全体の形状が、頂面と底面とが互いに平行している
横長の隅丸一〇面体であるのに対し、被告意匠は、全体の形状が、横長の扁平小判
型柱体で頂面左右両端を斜めに台形状に切り欠いた蓋部を有し、蓋部と本体の両端
部は半円柱状の曲面を形成している点で相違する旨主張する(被告主張の相違点
Ⅰ)。しかしながら、被告は本件登録意匠の基本的形態を「横長の隅丸一〇面体」
と表現しているが、右表現は不適切であり、「平面視において隅角部に大きなアー
ルが付された横長で扁平な直方体」と表現すべきであり、被告意匠の基本的形態と
本件登録意匠の基本的形態が類似することは、本件類似意匠の基本的形態が全て被
告意匠と同様に被告の主張する「横長で扁平な小判型柱体」であることからも明ら
かである。
Ⅱ 被告は、本件登録意匠は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部
の高さが高いのに対し、被告意匠は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・八五倍な
いし〇・五六倍で、蓋部の高さが低い点で相違する旨主張する(被告主張の相違点
Ⅱ)。しかしながら、本件類似意匠1・2は蓋部の高さが本体の高さの約〇・七三
倍となっており、看者に与える印象は被告意匠と共通していることからも、右被告
主張の理由のないことは明らかである。
Ⅲ 被告は、本件登録意匠は、蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯
状の透孔が各二二個と多数であるのに対し、被告意匠では、蓋部に縦にあけられた
透孔は各一一個ないし六個で本件登録意匠に比べ数が少ない点で相違する旨主張す
る(被告主張の相違点Ⅲ)。しかしながら、本件類似意匠では、蓋部の上方部分に
正・背面の縦方向にあけられた櫛の歯状の透孔の数は一五個であり、その数は多少
相違するとしても、いずれも蓋部頂面から正・背面中央部分にわたって櫛の歯状に
穿設されている点では同じであり、看者に与える印象は被告意匠と共通しているこ
とからも、右被告主張の理由のないことは明らかである。
Ⅳ 被告は、本件登録意匠は、透孔が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が
広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いのに対し、被告意匠では、透孔が少な
く、蓋部左右に残った部分の幅が大変広い点で相違する旨主張する(被告主張の相
違点Ⅳ)。しかしながら、被告意匠の右特徴は本件類似意匠のいずれにも表わされ
ている。
Ⅴ 被告は、本件登録意匠は、蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面
で、透孔はあけられていないのに対し、被告意匠では、斜面に櫛の歯状の透孔が各
七個ないし六個あけられている点で相違する旨主張する(被告主張の相違点Ⅴ)。
しかしながら、本件類似意匠3では、蓋部の中央頂面左右両端(平面視)が、対称
の幅の広い蒲鉾型の斜面を形成し、そこには櫛の歯状の透孔が各五個並列して設け
られており、看者に与える印象は被告意匠と共通していることからも、右被告主張
の理由のないことは明らかである。
(類似意匠に関する被告主張に対する反論)
 被告は、原告が本件類似意匠権の侵害、すなわち被告意匠が本件類似意匠に類似
する責任を追及している旨主張する。しかしながら、原告は、本件訴訟において当
初から被告意匠が本件登録意匠(本意匠)に類似する旨主張しているのであって、
被告意匠が本件類似意匠に類似し、該意匠権を侵害する旨の主張は一切していな
い。被告の右主張は失当である。
 被告は、類似意匠制度に関していわゆる確認説が正しいと主張しながら、その一
方で、本件登録意匠の意匠登録出願後、本件類似意匠の出願前に被告意匠を使用し
た被告商品が販売されたから、本件類似意匠は、いずれも意匠法一〇条一項の「自
己の登録意匠にのみ類似する意匠」に該当せず、本件類似意匠の登録出願は本来拒
絶されるべきものであり、登録された後は審判により無効とされるべきである旨主
張する。しかしながら、被告のこの二つの主張は明らかに矛盾する。なんとなれ
ば、確認説に立つならば、類似意匠登録は、単に本意匠の類似範囲を確認する登録
にすぎず、それ自体には本意匠から独立した独自の類似範囲を認め得ないのである
から、意匠法一〇条一項の「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」という類似意匠
の登録要件の審査に際しては、本意匠の出願時点を基準にして、当該類似意匠が本
意匠以外の先願意匠や公知意匠に類似せず、本意匠にのみ類似するか否かを審査す
れば足り、本意匠の意匠登録出願後、類似意匠の意匠登録出願との間に存在する先
願意匠や公知意匠によって類似意匠の意匠登録出願を拒絶すべきものとすれば、結
局は本意匠の類似範囲自体を確認することができなくなってしまい、類似意匠登録
制度の趣旨そのものが没却されることになる。したがって、確認説に立つ限り、意
匠法一〇条一項の「のみ」は、本意匠の出願時点を基準にして前記のように解釈す
べきであり、類似意匠は、本意匠の類似範囲を確認する資料にすぎないから、本意
匠の出願前に存在した公知意匠や先願意匠に類似するものであってはならないが、
本意匠の出願後類似意匠の出願前に発売された商品の意匠によって無効とされるべ
きいわれはない。
 被告は、乙第三六号証(石鹸日用品新報・平成四年一一月一四日発行第四〇六五
号の記事)に基づき、原告は、故意に被告意匠に酷似する意匠を意匠登録出願した
事実は明らかであり、右意匠登録出願の時点で被告商品は既に市場で販売されてい
たから、この事実からしても、本件類似意匠の意匠登録出願は公知意匠(被告意
匠)に酷似する意匠の冒認出願として無効とされるべきものである旨主張する。し
かしながら、意匠法上、意匠権の効力については、「意匠権者は、業として登録意
匠及びこれに類似する意匠を実施する権利を専有する。」(同法二三条本文)と規
定され、類似範囲を含めて単一の創作、単一の意匠、単一の権利として観念されて
おり、そうであるからこそ、類似意匠の意匠登録がされた時点で、類似意匠の意匠
権は本意匠の意匠権と合体する旨規定されているのである(同法二二条)。したが
って、類似意匠の意匠権が本意匠の意匠権と合体した時点で、類似意匠の意匠登録
を受ける権利も本意匠の意匠登録を受ける権利と合体したとみるのが論理上当然の
ことであって、本件類似意匠が本件登録意匠(本意匠)に類似するものとして登録
された以上、本件類似意匠は、本件登録意匠の創作と同一性を有するものとされた
わけであるから、本件類似意匠の意匠登録出願が被告意匠の冒認出願となるはずは
ない。被告意匠を使用すること自体が本件登録意匠に類似する意匠を原告に無断で
実施する違法な行為であって、被告主張の公知事実(あるいは先願)の存在に新規
性阻却事由としての地位(あるいは先願としての地位)を認めるべきものではな
い。
(公知意匠について)
 被告は、本件登録意匠の出願前公知意匠として、乙第一号証ないし第九号証、第
一三号証、第一九号証及び第二〇号証を提出援用し、それらの公知意匠との関係
で、本件登録意匠の創作性の程度は相対的に低いものと評価すべきであって、本件
登録意匠の要部は、被告主張の①ないし⑥の各点が一体となった本件登録意匠の具
体的全体形状にある旨主張する。しかしながら、右主張は失当である。その詳細は
次のとおりである。
(1) 意匠登録第六七六一七八号意匠公報(乙第一号証)及び第六七六二〇九号
意匠公報(乙第二号証)に記載の脱臭剤容器の意匠の基本的形態は円柱体、意匠登
録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器の意匠の基
本的形態は平面視隅丸正方形の角柱体、意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第
四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容器の意匠の基本的形態は平面視三角おにぎり形
の柱体、意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器
の意匠の基本的形態は底部が開口する横長の扁平直方体の底部開口部に底板を嵌着
したにすぎないものであって、いずれもその基本的形態において本件登録意匠と顕
著に相違するものであり、本件登録意匠がそれらに類似しないことは一見して明白
である。さらに、被告提出援用の乙第六号証ないし第九号証の各意匠公報に記載の
各意匠は、いずれも本件登録意匠の先願意匠ではあるけれども公知意匠ではなく、
右乙号各証記載の意匠に係る物品は、全て「ノンスメル」のような活性炭等の吸着
剤によって臭い成分を吸着するタイプの脱臭剤用の容器であり、このような吸着タ
イプの脱臭剤用容器は、粒状の活性炭等を紙や不織布等の袋に入れた吸着剤をプラ
スチック製の容器本体内に封入する構造、すなわち、袋と容器の二重構造となって
おり、冷蔵庫内の空気と容器内の活性炭との接触性を高めるために、空気の流通孔
を多くしておかないと脱臭効果は望めないものであり、容器本体の上面、正・背
面、左右両側面、すなわち底面を除く容器の全周面に多数の櫛の歯状のスリット
(透孔)が穿設されているところにその特徴がある。したがって、それらの意匠が
本件登録意匠と共通する点は、単に蓋部に櫛の歯状の透孔を有するという部分的、
抽象的な点にすぎず、両者は基本的構成態様を全く異にしている。したがって、右
被告主張の先願例は、本件登録意匠の権利範囲を解釈する上では何の参考にもなら
ない。
(2)被告は、乙第一三号証(国立国会図書館昭和五七年一二月一七日受入の「モ
ーターファン」第三七巻第二号〔昭和五八年一月臨時増刊号〕)、乙第一九号証
(「JohnsonジャーナルNo.349」・一九八一年四月三〇日号二八頁)
及び乙第二〇号証(乙第一九号証の掲載写真のネガに基づき改めて現像焼き付けし
直した写真)に掲載のジョンソン株式会社発売の自動車用液体消臭芳香剤「グレー
ド カーフレッシュ」容器の意匠を公知意匠例として挙示し、右容器の意匠は、A
 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器で
あること、B その形状は、縦薄型の隅丸直方体であること、C 蓋の上辺側壁に
は櫛の歯状の透孔が穿設されていること、という原告主張の本件登録意匠の要部の
構成を全部具備しているから、右AないしCの構成は本件登録意匠の要部とはいえ
ない旨主張する。確かに、右「グレード カーフレッシュ」容器は、液状芳香剤が
収納される容器本体と蓋とからなり、容器本体は、横幅対奥行対高さの比率が約四
対三対二の割合の隅丸直方体形状(但し、前後両側面は若干曲面をなしているが、
概ね直方体形状と称してよい。)の上部に徐々に搾まるテーパー面と円筒状の口金
部とからなるインク壜形状であり、蓋は、容器本体の口金部に螺子止めされる中壜
と、その中壜にさらに被せられる外壜とからなり、外壜は、容器本体よりも大きな
直方体形状で左右両側肩部に大きなアールが付されており、頂面から前後左右の各
側面にわたって多数の櫛の歯状のスリット(蒸散孔)が開設されているが、頂面の
フラット部におけるスリットは透孔ではなく凹みにすぎず、アール面から以下が透
孔となっている。そして、外蓋が被せられた全体形状が若干縦長で奥行が横幅の約
三分の二もある安定感のある隅丸直方体形状の容器である。そして、全体形状が隅
丸直方体形状の載置型であり、かつ、容器本体に蓋が被せられた基本的形状を有す
る点において、右「グレード カーフレッシュ」容器の意匠は、前掲乙第一号証な
いし第九号証の各意匠公報記載の意匠とは異なり、本件登録意匠の基本的形態に近
い形態を備えているから、本件登録意匠の権利範囲を解釈するうえで参酌に値する
唯一の意匠ということができる。しかしながら、この「グレード カーフレッシ
ュ」容器の意匠の基本的形態は、左記の点で本件登録意匠の基本的形態とは大きく
相違している。すなわち、
(イ) 別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真(検甲第一号証)と
その登録意匠である意匠登録第六〇八五〇一号意匠公報(甲第三〇号証)に示され
ているとおり、「グレード カーフレッシュ」容器の基本的形態は、奥行が横幅の
約三分の二もある、ずんぐりむっくり型の隅丸直方体であって(その名が示すとお
り、自動車のダッシュボード上に載置して車内の消臭芳香を目的とする商品に使用
される容器であるから、走行中の振動によっても倒れることのないように十分な奥
行寸法をとっている。)、冷蔵庫内の棚の側壁に沿って立てかけて使用される、本
件登録意匠に係る物品である冷蔵庫用脱臭剤容器の基本的形態である「平面視にお
いて隅角部に大きなアールが付された横長の扁平な直方体」形状とは顕著な差異が
ある。
(ロ) 本件意匠登録出願願書添付図面代用写真を見れば本件登録意匠の容器本体
が透明体であることは容易に分る。これに対し、「グレード カーフレッシュ」容
器は本体も蓋も不透明体であって(別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物
の写真〔検甲第一号証〕を見ると、濃緑色に着色されていて、内容物として薬液が
入っていることはよく見れば分るが、その薬液の色までは判別できないので、不透
明体と言っても過言ではなかろう。)、本件登録意匠のように、透明体の本体に不
透明体の蓋を被着したものではない。
(ハ)蓋に穿設された櫛の歯状の透孔も、本件登録意匠では、蓋の頂面から正・背
面の中央部にかけてスリット状の透孔が穿設されているが、「グレード カーフレ
ッシュ」容器の意匠では、別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真
〔検甲第一号証〕及び意匠登録第六〇八五〇一号意匠公報〔甲第三〇号証〕のAー
A断面図に示されるように、頂面のフラット部では透孔ではなくて凹みとなってお
り、頂面と正・背面とのコーナー部から下が透孔となっている点で本件登録意匠と
は差異がある。また、本件登録意匠では、平面視において櫛の歯状のスリット(透
孔)が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映るの
に対し、「グレード カーフレッシュ」容器の意匠では、中央部の大きな長方形状
の残余部と四隅のアール部における小さな四つの残余部として看者の目に映り、蓋
部の頂面の形状が看者に与える印象が大きく相違している。
(要部についての結論)
 以上を総合考慮すると、被告が本件登録意匠の出願前公知意匠として主張するも
ののうち、本件登録意匠の構成に近い構成態様を含み、本件登録意匠の要部を画す
る上で参酌に値する意匠は、乙第一三号証、第一九号証及び第二〇号証に記載のジ
ョンソン株式会社販売の消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠(そ
の正確な意匠態様は別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真〔検甲第
一号証〕とその登録意匠である意匠登録第六〇八五〇一号意匠公報〔甲第三〇号
証〕に示すとおりである。)のみであり、他は全て参酌に値しない。右「グレード
 カーフレッシュ」容器の意匠と本件登録意匠を対比すると、先行意匠にはない本
件登録意匠独自の創作のポイントであり、かつ、本件登録意匠と本件類似意匠のい
ずれにも共通する形状の特徴である、本件登録意匠の要部は、A 透明体を本体と
し、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、B そ
の基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直
方体形状であること、C 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリッ
ト)が穿設されており、平面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されて
いる部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映る構成を採った点にあ
るものといわなければならない。
(三) 被告意匠と本件登録意匠の類否
 そこで、本件登録意匠の右要部AないしCについて、被告意匠と本件登録意匠を
全体として対比観察すると、被告意匠は、右本件登録意匠の要部の特徴を悉く備え
るとともに、前記したとおり、被告主張の両意匠の差異は本件登録意匠と本件類似
意匠との間にもほぼ同程度の差異が存するのであるから、それらの差異は本件登録
意匠の要部に関する差異とはいえず、被告意匠が本件登録意匠に類似することは明
らかである。
2 被告主張
(一) 本件登録意匠の構成
本件登録意匠の構成は次のとおり分説するのが相当である。
(1) 基本的構成態様
 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体(頂面、底
面、蓋部正・背面、蓋部左右側面、本体正・背面、本体左右側面)である。その上
部は横長な隅丸四角錘体の底面を開口部とした蓋部を形成し、下部は隅丸逆四角錘
体の頂面を開口部とした本体を形成し、当該蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成
している。
(2) 具体的構成態様
 蓋部を本体に被着させて一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅
(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・二一二
対〇・四三九で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体(蓋部が被着され外部から見え
なくなる部分は除く。以下同じ。)の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、
ほぼ一対〇・六〇対〇・三九三であり、蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍
であって、蓋部及び本体の具体的形状は左記のとおりである。
① 蓋部の具体的形状
a 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さ
を一とした場合、ほぼ一対一・九〇〇対二・〇〇とし、頂辺と底辺とは、直線で互
いに平行している台形である。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。台
形下方部分は、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている。蓋部の高さと帯体
の高さの比率は、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四二五である。この帯
体の内側に本体の口縁上部を嵌め込ませて蓋部と本体を一体に形成している。台形
上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状
の透孔を縦に二二個並列させてあけてある。台形上方部分の長手方向幅と透孔が配
列された部分の比率は、台形上方部分の長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・
八一二五である。
b 蓋部平面の形状は、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形
である。その横幅(長手方向)と奥行の比率は、横幅を一とした場合、ほぼ一対
〇・三六七であり、左右両端と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の
上・下辺(平面図に即して上・下をいう。したがって、下は正面側、上は背面側と
なる。以下同じ。)から横長帯体まで、上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並
列させてあけてある。横幅と透孔が配列された部分の幅(長手方向)の比率は、横
幅を一とした場合、ほぼ一対〇・八一二五である。
c 蓋部左右両側面の形状は、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高
さを一とした場合、ほぼ一対〇・六〇〇対〇・七二五とし、頂辺と底辺とは、直線
で互いに平行している台形である。その頂辺左右両端は小さい隅丸となっている。
台形下方部分は、正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている。
台形上方部分は、ごく僅か内方へ傾く滑らかな傾斜面である。
2 本体の具体的形状
a 本体の正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅
(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対二・九二対二・
八八四とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している逆台形であり、その底辺
左右両端は小さい隅丸となっている。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、ご
く僅か外側へ突出したごく細い筋を廻らしている。筋の高さは、本体の高さのほぼ
二六分の一である。
b 本体左・右側面の形状は、本体の高さ、頂辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅
(台形の頂辺幅)の比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・九六一対
〇・九二三とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している逆台形である。その
底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左・右側面は、ごく僅か外方へ傾
く滑らかな前傾斜面である。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)は、正・背面と同
様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高
さのほぼ二六分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
c 本体底面の形状は、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形
で、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。
頂辺外周縁の横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほ
ぼ二・九四二対〇・九六一対一である。本体底面中央には細長い矩形が表れてい
る。
d 本体は一色無模様である。
(二) 本件登録意匠の要部
 公知意匠にない新規な部分であって、かつ見る者の注意を強く惹く部分にこそ当
該意匠の要部ないし特徴があるものといわねばならない。したがって、意匠の要部
ないし特徴がどこにあるかをみる場合、まず、当該意匠をその意匠登録出願前の公
知意匠と対比して考察する必要がある。また、以上のことは、当該意匠と先願意匠
との関係についても同様にいうことができる。何故ならば、先願意匠があるにもか
かわらず当該意匠が意匠登録されたということは、当該意匠が先願意匠と同一又は
類似しないものと特許庁審査官によって認定判断されたことを示すものにほかなら
ないからである。そこで、以下では本件登録意匠とその意匠登録出願前に存在した
公知意匠及び先願意匠とを対比しつつ、本件登録意匠の要部が(一)で述べた本件
登録意匠の構成のどこにあるかを検討する。
(公知意匠及び先願意匠)
(1) 公知意匠
 本件登録意匠の出願当時、次の公知意匠が存在していた。
① 意匠登録第六七六一七八号意匠公報(乙第一号証)及び同第六七六二〇九号意
匠公報(乙第二号証)に記載の脱臭剤容器の意匠
 右各意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 全体が円柱体であり、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 蓋部下方部分全体を帯状に残し、
(ニ) 正・背面は、左右両端面も残し、
(ホ) その間に頂面から帯状上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に八個又は一二個並列
させてあけてある、
(ヘ) 脱臭剤容器。
② 意匠登録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器
の意匠
 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 全体が角柱体で、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成し、
(ニ) 本体上方部分にごく僅か外側へ膨出した帯体が廻らされ、
(ホ) 正面には左右両端を少し幅広に残し、
(ヘ) その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけ
てある、
(ト) 脱臭剤放散用容器。
③ 意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容
器の意匠
 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 全体が隅丸三角柱体で、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成し、
(ニ) 左右側面には頂面から蓋部下方部分まで櫛の歯状の透孔を縦に五個並列さ
せてあけてある、
(ホ) 冷蔵庫用脱臭剤容器。
④ 意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器の意

 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 隅丸の横長扁平で、底部に向かってやや広がっている直方体で、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 正面には頂面から中央部分まで櫛の歯状の透孔を縦に三一個並列させてあ
けてある、
(ニ)防臭剤用容器。
⑤ 乙第一三号証(国立国会図書館昭和五七年一二月一七日受入「モーターファ
ン」第三七巻第二号〔昭和五八年一月臨時増刊号〕一一八頁)、同第一九号証
〔「JohnsonジャーナルNo.349」一九八一年四月三〇日号)及び同第
二〇号証(乙第一九号証の掲載写真のネガに基づき再度現像焼き付けをし直した写
真)に示されたジョンソン株式会社が昭和五六年四月二五日に発売した自動車用液
体消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠
 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 平面視において隅角部に大きなアールが付された、
(ロ) 縦薄型の隅丸直方体であり、
(ハ) 透明体の本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であ
り、
(ニ) その形状は、正面視した場合、縦(高さ)と横(長辺)と奥行(短辺)の
比率が、縦(高さ)を一とした場合、ほぼ一対〇・八五対〇・六四であり、
(ホ) 蓋の正・背面には上端から中央部分まで櫛の歯状の透孔(スリット)を縦
に七個並列させ、その左右両側面には頂面から中央部分まで櫛の歯状の透孔を縦に
七個並列させてあけてある、
(ヘ) 自動車用液体消臭芳香剤容器。
 右「グレード カーフレッシュ」容器の意匠の構成と本件登録意匠の構成を、原
告主張の本件登録意匠の要部について比較すると、両意匠は、A 透明体を本体と
し、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であり、B その形
状は縦薄型の隅丸直方体であり、C 蓋の上辺の側壁には櫛の歯状の透孔が穿設さ
れている点において共通している。また、「グレード カーフレッシュ」容器の場
合、正面視における縦(高さ)、横(長辺)及び奥行(短辺)の比率は正確には不
明であるけれども、本件登録意匠のそれと大差ないことは別添「グレード カーフ
レッシュ」容器の実物の写真(検甲第一号証)からも一見して明白である。
(2) 先願意匠
 本件登録意匠の出願当時、次の先願意匠が存在していた。
① 意匠登録第七一四四一三号意匠公報(乙第六号証)に記載の防臭剤用容器の意

② 意匠登録第七一四四一四号意匠公報(乙第七号証)に記載の防臭剤用容器の意

③ 意匠登録第七一四四三七号意匠公報(乙第八号証)に記載の脱臭剤用容器の意

④ 意匠登録第七一四四三八号意匠公報(乙第九号証)に記載の脱臭剤用容器の意

 これら①~④の先願意匠には、蓋部に櫛の歯状の多数のスリットを穿設した意匠
が開示されている。
(要部についての結論)
 そこで、以上の公知意匠や先願意匠と本件登録意匠を対比して検討すると(特に
乙第一号証に記載の脱臭剤容器の公知意匠(意匠権者原告)と本件登録意匠とを比
較すると)、両意匠は、本件登録意匠にあっては、右公知意匠の蓋部分の突起物
(フック)がない点(この種容器において蓋部分に突起物〔フック〕を設けるのは
通常のありふれた構成であり、その点に特別な意匠の要部があるとは考えられな
い。)、右公知意匠では全体の形状が円柱体形状であるのに対し、本件登録意匠に
あっては、全体の形状が頂面と底面が互いに平行している横長の隅丸一〇面体であ
る点、及び、右公知意匠の本体の表面には斑点状の模様があるのに対し、本件登録
意匠の本体は一色無模様である点において差異があるにすぎず、本件登録意匠の創
作性の程度は低いものと評価せざるを得ず、結局、本件登録意匠の特徴は、① 全
体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体であること、②
 蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高いこと、③ 
蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔の個数が各二二個と多
数であること、④ そのように透孔の個数が多数であるため、透孔が占める部分の
横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いこと、⑤ 蓋部頂面左右部分
(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔があけられていないこと、⑥ したがっ
て、蓋部の平面視において、左右両端部分及び中央部分において、櫛の歯状の透孔
が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状となっている点にあり、それ
らの特徴点が一体となった全体形状の具体的構成態様が、意匠の類否判断の要部に
なるものというべきであるが、前記乙第一三号証の「グレード カーフレッシュ」
容器の公知意匠に照し、本件登録意匠の右各特徴点のうち、特に、③(蓋部頂面か
ら正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔の個数)と⑤(蓋部頂面左右部分
〔平面視〕の形状)の二点が看者の注意を惹く要部として重視されるべきである。
(要部に関する原告主張に対する反論)
 原告は、本件登録意匠の要部ないし特徴が次のAないしCの三点、すなわち、A
 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器で
ある点、B その基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された
横長で扁平な直方体形状である点、及び、C 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の
歯状の透孔が穿設されており、平面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設
されている部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映る点にあり、前
記「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠は、本体も蓋も不透明体である点
において、透明体の本体に不透明体の蓋を被着してなる本件登録意匠の右Aの特徴
点を具備していない旨主張する。しかしながら、原告の右主張はいずれも失当であ
る。a まず、本件登録意匠が「透明体を本体」とする旨の原告主張は事実に反す
る。なんとなれば、原告は、本件意匠登録出願願書添付図面代用写真(甲二九)を
見れば本件登録意匠の本体が透明体であることが分かる旨強弁するが、右図面代用
写真を精査しても、本件登録意匠の本体が透明体であることはどこにも示されてお
らず(本体が透明体であれば、右図面代用写真の底面図において、蓋部に設けられ
た櫛の歯状の透孔〔スリット〕が透けて見えているはずであるが、これが見えてい
ないという一事をもってしても本件登録意匠の容器本体が透明体でないことは明白
である。)、かろうじて透光性が若干存在する可能性を認め得るにすぎず、決して
「にごりがなく、すきとおっている」という意味の透明とは見えないからである。
そのうえ、当該意匠に係る物品の全部又は一部が透明であるものとして意匠登録を
受けるためには、その旨を願書に記載しなければならないところ、本件意匠登録出
願願書の意匠に係る物品の説明欄及び添付図面代用写真の意匠の説明欄にも本件登
録意匠の本体が透明である旨の説明は全くないから、本件登録意匠の本体が透明体
であると解する余地はない。すなわち、意匠法六条八項は、当該意匠に係る物品の
全部又は一部が透明であるときは、その旨を願書に記載しなければならない旨規定
しており、これを受けて、同法施行規則一条一項は、願書は、様式第一により作成
しなければならない旨規定し、様式第1の〔備考24〕は、「意匠法第六条第八項
に規定する場合は、『意匠の説明』の欄に同項の規定により記載すべき事項を記載
する。」と規定しているのであるから、本件登録意匠の意匠登録出願について、意
匠の説明の欄に本体を透明体とする旨の記載がない以上、意匠法六条八項の規定に
より記載すべき事項(透明)の記載がないものといわざるを得ない。次に、前記
「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠の本体が不透明体である旨の原告主
張も事実に反する。すなわち、乙第二〇号証に撮影の「グレード カーフレッシ
ュ」容器を見ると、甲第三〇号証(意匠登録第六〇八五〇一号の消臭芳香剤用容器
〔「グレードカーフレシュ」容器〕の意匠公報)に記載のAーA線断面図に示され
るノズルが透けて見えており、右容器が透明体を本体としていることは明らかであ
る。b また、原告が本件登録意匠の基本的形態として主張する「隅角部に大きな
アールが付された」との表現も本件登録意匠の基本的形態を示すものとしては不適
切である。なんとなれば、確かに本件登録意匠の隅角部(平面視)にはアールが付
されているが、それは全体の寸法に比して「大きな」アールとは到底いえず、その
ような小さなアールについては「隅丸」と表現すべきものである。のみならず、
「扁平な直方体形状」との表現も適切ではない。本件登録意匠では中央部が幅広に
なる(台形と逆台形の結合)形状になっているのであるから、被告主張のように、
「横長の隅丸一〇面体」と表現すべきである。c さらに、本件登録意匠は、平面
視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている部分以外の残余部が扁平
なH字形状を呈してはいるが、それは、特に前記「グレード カーフレッシュ」容
器の公知意匠と対比して考えると、平面視左右両端部に櫛の歯状のスリットが穿設
されていない特徴と併せて本件登録意匠の要部となっているものというべきであ
る。したがって、以上の諸事実を総合考慮すると、本件登録意匠も前記「グレード
 カーフレッシュ」容器の公知意匠も、半透明体ないし透明体を本体とし、該本体
にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、その形状が縦薄
型の隅丸直方体であること、及び、蓋の上辺の側壁に櫛の歯状の透孔(スリット)
が穿設されているという構成において何ら差異はない。
 してみれば、原告主張の前記AないしCの本件登録意匠の構成は、前記公知意匠
ないし先願意匠の構成に全て採用されており、本件登録意匠の要部がこれらの構成
にのみ存すると解するときは、本件登録意匠は右公知意匠ないし先願意匠に類似
し、無効事由を有することになるから、そのように解することはできない。
(三) 本件類似意匠について
 本件類似意匠の意匠登録出願日はいずれも平成元年一二月二九日であるが、被告
意匠を使用した被告商品「においパクパク」は同年四月頃から製造販売されていた
のであり、本件類似意匠は被告意匠と類似するものであるから、本件類似意匠の意
匠登録出願は出願前の公知意匠である被告意匠の存在によって新規性のないものと
して本来拒絶されるべきものであり、登録された後は審判により無効とされなけれ
ばならない。したがって、本件意匠権侵害の成否を判断する際には、本件類似意匠
の意匠登録を考慮せずに、あくまでも被告意匠と本件登録意匠(本意匠)だけを対
比観察すべきである。すなわち、乙第三六号証(石鹸日用品新報・平成四年一一月
一四日発行第四〇六五号の記事)によれば、原告は、故意に被告商品の意匠(被告
意匠)に酷似する意匠をデザインして本件類似意匠の意匠登録出願をした事実は明
らかである。右類似意匠登録出願の時点で被告商品は既に市場で販売されていたの
であるから、この事実だけからしても、本件類似意匠の意匠登録出願は出願前の公
知意匠(被告意匠)に酷似する意匠の出願として無効とされるべきである。さら
に、右記事中にもあるように、被告商品のデザインが原告の意匠登録出願中であっ
た原告商品「ニオイのみはり番 #4000」の意匠の意匠権の類似範囲に包摂さ
れるかどうかを確かめるために、それと酷似したデザインのものを類似意匠登録出
願したものであり、そうだとすれば、本件類似意匠の創作者は被告というべきであ
るから、右類似意匠登録出願が冒認出願として無効であることは論を待たない。し
たがって、いずれにしても被告意匠と本件類似意匠を対比観察することによって、
被告意匠と本件登録意匠の類否を判断することは許されない。
(類似意匠に関する原告主張に対する反論)
 原告は、類似意匠は、本意匠の類似範囲を確認する資料にすぎないから、本意匠
の意匠登録出願前に存在した公知意匠や先願意匠に類似するものであってはならな
いが、本意匠の出願後類似意匠の意匠登録出願前に発売された商品の意匠によって
無効とされるべきいわれはない旨主張するが、右主張は理由がない。なんとなれ
ば、類似意匠であっても、その登録要件については意匠法三条の適用があるから、
本意匠の出願後類似意匠の意匠登録出願前に販売された商品の意匠が類似意匠と同
一又は類似のものであれば、右商品の意匠の存在によって当該類似意匠の登録は無
効とされるべきであるからである。
 原告は、確認説に立脚する被告主張と本意匠出願後類似意匠の意匠登録出願前に
存在する先願意匠や公知意匠により類似意匠登録出願を拒絶(登録された後は無効
に)すべきものとする被告主張は明らかに矛盾する旨主張し、その根拠として、本
意匠の意匠登録出願後、類似意匠の意匠登録出願前に存在する先願意匠や公知意匠
によって類似意匠の意匠登録出願を拒絶(登録された後は無効に)すれば、結局は
本意匠の類似範囲を確認することができなくなってしまい、類似意匠登録制度の趣
旨そのものが没却されることになるからである旨主張する。しかしながら、右のよ
うな原告の確認説の理解は皮相にすぎ、類似意匠登録制度の趣旨に関する確認説と
類似意匠の新規性判断基準日を本意匠の出願時点とすることとの間には、原告主張
のような関連性はない。意匠法一〇条一項にいう「自己の登録意匠にのみ類似する
意匠」とは、自己の登録意匠以外のものに類似する場合を全部排除する趣旨であっ
て、自己の登録意匠にも類似するが、同時に他人の登録意匠、他人が公知にした意
匠、及び他人の先願意匠にも類似する意匠は、類似意匠の登録はできないものとい
わなければならない(審査基準一〇ー一〇〇〇)。したがって、これと前提を異に
する原告の右主張は失当である。
 原告は、本件類似意匠の意匠登録出願が被告意匠の冒認出願である旨の被告主張
に対して、原告の本件類似意匠が本件登録意匠(本意匠)に類似するものとして類
似意匠登録された以上、本件類似意匠は、本件登録意匠の創作と同一性を有するも
のと特許庁審査官によって認定判断されたのであるから、被告意匠の冒認出願であ
るはずがない旨主張する。しかしながら、冒認出願であるか否かは事実問題であ
り、特許庁が本件類似意匠の意匠登録をしたからといって、この冒認出願の事実が
消滅することはない。原告が、ことさらに被告意匠と酷似させた意匠を自らの創作
に係る意匠として意匠登録出願をし登録査定を受けたことは、いわば特許庁を欺罔
して意匠登録を受けたというに等しく、そのようにして取得した本件類似意匠と被
告意匠とを対比観察して、本件意匠権侵害の成否を論じることは許されない。
(四) 本件登録意匠と被告意匠の対比
(被告意匠の構成)
 被告意匠の構成は次のとおりである。
【被告容器(1)意匠の構成】
 被告容器(1)意匠の構成は次のとおりである。
(1) 被告容器(1)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(1)の構成態様
① 基本的構成態様
 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体である。そ
の上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とし
た蓋部を形成し、下部は横長な扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成
し、蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成している。
② 具体的な構成態様
 蓋部に本体を嵌め込んで一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅
(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇五対
〇・四六九で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体の高さの比率は、全体の高さを一
とした場合、ほぼ一対〇・四五九対〇・五四一であり、蓋部と本体の具体的形状は
左記のとおりである。
③イ 蓋部の具体的形状
(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋
部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・四〇対二・二八九とし、中央頂辺と底辺と
は、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がっ
た斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧
面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。七面
形の下方部分には、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている。蓋部の高さと
帯体の高さの比率は、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四六七である。蓋
の上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から帯体上辺近くま
でに櫛の歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。七面形の長手方向幅と
透孔が配列された部分の比率は、七面形の長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対
〇・四八である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺を平行する直線とした
横長な小判型で、帯体外周縁のごく僅か内側に蓋部上面外周縁が平行して表われて
いる。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部分を扁平H字状
に残し、その横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下対称に櫛の歯状の透孔
を縦に各一一個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜面は、かまぼこ形で、
頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字状(右側はコの字の鏡
像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから帯体の左右円弧状の縁まで、
左右対称に櫛の歯状の透孔を横に各七個並列させてあけてある。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部
の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・九
六対一・〇四四とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している矩形状(矩形に
極めて近似した台形)に表われている。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となって
いる。矩形状下方部分は、正・背面と同様な、ごく僅か外側へ膨張した帯体を廻ら
している。矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺のごく近
くから帯体上辺近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある。上方
にかまぼこ形斜面の外縁が凹弧に表われている。
ロ 本体の具体的形状
(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ(蓋部に被着されて見えなくなる部分
を除く。以下同じ)、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率
を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・九四三対一・八八七とし、上辺と底
辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状(横長矩形に極めて近似した逆台
形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長矩形状本体の上辺
(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされてい
る。筋の高さは、本体の高さのほぼ二四分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体
の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高
さを一とした場合、ほぼ一対〇・七七三対〇・七一七とし、上辺と底辺とは、直線
で互いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)に表われて
いる。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左右両側面は、ごく僅
か外方へ傾く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、
正・背面と同様なごく僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さ
は、本体の高さのほぼ二四分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっ
ている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判型で、本体頂辺
外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。頂辺外周縁の
横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・九四三
対〇・八一一対一である。
(d) 本体は透明であるが、その正面に別紙被告物件写真(一)の正面図のとお
り模様が付されている。
【被告容器(2)意匠の構成】
被告容器(2)意匠の構成は次のとおりである。
(1) 被告容器(2)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(2)の構成態様
① 基本的構成態様
 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体である。そ
の上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とし
た蓋部を形成し、下部は横長な扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成
し、当該蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成している。
② 具体的構成態様
 蓋部に本体を嵌め込んで一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅
(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇七対
〇・五七で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体の高さの比率は、全体の高さを一と
した場合、ほぼ一対〇・三六対〇・六四であり、各部の具体的形状は左記のとおり
である。
③イ 蓋部の具体的形状
(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋
部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・四八対二・九六とし、中央頂辺と底辺と
は、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がっ
た斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧
面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。蓋の
上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から蓋部中央部近くま
でに櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。七面形の長手方向幅と透孔
が配列された部分の比率は、七面形の長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・三
三である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺を平行する直線とした
横長な小判形である。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部
分をH字状に残し、その横中央部分の上・下辺から蓋部上・下辺(平面視)まで、
上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜
面は、かまぼこ形で、頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字
状(右側はコの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから左右円
弧状の縁まで、左右対称に櫛の歯状の透孔を横に六個並列させてあけてある。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部
の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・六
三対一・七四とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している矩形状(矩形に極
めて近似した台形)に表われている。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となってい
る。矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺近くから蓋部中
央部近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。上方にかまぼこ
形斜面の外縁が凹弧に表われている。
ロ 本体の具体的形状
(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅
(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・五六対一・
五二とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状(横長矩形に極
めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長
矩形状本体の上辺(蓋部の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が
廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二四分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体
の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高
さを一とした場合、ほぼ一対〇・八一対〇・七七とし、上辺と底辺とは、直線で互
いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)に表われてい
る。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左・右両側面は、ごく僅
か外方へ傾く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部の下辺の下)は、正・背面
と同様なごく僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体
の高さのほぼ二四分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判形で、本体頂辺
外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。頂辺外周縁の
横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・五六対
〇・七九対一である。
(d) 本体は透明であるが、その正面に別紙被告物件写真(二)の正面図のとお
り模様が付されている。
(被告意匠と本件登録意匠の相違点)
【被告容器(1)意匠について】
 本件登録意匠と被告容器(1)意匠は、本件登録意匠の要部である前記①ないし
⑤の具体的構成態様に関して次のとおり差異がある。すなわち、
Ⅰ ①の全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体であ
る点について
 被告容器(1)は、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平
小判型柱体で、その上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り
欠き、台形状とした蓋部を形成しており、蓋部上面中央の頂面のみを底面と平行す
るにすぎず、その頂面の左右が斜面を形成していること、及び、蓋部及び本体の両
端部は半円柱状の曲面により構成されていることから、本件登録意匠の特徴①を備
えていない。
Ⅱ ②の蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高い点に
ついて
 被告容器(1)は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・八五倍で、蓋部の高さは
大変に低いことから、本件登録意匠の特徴②を備えていない。
Ⅲ ③の蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔が各二二個と
多数である点について
 被告容器(1)は、蓋部の上方部分に縦にあけられた透孔は各一一個で数が本件
登録意匠に比べ少ないことから、本件登録意匠の特徴③を備えていない。
Ⅳ ④の透孔が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の
残った部分の幅が狭い点について
 被告容器(1)は、透孔が少なく、蓋部左右に残った部分の幅が大変広いことか
ら、本件登録意匠の特徴④を備えていない。
Ⅴ ⑤の蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔はあけられてい
ない点について
 被告容器(1)は、蓋部の中央頂面左右両端(平面視)が、対称の幅の広いかま
ぼこ形の斜面で、その斜面には櫛の歯状の透孔が横に七個並列させてあけられてい
ることから、本件登録意匠の特徴⑤を備えていない。
【被告容器(2)意匠について】
 本件登録意匠と被告容器(2)意匠は、本件登録意匠の要部である前記①ないし
⑤の具体的構成態様に関して次のとおり差異がある。すなわち、
Ⅰ ①の全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体であ
る点について
 被告容器(2)は、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平
小判型柱体で、その上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り
欠き、台形状とした蓋部を形成しており、蓋部上面中央の頂面のみを底面と平行す
るにすぎず、その頂面の左右が斜面を形成していること、及び、蓋部及び本体の両
端部は半円柱状の曲面により構成されていることから、本件登録意匠の特徴①を備
えていない。
Ⅱ ②の蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高い点に
ついて
 被告容器(2)は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・五六倍で、蓋部の高さは
大変に低いことから、本件登録意匠の特徴②を備えていない。
Ⅲ ③の蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔が各二二個と
多数である点について
 被告容器(2)は、蓋部の上方部分の正・背面に縦にあけられた櫛の歯状の透孔
は各六個で、数が本件登録意匠に比べ少ないことから、本件登録意匠の特徴③を備
えていない。
Ⅳ ④の透孔が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の
残った部分の幅が狭い点について
 被告容器(2)は、透孔の数が少なく、蓋部左右に残った部分の幅が大変広いこ
とから、本件登録意匠の特徴④を備えていない。
Ⅴ ⑤の蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔はあけられてい
ない点について
 被告容器(2)は、蓋部の中央頂面左右両端(平面視)が、対称の幅の広いかま
ぼこ形の斜面で、
その斜面には櫛の歯状の透孔が横に六個並列させてあけられていることから、本件
登録意匠の特徴⑤を備えていない。
【その余の相違点について】
 本件登録意匠の本体と被告容器の本体を対比すると、本件登録意匠にあっては、
本体は一色無模様であるのに対し、被告容器の本体は透明であり、その正面部に別
紙被告物件写真(一)又は(二)のとおり模様が付されており、この模様は特徴的
であって、その点で特に本件登録意匠と相違する。
 なお、被告容器の全体形状が横長な扁平小判型柱体で、両側面が弧面を形成して
いる点及び頂面左右両端の斜面に櫛の歯状の透孔が各七個ないし六個並列されてい
る点は単なる形状の変更ではなく、被告容器を脱臭剤容器として冷蔵庫内に入れて
使用する場合に、脱臭剤容器の周囲又は上に食品などが詰められたとき、脱臭効力
が低下するのを防ぐ作用効果を生じることを意図したものである。すなわち、左右
に物が並んでも左右両側面が弧面を形成しているため、また、蓋部の頂面に物が積
み重なっても、左右両端が斜面であるため、そこに隙間があき、その上、斜面から
両側面にかけて透孔があけられているので、正・背面及び頂面が塞がれても、脱臭
効力を損うことがない。この点は、他の意匠に見られない被告容器の特徴ある態様
であって、被告の創作した意匠である。また、被告容器の正面部に別紙被告物件写
真(一)(二)に撮影の模様が付されている点は大変に特徴的であり、視覚的印象
は本件登録意匠のそれと著しく異なる。
(原告の主張に対する反論)
 原告は、右各相違点について、被告意匠と本件類似意匠を対比し、被告が被告意
匠の特徴として主張するところは、いずれも本件類似意匠の中に表わされている旨
主張するが、右対比自体失当である。被告意匠が本件類似意匠と同一でない以上、
そのような対比は、類似意匠との類否判断とならざるを得ないからである。原告
は、本件訴訟において、被告が本件登録意匠と被告意匠の相違点として主張する点
は、いずれも本件登録意匠と本件類似意匠との間にも存在する相違点であるから、
それらは本件登録意匠の要部に関しない相違点であり、意匠の全体観察上、その比
重は低いものとして評価すべきであると主張しているのであり、被告に対し、あく
までも本件登録意匠の意匠権の侵害を追及しているのであって、本件類似意匠の意
匠権の侵害を追及しているものではない旨主張するが、その実質が本件類似意匠の
意匠権の侵害を追及している結果となっていることは前記したところから明らかと
いうべきである。
(類否についての結論)
 本件登録意匠と被告意匠を全体的に観察した場合、両者に若干の共通点はあると
しても、それらは全てこの種物品にありふれた形態であり、本件登録意匠の要部で
ある前記①ないし⑤の特徴点が一体となった全体形状の具体的構成態様に関する両
意匠の相違点は顕著であり、両意匠は、全体として看者に別異な印象を与えるもの
であって、視覚を通じての美感を全く異にするから互いに類似していない。
二 争点2(原告商品の形態がいわゆる商品表示性及び周知性を取得したか)
1 原告主張
(一) 原告商品の形態
 原告が現在までに発売した冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」シリーズ商品の
各形態は次のとおりである。
(1) 昭和五七年一〇月発売の、容器外形が別紙原告商品写真(一)の容器を使
用し、右容器に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱
臭剤を充填した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」(検甲第二号証)
 右商品の形態は、縦に細長い有底円柱体状の透明容器本体内に緑色に着色した、
悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填し、その本体にかぶせ
蓋式の白色不透明で頂面から前後両側面にかけて櫛の歯状の透孔を多数穿設し、か
つ、フックを突設した蓋を被着せしめてあり、販売時は、緑色の容器本体に白色で
多数の櫛の歯状の透孔を有する蓋がかぶせられているように見え、使用中に本体内
の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得るものであ
る。
(2) 昭和五八年九月発売の、容器外形が別紙原告商品写真(二)の容器を使用
し、右容器に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭
剤を充填した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 ビック」(検甲第三
号証)
 右商品の形態は、(1)の商品と比べ、縦寸法が小さく(約一〇分の九)、直径
が大きい太い円柱体(約一・六倍)であるだけで、他は(1)の商品と同一であ
る。
(3) 昭和六一年三月発売の、別紙原告商品写真(四)の容器を使用し、右容器
に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填し
た載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 野菜室用」(検甲第四号証)
 右商品の形態は、(1)の商品と比べ、縦寸法が小さく(約一〇分の六)、直径
が大きく(約一・二四倍)、かつ、蓋の上面が球面を呈し、フックを有しないだけ
で、他は(1)の商品と同一である。
(4) 昭和六二年二月発売の、別紙原告商品写真(三)の容器を使用し、右容器
に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填し
た、載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 #4000」(検甲第五号証)
 右商品の形態は、蓋にフックがなく、容器本体も蓋も隅角部に大きなアールが付
された横長の扁平な直方体であるが、他は(1)の商品と同一である。
(二) 「ニオイのみはり番」シリーズ商品の形態の特徴、及びその商品表示性及
び周知性の取得
 「ニオイのみはり番」シリーズ商品には、(一)で述べたとおり、細長い円柱
体、太い円柱体、横長の扁平な直方体というように、種々の容器のものがあった
が、いずれも、商品の形態において次の四つの特徴点すなわち、① 内部に収容さ
れた脱臭剤の着色が外部から透けて見える透明体を本体とし、該本体にかぶせ蓋式
の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用いていること、② 蓋の頂面から側面に
かけて櫛の歯状の透孔を多数穿設していること、③ 透明な容器本体内に緑色に着
色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白
色で多数の櫛の歯状透孔を有する蓋がかぶせられているように見えること、④ 使
用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確
認し得ることの四つの特徴点を全て備えている。
 そして、原告は、この「ニオイのみはり番」シリーズ商品の発売開始以来、その
宣伝広告活動を精力的に展開し、特に全国的に放映したスポットテレビCMの広告
投下量は、近畿地方で六六〇〇GRP、関東地方で五八〇〇GRP、中部地方で五
一〇〇GRPに達するなど、広告到達度及び頻度とも一般に周知たらしめるに充分
な量であり、この間に製作したテレビCMフィルムは全部で一七本(製作費約一億
五〇〇〇万円)にものぼり、右テレビCMフィルムの放映費用は約一三億円にも達
している。また、新聞広告については、昭和五七年一〇月から昭和五八年一二月ま
での間に、全国主要新聞の東京、大阪、名古屋及び九州版などの各地区版に、七段
通し又は一〇段通しの大きなスペースを割いた広告を延べ二四回にわたって掲載
し、その掲載費用は総額約一億七〇〇万円にも達し、その他、小さなスペースを割
いた広告をスーパーマーケットやチェーンストア等量販店向けの業界誌及び販促資
料等への広告量もかなりの量に及んでいる。そして、原告は、昭和五八年に社会行
動研究所に委託して「ニオイのみはり番」の認知率について大阪地区で消費者調査
を実施したが、この調査では、① 「ニオイのみはり番」の認知経路はテレビCM
が九二%と圧倒的であり、② 認知率は約半年の間に七二%にも達し、③ コマー
シャルの訴求点である「中身が見えて取り替え時期が分かる」という点は良く理解
され(七一%)、特に「効き目が見える」という言葉に特化してこれを理解してい
る人は全体の四六%にも達しているという結果が出ている。以上のように原告がた
ゆまぬ営業活動及び宣伝広告活動を積み重ねた結果、「ニオイのみはり番」シリー
ズ商品の販売量は、販売個数で総計約四〇〇〇万個、売上高(定価ベース)で約一
六〇億円に達し、昭和六一年から昭和六三年までの三年間の脱臭剤の市場分野にお
ける同シリーズ商品のシェアは、従来の活性炭吸着タイプの「キムコ」及び「ノン
スメル」のそれに迫る二〇%内外にまで上昇し、「活性炭を使うキムコ、ノンスメ
ルの二ブランドがマーケットシェアの大半を占める時期が、’80年始めまで続い
たが、’82年(全国発売は’83年)に積水化学工業が、従来の活性炭ではな
く、薬液剤を使った商品「ニオイのみはり番」を上市、液剤であるため中身の減少
によって取り替えの時期がすぐわかるなど、活性炭タイプの商品の欠点を克服した
点や量販店主体のルート展開などが主婦を中心とした消費層に受け入れられ、キム
コ、ノンスメルと並ぶブランドとなった。」(甲第七五証の一一〇頁「マーケット
シェア」の表及び一〇七頁の記事②項参照)と評されるまでに至った。したがっ
て、前記①ないし④の四つの特徴点の結合が不正競争防止法二条一項一号の「他人
の商品等表示」(改正前の不正競争防止法一条一項一号の「商品ノ容器包装其ノ他
他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」)に該当することは明らかであり、右商品等表示
は、遅くとも被告が被告商品「においパクパク大」の発売を開始した平成元年四月
頃には、日本全国の脱臭剤の取引者・需要者の間において、原告販売の脱臭剤の商
品表示として広く認識されるに至り、その状態は現在も変ってはいない。特に、右
周知性取得の過程で原告が用いた「効き目が見える」というキャッチ・フレーズ
(コピー)は、効果の持続性が一目で分ることを端的に表現するために原告が案出
した独創的なものであり、商品カタログやテレビCM等の中で盛んに活用してこれ
を一般に広く知らしめ、右テレビCMは全日本CM協議会のACC賞も受賞し、
「効き目が見える」のキャッチ・フレーズ(コピー)は、原告商品の特徴を示すも
のとして著名になっている。
(被告主張に対する反論)
(一) 被告は、原告主張の原告商品表示の前記①ないし④の四つの特徴点は、い
ずれも一般的なものであって、特別顕著なものではない旨主張し、その根拠とし
て、① 原告商品の「ニオイのみはり番」シリーズ商品には、細長い円柱体、太い
円柱体、横長で扁平な直方体等種々の容器形状のものが存在すること自体からして
も、右容器形状には格別の特徴ないし独自性がない、② 本体が透明であること
も、蓋が白色であることも極めて一般的な形態である、③ 蓋の頂面から側面にか
けて櫛の歯状のスリットが多数穿設されていることは、この種の脱臭剤容器にあっ
ては、機能的な面から当然設けられるべき必須の構成であり、原告主張の右各特徴
点は、乙第三号証ないし第九号証掲載の意匠においても採用されている一般的な構
成であり、他人の商品と区別されるような特別顕著なものではない旨主張する。し
かしながら、①の原告容器の形状については、被告主張のように原告商品の中にも
種々の容器形状の異なる商品があり、それ単独では原告商品の特徴とはいえず、ま
た、②及び③の「透明容器」「白色の蓋」「蓋に穿設された櫛の歯状のスリット」
などの構成を個々別々に分離して取り上げれば、それらは原告商品の商品表示とは
いえないかもしれないが、①「透明容器と白色の大きな蓋」②「蓋に穿設された櫛
の歯状の透孔」③「透明容器内の緑色のゲル状タイプの脱臭剤が外部から看取さ
れ、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状の透孔を有する蓋がかぶせ
られているように見えること」④「使用中に本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し
少なくなっていくのが外部から確認し得ること」の四つの特徴を全部備えた原告商
品の形態は、原告商品と自他商品を識別する上で顕著な機能を果たしているもので
あり、原告商品の容器形状に種々のものが存在するとしても、全ての商品が右の四
つの特徴点を具備していることから、一度原告商品を購入した需要者は、右の四つ
の特徴点を具備している限り、その商品を原告商品と同種の商品として認識し、安
心して購入する動機付けとなることには疑いをいれる余地がない。したがって、被
告の右主張は失当というべきである。
(二) 被告は、透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤が充填
されているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状の透孔を有す
るように見え、使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなってい
くのが見えるという原告商品の商品形態の特徴は、換言すれば「外部から充填され
ていた脱臭剤が徐々に減少することが見える」という商品コンセプトを示すものに
すぎず、そもそも透光性があるか又は透明な容器であれば、その中身が外部から見
えるのは当然であり、そこに何らかの意味があるとすれば、冷蔵庫用脱臭剤におい
て、使用中に脱臭剤が揮発し、外部からその減り具合が見えるということにあると
考えられるが、原告が原告商品「ニオイのみはり番」の発売を開始した昭和五七年
一〇月よりはるか以前に商品名「ホワイト」なる冷蔵庫用消臭剤が既に発売されて
おり、右商品は、原告主張の使用中に緑色に着色されたゲル状タイプの脱臭剤が揮
発し、透明な容器本体の外部からその減り具合が見えるという特徴を有していた旨
主張し、乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケ
ティング要覧」No.3)中の、「……類似品は既に’80年に家庭用品メーカー
のファストリビング社から「ホワイト」というブランドが発売されている。」との
記載を援用する。しかしながら、株式会社富士経済が逐年発行している、この「ト
イレタリーグッヅマーケティング要覧」中の「ホワイト」に関する記事はこれだけ
であり、その前後の同要覧には一切記載がみられない。また、右乙第二六号証の三
七頁の「マーケットシェア」の項及び同三八頁の「ブランドシェア」の項(甲第七
四号証)には、「ホワイト」のシェアに関する記述は全くない。さらに、被告指摘
の「ホワイト」に関する広告も昭和五五年中に発行された雑誌「ミセス」に掲載さ
れたもののみであり、その後の宣伝広告活動や販売状況を示す証拠資料は一切な
い。したがって、以上の事実からすると、「ホワイト」は、極めて短期間に市場か
ら消え、その販売数量も市場調査のシェア欄では取り上げられない程の微々たるも
のであったことは明らかである。のみならず、「ホワイト」の容器形状は、メンソ
レータムのような単純な円柱形状の瓶に白色の蓋をかぶせただけの何の変哲もない
ものであり、前記原告商品の四つの特徴点を具備するものではなく、それが日本国
内において広く認識されたものとは到底いうことができない。前記原告商品の四つ
の特徴点は、原告が莫大な宣伝広告費を投下するなどたゆまぬ営業努力の結果獲得
したものであり、仮に「ホワイト」の容器形状が原告容器形状に類似するとして
も、それは単に販売者のファーストリビング社が不正競争防止法二条一項四号にい
う「善意の類似表示の使用者」に該当するだけのことであって、原告商品形態の商
品表示性に影響を及ぼすものではない。
 なお、被告提出の乙第二六号証ないし第三一号証には、却って原告商品の特異
性、話題性及び著名性を裏付ける左記の記載があるので、原告は、それらを原告商
品形態の商品表示性及び周知性取得に関する立証資料として有利に援用する。
(1) 乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケ
ティング要覧」No.3三四頁)の、「(アメリカンドラッグコーポレーションと
白元の)二社によってほぼ独占されてきたような脱臭剤市場であるが、’82年末
には積水化学から「ニオイのみはり番」という新製品が発売され、’83年中には
一〇%近いシェアを獲得するのではないかと業界の注目を集めている。「キム
コ」、「ノンスメル」が活性炭製品であるのに対し、「ニオイの見張り番」は緑色
の薬液剤である点で根本的に違っている。液剤がなくなっていくことにより、効果
が目に見え、商品のエンドポイントがはっきりわかることをメインに訴求している
もので……よって、’83年以降の市場については、このニュータイプ脱臭剤がど
の程度市場で受け入れられるかに最大のポイントが置かれている。強力二社の独占
市場に第三者が入り込めることになれば、脱臭剤市場は新しい時代を迎えることに
なる。」との記載。
(2) 乙第二七号証(同「’86トイレタリーグッヅマーケティング要覧」N
o.2一二二頁)の、「脱臭剤市場は、積水化学の参入によって市場は大きく変動
しており、アメリカンドラッグコーポレーション、白元の上位二社による寡占化か
らシェア分散型市場となっている。……積水化学は、ニオイの見張り番によってシ
ェア第三位に進出を果したのみならず、八五年以降は、二位、一位をターゲットと
して狙えるポジションを確立させた。
ニオイの見張り番の成功は、使用期間がゲル状の薬液剤を起用したことで、視覚で
判断できることがあげられ、従来の活性炭製品にないコンセプトによって消費者の
支持を得るに至った。」との記載。
(3) 乙第二九号証(同「’91トイレタリーグッヅマーケティング要覧」N
o.3六〇頁~六一頁)の、「積水化学工業は、関西圏の地場で強力な勢力をもっ
ており、三位メーカーの地位を確保している。……においの見張り番は、安定した
推移をたどっており、’90年で九億円程度となっている。」との記載。
(4) 乙第三〇号証(株式会社矢野経済研究所発行「芳香消臭・脱臭産業白書’
89」四四頁)の、「一九八三年に取り替え時を示唆したにおいの見張り番で冷蔵
庫用脱臭剤市場に新風を吹き込んだ積水化学工業は、脱臭効果に加え酸化防止剤を
混入した脱臭剤を上市。大型化や部位別(冷凍庫、野菜室など)の用途展開がほぼ
出尽くしたことから機能アップにより、差別化を図っている。」との記載。
(三) 被告は、原告主張の原告商品形態は、「透光性のある本体の外部から中身
が見え、減り具合が分かる」といった程度のものであり、そもそもそれは出所表示
機能を発揮せず、仮に出所表示機能があるとしても、それは極めて低レベルのもの
であるから、強力な出所表示機能を有する商標によってその大半の機能が発揮され
ている以上、全体観察として、「透光性のある本体の外部から中身が見え、減り具
合が分かる」といった程度の原告主張の商品表示機能は否定されるべきである旨主
張する。しかしながら、原告商品は、「透光性のある本体の外部から中身が見え、
減り具合が分かる」点のみではなく、前記①ないし④の特徴を全て具備しているこ
とによって商品表示性を取得しているのであるから、右被告主張はその前提におい
て既に誤っているというべきである。
2 被告主張
 原告は、原告商品の形態、① 内部に収容された脱臭剤の着色が外部から透けて
見える透明体を本体とし、該本体にかぶせ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容
器を用いていること、② 蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)
を多数穿設していること、③ 透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの
脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状透
孔(スリット)を有する蓋がかぶせせられているように見えること、④ 使用中に
容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得
ることの四つの特徴があり、この特徴全てを具備していることが原告商品の商品表
示である旨主張する。
 しかしながら、右原告主張を認めることはできない。すなわち、第一に原告商品
の容器本体は別紙原告商品写真(一)ないし(六)からも明らかなように、いずれ
も透光性はあるものの透明ではなく、乳白色の不透明なものである。特に、別紙原
告商品写真(六)の原告商品は、本体が乳白色の透光性のある部分と白色不透明な
部分とからなり、原告主張の①の特徴を具備していない。第二に別紙原告商品写真
(四)の原告商品の蓋部分は曲面によって構成されており、透孔(スリット)の存
在は認められるものの、それが側壁に穿設されているものとは認められず、それを
櫛の歯状といい得るかも大いに疑問である。さらに、別紙原告商品写真(六)の原
告商品の蓋部分には、側壁に透孔(スリット)が存在しない。
 商品の容器包装が「他人の商品たることを示す表示」であるためには、当該容器
包装が、通常の形と異なる特徴ある形とか包装紙の模様によって他人の商品と区別
されるにいたったような特別顕著なものである必要がある(【A】編著「注解不正
競争防止法」一一七頁)。
 原告は、原告商品「ニオイのみはり番」シリーズ商品の容器形状には、細長い円
柱体、太い円柱体、横長で扁平な直方体等の種々のものが存在する旨主張している
のであるから、右原告主張自体に照らしても、右容器形状には特徴ないし独自性は
ないものといわなければならない。
 原告は、内部に収容された脱臭剤の着色が外部から透けて見える透明体を本体と
し、該本体にかぶせ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用いていることが
原告商品の特徴である旨主張する。しかしながら、原告商品の容器本体は、前記し
たようにいずれも透明ではなく、透光性はあるものの、乳白色の不透明なものであ
る。また、その点を暫く措くとしても、原告主張は、換言すれば「本体が透明で
(透光性がある)蓋が白色である容器」をいうにすぎないが、本体が透明であるこ
とも、蓋が白色であることも極めて一般的に使用されている構成であり、そのよう
な構成を採用した容器に様々なものがあることも多言を要しない。
 原告は、蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)を多数穿設して
いることが、原告商品の商品表示の特徴である旨主張する。しかしながら、透孔
(スリット)の存在は、この種の脱臭剤容器にあっては機能的な面から当然設けら
れるべき必須の構成とさえいえるのであり、原告主張の特徴は、意匠登録第六七六
三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器、意匠登録第六七七一
七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容器、意匠登録第六七七一
二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器、意匠登録第七一四四一三号
意匠公報(乙第六号証)に記載の防臭剤容器、意匠登録第七一四四一四号意匠公報
(乙第七号証)に記載の防臭剤容器、意匠登録第七一四四三七号意匠公報(乙第八
号証)に記載の脱臭剤用容器及び意匠登録第七一四四三八号意匠公報(乙第九号
証)に記載の脱臭剤用容器の各意匠に共通してみられる構成であり、この種商品の
容器には極めて一般的な構成であって、それは他人の商品と区別されるような特別
顕著なものではない。
 原告は、透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填してい
るため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状スリットを有する蓋が
かぶせられているように見えること及び使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々
に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得ることが原告商品の商品表示の特
徴である旨主張する。しかしながら、右各特徴は、換言すれば要するに「外部から
充填されていた脱臭剤が徐々に減少することが見える」というものにすぎない。こ
れは、単なる商品コンセプト又は商品自体の特性にほかならない。透光性があるか
又は透明な容器であれば、外部から中身が透けて見えるのは当然のことであり、そ
こに何らかの意味を見出すとすれば、冷蔵庫用脱臭剤において、使用中に脱臭剤が
揮発し、外部からその減り具合が見えるということにあるものと考えられる。しか
し、原告が原告商品「ニオイのみはり番」の発売を開始した昭和五七年一〇月より
はるか以前に既に商品名「ホワイト」なる冷蔵庫用消臭剤が発売されており、右商
品は、原告主張のように使用中に緑色に着色されたゲル状タイプの脱臭剤が揮発
し、透明な容器本体の外部からその減り具合が見えるという特徴を具備していた。
原告は、この「ホワイト」について、昭和五五年のごく一時期、僅かに販売された
にすぎない旨主張するが、乙第二二号証ないし第二五号証に記載されているよう
に、伊勢丹、小田急、京王、西武、そごう、大丸、高島屋、東急、東武、松坂屋、
阪急、阪神、松屋など全国の一流デパートでも販売されていたものであって、ごく
一時期、僅かに販売されていたものにすぎないなどとは到底いえない。また、脱臭
剤と産業上の利用分野が類似する商品である自動車用液体消臭芳香剤については、
例えば、ジョンソン株式会社製の「グレード カーフレッシュ」は、透明体を容器
本体としているため、芳香剤が揮発し外部からその減り具合が見えるものであり、
そのような商品コンセプトに基づく商品が他にも種々数限りなく存在することは公
知の事実というべきである。そもそも商品コンセプトや商品の特性それ自体は、商
品等表示とはなり得ない。すなわち、商品コンセプトは、商品の特性それ自体であ
って、これを商品等表示として認め、同様の商品コンセプトを有する商品の販売等
を不正競争行為として差止めることを認めるならば、それは商品自体を保護するこ
とに帰着するからである。不正競争防止法二条一項一号は、商品の販売自体を禁じ
る趣旨の規定ではなく、複数の出所が存在することを前提に、その間に誤認混同を
生ぜしめる出所識別表示が付されることを禁じる趣旨の規定である。例えば、仮に
これまでにない新規な機能を持つ製品が開発され、その新規な機能自体(ここでは
商品の形態を除いて考える。)が周知性を獲得した場合であっても、その新規な機
能を独占するためには、特許権その他の工業所有権によらなければならないのであ
って、不正競争防止法は、その新規な機能自体を出所識別表示機能として保護する
ことまで意図していない。したがって、そのような見地からすると、原告主張の原
告商品表示の特徴は、ことごとく特別顕著な商品表示とはいえず、この種商品にお
いてはごく一般的でありふれたものというべきである。
 以上のとおり、原告が原告商品表示の特徴として主張するところは、いずれも特
別変ったものではなく、この種商品の容器としてはごく一般的な態様であり、その
ような構成態様の原告容器が、「他人の商品たることを示す表示」として他人の商
品と区別されるにいたったとすることはできない。仮に何らかの理由により、原告
主張の商品形態の前記特徴の一部に識別力があるとしても、それはごく低レベルの
ものであり、原告商品において、自他識別力を有し、看者に特別の印象を与えるも
のは、原告商品に大きく表示されている「ニオイのみはり番」及び原告の商標であ
る「SEKISUI」である。
三 争点3(被告商品の形態は原告商品の形態に酷似し、かつ、両商品の出所の混
同を生じるか)
1 原告主張
 被告商品は、容器形状において、検甲第二号証ないし第四号証の原告商品(「ニ
オイのみはり番 スーパー」「ニオイのみはり番 スーパービッグ」「ニオイのみ
はり番 野菜室用」)とは異なるものの、検甲第五号証の原告商品(ニオイのみは
り番 #4000)とは酷似し、かつ、原告商品の前記四つの特徴を全て具備して
おり、「効果(中身が減ること)が見えるから、取り替え時期が分かる。」という
原告商品と同一の商品コンセプトを採用した商品であり、しかも「効き目が見え
る」というキャッチ・フレーズ(コピー)を使用して販売している。そのうえ、被
告商品は、実際にスーパーマーケット等の小売店舗の売場の同一コーナーに、甲第
二八号証に撮影のような陳列態様で、種々の容器形状を有する原告商品と隣り合わ
せに並べて販売されているから、需要者は、容器形状や包装形態の差異よりも、蓋
の白色と本体の緑色の組み合わせの特徴点の方がすぐに目につき、被告商品を原告
販売の「ニオイのみはり番」シリーズ商品中の一種類の商品として認識し、その結
果、両商品の出所に混同を生じることは必定である。また、たとえ両商品が別々の
コーナーで陳列され販売されたとしても、同様に出所の誤認混同は避け難く、事実
既にそのような誤認混同事例の発生が報告されている(甲第四号証、第二八号
証)。被告商品の形態が原告商品の形態に類似し、両商品の間に出所の混同を生じ
ることは明らかである。
(被告主張に対する反論)
 被告は、原告が多大の宣伝広告をしたと主張する対象商品は、全体形状が細長い
円柱体形状の「ニオイのみはり番」(検乙第一号証)であるから、被告商品の形態
が原告商品の形態に類似し、両商品の間に出所の混同を生じるか否かは、この円柱
体形状の「ニオイのみはり番」と被告商品とを対比観察して判断すべきである、原
告商品には、「ニオイのみはり番」の商品名及び「SEKISUI」の商標が付さ
れており、原告商品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与える
ものはこれらの商品名及び商標であり、一方、被告商品には、その登録商標である
「においパクパク」の商標(乙第一〇号証)及び関西ペイントグループ各社の共通
商標として著名な「アレスコ(ALESCO)」の商標が付され、かつ、特徴的な
カバの図柄も付されているから、被告商品の全体観察から自他識別力を有し、看者
に特別な印象を与えるものはそれらの商標及び図柄であって、需要者は、それらの
商標及び図柄を基準にして各冷蔵庫用脱臭剤の商品出所を判断するのであり、「充
填されていた脱臭剤が徐々に減少することが外部から見える」といった、冷蔵庫用
脱臭剤の商品特性ないし商品コンセプトによって商品出所を判断するものでないこ
とは明白であるから、原告商品と被告商品との間に商品出所の混同を生じることは
ない旨主張する。しかしながら、商標が自他識別力を有することは当然のことであ
り、被告の主張は、両商品に異なる商標さえ付しておけば、たとえそれらの容器包
装等が外観上酷似していたとしても何等問題を生じないとの主張に帰着せざるを得
ないが、右主張が妥当でないことは種々論じるまでもない。特異な容器、包装及び
商品形態は、市場における使用の継続によって、商標と同様に第二義的に自他商品
の識別力を有するに至る場合がある。したがって、たとえ異別の商標や図柄等の平
面的なデザインが同時に付されていたとしても、容器、包装及び商品形態のいずれ
かによって需要者が商品を選択購入するよすがとする場合が多々存することは、不
正競争防止法二条一項一号(改正前の不正競争防止法一条一項一号)の規定に照ら
し明らかである。一度原告商品を購入した需要者は、被告商品が原告商品の前記四
つの特徴のうち①ないし③を有しておれば、残りの特徴④、すなわち、使用中に容
器本体内の緑色に着色した脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくことが外部から
確認し得るタイプの原告商品であると認識し、スーパーマーケット等の小売店舗の
店頭の同一の陳列棚に前記四つの特徴を有することにおいて共通する原告商品と被
告商品が並べて販売されれば、需要者が被告商品を原告商品の一種と見間違うこと
は明らかである。したがって、被告の右主張は失当といわなければならない。
2 被告主張
 不正競争防止法二条一項一号・三条が適用されるためには他人の商品と混同を生
じさせる必要があるから、商品表示性の有無も当該商品の出所につき取引者・需要
者に誤認混同を生じさせる虞があるか否かによって決すべきである。それには、当
該商品に使用された表示が、その外観、称呼、観念等によって取引者に与える印
象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきものであり、しかも、具体的な取
引状況に基づいて判断すべきものである。したがって、商品に複数の商品等表示が
存在するか否かは、これを全体として観察し、取引者・需要者の注意を特に強く惹
き、これを同一又は類似のものと認識するのが通常であるか否かによって決すべき
である。そのような見地からすると、本件において原告が多大の宣伝広告をした旨
主張する商品は、いずれも全体形状が円柱体形状の「ニオイのみはり番」(検乙第
一号証)である。したがって、被告商品の形態が原告商品の形態に類似し、両商品
の間に出所の混同を生じるか否かは、この円柱体形状の「ニオイのみはり番」と被
告商品を対比観察して判断すべきである。ところが、原告商品には、「ニオイのみ
はり番」の商品名及び著名な「SEKISUI」の商標が付されているから、原告
商品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与えるものはこれらの
商品名・商標である。一方、被告商品には、その登録商標である「においパクパ
ク」及び関西ペイントグループ各社の共通商標として著名な「アレスコ(ALES
CO)」の商標が付され、かつ、特徴的なカバの図柄が付されているから、被告商
品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与えるものはこれらの商
標及び図柄である。特に一般需要者はこれらの商標又は図柄を基準にして各冷蔵庫
用脱臭剤の商品出所を判断するのであって、「充填されていた緑色に着色した脱臭
剤が徐々に減少することが外部から見えること」といった、冷蔵庫用脱臭剤の商品
特性ないし商品コンセプトによって商品出所を判断するものでないことは明白であ
るから、原告商品と被告商品との間に出所の混同は生じないものといわなければな
らない。
(原告主張に対する反論)
 原告は、商標が自他識別力を有することは当然のことであり、被告の主張は、両
者異なる商標さえ付されていれば、たとえ商品の容器包装等が外観上酷似していた
としても何等問題がないとの主張に帰着するが、右主張が妥当でないことは種々論
じるまでもない旨主張する。しかしながら、右原告主張は、「類似性の判断」と
「混同の判断」との混乱に起因するものであり失当である。すなわち、不正競争防
止法二条一項一号の不正競争行為は、他人の商品等表示を用いて商品の出所混同を
惹起する行為であるが、その際まず判断の対象となるのは行為者と他人のそれぞれ
の商品等表示の内容である。つまり、実質的な判断とならざるを得ない混同の要件
の検討に入る前に、形式的・定型的に判断が可能な両商品の商品等表示の類似性の
有無をまず判断して、その段階で類似性の認められない商品等表示は同号の判断対
象から除外し、しかる後に当該商品について取引の実態を踏まえた混同惹起の有無
を判断するのである。したがって、たとえ両商品の商品等表示としての容器包装等
が酷似していたとしても、更に取引の実態を踏まえて判断した結果混同性が否定さ
れる場合のあり得ることは論を待たないから、原告主張は失当である。
四 争点4(原告の出所混同の主張は信義則上許容されないか)
1 被告主張
 仮に原告商品と被告商品の間に商品出所の混同を生じるおそれがあるとしても、
左記の諸事情に照すと、それは原告が自ら招来した結果というべきものであって、
原告が両商品の出所混同を主張することは信義則上許されない。
(一) 原告主張の原告商品形態と類似の先行商品の存在
 乙第二二号証(昭和五五年六月七日発行の雑誌「ミセス」)、乙第二三号証(同
年七月七日発行の同誌)、乙第二四号証(同年八月七日発行の同誌)、乙第二五号
証(同年一二月七日発行の同誌)には、(a) 上が白色、下が透明で内容物であ
る緑色に着色したゲル状タイプの溶剤が透けて見える円筒型容器を使用し、(b)
 右容器本体が透明体であるので、それを透かして内部に充填された緑色に着色し
たゲル状タイプの消臭剤の減り具合が観察できるという機能を有し、(c) 容器
の蓋の上面にはスリットが穿設されていることを特徴とする冷蔵庫用消臭剤(商品
名は「ホワイト」、製造元は株式会社ファーストリビング)が示されており、そこ
には「ホワイト」が当時全国の主要な百貨店等の多数の小売店舗で販売されていた
ことが記載されている。この「ホワイト」の販売時期は、原告が原告商品「ニオイ
のみはり番」の発売を開始した昭和五七年一〇月よりはるか以前であるから、原告
主張の商品形態は、原告商品の発売開始時点でこの種商品の分野において既にごく
一般的でありふれたものとなっていたものといわなければならない。また、乙第二
二号証には、「ホワイト」について、「消臭効果が目でわかります」「緑色の溶剤
がある間は消臭中」「ホワイトは消臭成分が蒸発し、活躍しているのが一目でわか
ります。緑色の溶剤が無くなったらお取り換え下さい」との記載が、乙第二三号証
及び第二四号証には、「緑色の溶剤がある間は消臭中」「ホワイトは消臭効果が外
からひと目でわかります。緑色の溶剤がある間は消臭能力がある証拠ですから安心
してお使いいただけます」との記載が、乙第二五号証には、「特に溶剤が外からひ
と目でご覧いただけます。」「緑色の溶剤がある間は消臭力がある証拠ですから最
後まで安心してお使いいただけます」との記載がある。右各記載に照らせば、原告
主張の「効き目が見える」という原告商品のキャッチ・フレーズも「ホワイト」の
宣伝広告におけるキャッチ・フレーズの二番煎じであることは明らかである。さら
に、乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケティ
ング要覧」No.3三四頁)には、「(原告商品「ニオイのみはり番」の)類似品
は既に’80に家庭用品メーカーのフアストリビング社から『ホワイト』というブ
ランドが発売されている」との記載があり、原告商品の商品形態が「ホワイト」の
それと類似することは明らかであるから、原告は、「ホワイト」の著名性に只乗り
したと評されてもやむを得ない。
(二) 原告製品の市場シェアの推移状況
 一九五八年(昭和三三年)に国内ではじめてアメリカンドラッグコーポレーショ
ンが「キムコ」を発売したのが契機となり、一九六三年(昭和三八年)には白元が
「ノンスメル」を発売することで我が国の冷蔵庫用脱臭剤のマーケットが形成され
た。その後トイレタリーメーカーや製薬メーカーが相次いで参入する中で、一九八
〇年(昭和五五年)に薬液剤を成分とするゲル状タイプ又は液状タイプの商品が市
場に導入されるとともに、後年原告が原告商品を発売したことで更に需要が喚起さ
れた。しかし、先発二社により市場が牽引される状況が変化し難いまま、食品包装
技術の進歩に加え、一九八六年頃よりシャープ等の家電メーカーが脱臭機能付冷蔵
庫を開発発売したことで、冷蔵庫用脱臭剤市場は大きな打撃を受けた。被告が冷蔵
庫用脱臭剤「においパクパク」の販売を開始したのは、その後の一九八九年(平成
元年)のことである。このような市場動向を反映して原告商品の冷蔵庫用脱臭剤の
マーケットシェアも減少を続け、一七%台という低迷期に入ってから被告は新たに
この市場に参入したものであり、原告商品は既に右のように低迷状態に陥っていた
のであるから、被告がそのような原告商品の商品表示に「只乗り」などしてみても
何ら得るところのない状況にあったのである。現に原告商品の市場占有率は被告の
市場参入によってもさほどは変化しなかったのであり、被告は、原告商品に対する
需要を奪取するのではなくして、新規需要を掘り起こし市場規模を全体として拡大
することによって自らの売上を伸ばしていったのであり、その背景には被告商品の
差別化戦略すなわち被告商品の原告商品と比較した場合の品質の優秀性がある。因
みに、被告商品「においパクパク」の脱臭効果は、乙第三三号証(日本食品分析セ
ンター作成の試験報告書)からも明白であり、そこでは、被告商品が他の類似品と
比べアンモニア濃度及び硫化水素濃度とも脱臭力において格段の差異があることが
報告されている。また、乙第三四号証(早稲田大学環境保全センター作成の試験結
果報告書)は、原告商品「ニオイのみはり番ハイパーS(中身)」及び「ニオイの
みはり番ハイパーS(容器)」と被告商品「においパクパク」とを比較試験した結
果を示しているが、それによれば、被告商品「においパクパク」は、悪臭成分であ
るアンモニア濃度及び硫化水素濃度とも人間の臭覚によって覚知し得ない一PPM
以下にまで脱臭できることが示されているのに対し、原告商品「ニオイのみはり番
ハイパーS(中身)」はある程度の脱臭効果はあるものの、臭いは除去されていな
いものであること、「ニオイのみはり番ハイパーS(容器)」は、脱臭効果など無
いことが示されている。このような被告商品の品質の優秀性と共に、被告が積極的
に被告商品の宣伝広告活動及び営業活動を展開し販売努力を重ねた結果、被告商品
はその売上を順調に向上させてきたのであって、被告は原告商品に「只乗り」した
ものではなく、そもそも原告商品は「只乗り」には値しない商品であり、被告商品
の順調な売上向上に便乗しようとしているのはむしろ原告の方であって、その詳細
は次項において述べるとおりである。
(三) 原告が原告商品の商品形態を被告商品に近似させてきた事実
(1) 被告は、平成二年二月に透明な容器本体に緑色に着色したゲル状タイプの
脱臭剤を充填した「においパクパク小」を発売した。この「においパクパク小」
は、容器の蓋部分の頂面から正・背面にかけて赤色のシールを貼付していた(検乙
第九号証、乙第一四号証の5の左側に撮影されている商品)。
(2) ところが、原告は、平成四年春頃から、別紙原告商品写真(五)の「ニオ
イのみはり番 ハイパーS」(検乙第五号証)を発売した。この「ニオイのみはり
番 ハイパーS」は、被告が平成二年二月から発売を開始した(1)の「においパ
クパク小」と比較すると、容器の大きさ、原告主張の「横長の扁平な小判型柱体
(横長の扁平な直方体の左右両側面を円弧面とした形状)」という容器外形及び容
器の蓋部分の頂面から正・背面にかけて貼付した赤色のシールの貼付態様等におい
て、全体的に被告商品を模倣したものと評さざるを得ない形態の商品であった。な
お、右原告販売の「ニオイのみはり番 ハイパーS」の脱臭剤のこの時点での着色
は、彩度の低い暗緑黄色で不透明感を呈するものであった。また、容器本体は、透
光性はあるものの、乳白色の不透明なものであった(検乙第五号証、乙第一四号証
の3の左側に撮影されている商品)。
(3) その後、原告は、脱臭剤の着色を右(2)のものから彩度の低い不透明感
を呈するものではあったが緑色に変更した。しかし、この時点でも容器本体の色は
依然として透光性はあるものの乳白色の不透明なものであった(検乙第六号証、乙
第一四号証の3の右側に撮影されている商品)。
(4) そこで、被告は、原告商品との区別を明確にすることを目的として、被告
商品の包装表示の態様を若干変更し、蓋部分の頂面から正・背面にかけて貼付して
いた赤色のシールの貼付を取り止め、被告商品の容器の蓋部分の下部周縁に赤色の
帯状シールを貼付した商品の販売を開始した(検乙第一〇号証、乙第一四号証の5
の右側に撮影されている商品)。
(5) ところが、原告は、本件訴訟係属後の平成五年の秋頃になって、「ニオイ
のみはり番 ハイパーS」の脱臭剤の着色を、被告商品「においパクパク」の脱臭
剤の着色とほぼ同色の緑色に変更し、更に容器本体も被告商品と同じ透明なものに
変更した(検乙第一六号証、乙第一四号証の12に撮影の容器)。
(6) 以上のように原告は原告商品の形態を逐次被告商品のそれに似せてきたも
のであり、その経過は乙第一四号証の7の写真を見れば一目瞭然である。原告は被
告が原告商品の商品表示を模倣した旨主張するが、以上の事実から明らかなよう
に、原告こそ原告商品の形態を被告商品のそれに似せてきているという意味におい
て大いに問題があるものといわざるを得ない。
2 原告主張
 以下に述べるとおり、右被告主張はいずれも理由がない。
 被告は、① 容器の蓋部分の頂面から正・背面にかけて赤色のシールを貼付した
の被告の方が先で、原告が後からこれを真似た旨、② 原告商品の脱臭剤の色は当
初彩度の低い暗緑黄色で、容器本体も透光性はあるものの乳白色の不透明体であっ
たが、被告商品の発売後に被告商品の着色とほぼ同色の緑色に変更し、容器本体も
被告商品と同様透明なものに変更した旨、③ 原告の右行為こそ原告商品の形態を
被告商品のそれに似せてきているという意味において大いに問題がある旨主張す
る。しかしながら、①の点については、需要者の注意を惹くために、商品ラベルに
赤色等の原色を用いることは一般的に慣用されている常套手段であって、この種商
品に限ったものではない。②の点については、原告は、当初から一貫して通常一般
人をして緑色と認識させる着色を使用しており、被告のように当初は紺色の着色を
使用した商品を発売していながら、途中で原告商品と同じ緑色に変更するというよ
うな極端な変更をしてはいない。原告容器の本体も確かに当初は多少乳白色がかっ
ていたとはいえ、被告の主張するように不透明体ではなく透明体であった。
もし被告主張のように当初は不透明体であったのであれば、外部から脱臭剤薬液の
緑色を看取できないはずであるし、そうであれば「効き目が見える」という原告商
品のキャッチ・フレーズも謳えなかったはずである。原告は、発売当初から緑色に
着色した薬液の減り具合が見えることを需要者の目に訴えることによって、商品の
有効期限を需要者に知らせることに意を用いてきたのである。(甲第三号証~第二
七号証)。
 被告は、平成元年四月の被告商品の販売開始当初は透明の容器本体内に紺色に着
色したゲル状タイプの脱臭剤を充填して発売したが、何故か約一年後の平成二年二
月に至り、右脱臭剤の着色を原告商品と同じ緑色に変更する挙に出たのである。そ
して、客観的にみる限り、このことが取引者・需要者が原告商品群と被告商品群と
を誤認混同する大きな要因となったことは疑いを容れる余地がない。
 なお、被告の被告商品の品質の優秀性に関する主張は、本件の争点に関係のない
ことなので、立ち入った反論を差し控えるが、被告が依拠する試験報告書(乙第三
三号証及び第三四号証)の測定方法が冷蔵庫用脱臭剤の脱臭効果の測定方法として
は適切でないことのみを指摘しておく。
 また、被告は、平成二年一月頃、原告商品を名指しで誹謗するかのごとき文書を
原告の取引先に配付するなど、非常識な販売宣伝活動をしたので、原告は、被告に
対し、公正な取引を阻害するとして警告し、被告も謝罪した事実がある(甲第三一
号証)。
五 争点6(損害賠償金額等)
(原告主張)
 被告は、平成元年四月頃から、別紙被告物件目録(三)記載の冷蔵庫用脱臭剤
「においパクパクジャンボ」(被告商品(1))及び別紙被告物件目録(四)記載
の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク」(被告商品(2))の製造販売を開始し、平
成五年三月までに総計二億七一〇〇万円を販売した。右各商品の利益率はいずれも
三〇%を下らないから、被告がこの間に被告商品の製造販売により得た利益は、次
の算式のとおり八〇〇〇万円を下らず、原告は同額の損害を被った。
 2億7100万円×0.3=8130万円
第四 争点に対する判断
一 争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似するか)
1 本件登録意匠の構成
 本件登録意匠の構成は、概略的には原告主張(第三の一1(一))のようにも分
説することができる(但し、「透明体」を「半透明体」と訂正する。)が、細部ま
でより詳細には被告主張(第三の一2(一))のように分説できる(もっとも、公
報(1)及び願書添付図面代用写真で表わされた本件登録意匠を言語で完全に表現
し尽くすことは不可能に近い。)。
2 被告意匠の構成
 被告意匠の構成は、被告主張(第三の一2(四)【被告容器(1)意匠の構成】
【被告容器(2)意匠の構成】)のように、次のとおり分説するのが相当である
(別紙被告物件目録(一)(二)、但し、各部の寸法比率は検乙第一二号証、第一
七号証の実測結果による数値である。また別紙被告物件写真(一)(二)の正面図
に撮影の模様が被告意匠の構成部分と認められないことは後記認定のとおり。)。
(一) 被告容器(1)意匠の構成
(1) 被告容器(1)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(1)の構成態様
① 基本的構成態様
 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体である。そ
の上部は、扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部
を形成し、下部は扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成し、蓋部を本体
に被着させて一体に形成している。
② 具体的な構成態様
 蓋部を本体に被着させて一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅
(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇九対
〇・四七で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体(蓋部が被着され外部から見えなく
なる部分は除く。以下同じ。)の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ
一対〇・四五対〇・五五であり、蓋部の高さが本件の高さのほぼ〇・八一倍であ
る。蓋部と本体の具体的形状は左記のとおりである。
③イ 蓋部の具体的形状
(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋
部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・三七対二・四三とし、中央頂辺と底辺と
は、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がっ
た斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧
面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。七面
形の下方部分には、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている。蓋部の高さと
帯体の高さの比率は、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四八である。蓋の
上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から帯体上辺近くまで
に櫛の歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。長手方向幅と透孔が配列
された部分の比率は、長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・四五である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺(平面図に即して上・
下という。したがって、下は正面側、上は背面側となる。以下同じ。)を平行する
直線とした横長な小判型で、帯体外周縁のごく僅か内側に蓋部上面外周縁が平行し
て表われている。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部分を
扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下対称に櫛の
歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜面は、かま
ぼこ形で、頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字状(右側は
コの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから帯体の左右円弧状
の縁まで、左右対称に櫛の歯状の透孔を横に各七個並列させてあけてあり、その透
孔は正・背面側の透孔に匹敵する程広範囲にあけられている。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部
の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇
一対一・〇五とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している矩形状(矩形に極
めて近似した台形)である。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。矩形
状下方部分は、正・背面と同様な、ごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている。
矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺のごく近くから帯体
上辺近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある。上方にかまぼこ
形斜面の円弧状外縁が凹弧に表われている。
ロ 本体の具体的形状
(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅
(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・九三対一・
九〇とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状(横長矩形に極
めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長
矩形状本体の上辺(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い
筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ三〇分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体
の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高
さを一とした場合、ほぼ一対〇・八〇対〇・七六とし、上辺と底辺とは、直線で互
いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底
辺左右両端は、小さい隅丸となっている。左右両側面は、ごく僅か外方へ傾く滑ら
かな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、正・背面と同様なご
く僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほ
ぼ三〇分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判型で、本体頂辺
外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。底面外周縁の
横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・八九対
〇・七六対一である。
(d) 本体は透明である。
(二) 被告容器(2)意匠の構成
(1) 被告容器(2)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(2)の構成態様
① 基本的構成態様
 全体形状が頂面と底面が互いに平行している扁平小判型柱体である。その上部
は、扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成
し、下部は扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成し、蓋部を本体に被着
させて一体に形成している。
② 具体的構成態様
 蓋部を本体に被着させて一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅
(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇八対
〇・五八で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体の高さの比率は、全体の高さを一と
した場合、ほぼ一対〇・三四対〇・六五であり、蓋部の高さが本体の高さのほぼ
〇・五二倍である。各部の具体的形状は左記のとおりである。
③イ 蓋部の具体的形状
(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋
部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・五三対三・一八とし、中央頂辺と底辺と
は、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がっ
た斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧
面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。蓋の
上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から蓋部中央部近くま
でに櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。長手方向幅と透孔が配列さ
れた部分の比率は、長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・三一である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺を平行する直線とした
横長な小判形である。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部
分をH字状に残し、その横中央部分の上・下辺から蓋部上・下辺(平面視)まで、
上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜
面は、かまぼこ形で、頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字
状(右側はコの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから左右円
弧状の縁まで、左右対称に櫛の歯状の透孔を横に六個並列させてあけてあり、その
透孔のあけられている面積は正・背面側の面積よりも広くなっている。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部
の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・七
一対一・七三とし、頂辺と底辺とは、
直線で互いに平行している矩形状(矩形に極めて近似した台形)である。その頂辺
左右両端は、小さい隅丸となっている。矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に
残し、その間に頂辺近くから蓋部中央部近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に六個並列
させてあけてある。上方にかまぼこ形斜面の円弧状外縁が凹弧に表われている。
ロ 本件の具体的形状
(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅
(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・六〇対一・
四七とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状本体の上辺(横
長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となって
いる。横長矩形状(蓋部の下辺の下)は、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻
らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ一五分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体
の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高
さを一とした場合、ほぼ一対〇・八六対〇・八一とし、上辺と底辺とは、直線で互
いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底
辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左・右両側面は、ごく僅か外方へ傾
く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部の下辺の下)は、正・背面と同様なご
く僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほ
ぼ一五分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判型で、本体頂辺
外周縁のごく僅か内側に本体底面外周縁が平行して表われている。底面外周縁の横
幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・四七対
〇・八一対一である。
3 本件登録意匠の要部
(一) 登録意匠の要部ないし特徴となるのは、原則として、物品の形態及び用途
等からみて、その取引過程ないし使用状態において取引者・需要者の目につきやす
く、公知意匠にない新規で、見る者の注意を強く惹く部分であると考えられる。そ
して、もともと、公知意匠と類似しない意匠のみが意匠登録されるのであるから
(意匠法三条一項)、登録意匠の要部ないし特徴を把握し、あるいはその類似範囲
を画定するにあたって、当該登録意匠出願前にその分野に属する公知意匠が存した
場合には、これを参酌して、登録意匠のどの部分に創作性のある新規な部分がある
のか、その程度がどのようなものなのかを、ありふれた部分のウェイトを低く認識
し、新規な部分のウェイトを大きく認識しながら、全体的な特徴を把握して意匠の
要部を定めなければならないのは当然である。また、登録意匠に類似意匠が付帯し
ている場合、類似意匠は本意匠の類似範囲を明確にする有力な資料であるから、こ
れを参酌すべきことはいうまでもない。ただ、対比物品の類否はあくまでも本意匠
との比較によって決すべきであり、当該本意匠ないし類似意匠が公知意匠との関係
で創作の程度が相対的に低いことが明らかになれば、そのことも考慮すべきであ
り、公知意匠の内容如何によっては類似意匠を参考にして定められる類似の範囲も
相応に限定されなければならない場合もある。その意味で、まず公知意匠との比較
により当該本意匠が如何なる点に新規性及び創作性があるのかを究明する。
 なお、被告は、そもそも本件類似意匠の意匠登録出願は公知意匠(被告意匠)に
酷似する意匠の冒認出願として無効とされるべきものであるから、本件類似意匠を
参酌して被告意匠と本件登録意匠の類似を判断することは許されない旨主張する
が、右被告主張は、原告の主張(類似意匠に関する被告主張に対する反論)と同旨
の理由により、採用できない。
(二) そこで、公知意匠を参酌して、本件登録意匠の新規な点をみてみると次の
とおりである。
(1) 公知意匠
 本件登録意匠の出願当時、次の公知意匠が存在していた。
A 検甲第一号証(実物の写真)、乙第一三号証(国立国会図書館昭和五七年一二
月一七日受入「モーターファン」第三七巻第二号〔昭和五八年一月臨時増刊号〕一
一八頁)、乙第一九号証(「JohnsonジャーナルNo.349」・一九八一
年四月三〇日号二八頁)及び乙第二〇号証(乙第一九号証の掲載写真のネガに基づ
き改めて現像焼き付けし直した写真)により認めることができるジョンソン株式会
社発売の自動車用液体消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠(公知
意匠A)
 右公知意匠Aは、やや縦薄型の隅丸直方体であり、透明体の本体にかぶせ蓋式の
不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であり、その形状は、縦(高さ)と横(長
辺)と奥行(短辺)の比率が、縦(高さ)を一とした場合、ほぼ一対〇・八五(蓋
部)対〇・六四(蓋部)、蓋部の高さと本体の高さの比率は本体の高さを一とした
場合、ほぼ二・一対一・〇であり、正面には上端から中央部分まで櫛の歯状の透孔
(スリット)を縦に七個並列させ、その左右両側面には頂面から中央部分まで櫛の
歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある自動車用液体消臭芳香剤容器である。
B 意匠登録第六七六一七八号意匠公報(乙第一号証)に記載の脱臭剤容器の意匠
(公知意匠B)
 右公知意匠Bは、上部に鉤形突起を付加した全体が円柱体であり、上・下面が互
いに平行し、頂面中央部及び蓋部下方部分全体を帯状に残し、正・背面は、左右両
端面も残し、その間に頂面から帯状上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に各八個並列させ
てあけてある脱臭剤容器である。
C 意匠登録第六七六二〇九号意匠公報(乙第二号証)に記載の脱臭剤容器の意匠
(公知意匠C)
 右公知意匠Cは、上部に鉤形突起を付加した全体が円柱体であり、上・下面が互
いに平行し、蓋部下方部分全体を帯状に残し、正面・頂面・背面にかけて全体に帯
状上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に一四個並列させてあけてあり、本体が透明である
脱臭剤容器である。
D 意匠登録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器
の意匠(公知意匠D)
 右公知意匠Dは、全体が縦長角柱体で、上・下面が互いに平行し、蓋部を本体に
被着させて一体に形成し、本体上方部分にごく僅か外側へ膨出した帯体が廻らさ
れ、正・背面には左右両端を少し幅広に残し、その間に頂面から帯体上辺まで櫛の
歯状の透孔を縦に各七個並列させてあけてある脱臭剤放散用容器である。
E 意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容
器の意匠(公知意匠E)
 右公知意匠Eは、上部に鉤形突起を付加した縦長の全体が隅丸三角柱体で、上・
下面が互いに平行し、蓋部を本体に被着させて一体に形成し、左右側面から頂面全
体にかけて蓋部下方部分まで櫛の歯状の透孔を横に五個並列させてあけてある冷蔵
庫用脱臭剤容器である。
F 意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器の意
匠(公知意匠F)
 右公知意匠Fは、隅丸の横長扁平で、底部に向かってやや広がっている直方体
で、上・下面が互いに平行し、正面の一部分を除き、正面から頂面及び背面にかけ
て全体に櫛の歯状の透孔を縦に三〇個(背面側で三〇個、正面側では二〇個)並列
させてあけてある防臭剤用容器である。
(2) 以上の公知意匠と対比すると、本件登録意匠の新規な構成は次のとおりと
認められる。
① 本件登録意匠の基本的構成のうち、脱臭剤容器において全体形状を蓋部と本体
からなる横長形状にすること、「横長な隅丸四角錘体」の蓋部の形状、及び「隅丸
逆四角錘体」の本体の形状は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規な
ものではない。また、「上部の底面を開口部とした蓋部を下部の頂面を開口部とし
た本体に被着させて一体に形成している」点も、公知意匠B~Eにもみられるとこ
ろであり、格別新規なものではない。
しかし、「頂面と底面とが互いに平行している隅丸一〇面体」の全体形状は公知意
匠A~Fの中にはそっくりそのままなものはみられず新規な構成といえる。
② 蓋部正・背面の形状のうち、頂辺と底辺とが、直線で互いに平行している台形
であり、その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみら
れるところであり、新規なものではない。また、さらに、台形上方部分が、左右両
端を幅広に残し、その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に並列させて
あけてある点は、公知意匠A、B、D、Fにも共通してみられるところであり、新
規なものではない。しかし、台形下方部分が、ごく僅か外側へ膨張した帯体を廻ら
されている点は、公知意匠A~Fにはみられないものであり、新規な構成といえ
る。
③ 蓋部平面の形状のうち、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長
矩形である点及び左右両端と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の
上・下辺から横長帯体まで、上下(正面側・背面側)対称に櫛の歯状の透孔を縦に
二二個並列させてあけてある点は、公知意匠A~Fにはみられないものであり、新
規な構成といえる。
④ 蓋部左右両側面の形状のうち、頂辺と底辺とが、直線で互いに平行している台
形であり、その頂辺左右両端は小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみら
れるところであり、格別新規なものではない。しかし、台形下方部分は、正・背面
と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている点及び台形上方部分は、ごく
僅か内方へ傾く斜面を形成している点は、公知意匠A~Fにはみられないものであ
り、新規な構成といえる。
⑤ 本体の正・背面の形状のうち、頂辺と底辺とが、直線で互いに平行している逆
台形であり、その底辺左右両端は小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみ
られるところであり、格別新規なものではない。しかし、逆台形上縁(蓋部帯体の
下辺の下)に、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋を廻らしている点は、公知意匠
A~Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
⑥ 本体左・右側面の形状のうち、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している逆
台形であり、その底辺左右両端及び本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている
点は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規なものではない。しかし、
当該左・右側面が、ごく僅か外方へ傾く滑らかな斜面である点、及び、逆台形上縁
(蓋部帯体の下辺の下)が、正・背面と同様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋
が廻らされている点は、公知意匠A~Fにはみられないものであり、新規な構成と
いえる。
⑦ 本体底面の形状のうち、横長矩形である点は、公知意匠Fにもみられるところ
であり、格別新規なものではない。しかし、本件頂辺外周縁のごく僅か内側に、本
体底面外周縁が平行して表われている点及び本体底面中央には細長い矩形が表われ
ている点は、公知意匠A~Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
⑧ 本体を透明体ないし半透明体とする点は公知意匠にもみられるところであり、
格別新規なものでもない。
⑨ 以上にみてきたところによれば、本件登録意匠の構成のうち、①の本件登録意
匠の基本的構成のうち、「隅丸一〇面体」の全体形状、「横長な隅丸四角錘体」の
蓋部の形状、及び「隅丸逆四角錘体」の本体の形状、②の蓋部正・背面の形状のう
ち、台形下方部分が、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている点、③の蓋部
平面の形状のうち、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形であ
る点及び左右両端と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺か
ら横長帯体まで、上下(正面側・背面側)対称に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列
させてあけてある点、④の蓋部左右両側面の形状のうち、台形下方部分は、正・背
面と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている点及び台形上方部分は、ご
く僅か内方へ傾く斜面を形成している点、⑤の本体の正・背面の形状のうち、逆台
形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋を廻らし
ている点、⑥の本体左・右側面の形状のうち、当該左・右側面が、ごく僅か外方へ
傾く滑らかな斜面であり、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)は、正・背面と同様
なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点、及び、⑦の本体底面の
形状のうち、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われ
ている点及び本体底面中央には細長い矩形が表われている点には、それぞれ新規な
点があるということができる。
(3) そこで、右の新規な点が全体的意匠構成の中で占めるウェイトを考慮しな
がら本件登録意匠の特徴ないし要部を考える。
① 頂面と底面とが互いに平行している隅丸一〇面体の本件登録意匠の全体形状
は、前示のとおり、それとそっくりなものは公知意匠の中にはみられず、それ自体
は新規な構成である。しかしながら、本件登録意匠の全体形状は正確にいえば右の
ように「隅丸一〇面体」(頂面、底面、蓋部正・背面、蓋部左右側面、本体正・背
面、本体左右側面)と表現すべきであるが、頂面及び底面を除くその余の各面の傾
斜角度はごく僅かであり、正・背面及び左右側面方向から見た場合、各面の形状は
矩形に極めて近似した台形状に表われており、通常看者はさほど各面の細部の構成
にまで注意を払って全体形状を観察するものとは考えられないから、概括的には本
件登録意匠は全体として横長で扁平な略直方体形状の箱型容器と大差のない形状と
して看者の目に映じるものと認められる。そして、証拠(甲三〇、乙五~七、一
五)によれば、脱臭剤用容器において、全体形状を本件登録意匠の全体形状に酷似
する横長で扁平な略直方体形状の箱型容器とし、あるいは各面を台形状にすること
自体は、本件登録意匠の出願当時、公知ないし周知であったと認められる。そうす
ると、本件登録意匠の前記隅丸一〇面体の全体形状は特に看者の注意を惹くもので
あるということはできないから、右形状に意匠の要部があるとはいえない。
② 蓋部正・背面の形状のうち、台形下方部分にごく僅か外側へ膨張した帯体が廻
らされている点は、前示のとおり公知意匠にはみられない新規な構成であり、右帯
体は取引者・需要者が本件登録意匠に係る物品(脱臭剤容器)を手に取って見たと
き、正・背面中央部分に位置し、しかも、その幅(高さ方向)は容器全体の高さの
約四分の一程度を占める目立つものであり、需要者は商品(脱臭剤)の使用開始に
先立ち必ず一度は蓋を開けてゲル状タイプの脱臭剤の上面に貼付されているアルミ
シールを剥がす必要があり、その際、右帯体は手に触れ易い部分であるから、右帯
体は見る者の注意を惹きやすい部分の意匠的特徴であるといわざるを得ない。した
がって、本件登録意匠の蓋部正・背面の形状のうち、台形下方部分にごく僅か外側
へ膨張した帯体が廻らされている構成は、本件登録意匠の中でも大きなウェイトを
占める要部というべきである。
③ 蓋部平面の形状のうち、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長
矩形である点及び左右両端と横中央部分を扁平H字状に残している点は、前示のと
おり公知意匠にはない新規な点であり、特に左右両端と横中央部分を扁平H字状に
残している点は、横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下対称(正面側・背
面側)に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列させてあけてある構成と相まって、本件
登録意匠に独特のスマートで安定した機能美を生じさせているものと認められる。
そして、該部分は本件登録意匠に係る物品(脱臭剤容器)を斜上方から見た場合に
看者の注意を強く惹く部分であるから、本件登録意匠の右構成は、全体として本件
登録意匠の中でも重要な要部と認めるのが相当である。
④ 蓋部左右両側面の形状のうち、台形下方部分に正・背面と同様なごく僅か外側
へ膨張した帯体が廻らされている点は、②で述べたのと同様の理由で、本件登録意
匠の要部というべきである。もっとも、蓋部左右両側面は通常蓋部正・背面に比べ
て取引者・需要者の目に触れる機会が比較的少なく、その注意を喚起する程度も若
干劣るものと認められるから、蓋部左右両側面の右構成が本件登録意匠の中で占め
る意匠的特徴のウェイトも蓋部正・背面のそれに比べるとやや劣るものと認めざる
を得ない。
⑤ 本体の正・背面の形状のうち、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)にごく僅か
外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点は、前示のとおり公知意匠にはみら
れない新規な構成である。しかしながら、この細い筋は意匠的観点というよりもむ
しろ蓋部を本体に安定して被着させるための物品の機能的観点をより重視して設け
られたものと認められるのみならず、この細い筋は蓋部のこく僅か外側へ膨張した
帯体の直下に位置し、しかも筋の幅(高さ方向)もごく細いものであるから、その
大きさ及び存在位置から考えて通常その部分は見る者の注意を強く惹く部分とは考
えられず、その存否が意匠の要部、類否を決する重要な要素となっていないことは
明らかである。したがって、右の細い筋は、意匠的特徴のある部分とはいえず、本
件登録意匠の要部とはいえない。
⑥ 本体左・右側面の形状のうち、当該左・右側面が、ごく僅か外方へ滑らかな斜
面である点は、その傾斜の度合いからしてさほどに見る者の注意を惹きやすい目立
つ部分ではないから、本件登録意匠の要部とはいえない。また、逆台形上縁(蓋部
帯体の下辺の下)に正・背面と同様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らさ
れている点も、⑤で述べたのと同様の理由で本件登録意匠の要部とはいえない。
⑦ 本件底面の形状のうち、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が
平行して表われている点、及び、本体底面中央に細長い矩形が表われている点は、
前示のとおり公知意匠にはみられない新規な構成である。しかしながら、本件登録
意匠に係る物品(脱臭剤容器)は、これを立設して使用するものであり、底面から
脱臭剤容器を見ることは通常ないことであるから、底面における形状は比較的看者
の注意を惹くことはないものと考えられる。したがって、本体底面の右形状は本件
登録意匠の要部とはいえない。
(原告の主張について)
 原告は、本件登録意匠の要部は、A 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不
透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、B その基本的形態は、平面視に
おいて隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直方体形状であること、C 
蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されており、平
面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている部分以外の残余部が扁
平なH字形状として看者の目に映ることの三点に本件登録意匠の要部がある旨主張
する。
 しかしながら、Aの点は公知意匠Aにおいて既に示されているところである。な
お、意匠法は、意匠を表す物品において透明箇所がある場合には、その旨を願書の
意匠の説明の項に記載しなければならないと規定するから、透明か否かを意匠の同
一性を判断する要素の一つとしているものと解されるが、本件において願書には透
明箇所がある旨の記載はないし、別添「本件意匠登録出願願書添付図面代用写真」
を見ても、本件登録意匠の容器本体が半透明のものと認めることはできても、完全
に透明であるとは認められない。また、Bの点についても、平面視において隅角部
に大きなアールが付されていると原告は主張するけれども、本件登録意匠の隅角部
のアールは隅丸を少し大きくした程度のもので、この程度のアールは公知意匠Aに
示されており、また横長で扁平な直方体形状と原告は主張するけれども、本件登録
意匠が正確には直方体でないことは前記認定のとおりであって、ほぼ直方体形状と
いうことができるが、平面視において隅丸が付された横長で扁平なほぼ直方体の形
状は公知意匠F及び特許庁資料館昭和四六年六月三〇日受入の「日本粧業 消費者
動向と経営戦略」〔乙第二一号証添付の甲第一二号証〕に掲載の冷蔵庫脱臭剤「ノ
ンスメルワイド」及び「ノンスメル」の容器にも見られるところであって、特段創
作性を認めることはできない。また、Cの点のうち、蓋の頂面から正・背面にかけ
て櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設された形状も、公知意匠A、B、C、D、F
において既に示されているところである。
4 本件登録意匠と被告意匠の類否
(一) そこで、被告意匠と本件登録意匠の類否を検討するに、本件登録意匠と被
告意匠は、いずれも冷蔵庫用脱臭剤容器に係るものであって、前記1・2のとおり
の構成を有するものであり、この両意匠を対比すると、次のとおりである。
(1) 基本的構成態様を対比すると、全体形状が頂面と底面が互いに平行してい
る横長(奥行に比し横幅の広い)形状であり、その上部は底面を開口部とした蓋部
を形成し、下部は頂面を開口部とした本体を形成し、当該蓋部を本体に被着させて
一体に形成している点は、本件登録意匠と被告意匠で共通している。しかし、全体
形状を対比すると、本件登録意匠では、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行し
ている横長の隅丸一〇面体であり、それは前示のとおり概括的には全体として横長
で扁平な略直方体形状の箱型容器と大差のない形状として看者の目に映じるもので
あるとともに、蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高
く、直線が目立ち全体としてシャープで角ばった印象を与え、かつ、高さと横幅の
比率が一対一・二一二であり正面視において横向きの直方体形状であるのと蓋部の
帯体がほぼ中央に位置し、多数の縦方向の透孔がほぼ横幅一ぱいに整然とあけられ
ているため、重心が低いように見え整っていてスマートな印象を与えるのに対し、
被告意匠では、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型
柱体で、扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を
形成しており、蓋部上面中央の頂面のみを底面と平行するにすぎず、その頂面の左
右が斜面を形成し、蓋部及び本体の両端部は半円柱状の曲面により構成され、蓋部
の高さが本体の高さのほぼ〇・八一倍(被告容器(1)意匠)ないし〇・五二倍
(被告容器(2)意匠)で、蓋部の高さの方が低いという、本件登録意匠にない構
成にし、曲線が多用され全体として丸くずんぐりした印象を与え、かつ、高さと横
幅がほぼ同じ長さであり正面視において略正方形形状であるのと蓋部の帯体が上方
に位置しているため重心が重いように見え、透孔が縦方向にも横方向にもあけられ
ていて左右両端が斜面になっているため効率重視の印象を与えている点で顕著に相
違している。
(2) 蓋部正・背面の具体的形状を対比すると、本件登録意匠と被告意匠は、頂
辺と底辺とが直線で互いに平行している、上方部分は左右両端を幅広に残し、その
間に頂辺から櫛の歯状の透孔を縦に並列させてあけてある、下方部分にはごく僅か
外側へ膨張した帯体が廻らされている(但し、被告容器(2)意匠には帯体はな
い。)基本的な構成においては共通である。しかし、その具体的構成である櫛の歯
状の透孔の個数及び位置並びに左右両側の形状において、大きく相違している。す
なわち、① 蓋部頂面から蓋部正・背面中央部分に向けてあけられた櫛の歯状の透
孔の数が、本件登録意匠では各二二個と多数であるのに対し、被告容器(1)意匠
では各一一個、被告容器(2)意匠では各六個と本件登録意匠と比べて著しく少な
く、② また、蓋部の長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、長手方向幅を
一とした場合、本件登録意匠ではほぼ一対〇・八一二五であるのに対し、被告容器
(1)意匠ではほぼ一対〇・四五と半分以下、被告意匠容器(2)意匠ではほぼ一
対〇・三一と三分の一以下であり、本件登録意匠は、右透孔が占める部分の横幅が
広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いのに対し、被告意匠では、右透孔が占
める部分の横幅が狭く、蓋部左右両側の残った部分の幅が広く、③ さらに、本件
登録意匠では中央頂辺と底辺とは、全体的に直線で互いに平行しているのに対し、
被告意匠では、中央頂辺の中央部と底辺とが互いに平行しているのみであり、中央
頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称
の七面形である点においても相違している。
(3) 蓋部平面の形状を対比すると、横中央部分を長方形状に残し、横中央部分
の上・下辺から上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に並列させてあけてある点は共通で
あるが、次の構成において、大きく相違している。すなわち、本件登録意匠では、
頂面左右部分が幅の狭い平坦面で、透孔は全くあけられていないのに対し、被告意
匠では、中央頂面左右両端が、対称の幅の広いかまぼこ形(円弧状)の斜面で、そ
の斜面には櫛の歯状の透孔が被告容器(1)意匠では横に各七個、被告容器(2)
意匠では横に各六個並列してあけられており、被告容器(2)意匠では正・背面側
の透孔よりも透孔の面積が広く、被告容器(1)意匠でも正・背面側の透孔に匹敵
する程広範囲に透孔があけられている点で顕著に相違している。また、本件登録意
匠で左右両端と横中央部を扁平H字状に残しているのに対し、被告意匠では左右両
端よりかなり内側の左右縦稜線に沿った部分と横中央部分をH字状に残しており、
左右両端の傾斜と傾斜部における多数の透孔の存在とにより、著しく印象を異にす
るものになっている。
(4) 蓋部左・右側面の形状を対比すると、本件登録意匠と被告意匠は、頂辺と
底辺とが直線で互いに平行し、頂辺左右両端は、小さい隅丸となっており、下方部
分は、正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した幅広横長の帯体を底辺に沿って廻
らしている点では共通している(但し、被告容器(2)意匠では帯体は廻らされて
いない。)が、本件登録意匠では、透孔が全くなく壁状になっているのに対し、被
告容器(1)意匠では縦に各七個、被告容器(2)意匠では縦に各六個並列してあ
けられている点で顕著に相違している。
(5) 本体の正・背面の形状のうち、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)にごく
僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点、及び本体左・右側面の形状の
うち、当該左・右側面が、ごく僅か外方へ傾く滑らかな斜面である点、及び本体底
面の形状のうち、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表
われている点は、本件登録意匠と被告意匠で共通しているが、これらの点は本件登
録意匠の要部に関するものではない。
(6) なお、被告は、本件登録意匠にあっては本体は一色無模様であるのに対
し、被告容器の本体は透明であるが、その正面部に別紙被告物件写真(一)(二)
に撮影のとおり模様が付されており、この模様は特徴的であって、その点で本件登
録意匠と相違する旨主張するが、右模様は被告商品全体を包装した透明な熱収縮性
合成樹脂フィルムに印刷されたものであり、被告容器の構成部分とは認められない
から、右被告主張は採用できない。
(二) 以上の本件登録意匠と被告意匠との共通点及び相違点を踏まえて、全体的
に両意匠を比較観察するに、本件登録意匠と被告意匠との間には、前示のとおり、
本件登録意匠の要部に関しないところに構成を同じくする部分もあるが、前記のよ
うな各相違点があり、ことに、蓋部頂面左右両端部の構成の違い、蓋部及び本体の
左右両端部の構成の違い、蓋部と本体の高さの比率の違い、蓋部正・背面の櫛の歯
状の透孔の個数及び位置並びに左右両端部の透孔の個数及び位置の違いに加え、本
件登録意匠が容器全体に直線が多用され全体としてシャープで堅い印象を与え、か
つ、重心が低いように見え整っていてスマートな印象を与えるのに対し、被告意匠
は、曲線が多用され全体として丸くずんぐりした印象を与え、かつ、重心が高いよ
うに見え効率重視の印象を与えるものになっており、しかも、その相違点が目につ
き易い正面視、平面視及び左右側面視に表われていること、そして、右各部分の具
体的形状が右のように顕著に相違することから生じる美感の差は、右各部分が脱臭
剤容器において占める大きさや位置からいっても、また、機能面からみても見る者
の注意を強く惹く部分であって、大きいものといわざるを得ない。
 以上の本件登録意匠と被告意匠の共通点と相違点を彼此勘案して判断すれば、本
件登録意匠と被告意匠とは全体として見る者に与える美感を異にし、類似しないも
のというべきである。
(本件類似意匠を援用しての原告の主張について)
 原告は、本件登録意匠と被告意匠との主な相違点は、本件類似意匠と本件登録意
匠(本意匠)との間にも存する差異とほぼ同程度の差異であり、被告意匠は全体と
して本件登録意匠に類似するものであって、右差異は、本件登録意匠の要部に関す
る差異とはいえず、それが意匠の全体観察に占める比重は低いものと評価せざるを
得ない旨主張する。そこで本件類似意匠と本件登録意匠の関係をみると、類似意匠
全部が横長な小判型柱体で、蓋部左右両端から側面にかけて透孔があけられてお
り、類似意匠1及び3では蓋部下部に帯体がなく、類似意匠3では中央頂辺の左右
両端は約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形となり、ま
た全体の高さに対する蓋部の高さが類似意匠1及び3では〇・四四となっており、
その点では類似意匠は本件登録意匠と相違し被告意匠とほぼ同様の構成になってい
ることは原告主張のとおりであるけれども、各類似意匠と本件登録意匠とは、原告
主張の右の諸点では構成を異にし、主に次の点において構成を共通にしているか
ら、類似意匠を参酌するとき、少くとも次の共通の構成部分は本件登録意匠の要部
と認めなければならない。
① 平面視及び正・背面視における蓋部頂面から正・背面にかけてあけられた透孔
は、本件登録意匠では各二二個、類似意匠はすべて各一五個と多数であり、蓋部長
手方向幅と右透孔が配列された部分の比率は、本件登録意匠では約〇・八、類似意
匠では約〇・六五と大きく、頂面から背面にかけてあけられた透孔が顕著に看者の
目を惹く構成になっている。それに対し、本件登録意匠にはなく、類似意匠にのみ
ある蓋部頂面左右両端から側面にかけてあけられた透孔は各五個と少なく、あまり
目立たない付加的構成になっている。
② 正面視における蓋部を本体に被着させて一体に形成したときの全体の高さと横
幅(長手方向)の比率は、類似意匠2は本件登録意匠と同じ約一・二、類似意匠1
及び3は本件登録意匠より大きく約一・四であり、横向き長方形であることが明確
にされている。
③ 平面視における奥行に対する長手方向幅の比率は、本件登録意匠と類似意匠2
では約一対二・七、類似意匠1及び3では約一対二・八となっており、幅薄の印象
を受ける。
 しかし、被告意匠は、① 蓋部頂面から正・背面にかけてあけられた透孔は被告
容器(2)意匠では各六個、被告容器(1)意匠では各一一個と著しく少なく、ま
た蓋部長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は長手方向幅を一とした場合、本
件登録意匠でほぼ一対〇・八一二五であるのに対し、被告容器(1)意匠ではほぼ
一対〇・四五と半分以下、被告意匠容器(2)意匠ではほぼ一対〇・三一と三分の
一以下であり、また、本件登録意匠は、右透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左
右両側の残った部分の幅が狭いのに対し、被告意匠では、右透孔が占める部分の横
幅が狭く、蓋部左右両側の残った部分の幅が広く、かつ、それと同程度の透孔が頂
面左右端から側面にかけてあけられており、その結果看者に与える印象を異にし、
② 横幅(長手方向)が少し長いとはいうものの、全体の高さと横幅とはほぼ同じ
で正方形に近い形状をしているし、③ 奥行に対する長手方向の幅の比率は、被告
容器(2)意匠では一対一・八、同(1)意匠では一対二・三で幅薄の印象は受け
にくい。
 以上のとおり、本件類似意匠との関係において本件登録意匠の要部と認めざるを
得ない構成(特に、前記①の構成)を被告意匠は具備しておらず、結局、本件登録
意匠と被告意匠とは全体として美感を異にし、類似しないというべきであるから、
類似意匠を参酌しても、右原告主張は採用できない。
5 結論
 以上のとおりであるから、被告意匠は本件登録意匠に類似しているということは
できず、被告商品を製造、販売することが本件意匠権を侵害するものであるとはい
えないから、その余の点につき判断するまでもなく、原告の本件意匠権侵害を理由
とする侵害停止・損害賠償請求はいずれも理由がない。
二 争点2(原告商品の形態が商品表示性及び周知性を取得したか)
1 事実関係
(一) 冷蔵庫用脱臭剤容器の形態の機能性と先行類似商品の存在
 原告容器の形態のうち、本体にかぶせ蓋を被着した形態は、製造時に本体内にゲ
ル状タイプの冷蔵庫用脱臭剤を充填し、需要者が商品を購買後一旦このかぶせ蓋を
外して、使用開始前に脱臭剤が気化するのを防止する目的で右充填物の上面に貼付
されていたアルミシールを除去したうえ再度かぶせ蓋を本体に被着した後に、冷蔵
庫内に収納して商品の脱臭効果を発現させるためのもの、蓋の頂面から正・背面に
かけて櫛の歯状の透孔を多数穿設している形態は、悪臭を迅速に処理できるよう脱
臭剤が揮発して庫内の空気中に拡散する流通孔を保持するためのものであり、一般
に、冷蔵庫用脱臭剤は、収納する冷蔵食品の邪魔にならず、しかも使用中に庫内で
容器が転倒等して内容成分がこぼれ出し冷蔵食品と直接接触するなどの事故が発生
しないように安定した状態で載置される必要があるから、それらの容器の基本的外
観形状は、それら冷蔵庫用脱臭剤の本来の用途や設置態様に合わせて、ある一定の
範囲内で必然的に制限を受けざるを得ないものと考えられ、実際に市場で流通して
いる商品も、例えば吊り下げ型の商品の場合は頂面にフックを付けた略円柱体形
状、載置型のうちコーナータイプの商品の場合はコーナー面に沿った略三角柱体形
状、載置型のうち庫内の棚上に載置するボックスタイプの商品の場合は直方体形状
ないしそれに近似した箱型容器形状、シート状タイプの商品の場合はシート形状と
いうように、その設置態様毎に概ね同種の基本的形態が採用されている。また、容
器の着色も、清潔感を保持するような白、明るい黄、緑、青又は透明が用いられて
いる。そして、このことは、容器本体内に充填される内容物である脱臭剤の主成分
が活性炭吸着タイプの商品(「キムコ」「ノンスメル」等)であるか、薬剤による
中和、分解タイプの商品(原・被告商品、「ホワイト」「コゾレ」等)であるかに
よって特に異同があると考えられない。以上のことは、原被告以外の他社製の冷蔵
庫用脱臭剤容器形状(例えば特許庁資料館昭和四六年六月三〇日受入の「日本粧業
 消費者動向と経営戦略」〔乙第二一号証添付の甲第一二号証〕に掲載の冷蔵庫脱
臭剤「ノンスメルワイド」及び「ノンスメル」の容器及び生活情報誌「Two W
ay」八二号〔昭和六三年三月一日発行、乙第一五号証〕二三頁に掲載の各社の冷
蔵庫用脱臭剤容器)も、前記各設置態様の分類タイプに応じて大差ない基本的形態
を採っていることからも十分裏付けられる。また、かぶせ蓋の「白色」と容器本体
の「半透明」(完全な透明ではないが半透明)の原告容器の色彩の組み合わせも、
原告商品より先に発売された後記「ホワイト」に既に示されていたものであり、他
社製品と識別し得るほど特別顕著なものであるとは認められない。したがって、原
告主張の①内部の脱臭剤の色が外部から透けて見える透明体を本体とし、その本体
に被せ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用い、②白色の蓋の頂面から側
面にかけて櫛の歯状のスリットが多数穿設されているという原告容器の形態は、従
来から脱臭剤、消臭剤及び芳香剤等の商品容器の形態として慣用されてきた容器形
状に照らして独創的ではなく、原告容器の形態それ自体には格別特異なところはな
く、冷蔵庫用脱臭剤としての商品の用途や機能的必要性に由来するものであること
が明らかであるといわざるを得ない。
 さらに、容器本体内に充填された内容物の減少具合が外部から透けて見えるよう
に構成した、本体が透明ないし半透明の容器は、古くから我々が酒や醤油、ソース
等の調味料及び化粧品等の各種商品のガラス瓶容器等においてしばしば目にしてき
たありふれた公知公用のものであり、冷蔵庫用脱臭剤の商品分野においても、原告
商品の発売開始前の昭和五五年六月には、白色のかぶせ蓋を透明の容器本体に被着
し、かぶせ蓋の上面に揮発した脱臭剤が拡散するための透孔を穿設した円筒型容器
に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填し、容器本体の内容物の減少具合が
外部から透けて見えるように構成した、株式会社ファーストリビング製造販売の冷
蔵庫消臭剤「ホワイト」が、伊勢丹、小田急、京王、西武、そごう、大丸、高島
屋、東急、東武、松坂屋、阪急、阪神、松屋などの全国の一流デパートを含む多数
の小売店舗で販売されていたのであり、そのことは、乙第二六号証(株式会社富士
経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.3三四頁)にお
いて、「『キムコ』、『ノンスメル』が活性炭製品であるのに対し、『ニオイのみ
はり番』は緑色の薬液である点で根本的に違っている。薬液がなくなっていくこと
により、効果が目に見え、商品のエンドポイントがはっきりわかるということをメ
インに訴求しているもので、類似品は既に’80に家庭用品メーカーのファストリ
ビング社から『ホワイト』というブランドが発売されている。」として紹介されて
いることからも明らかなように、脱臭剤業界において相当広範囲に認識されていた
ものと認められる。また、「ホワイト」の宣伝広告文中には、「消臭効果が目でわ
かります」「緑色の溶剤がある間は消臭中」「ホワイトは消臭成分が蒸散し、活躍
しているのが外からひと目でわかります。緑色の溶剤が無くなったらお取り換えく
ださい。」(雑誌「ミセス」昭和五五年六月号、乙第二二号証)、「緑色の溶剤が
ある間は消臭中」「ホワイトは消臭効果が外からひと目でわかります。緑色の溶剤
がある間は消臭能力がある証拠ですから安心してお使いいただけます。」(同誌同
年七、八月号、乙第二三号証及び第二四号証)、「特に溶剤が外からひと目でご覧
いただけます。緑色の溶剤が見える間は消臭力がある証拠ですから最後まで安心し
てお使いいただけます。」(同誌同年一二月号、乙第二五号証)との記載があり、
右記載に照らして考えると、「ホワイト」は、原告商品と同様、使用開始後時日の
経過により揮発して量の減少する緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を容器本体
に充填し、商品として店頭に陳列されている際には、本体の透光性のある部分から
内部を透かして緑色の脱臭剤が容器本体に一杯に充填されている状態が看取でき、
使用を開始すると、充填されていた緑色に着色した脱臭剤の量が減少するので、容
器本体の透光性のある部分から内部を透かして見える緑色の部分が減少して見える
という商品コンセプト(広告で、既製概念にとらわれず、商品やサービスを現代社
会の中で新しい視点からとらえ、新しい意味づけを与えてそれを広告の主張とする
考え方。大辞林〔三省堂〕九三〇頁)を採用し、その点を消費者に強くアピールし
訴求しようとする商店であったことが明らかである。したがって、原告主張の③透
明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売
時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状スリットを有する蓋がかぶせられて
いるように見えること、及び、④使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少
し少なくなっていくのが外部から確認し得ることという原告商品の形態も既に「ホ
ワイト」の公知公用の先例があり、原告独自の工夫とはいえない。
(二) 原告商品の宣伝広告及び販売数量・販売期間・市場シェア
 原告は、昭和五七年一〇月に大阪地区で原告商品「ニオイのみはり番」シリーズ
の最初の商品(吊り下げタイプの基本的形態が細長い円柱体形状の商品、検乙第一
号証)を発売して以来、昭和六二年までの間に、同商品を対象として、別紙資料1
「テレビコマーシャル放映実績」に記載のとおり、全国向けに放映時間約一五秒間
ないし三〇秒間のスポット・テレビコマーシャルを繰り返し集中的に放映した。右
テレビコマーシャルは、メインキャラクターとして女優の【B】を起用し、コミカ
ルなストーリー仕立てに構成したものを中心に、原告商品の前記商品特性ないし商
品コンセプトである「使用を継続すると、充填されていた緑色に着色した脱臭剤の
量が減少するので、本体の緑色の部分が次第に減少し下降して見え、商品の取り換
え時期が目で見て容易に分かる。
」という点を最大のセールスポイントとして消費者等に強くアピールし訴求するこ
とを狙ったものであったが(製作されたテレビコマーシャルフィルム一五本のうち
五本〔甲第六号証・「スーパーマーケット ホラ ワカラナイ篇」、甲第七号証・
「スーパーマーケット 奥様篇」、甲第八号証・「スーパーマーケット篇」、甲第
九号証・「冷蔵庫篇」、甲第一〇号証・「冷蔵庫篇」〕の台詞又は画像中に「効き
目が見える」という表現を使用しており、それらのコマーシャルフィルムのトータ
ルの放映時間が一番長い。)、特に、この【B】起用のテレビコマーシャルは消費
者に好評を博し、全日本CM協議会のACC賞を受賞した。この間、右テレビコマ
ーシャルの投下量は近畿地方で約六六〇〇GRP、関東地方で約五八〇〇GRP、
中部地方で約五一〇〇GRPに達し、その製作費用は約一億五〇〇〇万円、放映費
用は約一三億円に達した(GRPは、広告媒体の効果判定尺度の一つであり、平均
デイリー有効サーキュレーション〔ADEC、ADECはAverage Dai
ly Effective Circulationの略語〕を広告市場の人口で
除した数値である。デイリーは、照明なしのサインは一二時間、照明つきのサイン
は一八時間。有効は、コミュニケーションというよりは、サインへのオーディエン
スの接近、サーキュレーションは、いろいろな人々の総数というよりは、サインの
そばを通るオーディエンスの総数に関する尺度。電通発行「生きる広告。12章」
一〇八頁参照)。また、原告は、昭和五七年一〇月から昭和五八年一二月までの間
に、別紙資料2「新聞広告実施状況」に記載のとおり、前記円柱体形状の吊り下げ
型タイプの「ニオイのみはり番」商品を対象として、全国主要新聞の東京、大阪、
名古屋、九州等の各地区版に七段通し又は一〇段通しの大きなスペースを割いた広
告を延べ二四回にわたって掲載し、その費用は総計一億七〇〇万円に達し、その他
の新聞、雑誌及び業界紙などでも幅広く同商品の宣伝広告活動を展開した。右新聞
及び雑誌等の広告のコピー(キャッチ・フレーズ)の基本コンセプトは「見えるか
ら分かる」というものであったが、テレビコマーシャルの放映時期に合わせて、業
界紙及びスーパーマーケット等各種量販店向けの資料等では、「効き目が見える」
という表現も採り入れた広告を掲載し、商品カタログ等でも同様の表現を採用し
た。その結果、株式会社社会行動研究所が、昭和五八年六月二四日から同年七月五
日にかけて、大阪市及びその周辺一一市に居住する主婦(住民票により無作為抽
出)を対象に個別面接聴取法により実施した調査結果によれば、冷蔵庫用脱臭剤の
純粋想起では、「キムコ」を挙げた人が全体の八一%とトップであり、続いて「ノ
ンスメル」の五〇%、「ニオイのみはり番」の一九%の順、助成想起では、「キム
コ」が九九%、「ノンスメル」が八七%、「ニオイのみはり番」が七二%の順とな
っており、「ニオイのみはり番」の認知経路については、テレビコマーシャルが九
二%に達し、その宣伝広告の内容想起としては、「へり具合がわかる」が二〇%、
「効果が目でみえる」が一一%となるに至った。「ニオイのみはり番」シリーズ商
品の発売以来の総販売量は、平成五年三月までで、販売金額ベースで約一〇〇億
円、販売個数ベースで約五〇〇〇万個に達しており、最近の脱臭剤市場における原
告の売上シェアは、凸版リサーチの全国二六〇店舗のPOSデータの集計結果によ
れば、左記のとおりとなっている(単位%)。
 期間 ニオイのみはり番(原告)キムコ ノンスメル においパクパク(被告)
一九八九年下期 二二・〇 三六・七 三五・四
一九九〇年上期 二一・三 三六・八 三五・五    〇・四
一九九〇年下期 一九・五 三六・七 三五・五    〇・六
一九九一年上期 一八・五 三五・九 三五・〇    〇・九
一九九一年下期 一七・四 三三・一 三七・八    一・九
一九九二年上期 一五・二 二九・三 三八・一    三・一
一九九二年下期(推定)一五・〇 三〇・〇 三八・〇    四・〇
(甲四、六~二七、三二~七三、検乙一)
 したがって、以上の原告商品の宣伝広告態様及び販売数量・販売期間・市場シェ
アに照らして考えると、「ニオイのみはり番」という商品名は、原告の製造販売す
る冷蔵庫用脱臭剤を意味するものとして消費者間において広く認識されており、中
間取引者(問屋等の卸売商、スーパーマーケット等の小売商)についても事情は同
じであると考えられる。
 しかしながら、右宣伝広告は前示のとおりいずれも吊り下げ型タイプの円柱体形
状の「ニオイのみはり番」商品(検乙第一号証)に係るものであり、これと相当に
基本的形状を異にする原告主張の載置型ボックスタイプの箱型容器形状の原告商品
の容器形状と関連づけてなされたものではない。また、「効き目が見える」という
テレビCMのキャッチ・フレーズ(コピー)にしても、右テレビCMそのものは、
従来の活性炭を主成分とするタイプの冷蔵庫用脱臭剤(キムコ、ノンスメル等)で
は、活性炭は、庫内の臭い成分を吸着する性質を持っているが、効果が減少しても
そのことは外観からだけでは分からないが、原告商品は、植物精油を脱臭剤の主成
分とし、これを内部が透けて見える容器に充填しているため、外観から内部の成分
内容の減少具合も透けて見えるという、冷蔵庫用脱臭剤としての原告商品の基本的
特性に係るごく当然の生の事象を、新たな商品コンセプトとして明確に打ち出し
(もっとも「ホワイト」について同旨の宣伝広告をしていたから正確にいえば二番
煎じとなる。)、その点を他社の従来商品の性能と対比して消費者に強くアピール
し訴求するために、「効き目が見える」という単純明快なキャッチ・フレーズを採
用し、このキャッチ・フレーズと主演女優【B】の軽妙洒脱な独特のキャラクター
と微妙にからませて、コミカル仕立てに構成したアイデアが消費者の心を幅広くつ
かみ、その大量の放映量とも相まって、アメリカンドラッグコーポレーションの
「キムコ」と株式会社白元の「ノンスメル」に殆ど二分されていた当時の冷蔵庫用
脱臭剤市場において好評を得、消費者の間に原告商品の商品イメージを深く浸透さ
せる上では大きな貢献をしたものであり、
原告の冷蔵庫用脱臭剤市場への新規参入に際して極めて有力な宣伝広告手段になっ
たものとは認められるけれども、「効き目が見える」というキャッチ・フレーズの
表現それ自体は、同種商品ないし他の分野の商品でも、その全部又は一部が使用さ
れることのあるありふれた表現であり(例えば前記「ホワイト」の外、キング化学
株式会社販売の冷蔵庫用脱臭剤「コゾレ」〔乙第一六号証〕の透明容器表面には
「見える 見える」の文字が印刷されており、産業上の利用分野は異なるが、サン
スター株式会社販売の歯磨き「ニュー・ソルト薬用塩」を収容した包装紙箱及び容
器チューブ〔乙第一七号証、第一八号証の1~4〕の表面には「効きめが見える薬
用塩で……」の文字が印刷されている。)、それが原告独自の新規造語であるなど
の事情は認められず、必ずしも原告の主張するほどに斬新で特徴的なものとはいえ
ないし、消費者の価値観や商品選択の嗜好が多様化して移ろいやすく、商品のライ
フサイクルや宣伝広告のヒットサイクルも極めて短期化している現在の商取引の実
情のもとにおいては、今なお消費者の心理に前記テレビCMの「効き目が見える」
というキャッチ・フレーズの表現の記憶が生々しく定着し、それがこの種商品の選
択購入の大きな要因をなしているものとは俄かに断じ難く、ましてやその基礎とな
る、外観から内部の成分内容の減少具合も透けて見えるという商品コンセプトが直
ちに原告の製造販売に係る原告商品を想起させるものとはおよそ考えられない。
(三) 冷蔵庫用脱臭剤の市場動向及び流通段階の実態
 我が国において、冷蔵庫用脱臭剤は、一九五八年(昭和三三年)にアメリカンド
ラッグコーポレーションから「キムコ」が発売され、一九六三年(昭和三八年)に
は株式会社白元から「ノンスメル」が発売され、その後長くこの二社を中心とする
市場が形成されてきたが、いずれの商品も臭い成分を吸着する活性炭を主成分とす
るものが殆どであった。活性炭は、庫内の臭い成分を吸着する性質を持っている
が、効果が減少してもそのことは外観からだけでは分らない。そこで、
最近になって昭和五五年に原告商品同様容器本体に緑色に着色したゲル状脱臭剤を
充填し、容器内容物の減少具合が外部から透けて見えるように構成し、消臭効果及
び消臭剤の残量が見えるように構成し、その構成を商品コンセプトとした「ホワイ
ト」が発売され、それに続いて昭和五七年末に原告商品の「ニオイのみはり番」が
発売され、その直後に「効き目が見える」のキャッチ・フレーズを使用した原告商
品や「見える 見える」のキャッチ・フレーズを使用した「コゾレ」(キング化学
株式会社)が発売され、それに続いて被告商品が発売された。これらの商品は脱臭
剤の減少具合が目で見て分るという商品特性ないし商品コンセプトを前面に明確に
打ち出したものであり、庫内の臭い成分を中和したり、分解したりする化学反応を
利用して脱臭する、植物精油を主成分とするゼリー状のものや二酸化塩素を主成分
とする液体状のものを透明ないし半透明の容器に収納した商品など同種製品が市場
に出回っており、その商品容器の形態も、庫内の棚にフックで吊るして使用する吊
り下げタイプ、シートタイプ、庫内の隅角に沿って設置して使用するコーナータイ
プ、庫内に載置して使用するボックスタイプなどバラエティーに富んだ商品が販売
されており、被告が被告商品「においパクパク」の本格発売を開始した平成二年の
時点では、先発メーカーである原告商品の大型化や部位別の商品展開なども殆ど出
尽くし、各社とも既存商品の機能向上などにより商品の差別化を図る時期を迎えて
いた(株式会社富士経済発行「’88トイレタリーグッヅマーケティング要覧」N
o.2〔甲第七五号証〕一一〇頁は、「積水化学工業の『ニオイの見張り番』は、
活性炭系メーカーが取り替え時期がすぐわかるよう、商品を改良するなどの対抗策
をとったのに加え、消費者にも目新しさが薄れてきたことから、販売実績を次第に
落としてきている。」と指摘している。)。さらに、冷蔵庫用脱臭剤の市場全体に
ついて見ても、その市場規模は、一九九〇年(平成三年)をピークに減少を始めた
が、その要因は、冷蔵庫のドア数の増加により、庫内における食品の臭い移りが少
なくなったこと、食品ストック用の容器が発達して臭いが庫内が拡がりにくくなっ
たこと、及び、最近では家電メーカー各社が大型冷凍冷蔵庫の大半に脱臭装置を最
初から塔載していることなどが挙げられる。したがって、このままでは、今後も当
分は市場規模の減少傾向が続くものと見込まれるが、新規参入メーカーが増加して
おり、ブランドスイッチによる需要の落ち込みがカバーされることも期待され、結
果としては横ばいで推移するものと見込まれている(乙第三二号証)。また、一九
九一年度(平成四年度)実績に基づく冷蔵庫用脱臭剤市場のメーカーシェア(株式
会社矢野経済研究所調査)は、株式会社白元が二七・二%、アメリカンドラッグコ
ーポレーションが二一・七%、積水化学工業株式会社(原告)が一三・〇%、その
他が三八・一%という状況にあり、そのような市場動向を反映して、流通市場で
は、① 冷蔵室用は、「キムコ317スーパー(アメリカンドラッグコーポレーシ
ョン)」「スムース21(村上化学株式会社)」「COーOP冷蔵庫脱臭剤(オリ
モ商事)」「ニオイのみはり番(原告)「コゾレ(キング化学株式会社)」「ノン
スメルスカイ(株式会社白元)」「れい蔵っ庫(サンスター株式会社)」「冷蔵室
のデオドライザー(森下仁丹株式会社)」など、② 冷凍室用は、「氷キムコ(ア
メリカンドラッグコーポレーション)」「ニオイのパトカー氷用(エステー化学工
業株式会社)」「ニオイのみはり番(原告)」「フリーザーノンスメル(株式会社
白元)」など、設置態様、成分・内容量、有効期間、対応容積、取り替え時の目安
(使用開始年月を記入、使用開始月に印をつける、中身が固まりになったら取り替
える、取り替えの時の分かるシールを貼るなど様々なタイプの商品がある。)、標
準小売価格等の点で多種多様な商品がスーパーマーケットなどの小売店舗の店頭の
陳列棚に一緒に並べて販売されている状況(甲第二八号証)にある。したがって、
以上のような冷蔵庫用脱臭剤の市場動向及び流通段階の実態に照らして考えると、
冷蔵庫用脱臭剤の需要者である一般消費者の大半を占めるとみられる家庭の主婦層
では、この種商品に対する商品知識も相当程度普及しているものと考えられるか
ら、使い勝手(セットのし易さ、容器の形状・大きさ・素材、商品取り替え時期の
目安表示の分かり易さ)、商品成分等の表示(読みやすさ、分かりやすさ、内容の
適切さ)、各種臭い成分毎の脱臭速度、成分・内容量、有効期間、対応容積、価格
などの相当詳細な点についてもかなり突っ込んだ商品知識と関心を有しているもの
と認められ、特に冷蔵庫用脱臭剤が庫内で日常我々が口にする食品と並んで常時使
用される物品であり、購入の際には直接的にその効果が分からない商品であること
からすると、消費者は、例えば中身の減少していくタイプの脱臭剤では減少した物
質はその後どうなるのか、冷蔵中の食品に影響を与えないのかなど、その成分・内
容についても関心を抱くと同時に、容器外形についても庫内で邪魔にならないか、
転倒する危険はないのかなど、種々の要素を総合勘案して商品を選択購入している
ものと認められる。
(甲七四、七五、乙一五、二六~三二、弁論の全趣旨)
(四) 店頭販売時の態様
 冷蔵庫用脱臭剤商品の小売店舗における販売時の態様についてみると、原告商品
は全体が透明な熱収縮性合成樹脂フイルムで完全に包装され、その表面に「ニオイ
のみはり番」の周知商品名及び原告の著名商標「SEKISUI」の文字が大きく
印刷されており(別紙原告商品写真(一)ないし(六)、検甲第二号証、第三号
証、第五号証等)、被告商品も、同様に全体が透明な熱収縮性合成樹脂フイルムで
完全に包装され、その表面に被告の登録商標「においパクパク」(乙第一〇号証)
及び被告の属する関西ペイントグループ各社の共通商標として著名な「アレスコ
(ALESCO)」の商標が大きく印刷されている外、特徴的な大きく口を開けた
カバの図柄が大きく印刷されている(別紙被告物件写真(三)、(四)、検乙第七
ないし第一〇号証等)。そして、以上のような店頭販売時における商品容器の包装
に製造販売会社の商標や独自の商品名を大きく印刷表示するという基本的パターン
は同業他社の商品(例えば「キムコ317 Kimco」「ノンスメルスカイ 白
元」など)についても類似しており(乙第一五号証23頁掲載の写真)、それは消
費者の商品識別に大いに寄与しているものと認められる。
(乙一〇、一五、弁論の全趣旨)
2 判断
 以上のとおり、原告は、国内で初めて本格的に活性炭以外の成分を主成分とする
冷蔵庫用脱臭剤の製造販売を始め、それまで活性炭一辺倒であった冷蔵庫用脱臭剤
市場に強力に参入し市場規模を拡大した功労者ということができ、「ニオイのみは
り番」の発売以来現在まで際立って広範多量な宣伝広告活動を行い、原告商品は、
冷蔵庫用脱臭剤の市場において競合商品が出てきても、活性炭を用いた先発商品の
メーカーであるアメリカンドラッグコーポレーション(キムコ)及び株式会社白元
(ノンスメル)に続く第三位のマーケットシェアを常に占め、原告商品は多数の問
屋・小売店を通じて全国的に流通されており、「ニオイのみはり番」という原告商
品の商品名は原告の商品表示として広く認識されるに至っているものと認められ
る。しかしながら、原告が商品表示性を取得したと主張する①内部の脱臭剤の色が
外部から透けて見える透明体を本体とし、その本体に被せ蓋式の白色不透明な蓋を
被着せしめた容器を用い、②白色の蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状のスリット
が多数穿設されているという原告容器の形態は、従来から脱臭剤、消臭剤及び芳香
剤の容器として慣用されてきた容器形状に照らし独創的ではなく、原告商品容器の
形態それ自体には格別特異なところはなく、冷蔵庫用脱臭剤という商品の用途や機
能的必要性に由来する形態であることが明らかであること、また、③透明な容器本
体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色
の容器本体に白色で多数の櫛の歯状スリットを有する蓋がかぶせられているように
見え、④使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが
外部から確認し得るという点についても、既に「ホワイト」の公知公用の先例があ
り、必ずしも原告独自の工夫とはいえないこと、脱臭剤市場は、需要が一巡し市場
規模の拡大が頭打ちとなり既存メーカーのマーケットシェアが次第に減少する中
で、新規参入メーカーを含めた多数のメーカーが各自既存商品の機能向上等の面で
競合するという成熟段階に入っており、原告が商品表示性を取得したと主張する原
告商品の容器の基本的形状及び構成自体は、他社商品の容器形状とも大差がなく、
現状ではそれらが自他商品の識別力又は出所表示機能を有してはいないと考えられ
ること、流通段階において、原告商品はその表面に大きく表示された「ニオイのみ
はり番」の周知商品名及び原告の著名商標「SEKISUI」の文字により、「積
水の冷蔵庫用脱臭剤」と通常認識されること、需要者である一般消費者は、テレビ
CMや新聞雑誌等の広告以外にも、店頭での商品陳列や商品カタログ等によって、
原告商品以外の多種類の同種被告商品及び他社製品があることを認識したうえで、
競合する数社の商品の特徴を比較検討したうで商品を選択することができる状況に
あり、また、この種商品が冷蔵庫内の人目に触れない場所で使用されるものである
ことなどの商品の用途及び使用態様から考えると、需要者が主としてその容器外形
に着目して商品を選択するものとは考えにくく、需要者である一般消費者の大半を
占める家庭の主婦層では、その種商品に対する商品知識も相当程度普及しており、
特にそれが日常家族が口にする食品と並べて使用されることからすると、脱臭能力
や安全性等の商品機能の面に専ら関心を注ぎ、それらの点の機能の優劣や製造販売
会社を詳細に吟味して商品を選択しているものと認められる。
3 結論
 以上のとおりであるから、原告主張の原告商品の形態が、原告主張の昭和五九年
の時点においても、本件口頭弁論終結時においても、不正競争防止法二条一項一号
にいう商品等表示としての機能を獲得しているものとも、またそうした表示として
周知性を取得しているものとも認めることはできない。したがって、その余の点に
つき判断するまでもなく、原告の不正競争防止法違反を理由とする侵害停止・損害
賠償請求はいずれも理由がない。
(裁判官 庵前重和 小澤一郎 本吉弘行)
別紙資料1及び2(省略)
 被告物件目録
(一)(1) 別紙被告物件写真(一)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、
平面図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤容器
(2) 右物品の意匠
 別紙被告物件図面(一)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図及び底
面図)に記載のとおり
(二)(1) 別紙被告物件写真(二)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、
平面図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤容器
(2) 右物品の意匠
 別紙被告物件図面(二)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図及び底
面図)に記載のとおり
(三) 別紙被告物件写真(三)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面
図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤(商品名「においパクパクジャン
ボ」)
(四) 別紙被告物件写真(四)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面
図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤(商品名「においパクパク」)
被告物件写真(一)
<27888-001>
<27888-002>
<27888-003>
<27888-004>
被告物件写真(二)
<27888-005>
<27888-006>
<27888-007>
<27888-008>
被告物件写真(三)
<27888-009>
<27888-010>
<27888-011>
<27888-012>
被告物件写真(四)
<27888-013>
<27888-014>
<27888-015>
<27888-016>
被告物件図面(一)
<27888-017>
被告物件図面(二)
<27888-018>
<27888-019>
<27888-020>
<27888-021>
<27888-022>
<27888-023>
<27888-024>
<27888-025>
<27888-026>
<27888-027>
<27888-028>
<27888-029>
<27888-030>
<27888-031>
<27888-032>
<27888-033>

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
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応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
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従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

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