弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 申立て
 (原告らの請求の趣旨)
 1 被告が平成15年4月22日付けでした東日本電信電話株式会社の第一種指
定電気通信設備に関する接続約款の変更の認可を取り消す。
 2 被告が平成15年4月22日付けでした西日本電信電話株式会社の第一種指
定電気通信設備に関する接続約款の変更の認可を取り消す。
 (被告の答弁)
原告らの請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
   本件は、電気通信事業者である原告らが、東日本電信電話株式会社及び西日
本電信電話株式会社の各社がした電気通信事業法に基づく第一種指定電気通信設備
に関する接続料の改定などを内容とする接続約款の変更申請の内容は、同法に違反
する不合理なものであるのに、これを被告が違法に認可したなどとして、認可処分
の取消しを求めた事案である。
 1 前提となる事実(括弧内に認定根拠を掲げた事実のほかは、当事者間に争い
のない事実か、弁論の全趣旨により容易に認定できる事実である。)
  (1) 当事者等
   ア 原告らは、電気通信事業法(平成15年法125号による改正前、以下
「事業法」という。)9条の許可に基づき、地域通信、長距離通信、国際通信等の
業務を提供する第一種電気通信事業者である。
イ 被告は、事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律(以下「NT
T法」という。)を所管する大臣であり、事業法に基づく接続約款の認可を行う権
限を有する者である。
ウ 東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本
電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。両社を併せて「NTT東西」と
いう。)は、日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律(平成9年法律第98
号)附則2条1項に基づき設立され、第一種指定電気通信設備を設置して地域電気
通信業務を提供する第一種電気通信事業者である。
エ 原告らは、NTT東西との間で、第一種指定電気通信設備の接続に関す
る協定を締結しているところ、当該協定における接続料及び接続の条件は、NTT
東西が被告から認可を受けた接続約款によることとなっている。
(2) 接続料の意義
  NTT東西が有している第一種指定電気通信設備を電気通信事業者(以下
「事業者」という。)が利用するための対価を接続料という。NTT東西の地域通
信網については、原告らを含む多くの事業者が自社の通信役務を提供するに当たっ
てこれと接続しており、事業者は、NTT東西の電気通信役務に係る費用を含めて
料金設定を行って利用者から料金を回収し、NTT東西に対して接続料を支払って
いる。
(3) 長期増分費用方式導入以前の接続料の算定方法
 ア 平成9年法律第97号における事業法の一部改正前は、接続料は、当事
者間の協議によって決定されていた。
ところが、電気通信役務の多様化が進む中で、新たな役務の提供を巡っ
て事業者間の協議が難航するなどの事態が生じたため、電気通信審議会(当時。現
在の情報通信審議会。)は、平成8年12月19日、日本電信電話株式会社(当
時。以下「NTT」ともいう。)の通信網とこれに接続する事業者との円滑な接続
を促進する観点から、「接続の基本的ルールの在り方について」と題する答申(甲
3)を行い、接続の義務化や不可欠設備(当該設備との接続が、他事業者の事業展
開上不可欠であり、また、利用者の利便性の確保という観点からも当該ネットワー
クの利用が確保されることが不可欠であるもの。)に着目した接続のルールの整備
等の提言をした。
 イ この答申を踏まえ、平成9年法律第97号によって事業法の一部が改正
され、同法38条において、第一種電気通信事業者は、他の電気通信事業者からそ
の設備に接続すべき旨の請求を受けたときは、正当な理由がある場合を除き、これ
に応じなければならないとされた。また、38条の2が追加されて、第一種指定電
気通信設備制度(以下「指定設備」という。)が導入され、郵政大臣(当時)が、
一定の通信網に含まれる設備を、他の電気通信事業者の電気通信設備との接続が利
用者の利便の向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に欠くことのできない電
気通信設備として指定することができるとされ(同条1項)、指定設備を設置する
事業者は、指定設備との接続に関する接続料及びその他接続の条件について接続約
款を定め、郵政大臣
(当時)の認可を受けなければならないとされた(同条2項)。他方、接続料につ
いては、認可の条件として「能率的な経営の下における適正な原価を算定するもの
として総務省令で定める方法により算定された原価に照らして公正妥当なものであ
ること」とされた(同条3項2号)。また、同条11項において、指定設備との接
続に関する会計(以下「接続会計」という。)を整理する義務が課せられ、同項を
受け、総務省令である「指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則」(以下
「原価算定規則」という。)において、接続会計結果に基づき、接続料の原価を算
定しなければならないとされた。具体的には、同時に制定された指定電気通信設備
会計規則(平成9年郵政省令第92号)に定めるところにより整理された資産並び
に費用及び収益に基
づき原価を算定することとされた(以下「実際費用方式」という。原価算定規則4
条ないし9条)。
(4) 長期増分費用方式導入に係る法改正等
 ア 電気通信審議会(当時)は、平成8年12月19日、「接続の基本的ル
ールの在り方について」と題する答申(甲3)を行い、実際費用方式で原価を算定
した場合、地域通信網はほぼNTTのみが保有していることから、指定設備を設置
するNTTにおいて、積極的に費用を削減するという誘因が小さく、市場競争によ
る費用削減が十分に期待できず、必ずしも接続料の低廉化が十分図られないこと等
から、より客観的かつ具体的な接続料算定を行う手段の導入が必要であるとして、
長期増分費用方式によって原価を算定するための技術モデルの構築を提言し、郵政
省(当時)は、これを受けて、「長期増分費用モデル研究会」を設置し、平成11
年9月、長期増分費用モデルの原型を確定し(甲4)、それを用いた「接続料算定
の在り方について」
を電気通信審議会に諮問したところ、同審議会は、平成12年2月9日、「接続料
算定の在り方について」と題する答申をまとめた(甲5の2)。
この答申を受け、事業法の一部が改正され(平成12年法律第79
号)、同法38条の2第4項が追加され、同項により、原価算定方式として長期増
分費用方式が導入された。
イ 長期増分費用方式とは、原価の算定に当たって、現実の電気通信役務の
需要を賄うために必要であり、かつ、最新の技術を用いた最も効率的な通信網構成
とするための設備種類や設備量を決定していくという手順によって通信網を仮想的
に構築し、この通信網の維持管理に要する年間費用(原価償却費、保全費等)を原
価とするものである(この仮想の通信網及び原価を算定する方法の総体を長期増分
費用モデルという。)。
ウ 上記の事業法改正を受けて、郵政省(当時)は、省令(接続料規則、平
成12年11月16日郵政省令第64号、以下「本件省令」という。)において、
長期増分費用方式を適用する設備について加入者交換機能等電話役務を提供するも
のとし(本件省令5条)、原価の算定期間を3年間とし(本件省令20条)、NT
T東西の経営に及ぼす影響を緩和するため、平成10年度の通信量等を用いること
を可能とすることとし(本件省令附則7条)、長期増分費用モデルによって算定さ
れた原価に基づく接続料を平成14年度までの3年間に段階的に実施することを可
能とする(本件省令附則8条)などの規定を整備し(乙14)、本件省令は、平成
12年12月31日から施行された(附則1条)。
  なお、NTT東西は、上記省令改正に従い、平成12年度ないし平成1
4年度の接続約款の認可を申請し、平成13年2月に申請どおり認可されたが、接
続料は、附則10条により、平成12年4月1日に遡及して適用されることとされ
た。
エ その後、平成12年2月9日の電気通信審議会答申において、長期増分
費用モデルには改良点があるとの指摘がされていたため、郵政省(当時)は、同年
9月、「長期増分費用モデル研究会」(以下「モデル研究会」という。)を設置
し、モデルの見直しを行い、平成14年3月8日、新しいモデル(以下「2次モデ
ル」という。)が公表された(甲7)。
オ 被告は、平成14年3月27日、2次モデルを踏まえ、接続料の算定方
法について、同モデルの適用期間、入力値としていつの時点の数値を用いるか、原
価の対象範囲、接続料を東西別とするか均一とするか等について、情報通信審議会
に諮問し(乙10)、同審議会は、同年9月13日、「長期増分費用モデルの見直
しを踏まえた接続料算定の在り方について」と題する答申(以下「平成14年答
申」という。乙11)をまとめた。
カ 平成14年答申の要点は以下のとおりである。
 (ア) 接続料の再計算期間
電気通信を取り巻く環境の変化が大きいと予想されることから、平成
15年度及び平成16年度の2年間とすることが適当である旨の答申をした。
 (イ) 入力値と精算
情報通信審議会においては、入力値について、通信量が大幅に減少を
始めている中で、いつの時点の通信量を用いて平成15年度及び16年度の接続料
を設定することが適当かという点について審議がされ、接続料設定には、モデル適
用期間内の予測通信量を用いることが最も望ましいが、予測が困難である場合に
は、平成15年度開始までに入手可能な直近の通信量を用いるものとし、この場
合、現実の通信量が当該直近の通信量と大幅に乖離することが予想される場合に
は、実際費用方式で用いられている精算制度と同制度の導入も検討されるべきであ
る旨の答申をした。
 (ウ) 接続料原価の対象範囲
   同審議会において、接続料原価の対象範囲について、き線点に設置さ
れる遠隔収容装置(以下「き線点装置」という。)等の通信量に依存しない費用
(以下「NTSコスト」という。)を原価に含めるか否か、含めない場合にはどの
ようにして当該費用を回収するのか、仮に基本料で回収する場合、現行の基本料金
のままで回収が可能かといった点について審議がされ、総務省に対し、NTSコス
トの取扱いを現行の基本料、施設設置負担金、各種の付加料金の取扱いと併せて、
抜本的体系的に再検討する場を早急に設け、そこでの検討結果を踏まえて可及的す
みやかに、現行の電気通信料金体系の見直しを図るよう要望する旨の答申をした。
 (エ) NTT東西別の接続料
同審議会は、接続料をNTT東西別とするか均一とするかについて審
議し、接続料をNTT東西別とすることが最善の方法であると判断するが、何らか
の激変緩和措置、例えば長期増分費用方式のコストに基づく接続料水準を即時に適
用するのではなく、年度ごとに段階的に適用する等の措置を講じる必要がある旨の
答申をした。
(5) 本件省令改正
 ア 総務省は、平成14年答申において、モデル適用期間内の通信量を用い
ることが最も望ましいとされたことから、「予測トラヒック研究会」(平成14年
10月から12月に実施)を設け、予測方法の検討を行った。
 イ 総務省は、平成14年答申を受けて、平成15年2月14日、長期増分
費用方式が適用される接続料の見直しに係る本件省令の一部改正案について、情報
通信審議会に諮問を行った(乙7)。諮問案の要点は以下のとおりである
(ア) 通信量及び精算
  予測トラヒック研究会において、一応の予測方法を確立したものの、
実際の接続料算定に利用することは困難であるとされたことから、平成14年答申
に沿って、直近の通信量である平成13年度下期及び平成14年度上期の通年化し
た通信量を用いて接続料を設定するものとし、実際の通信量が用いた通信量と大幅
に乖離した場合には精算を行うこと。
(イ) 接続料の再計算期間及び原価の対象範囲
接続料の再計算期間及び原価の対象範囲は、平成14年度答申を踏ま
え、再計算期間を2年とし、また通信量に依存しないNTSコストは原価の対象に
含めること。
(ウ) 東西均一料金
平成15年度及び平成16年度のNTT東西の接続料は均一とするこ
と。
 ウ 同審議会は、平成15年3月28日、精算の方法の修正や遡及日等の一
部の修正事項を除いて前記諮問案を適当とする旨の答申(以下「平成15年答申」
という。)をした(乙8)。すなわち、精算の方法については、諮問案では、通信
量の変動による影響額のうち5パーセントを超えた部分に限って精算するとしてい
たが、平成15年答申ではこれを改め、精算に係る負担額は、NTT東西と接続事
業者の各々の通信量の変動率の比率で配分したものとした。また、遡及日について
は、諮問案では平成15年4月1日から適用するものとしていたが、答申ではこれ
を改め、改正省令の施行の日から適用することができるとした。
 エ 総務省は、同年4月11日、平成15年答申に沿って、本件省令の一部
改正をした(同日総務省令第80号(以下「本件改正省令」といい、この改正を
「本件省令改正」という。)。
   本件改正省令の要点は以下のとおりである。
  (ア) 接続料算定に用いる通信量等
長期増分費用モデルに入力する通信量等について、平成13年度下期
及び平成14年度上期のものを用いることとする。具体的には、加入者交換機能
(本件省令第4条の表備考三のイからニまでの機能及びヘの機能を除く)、中継系
交換機能、中継伝送共用機能等について、本件改正省令19条所定の記録義務によ
り記録される年度毎の通信量等に代えて、指定電気通信事業者が現に記録している
平成13年度下期及び平成14年度上期の通信量等を用いて算定する(附則5
項)。
(イ) 精算
加入者交換機能等について、通信の総時間が一定以上変動した場合、
接続事業者と精算するものとする。具体的には、平成15年度又は平成16年度の
通信の総時間が平成13年度下期及び平成14年度上期の通信の総時間と比較して
15パーセントを超えて変動した場合精算を行い、精算に係る負担額は、NTT東
西と接続事業者の各々の通信量の変動率の比率で配分したものとする(附則8項な
いし11項)。
(ウ) 原価の算定について
原価の対象範囲について従来どおりき線点装置等のNTSコストを含
むものとする(本件改正省令6条、別表第1の1)。
(エ) 東西均一接続料
端末系交換機能(本件省令第4条の表備考三のヘの機能を除く)、中
継交換機能、中継伝送共用機能、中継伝送専用機能等について、平成15年度及び
平成16年度においては、NTT東西の原価及び通信量等を合算して接続料を算定
する(附則6項)。
(6) 本件各処分に至る経緯
 ア NTT東西は、平成15年4月18日、被告に対し、本件改正省令に基
づき、接続約款の変更申請をそれぞれ行った(乙2の1、2の2)。 総務省は、
同月22日、情報通信審議会に諮問したところ(乙4)、同審議会は、同日、審議
を行い、本件の問題点については、平成14年答申(乙11)、平成15年答申
(乙8)において審議が尽くされているとして、意見募集に付す必要はないと判断
し、即日これを認可することが適当であるとの答申をした(乙5)。
   被告は、平成15年4月22日、上記答申を受け、NTT東西に対し、
本件接続約款の変更を認可する旨の各処分(以下「本件各処分」という。)をし
た。
 イ 本件接続約款のうち、本件各処分により変更された部分の要点は以下の
とおりである。
(ア) 仮精算
平成15年度及び平成16年度における見込み通信量等に基づいて計
算した加入者交換機を経由する通信の総時間が、それぞれ平成13年度下期及び平
成14年度上期のNTT東西の実績通信量等に基づいて計算した加入者交換機を経
由する通信の総時間と比較して15パーセントを超えて変動した場合、加入者交換
機能に係る接続料について仮精算する。その際、見込み通信量等に基づいて計算し
た接続料と本件接続約款に基づく接続料との差額に、総通信量の変動率と接続通信
量の変動率の割合に応じた比率を乗じて、仮精算額を決定する(それを各接続事業
者の実績通信量等に応じて当該事業者に振り分ける。)。そして、平成15年度及
び平成16年度の実績通信量等に基づいて計算した接続料と本件接続約款に基づく
接続料との差額に、上記
と同じ方法で算定した比率を乗じた精算額を確定し、仮精算額との差額を精算する
(本件接続約款附則4項)。
(イ) 遡及適用
改訂接続料については、平成15年4月11日に遡及して適用する
(本件接続約款附則2項)。
 2 当事者の主張
(原告らの主張)
(1) 違法事由①(本件処分に当たり利害関係人の意見を聴取しなかった違法)
 ア 被告から平成15年4月22日付けで本件接続約款の認可について諮問
を受けた情報通信審議会は、即日認可を適当とする旨の答申を行い、これを受けた
被告は同日本件各処分を行ったものであり、原告ら接続事業者からの意見聴取が行
われることはなかった。原告らは、本件接続約款の当事者であり、接続約款の認可
という行政行為が公正な手続によってなされることについて法的利益を有するもの
であるから、本件各処分をするに当たり原告らの意見を聴かなかったのは、違法で
ある。
 事業法94条は、接続約款の認可に当たっては審議会に諮問すべき旨規
定しているところ、これを受けた情報通信審議会は規則において具体的な手続を定
めており、①審議会は、その調査審議に当たり、必要と認めるときは、当該調査審
議と関連を有する利害関係人その他の参考人から公聴会その他の方法により意見を
聴取することができ(情報審議会議事規則5条)、②部会長は、指定電気通信設備
に関する接続約款に関する認可については、軽微な案件を除き、同規則5条の規定
による意見の聴取を行わなければならないとされている(接続に関する議事手続規
則、(以下「議事手続規則」という。)2条、甲18、19)。本件接続約款の認
可が議事手続規則2条の軽微案件に当たらないことは明らかであり、同審議会が答
申に当たり意見募集を
しなかったことは、同規則に違反しており、適正手続の観点から看過し難いもので
ある。
イ 電気通信審議会(当時)及び郵政省(当時)は、接続約款の認可につい
て接続事業者の意見を聴くべきであるとの見解を答申ないし国会答弁等で何度も明
らかにしており(甲20ないし23)、接続約款認可について諮問を受けた審議会
が意見聴取を行うことは立法者意思であったというべきであり、これまで接続約款
認可に当たって接続事業者の意見聴取が慣例的に行われてきており(甲21、24
ないし28)、慣習法ともいうべき状態となっていたことからすれば、本件各処分
に当たり、接続事業者の意見を聞かなかったことは、法的に看過し難い手続過誤と
いうべきであり、かような不公平な取扱いは、規制機関が行う決定が市場のすべて
の参加者について公平でなければならないというWTO基本合意参照文書にも反す
る。
ウ 原告らは、意見照会を受けない限り、接続約款の内容を知り得る立場に
ないのであって、接続事業者の意見を聴取することなく接続約款の認可を行うこと
は、接続事業者を不公平に扱うことにほかならず、適正手続という観点からは法的
に看過できない。
エ なお、本件各処分の前提となった本件省令の改正については、意見聴取
が行われているが(乙8)、①本件省令改正の前後で、減少したトラヒック(通信
量)のうち5パーセントを精算対象外とするとの規定を除外し、精算の対象となる
通信量及び他の入力値について、NTT東西と全接続事業者との間で、通信量の変
動率に応じて精算額を決定する点で重要な変更があり、②接続事業者からは、再意
見募集やヒアリングの形でさらに議論を深める必要があるとの意見が提出されてお
り、③本件接続約款においても、仮精算の規定が新たに入り、施行時期を遡及させ
る点で重大な変更があったのであるから、本件接続約款の認可申請に当たっては再
度意見聴取する義務を免れないというべきである。
オ 被告は、本件各処分について、被告ないし情報通信審議会において、利
害関係人の意見聴取をすべき義務を課した法令はなく、他に当該処分の名宛人であ
る申請人以外の者について聴聞等の手続を執るべき義務を課した法律もないことか
ら、利害関係人の意見聴取は本件各処分の手続要件ではない上、議事手続規則は、
事業部会の自律的な規範に止まり、本件各処分の手続要件にはならない旨主張す
る。
 しかし、憲法31条ないし条理により、行政処分に告知・聴聞が必要で
あること、行政処分の手続的違法は、当該処分の根拠法令に定められた要件の該当
性のみで判断されるものではなく、実際に行われた審議及び判断過程に看過し難い
過誤、欠落があったか否かという観点からなされるべきものである上、行政庁が内
部的に設定する行政規則であっても、裁量権の公正な行使の確保、平等取扱いの原
則、相手方の信頼保護といった要請からすると、一定限度で外部との関係でも法的
効果を有するものと解すべきであって、単なる自律的規範に止まるとすることはで
きない。
 また、接続約款認可制度導入以前は、接続の条件は接続協定によって定
めることとされ、事業者間協議に委ねられていたが、接続に関して公正有効競争条
件を確保するため、接続約款認可制度が導入されたものであるから、接続協定から
約款認可に制度改正がなされても、接続の内容を決定する手続に接続事業者が参加
できる権利は確保されなければならない。そして、事業法38条の2第7項は接続
約款により難い特別な事情がある場合は、旧法と同様に接続協定を前置する手続を
設けていることからしても、接続事業者の意見聴取を行うことは、法の要請という
べきであるから、議事手続規則の規定は、単なる部会内部の自律的規範に過ぎない
ものではなく、事業法の定める手続規定と同視しうるものというべきである。
カ 被告は、本件各処分に際しては、本件省令改正の際になされた意見聴取
において議論が尽くされ、新たに導入した事項(仮精算手続等)も接続事業者の意
見を斟酌したものであるから、情報通信審議会が本件各処分に当たって重ねて意見
募集する必要がないと判断したことは、議事手続規則2条1項ただし書き(軽微な
案件であって部会が意見を要しないと認めるものについては意見聴取を不要とする
旨の規定)に該当する旨主張する。
 しかし、同規則にいう「軽微な案件」とは、案件自体の軽微性を指すも
のであり、重大な案件であれば、たとえ省令改正と実質的に同一の処分をする場合
であっても原則として繰り返し意見聴取することが求められるところ、本件接続約
款の認可処分が軽微なものでないことは、接続事業者に与える経済的影響や、審議
会における審議経過に照らしても明らかである。
 しかも、本件改正省令と本件各処分とでは、前記エのとおり、実質的に
同一の内容が定められたとはいえない。すなわち、本件改正省令ではトラヒック減
少分5パーセントは精算の対象としないことになっていたのに対し、本件各処分で
はNTT東西と接続事業者の通信量の変動率に応じて精算することになっており、
NTT東西のトラヒック増加のインセンティブを維持するやり方として全く異なる
ものである上、後者のように変動率で精算する場合、接続事業者のトラヒックを総
体でみるために起こる不合理性(1社がトラヒックを上げても他社のトラヒック減
少で精算が発生し、トラヒックが増えた社ほど精算額が増える)を見れば、これを
もって実質的に同一の内容が定められたとはいえない。また、本件各処分時点で仮
精算という制度を新た
に導入し、施行時期を平成15年4月11日に遡及させる点でさらに変更があった
ものであるから、本件各処分に当たっての意見聴取義務は免れないというべきであ
る。
   キ 被告は、情報審議会規則は、意見聴取するかどうかを審議会の裁量に委
ねており、議事手続規則も意見聴取しない場合を定めているから、意見聴取が立法
者意思・慣習法とはいえない旨主張する。
 しかし、これまで、省令改正時だけでなく接続約款認可時にも重ねて意
見聴取が行われてきた上、国会答弁でも被告は省令改正と約款変更の双方について
ヒアリングを行うと明確に述べている(甲83)ことからすれば、意見聴取が接続
約款認可に当たって必要であるというのは明らかに立法者意思であり、たとえ慣習
法と言い得るまでには至っていないとしても、上記のような瑕疵は、本件各処分に
おいて看過し難い過誤、欠落というべきである。
   ク 被告は、NTT東西は、申請前日に約款内容を報道発表しており、意見
聴取がなくても約款の内容を原告らは知り得るから、原告を不公平に扱ったことに
ならない旨主張する。
 しかし、NTT東西の報道発表は申請当日であり、しかも、約款内容を
開示したとはいえないような簡略なものである(甲84)上、本件で問題なのは被
告が意見聴取をしないことなのであって、原告らが事前に約款内容を知り得ても意
見聴取がない以上、不公平な取扱いであることに変わりはない。
(2) 違法事由②(他事考慮等の判断過程の過誤に基づく違法)
被告は、本件省令改正及び本件各処分を行うに当たり、①NTT東西の意
見を優先して聴取し、②本件各処分に際して接続事業者の意見聴取をせず、③NT
T東西均一接続料を認めているが、その結論に至る過程が不透明であることからす
れば、「手続的コントロール」の観点からみて看過しがたい過誤・欠落があるとと
もに、④NTT東西の経営問題を優先的に斟酌しており、「審査密度の向上」の観
点からみても看過し難い過誤・欠落がある。
ア NTT東西の意見を優先的に聴取した点
 (ア) 被告は、情報通信審議会に対して平成14年3月27日付けで、
「長期増分費用モデルの見直しを踏まえた接続料算定の在り方」について諮問し、
同年9月13日付けで答申がなされたが、その間、審議を行う電気通信事業部会の
接続委員会において、NTT東西は非公開の接続委員会の参考人として5回招致さ
れているのに対し、接続事業者はNTT東西と同席で1回招致されたのみである
(甲9ないし13)。しかも平成14年6月13日の接続委員会に接続事業者が初
めて参考人招致された時点で、既にNTT東西は2度にわたってヒアリングを受け
ていた上、NTT東西のみが参考人として出席した4度の接続委員会においては、
NTT東西の経営状況に関するヒアリングがなされているのに、接続事業者にはそ
のような機会は与えられて
おらず、NTT東西からは詳細な経営資料が提出されているにもかかわらず、接続
事業者が同様の資料の提出を求められることはなかった。さらに、接続委員会で
は、NTT東西を招致していない席でも、ほとんどNTT東西が提出した資料のみ
をもとに審議を行っている(甲14ないし16)。
 これらの事実からは、本件接続約款の当事者の一方にすぎないNTT
東西のみの意見に基づいて本件省令改正、本件各処分がなされたと評価しうるもの
であり、規制機関が行う決定及び規制機関が用いる手続は、市場のすべての参加者
に公平でなければならないとするWTO基本合意参照文書(甲17)にも反し、適
正手続の観点からは看過し難い違法があったというべきである。
(イ) 被告は、接続委員会がNTT東西のみを対象とするヒアリングを行
い、両社に対してのみ資料の提出を求めたのは、両社の経営内容を確認、検証する
ためであり、それは両社の経営内容、財務内容に及ぶものであるから、かような接
続委員会の措置には合理的理由があった旨主張する。
しかし、NTT東西の経営資料そのものを原告らに提示せずとも、営
業秘密の漏洩にならない範囲でその概要は開示されてしかるべきであるし、それに
基づくNTT東西の主張につき原告らが公開の場で反論する機会を設けるべきであ
る。しかも、原告らは、NTT東西がしたような経営資料の開示を被告から求めら
れたことはないのであって、NTT東西の経営問題に配慮して接続料の値上げを認
可すれば、それは、接続事業者のコスト増となり、利用者料金の値上げを招きかね
ないのであるから、NTT東西のみから経営問題のヒアリングを実施したことは、
公正有効競争条件の確保、利用者利便の増大という観点から、看過し難い過誤、欠
落というべきである。
 (ウ) 被告は、①長期増分費用方式を維持したこと、②長期増分費用方式
の対象を拡大したこと、③事後精算を限定したこと、④トランクポート等を個別事
業者の負担としなかったこと、以上の点においてNTT東西の意見に反する結論を
採用しているから、本件省令改正・本件各処分がNTT東西の一方的な意見に基づ
くものではないと主張する。
しかし、今回の制度改正は、長期増分費用方式を前提としたものであ
るから、長期増分費用方式を維持したことは、何らNTT東西に不利な扱いをした
ことにならないというべきである。それよりも、事後精算制度を導入したことは、
長期増分費用方式を実質的に無効とするような大改正であり、その内容を限定した
からといってNTT東西に不利な内容であるとは到底評価できない。その他の事項
は、NTT東西に一方的に有利な条件を若干見直しただけであり、全体として本件
省令改正・本件各処分がNTT東西の意見を一方的に取り入れたものであるという
評価は変わらないというべきである。
 (エ) 被告は、WTO基本合意参照文書は、本件省令改正・本件各処分の
手続的違法を基礎付けるものではないし、本件省令改正の手続において不公平な取
扱いはなかったと主張する。
しかし、WTO基本合意参照文書は、条約として本件省令改正・本件
各処分に直接適用され、または事業法5条を通して間接的に適用されるものである
上、条約によって政府が合意した手続的要件を踏まないことは、判断の過程におけ
る看過しがたい欠落というべきである。
   イ NTT東西均一接続料を認める過程が不透明である点
    (ア) 情報通信審議会の平成14年答申では段階的実施が望ましいとの留
保付きではあるがNTT東西の接続料を別料金とする旨の答申が出されていたにも
かかわらず、同審議会は、平成14年答申を自ら覆し、それと矛盾するNTT東西
均一接続料を認める本件省令改正・本件処分を認める旨の答申を行ったのである
が、その間に、衆議院と参議院の総務委員会においてNTTの接続料は平成15年
度以降も引き続き東西均一を維持すべき旨の決議がなされ(乙9、10)、NTT
東西の接続料を別料金とするのが適当であるとの答申を中心になってとりまとめた
情報通信審議会委員の再任が拒否されるという事情が介在したことは、本件省令改
正・本件各処分がなされるに至る手続が透明性・公平性を欠くことを裏付けてい
る。
(イ) 被告は、情報通信審議会の意思決定過程の透明性なるものは、本件
各処分の手続的要件ではない旨主張する。
しかし、前記のとおり、行政処分の手続的違法が根拠法令の明示する
要件の違反に限られず、WTO基本合意参照文書第5項の「規制機関が行う決定及
び規制機関が用いる手続は、市場のすべての参加者について公平でなければならな
い」という規定(甲17)は、行政手続の透明性を当然に含むものというべきであ
る。
(ウ) 被告は、衆参両院総務委員会が決議を行ったのは国民の代表者とし
ての責務を行使しただけであり、何ら不透明な点はない旨主張する。
しかし、被告は、①平成14年8月1日付けで東西均一接続料の維持
を内容とする答申原案を作成していたこと(甲33)、②NTT東西は同月29日
の公開ヒアリングで東西均一接続料の維持とそのための交付金の必要性を訴えたこ
と(甲85)、③情報通信審議会は同年9月13日に東西別接続料が適当である旨
の答申を出したこと(乙11)、④被告は東西別接続料の導入を求めた答申に対し
て消極的な意見を述べたこと(甲86の1、86の2)、⑤同年11月28日衆参
両院総務委員会において東西均一接続料を求める決議がなされたが(乙9の1、9
の2)、同日、被告は衆議院総務委員会で東西均一接続料交付金の必要性について
答弁し、財務省との間で「NTT東西の接続料にかかる交付金の損金算入」につい
て協議を行っていること
(甲87)、⑥被告は、同年12月付けで「『NTT東西の接続料に係る交付金の
損金算入』ご説明資料」なる書面を作成したこと(甲88)が認められ、これらの
事実によれば、被告は、早くからNTT東西均一接続料の維持を規定方針としてお
り、それに沿った答申案を用意したものの、審議会答申がそれと異なるものとなっ
たため、国会を利用して巻き返しを図り、東西均一接続料を維持するための交付金
に関する税制優遇措置を財務省に求めたものであり、行政手続に要求される公平
性、透明性に反することは明らかである。
    (エ) 被告は、情報通信審議会の委員について任期満了時の再任を義務付
けられるものではなく、NTT東西の接続料を別料金とするのが適当であるとの答
申を中心になってとりまとめた委員が任期満了後に再任されなかったのは異例の事
実でもなければ、外部からの働きかけがあったものでもない旨主張する。
 しかし、審議会委員の任期は学識経験者であれば、4期8年が慣例で
あるにもかかわらず、当該委員は3期6年3か月でありながら再任されなかった
(甲34、37、38の1ないし5)のであって、異例な措置というほかなく、同
委員に対して異例の再任拒否がなされたのは、被告の意向に反してNTT東西別接
続料を強硬に主張し、NTT東西均一接続料を認めていた事務局案を変えさせたか
らにほかならない。
(オ) 被告は、NTT東西均一接続料の維持を求める意見も多数寄せられ
ており、情報通信審議会はそれを斟酌して意思決定したものであり、反対意見を押
し切ったということはない旨主張する。
しかし、情報通信審議会の答申を特段の事情変更もなく覆し、有力な
反対意見があってもNTT東西均一接続料を押し通したことが問題であり、国会決
議や審議会委員の再任拒否と相まって、本件省令改正・本件各処分に至る手続が不
透明であることを裏付けているものであるから、これらの経緯があたかも存在しな
かったかのごとき被告の主張は失当である。
   ウ NTT東西の経営問題を優先的に斟酌した点
    (ア) 被告及び情報通信審議会は、NTT東西の経営問題を根拠に、事業
法の定める適正原価に反して、NTT東西均一接続料、NTSコストの接続料原価
への算入、短かすぎる経済的耐用年数や、低すぎる効率化係数の採用、事後精算制
度の導入等、NTT東西に有利な措置を採っており、NTT東西の経営問題を優先
的に斟酌したことは明らかであり、行政にあってはならない他事考慮であり、また
行政行為に求められる平等原則に違反する。
(イ) 被告は、この点は本件改正省令の内容の適法性の問題であり、これ
自体が独立して違法事由となることはない旨主張する。
しかし、原告は、行政裁量に対するコントロールの手法として、行政
庁の判断した材料及びその判断の仕方を問題とする方法を援用しているものであ
り、これが実体判断に近づくことは当然であるけれども、実体判断そのものではな
いのであって、これを独立の違法要素とすることは可能というべきである。
(ウ) 被告は、平成14年答申はNTT東西の意見とは反対の結論を導い
た部分もあり、NTT東西の経営問題を優先したことはない旨主張するが、前記の
とおり失当である。
(3) 違法事由③(事業法が認めない事後精算制度を導入した違法)
 ア 事業法の委任の範囲を超えていること
   法律による行政の原理の1つである「法律の留保」の原則によれば、省
令等の行政立法において、国民の権利義務に関する定め(法規命令)をするには、
法律の委任のある場合に限られるところ、本件改正省令によって導入された事後精
算制度は、明らかに国民の権利義務を規定する法規命令であり、これは法律の委任
を要するものである。しかるに、事業法が事後精算を省令に委任しているとは解さ
れないから、本件改正省令のうち事後精算を定めた部分は、法律の委任によらない
法規命令であって、無効というべきである。
(ア) 事業法に事後精算を認めた規定は存しないから、事後精算を省令に
よって導入することは事業法の委任に基づかないものである。なお、事業法38条
の2第12項の定める接続料の再計算は、将来にわたって接続料を改定するための
規定であり、これをもって遡及的な事後精算を定めたものと解することはできな
い。
(イ) 長期増分費用方式に関する事業法改正における立法者意思は、長期
増分費用方式では事後精算は認めないというものであり、本件改正省令はかような
立法者意思に反するものである。すなわち、実際費用方式においては省令によって
事後精算が認められていたが、長期増分費用方式が導入された際には、接続料規則
において明示的に精算の対象から除かれている(接続料規則22条かっこ書き)こ
とからすれば、長期増分費用方式では精算しないというのが立法者意思であったと
見るのが相当である。
(ウ) 元来、精算とは債務の確定前に概算で支払った費用につき債務の確
定後に過不足を調整するための概念であって、実際費用方式を前提とするものであ
るところ、長期増分費用方式は、あくまで仮想のモデルによる予測値を前提とする
ものであって、かような長期増分費用方式の本質(フォワードルッキング性)と精
算という概念は相容れないものである。また、長期増分費用方式を導入するに至っ
たのは、諸外国に比べ高額な接続料を引き下げ、利用者利便の増進を図る一方、実
際費用方式では困難であったNTT東西の不経済なコスト構造の是正を実現するこ
とが目的であるところ、事後精算を導入することは、長期増分費用方式に実際費用
方式の考え方を持ち込むものにほかならず、長期増分費用方式を導入した事業法改
正の立法趣旨に反する

(エ) 以上のとおり、文理解釈、立法者意思、制度導入の趣旨のいずれの
観点からしても、事業法は長期増分費用方式について事後精算を認めていないと解
すべきであり、事後精算を定めた本件改正省令は、事業法の委任を超えた無効なも
のというべきである。
イ 法の一般原則である遡及効の禁止に反している
事後精算に関する本件改正省令の内容は、通信量の低下に応じて接続料
の単価を改定するものであり、一旦発生した接続料を、その後に生じた事実を基に
遡及的に変更するものにほかならない。
しかし、法律行為の効力は原則として遡及せず、遡及効を有するのは法
律に特に規定がある場合に限られるというべきであって、事業法に遡及効の規定が
ないにもかかわらず、本件改正省令が接続料の事後的改定(遡及効)を認めたこと
は、法の一般原則に反し無効というべきである。
したがって、本件改正省令のうち、精算を認めた部分は無効であり、本
件改正省令に基づく本件各処分は違法である。
   ウ 事後精算の方法が事業法に反している
(ア) 事業法38条の2第3項2号違反
本件改正省令附則8項は、通信量が15パーセントを超えて変動した
ことを精算発動の要件としており、同10項は、精算額を算定する際に、NTT東
西を合算した通信量と接続事業者を合算した通信量を比較し、通信量の変動率の割
合に応じて精算額を決定する旨定めている。しかし、前者については、合理的な根
拠なく恣意的に設定されたものにほかならないし、後者については、通信量の変動
率は各社ごとに異なるはずであるのに、それをまとめてしまうため、ある社が通信
量を増加させても、他社が通信量を減少させたため、全体として精算を発生させる
事態となった場合には、通信量を増加させた者ほど精算による影響が拡大するとい
う不合理が生じる。これらのことは、接続料が適正な原価に基づく公正妥当なもの
でなければならないとい
う事業法38条の2第3項2号に反するもので、無効であるから、それに基づく本
件各処分は違法である。
(イ) 事業法38条の2第12項(再計算規定)違反
接続料の再計算について定めた事業法38条の2第12項は、長期増
分費用方式の場合、認可後5年を超えない期間内で総務省令で定める期間を経過す
るごとに接続料を再計算しなければならない旨規定しているところ、これは再計算
期間が経過するまでは再計算はしないことを事業法が定めたものと解すべきであ
り、本件改正省令は、総務省令の定める期間経過ごとではなく、各年度ごとに接続
料の再計算がされることとなり、これは事業法に定めのない再計算を認めるもので
あって無効というべきであるから、本件改正省令に基づいてした本件各処分は違法
である。
エ この点につき被告は、①事後精算制度は、被告が、事業法38条の2第
3項本文及び2号によって付与された裁量的権限に基づき、通信量が大幅に変動し
た場合に、接続料が適正な原価を算定するものとして本件改正省令で定める方法に
より算定された原価に照らし公正妥当なものとするために設けたものである、②長
期増分費用方式が導入された際に精算の対象外としたのは、激変緩和措置として、
直近のトラヒックではなく前年のトラヒックを用いて算定した値を平成14年度に
達成すべき接続料とし、それに向けて段階的に接続料を引き下げる方法を採用した
ため、事後精算を行うと激変緩和措置の効果が没却されるからである、③長期増分
費用方式における「フォワードルッキング」とは、実際に使用している設備・ネッ
トワークを前提とする
のではなく、現時点で利用可能な最も効率的な設備や技術を利用することを意味す
るので、事後精算と矛盾しない、④長期増分費用方式であっても、実績としての通
信量の変動次第では、当初算定された接続料の額が、総務省令で定める方法により
算定された原価に照らし公正妥当なものでなかったと評価される可能性があること
に変わりはないなどと主張するが、これらは事業法の解釈を誤ったものである。
オ 上記①については、総務省令に委任されたのは「適正な原価」の算定方
法を定めることであり、それ以上に通信量等の変動による接続料の精算を定める権
限まで総務省令に委任されたものではないこと、通信量等の変動によって不公正に
なった接続料の是正というのは、授権規定である事業法の定める目的ではなく、本
件改正省令によって定められた目的に過ぎないことからすれば、本件改正省令は、
事業法の委任の範囲を超えた違法なものである。しかも、事業法は、認可を受けた
接続約款に基づく接続料が原価に照らして不適当となった場合、総務大臣が接続約
款の変更又は変更申請を命ずることができると定めている(事業法36条2項、3
項、38条の3第3項)のであるから、接続料が原価に照らして公正妥当でなくな
った場合は、これら総
務大臣の命令によって是正するというのが事業法の立場であり、不公正な接続料の
是正措置を総務省令で定めるというのは、事業法の委任を超えた違法な措置という
ほかない。
カ 上記②については、被告は、長期増分費用方式が導入された際に精算の
対象外とされたのは、激変緩和措置を没却しないためであると主張するが、それを
裏付ける証拠は何ら提出されていない。
キ 上記③については、長期増分費用方式における「フォワードルッキン
グ」が「現時点で利用可能な最も効率的な設備や技術を利用することによって新た
にネットワークを構築した場合」という意味であることは、事後精算と矛盾するも
のである。なぜなら、仮想の設備について適正な原価を算定して設定された接続料
であれば、たとえ事後的に通信量等が変動しても、それが「原価に照らして公正妥
当」である状況に変わりがないというべきだからである。しかも、長期増分費用方
式を導入した目的は、実際費用方式ではインセンティブが働かないNTT東西の効
率化にあるのだから、そのようなインセンティブを削ぐ結果となる事後精算制度を
導入することが長期増分費用方式導入の目的に反することは明らかである。
ク 上記④については、仮に、長期増分費用方式において、事後的な通信量
等の変動により、接続料が不公正となり、是正の必要性が生じることがあるとして
も、新たな通信量等で再計算した接続料によって過去の接続料を改定し、その差額
を精算するという制度を設けることは、事業法の委任の範囲を超えたものというほ
かない。
(4) 違法事由④(原価の異なるNTT東西の接続料を均一とした違法)
ア 本件改正省令・本件各処分は、NTT東西の接続料を均一に設定するも
のであるが、NTT東西の原価が異なることは明らかであり、それを均一にするこ
とが「適正な原価」を反映しないことも明らかであり、事業法38条の2第3項2
号、同4項に反し、違法である。
イ ところで、NTT法附則16条(平成15年7月24日法律第125
号)によって、NTT東日本からNTT西日本に対し、接続料の水準が同等となる
ことを確保するために金銭交付をすることが認められ、それによって、NTT東西
均一接続料金が事業法38条の2第3項2号(適正な原価)に適合しているものと
みなす旨の規定が設けられ、同改正法が平成15年9月30日施行されている(甲
1の7、1の8)が、本件改正省令・本件各処分がされた時点では、それらの行為
が適正な時価に反していたことは明らかであるから、このような法律改正があった
からといって、いわゆる瑕疵の治癒の理論により本件改正省令・本件各処分の違法
性が遡って否定されることはないというべきである。すなわち、本件においては違
法性の程度が大きいうえ
、行政庁が自ら違法と判断しつつあえて行い、後日、それを取り繕うように法律改
正が行われていること、適正な手続で審議をやり直せば、再審査の結果が同一とな
るとはいえないことから瑕疵の治癒は認められない。
ウ 被告は、①NTT東西均一接続料は、被告が、事業法38条の2第3項
本文及び2号によって付与された裁量的権限に基づき、ユニバーサルサービスの考
え方に基づくNTT法3条及び事業法72条の5の趣旨を考慮し、NTT東西の接
続料に格差が生じることにより利用者料金に看過し難い格差が生じることがないよ
うにし、もって、接続料が適正な原価を算定するものとして本件改正省令で定める
方法により算定された原価に照らし公正妥当なものとするために設けたものであ
る、②NTT法附則16条は、ユニバーサルサービスを確保するために接続料を均
一にすることによって発生するNTT東西における接続料収入と原価との乖離を是
正するための措置であり、この条項がNTT東西均一接続料の根拠となるのではな
い、③ユニバーサルサー
ビス基金は費用補填の在り方を定めたものであり、NTT東西均一接続料の適否と
は関係がないなどと主張する。
エ しかし、上記①については、事業法38条の2第3項本文及び2号によ
って付与された被告の裁量的権限とは、総務省令で「適正な原価」を算定する方法
を規定するためのものであり、それに加えて、そのように算定された原価に照らし
て接続料を公正妥当なものとするために新たな料金設定方法に関する規定を総務省
令で設けることは、同条の委任の範囲を超えるものであり、NTT東西の接続料格
差を是正するというのは、事業法によって定められた目的ではなく、総務省令が定
めた目的にすぎず、NTT東西の接続料格差の是正のために、NTT東西のコスト
に基づかない料金設定を行うことは、WTO基本合意参照文書等に反する。
 また、被告は、NTT法3条及び事業法72条の5のユニバーサルサー
ビスは、利用者料金の格差が生じないことも含むものである旨主張するが、そもそ
もユニバーサルサービス自体、NTT東西の法的義務ではないうえ、上記のNTT
法3条及び事業法72条の5の条文上も利用者料金の均一性まで要求しているもの
ではないことは明らかである。情報通信審議会の平成14年答申においても、NT
T東西という異なる会社間で料金が同一でなければならないとする合理的根拠を見
出し難いとしており、ユニバーサルサービスを根拠にNTT東西均一接続料を導く
ことはできないものというべきである。
オ 上記②については、NTT法附則16条は、交付金提供の目的をNTT
東西の接続料が同等の水準になることを確保するためとし(1項)、NTT東西の
接続料原価を合算することを認め、それによって事業法38条の2第3項2号に適
合するものとみなすことにしている(2項)のであって、同条がNTT東西均一接
続料の根拠となっていることは明らかである。仮に、被告の主張するとおり、NT
T東西均一接続料がもともと事業法38条の2第3項2号に合致しているのなら、
原価の乖離は何ら違法ではなく、その是正の必要もないから、NTT法附則16条
を設ける必要はないのであって、交付金による是正が必要なのは、均一接続料のま
までは適正な原価という要件は満たさないからにほかならず、NTT法附則16条
は、NTT東西の原価
を合算することにより、本来適正な原価でないものを「適正な原価」として事業法
38条の2第3項2号に適合したものとみなすという法律効果を生じさせるもので
あって、同条により初めてNTT東西均一接続料が適法になるものである。
 被告は、NTT法附則16条2項は、基礎的電気通信役務以外の接続料
も東西均一とされた場合に、それが違法ではないかとの疑念を解消するために注意
的に置かれたものである旨主張する。
 しかし、基礎的電気通信役務以外の接続料はユニバーサルサービスとは
無関係であるから、被告の立論でも接続料を均一にする根拠は全くないこととな
り、これは、NTT法附則16条2項によって初めて適法性を付与されることを言
っているのにほかならない。しかも被告の主張によれば、基礎的電気通信役務につ
いては、ユニバーサルサービスの観点から接続料を均一にすることが同項を待つま
でもなく認められるというのであるから、同項は、ユニバーサルサービスに関係の
ない電気通信役務についてNTT東西均一接続料を認めるためだけに規定されたこ
とになってしまうという不当な解釈をせざるを得ない。
 なお、NTT法附則16条は、NTT東西均一接続料を「適正な原価」
とみなすものであるが、これはWTO基本合意参照文書に反しているものというべ
きである。なぜなら、WTO基本合意参照文書にある「cost-oriend」
という概念は、事業法38条の2第3項2号所定の「適正な原価」と同義であり、
NTT東西均一接続料が「適正な原価」に反するものであることは明らかだからで
ある。
   カ 上記③については、原告らが主張しているのは、ユニバーサルサービス
基金があるから違法だと言っているのではなく、適正な原価に基づく接続料を設定
したのに、ユニバーサルサービスの趣旨からNTT西日本の収益が悪化するという
ことがあったとすれば、ユニバーサルサービス基金からの補填を受けることで問題
を解消するのが制度本来の趣旨であり、事業法に反してまで省令によってNTT東
西均一接続料を導入する理由がないということであるから被告の主張は根拠がな
い。
(5) 違法事由⑤(適正な原価に基づかない接続料を認めた違法)
  本件接続約款の定める接続料は、①NTSコストを原価に含んでいるこ
と、②伝送装置の経済的耐用年数が不当に短いこと、③NTT東西の効率化係数を
不当に低く算定していること、以上の点で「適正な原価」に基づかないものであ
り、事業法38条の2第3項2号、同第4項に反する。
 ア NTSコストを原価に含めている点
  (ア) 接続料規則においては、き線点装置の費用が加入者交換機の費用と
して接続料の原価に含まれているが(接続料規則6条、同別表第1の1、甲1の
3)、き線点装置は、加入者回線設備の一部であって、中継網及び加入者交換機の
機能を有するものではないから、加入者回線数に依存するものの、通信量に依存す
るものでなく、「適正な原価」という観点からは基本料の原価と考えるべきであ
り、接続料の原価と考えるべきではない。
    欧米先進諸国においても、NTSコストを接続料に含まないとするの
が圧倒的であり、同コストを接続料に含めることは、WTO基本合意参照文書(甲
45)に反する。
    ところでNTSコストの扱いについては、平成12年度に長期増分費
用方式が導入された時点から既にその取扱いが問題となっており(甲46)、平成
12年2月9日付け「接続料の在り方について」の電気通信審議会答申においても
見直しの必要性を指摘され(甲5の1、5の2)、日米協議では平成14年中に決
定することを約束していた(甲47ないし50)にもかかわらず、被告は約束され
た期限までに結論を出さず、本件省令改正に際しての平成15年答申においても
「NTSコストの回収方法については、基本料の扱いと併せて抜本的体系的に再検
討を行い、その検討結果を平成17年度以降の接続料の算定に適切に反映させるこ
と」とされたのみであり(乙8)、被告が正当な理由なく問題を先送りしているこ
とは明らかであり、か
ような不作為も本件改正省令・本件各処分の違法性を基礎づけるものというべきで
ある。
  (イ) 被告は、き線点装置が接続料の原価に含まれるのは、き線点装置の
機能が加入者交換機の機能の一部を代替したという歴史的経緯によるものと主張し
ているが、き線点装置は、もともと加入者回線の費用節減のために設置されてきた
ものであり、集線(複数の回線を合計回線数容量以下の回線容量に集束し回線の能
率を向上させること)を行っておらず通信量に依存していないものであって、き線
点装置が加入者交換機の機能を代替していたというのは根拠がない。
  (ウ) 被告は、き線点装置に係る費用を基本料の費用範囲とすれば、基本
料の値上げ圧力となり、社会的合意が困難であるとするが、そもそも、事業法上接
続料金は「適正な原価」に基づき設定されなければならず、それにより基本料が値
上げになるかどうかとは本来関係がないはずであるし、NTSコストも通信コスト
として最終的には利用者が負担するものであり、それが基本料として回収される
か、通信料として回収されるかの違いにすぎず、NTSコストを基本料に含めるこ
とによって基本料の増額が不可避であるとしても、それは、通信料の低下という形
で補われるはずのものであるところ、地域通信網を独占するNTT東西の高コスト
構造をそのままにして、基本料増額を避ける名目で原告らにNTSコストを負担さ
せるのは、公正競争の促
進と利用者利便の増大という事業法の目的に反する。
(エ) 被告は、事業法38条の2第4項は、原価の算定方法について「通
信量又は回線数の増加に応じて増加することとなる当該第一種指定電気通信設備に
係る費用を勘案する」と規定しており、ここにいう回線数には加入者回線数を含む
ものであるところ、本件改正省令が接続料の原価とするNTSコストはいずれも加
入者回線数に応じて増加する費用であるから、NTSコストは接続料の原価に含ま
れる旨主張する。
しかし、事業法38条の2第4項に「回線数」が含まれるのは、専用
線や加入者回線等、回線数に依存する電気通信設備についても省令改正のみで長期
増分費用方式を導入できるようにするためであり、NTSコストを接続料の原価に
含めるために規定されたものではないから(甲90)、被告の主張は失当である。
(オ) 被告は、諸外国においてもNTSコストが基本料の原価に含まれる
ということは確定したものではなく、WTOにおいてもいまだ確定的な解釈がされ
たことはない旨主張する。
確かにNTSコストを接続料の原価に含む地域もなくはないが、NT
Sコストを接続料の原価から除外する方向にあり、諸外国においては「cost-
oriented」にはNTSコストを接続料の原価に含めないという意味が含ま
れると解釈されている。
(カ) したがって、き線点装置に係る費用は、事業法38条の2第4項の
規定する「第一種指定電気通信設備との接続により当該第一種指定電気通信設備に
よって提供される電気通信役務に係る通信量又は回線数の増加に応じて増加するこ
ととなる当該第一種指定電気通信設備に係る費用」ではなく、これを接続料の原価
に含めるのは、事業法38条の2第3項2号、同第4項に反する。
 イ 不適切な耐用年数
  (ア) 電気通信設備が法定耐用年数を超えて使用されることは明らかであ
り、事業法上の「適正な原価」として減価償却費を算定する場合、法定耐用年数で
はなく、経済的耐用年数を使用すべきであるところ、接続料規則は、伝送装置(光
伝送の方式における光信号を電気信号に変換する機能を有する装置であって、送信
及び受信の場所で光ファイバーを用いた線路に接続されるもの)の経済的耐用年数
を8.8年としている(同規則6条、同別表第4の3、甲1の3)が、長期増分費
用モデルにおける伝送装置の耐用年数は、米国モデルでは10.24年、英国モデ
ルでは13年であり(甲53)、本件接続約款の前提とする耐用年数が恣意的に低
く抑えられていることは明らかである。したがって、接続料規則における伝送装置
の耐用年数をもとに算
定された減価償却費は「適正な原価」に該当せず、事業法38条の2第3項2号、
同4項に反し、違法である。
(イ) 被告は、接続料の原価の算定に当たり伝送装置の耐用年数としてい
かなるものを用いるかは、事業法38条の2第3項2号及び4項が総務省令に委任
した範囲に含まれ、伝送装置の最長使用年数を事業者に照会するなどして経済的耐
用年数を設定したもので合理性がある旨主張する。
しかし、伝送装置の耐用年数が総務省令に対する委任事項に含まれる
としても、いかなる数値を総務省令が採用してもよいことにはならず、それが適正
な原価の範囲内でなければならないところ、例えば被告はADM(回線多重化伝送
装置)の使用年度を6年に設定しているが、事業者に対する照会において、ADM
の使用年数が法定耐用年数である6年に達しなかったのは、同設備が新しく、調査
時点で法定耐用年数に満たなかっただけであり、他の伝送装置の実際の使用年数が
10年を超えていたことからすれば合理性がない。
したがって、本件改正省令のうち、伝送装置の耐用年数を定めた部分
は事業法に反し無効である。
 ウ 不適切な効率化係数の使用
(ア) NTT東西の一部の施設保全費については、長期増分費用方式が導
入された平成12年度から年3パーセントの効率化を見込んでモデル入力値として
おり、本件改正省令・本件各処分においても、それを変更していないが、NTT東
西の平成14年度における実際費用方式による労務費は、平成13年度におけるア
ウトソーシング効果をもとに、NTT東日本において年間6.9パーセント、NT
T西日本において年間10.5パーセントの引き下げがなされており(甲57)、
年間3パーセントという数値とは乖離がある。このように、長期増分費用モデルで
採用された効率化係数を大きく上回る実績が明らかになっているにもかかわらず、
それをモデルに反映しないのは、「現時点で利用可能な最も低廉で効率的に設備と
技術で新たに構築した
場合の費用額に基づいて計算する方式」という長期増分費用方式の定義に反する。
したがって、本件改正省令・本件各処分は、事業法38条の2第3項2号、同4項
に反し、違法である。
(イ) この点につき被告は、事業法は、どのような効率化係数を用いるか
は専門技術的な事項として、被告に委任されているところ、本件改正省令は合理的
である旨主張する。
しかし、原価算定の基準としてどのような効率化係数を用いるかは被
告に委任されているとしても、それは無条件ではなく、適正な原価という範囲内で
のみ委任されているところ、本件改正省令は平成15年度及び平成16年度の接続
料算定に関するものであるのに平成12年度の保守委託費の低減目標値を採用する
ことに合理性はなく、また、被告が採用した上記効率化係数は、平成13年10月
の長期増分費用モデル研究会においてNTT東西から提出されたものであるが、当
初よりその水準の妥当性について十分検討すべきとの結論になっていたにもかかわ
らず、特段の検討もなくそのまま本件改正省令に採用されるに至っている(甲94
ないし96)ことからすれば、被告が採用した上記効率化係数は恣意的なものであ
り適正な原価という要件
に反していることは明らかである。
(6) 違法事由⑥(変更約款の適用時期を認可前に遡及させた違法)
ア 事業法が接続約款の効力を遡及させる規定を設けていないにもかかわら
ず、本件各処分は、平成15年4月22日になされたものであるのに、改定接続料
の適用期間を同月11日に遡及させているのは、法律行為の不遡及という法の一般
原則に反し違法である。
イ 本件接続約款の適用を平成15年4月11日に遡及させたことについ
て、被告は、本件接続約款はNTT東西と接続事業者との契約であり、当事者の合
意によって契約の効果を遡及させることは可能であるところ、本件処分はかような
契約を完成させる行為にすぎないから、本件処分が適用期間を遡及させても違法で
はないと主張する。
しかし、接続約款は、NTT東西が一方的に定め、それが被告が認可す
ることでその効力が発生するものであり、接続事業者の意思に基づくものではな
い。したがって、本件各処分によって認められた遡及効は、原告らに対して一方的
に適用されるもので、その実質は法規と同様であるから、不利益な法規の遡及適用
の禁止という法理は本件にも当てはまるものというべきである。
なお、原告らとNTT東西との接続協定においては、接続条件は認可さ
れた接続約款によることになっているが、それは適法な接続約款の定める接続条件
を接続協定の内容として援用するという意味であり、認可された接続約款に定める
接続条件が原告らの意思に基づくことを意味するものではない。
(7) 違法事由⑦(独占禁止法違反)
  NTT東西が接続料を均一に設定する約款を作成し、認可申請を行ったこ
とは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」とい
う。)2条6項にいう不当な取引制限であり、独禁法3条に反し、また事業法1条
にも反し違法である。
ア 独禁法3条違反
    (ア) NTT東西は、接続料を均一に設定する約款の認可申請を同日に行
っている(乙2の1、2の2)ほか、審議会においても、両社の経営データを合算
した資料を連名で提出するなど、経営情報を交換し、一体として対応している(甲
9ないし13、41、42)。したがって、NTT東西が共同して対価(接続料)
を決定し、若しくは引き上げることにより、相互にその事業活動を拘束したことは
明らかである。
(イ) NTT東西による接続約款認可申請は、本件改正省令に基づくもの
であるが、本件改正省令は、通信行政全般に関する公益的な観点というよりも、N
TT東西の経営に対する配慮に基づいてなされたという側面が強いことからすれ
ば、NTT東西の共同行為は、公共の利益に反するものである。
(ウ) NTT東西は地域を分かって事業を行っているものであるが、接続
に係る電気通信役務については相手方が同一(原告ら事業者)であること、それ以
外の役務についても、認可を得ることにより相互に相手方の地域への算入はできる
こと(NTT法2条4項2号)、地域分割によっても間接競争は可能であることか
らすれば、NTT東西については全国における電気通信役務の提供を一定の取引分
野とする競争が成立するものというべきである。そして、本件接続約款の認可申請
は、接続に係る電気通信役務の対価を引き上げることを共同で行ったものであり、
上記の意味での競争を実質的に制限するものであることは明らかである。なお、接
続料金は認可によって決定されるものであるが、認可申請をするか否か、どのよう
な申請をするかは事業
者が自主的に決定する事項であるから、認可料金といえども競争制限は成立するも
のというべきである。
(エ) NTT東西均一接続料の設定を目的になされた本件申請は、独禁法
に違反するものであるから、本件各処分は違法である。
 イ 事業法1条は、電気通信の健全な発達のために公正な競争を促進するこ
とを目的として規定するところ、独禁法が目的とする公正競争を電気通信市場に適
用したのが同条の規定であると解されるから、NTT東西均一接続料を内容とする
本件接続約款の認可申請は、上記のとおり独禁法違反であるとともに事業法1条に
も違反する。したがって、本件各処分は事業法1条に反する違法なものである。
 ウ 被告の反論に対する再反論
  (ア) 被告は、独禁法3条の不当な取引制限の要件である共同行為には事
業者相互間の「意思連絡」が必要であるところ、接続料設定については本件改正省
令及び同省令附則に明確に規定され、NTT東西の行為は覊束されていることか
ら、NTT東西において接続料を自由に決定できる余地はなく、本件接続約款の認
可申請に関し、NTT東西間に「意思の連絡」を認めることはできないなどと主張
する。しかし、被告の主張は、事実誤認ないし独禁法の解釈適用の誤りに基づくも
ので失当というべきである。
(イ) そもそも、対価の決定が省令等によって覊束されているということ
と、「意思の連絡」の有無が無関係であることは、「意思の連絡」という事実の性
質からも明らかである。しかも、本件改正省令自体、NTT東西の原価を合算して
算出することを規定しているにすぎず、具体的な接続料の金額まで覊束しているの
ではないから、被告の主張を前提としても、接続料の決定について「意思の連絡」
が介在する余地があるというべきである。
  そして、本件各処分に対応するNTT東西の接続約款認可申請は、①
申請日、②報道発表日及び報道発表内容、③遡及適用の開始日、④変更となるべき
約款の文言、⑤接続料算定書類、以上のいずれも同一であり(甲100の1ないし
8、101、102)、対価の決定について両社の間に「意思の連絡」があったこ
とは疑いがない。
(ウ) また、NTT東西は、情報通信審議会に対して両社の経営データを
合算した資料を連名で提出し(甲9ないし13、41、42)、公開ヒアリングの
場で一致して東西均一接続料の維持とそのための交付金の必要性を訴える(甲8
5)など、NTT東西均一接続料の実現に向けて共同して行動していることが明ら
かであるから、本件改正省令がNTT東西均一接続料を規定していることをもっ
て、両社の「意思連絡」を否定する根拠とすることはできない。
(エ) ところで、被告は、NTT東西は本件改正省令によって均一接続料
の設定を覊束されているというが、たとえ省令に準拠したからといって、独禁法の
適法を免れるものではない。公正取引委員会の平成6年6月30日付け「行政指導
に関する独占禁止法上の考え方」は、独禁法の適用除外規定がない限り、行政指導
によって誘発された行為であっても独禁法違反行為の要件に該当する場合は、当該
行為に対する同法の適用が妨げられるものではないとしているが、これは独禁法に
対して「法律優位の原則」が働くからであり、この理は、省令によって誘発された
行為にも及ぶものというべきである。
(被告の主張)
(1) 本件各処分の手続的適法性(原告ら主張の違法事由①について)
 ア 事業法は、接続料規則の制定及び改廃並びに接続約款の認可についての
手続要件として、総務大臣は、審議会等が軽微な事項と認めたものでない場合に
は、当該審議会に諮問しなければならない(事業法94条1項、4項)と規定し、
実定法上、接続約款の認可に関し、その申請を行う事業者以外の者について何らか
の手続を定めた規定はない。
   被告は、本件省令の改正に際し、平成15年2月14日付けで情報通信
審議会に諮問し(乙7)、同審議会から同年3月28日付けの答申を受けた(乙
8)上で本件省令を改正し、同年4月11日、これを公布した。また、本件各処分
については、被告は、同年4月18日、NTT東西から本件接続約款の認可申請を
受け、同年4月22日付けで前記審議会に諮問し(乙4)、同日付けで、同審議会
から答申を受け(乙5)、これを認可した。
   このように、被告は、法律で定める手続にのっとり、本件省令の改正及
び本件各処分を行ったものであって、手続的に何ら違法ではない。
 イ 原告らは、被告が本件各処分をするに当たり原告らの意見を聴かなかっ
たのは、意見聴取義務に反し、原告らの有する手続的利益を侵害するもので違法で
あるから、本件各処分も違法である旨主張し、その理由として、①情報通信審議会
の手続規則には、諮問事項について意見聴取をしなければならないと定められてい
る(議事手続規則2条)にもかかわらず、本件各処分について諮問を受けた同審議
会が、利害関係人である原告らの意見聴取をしなかったこと、②本件各処分につい
ては接続事業者の意見を聴くべきというのが立法者意思であり、そのような意見聴
取は慣習法ともなっていたこと、③原告らは意見聴取を受けなければ接続約款の内
容を知り得ないのであるから、意見聴取をしなかったことはWTO基本合意参照文
書に反すること等を
挙げている。
ウ 原告らの上記主張は、被告が本件各処分に際して、原告ら利害関係人に
対する意見聴取義務を負っていることを前提としているが、事業法等の関係法令に
は、被告に、本件各処分に際して原告ら利害関係人の意見を聴取すべき義務を課し
た規定はなく、他に、申請に対する処分をするに際し、当該処分の名宛人である申
請者以外の者について、意見聴取を義務づける法律もないことから(行政手続法1
3条参照)、原告ら利害関係人の意見を聴取することは手続要件ではなく、原告ら
の主張は前提を欠き失当である。
エ また、事業法は、総務大臣が情報通信審議会に諮問しなければならない
場合として、接続約款を認可する場合を挙げており(94条1項)、議事手続規則
2条1項3号は、接続約款に関する認可の調査審議を行う場合には情報通信審議会
議事規則5条による利害関係人の意見の聴取を行わなければならないとしている
が、事業法は、情報通信審議会への諮問を義務づけているだけで、同審議会内部に
おける調査審議の在り方に関し何ら規定を設けていないから、法律上、審議に際
し、諮問対象事項について利害関係人に対する意見聴取義務は課せられておらず、
上記議事手続規則は電気通信事業部会における自律的な規範にとどまり、本件各処
分の手続要件ではないから、仮にその違反があったとしても、事業法に基づく本件
各処分の違法を基礎づける
事由とはならないというべきである。
オ 情報通信審議会が原告らの意見聴取をしなかったとの主張に対する反論
(ア) 議事手続規則2条1項本文及び3号が、第一種指定電気通信設備に関
する接続約款の認可についての調査審議を行う場合には、利害関係人の意見の聴取
を行わなければならないと規定した趣旨は、接続約款の認可の過程において、利害
関係人を含む国民等の多様な意見・情報・専門知識を行政機関が把握するととも
に、その過程の公正の確保と透明性の向上を図ることにあるが、この趣旨が損なわ
れないのであれば、意見聴取を実施する必要は認められないことから、議事規則2
条1項ただし書きは、軽微な案件であって、部会が意見の聴取を要しないと認める
ものについては、意見の聴取を必要的なものとはしていないのである。
 これらの趣旨に照らしてみると、接続約款の認可に当たり、利害関係人
を含む国民等の多様な意見、専門知識等を既に把握し、同認可の過程の公正さや透
明性が確保されているような場合には、議事規則2条1項ただし書きに該当するも
のとして、意見の聴取を行う必要がないというべきである。
  被告は、平成15年4月22日、NTT東西からの本件接続約款の認可
申請(乙2の1、2の2)を受け、これを認可することについて、事業法94条に
基づき情報通信審議会電気通信事業部会に諮問したが(乙4)、同諮問における新
たな論点は、仮精算の手続等に関するものであり、それ以外の点(接続料の変更
等)については、本件改正省令に係る諮問において、原告ら接続事業者を含んだ国
民一般を対象に意見の聴取が行われ、それを前提に審議がされ、論点は出し尽くさ
れていた。また、仮精算の手続についても、本件改正省令に係る諮問に際して行わ
れたヒアリングの際の接続事業者の意見を聴取してこれを斟酌したものであった。
  したがって、同部会が電気通信事業者からの意見聴取を重ねて実施する
必要はないと判断したことは、議事規則に違反しない。
(イ) ところで、原告らは、①本件省令の改正の前後では、精算の内容・対
象に変更があった、②本件省令の改正の際に行われた意見聴取において接続事業者
から更に議論を深める必要があるとの意見が提出されていた、③本件接続約款にお
いても仮精算の導入や遡及適用を認めるなどの変更があったのであるから、本件改
正省令に係る諮問の際に、接続事業者の意見聴取を行っていたとしても、本件各処
分に係る諮問の際に、再度、接続事業者から意見聴取すべきであった旨主張する。
(ウ) しかし、上記①については、本件省令の改正の前後で変更された点と
は、トラヒックの減少分5パーセントは精算の対象外とする規定を除外し、NTT
東西又は接続事業者各々の通信量の変動率に応じて精算する規定を追加したこと
と、ZC接続に係る接続料の精算について中継交換機能及び中継伝送機能を精算の
対象から除外したことの2点であるが、前者は、精算制度がNTT東西のトラヒッ
ク増加インセンティブを削ぐとの意見を踏まえたものであり(乙24の1)、後者
は、ZC接続事業者の意見を踏まえて精算の対象となる機能から除外したものであ
り(乙24の2)、これらの変更点は、本件省令改正のための情報通信審議会にお
けるヒアリング及びパブリック・コメント手続で得られた意見を踏まえたものであ
るから、これらの点につ
いて改めて意見聴取は不要であるとした判断は合理的である。
(エ) 次に、上記②については、長期増分費用モデルに基づく接続料の見直
しは、平成14年3月以降、1年余りの期間をかけて議論されてきたものであり、
接続事業者からも数度にわたるヒアリング等を経たものであって、そこでの成果以
上に有益かつ新たな意見が提出される可能性に乏しかったものであるから、再度意
見聴取を行う必要性に乏しいとの判断は合理的なものである。
(オ) さらに、上記③については、仮精算の導入は、既に本件省令改正に係
る合同ヒアリングにおける接続事業者からの意見を斟酌した結果(乙24の2)で
あり、再度パブリック・コメントに付す必要性に乏しいことは明らかであり、本件
約款の遡及規定については、本件約款を遡及適用すること自体は、本件省令改正に
係るパブリック・コメントにおいて既に意見聴取をしていた事項であり、また当初
の諮問案よりも接続事業者の予見性に配慮した内容であるから、再度意見聴取する
必要がないとの判断は合理的なものである。
カ 本件各処分の際に意見聴取することが立法者意思であるとの主張に対す
る反論
  審議会議事規則5条は、利害関係人その他の参考人から意見を聴取する
ことができる(1項)、広く国民から意見を募集することができる(2項)旨規定
し、これらの手続の実施を裁量にゆだねており、議事規則も、審議会議事規則5条
の手続を行わない場合を規定している(2条1項ただし書き)ことからも明らかな
ように、審議会議事規則あるいは議事規則の制定者が意見聴取を常に必要とする意
思であったとは解されない。また、意見聴取することが慣習法となっていたともい
えない。
 したがって、立法者意思、慣習法を根拠とする原告らの主張は失当であ
る。
   キ 本件約款の内容を知り得ない原告らに対して意見聴取を行わなかったこ
とがWTO基本合意参照文書に反するとの主張に対する反論
  WTO基本合意参照文書が直ちに本件省令の改正の手続的違法を基礎づ
けるものとは解されず、上記主張は失当である。
     また、NTT東西は、接続約款を申請する場合は事前に報道発表を行う
のを通例としており、本件接続約款の申請においても、申請前日に報道発表を行っ
ているのであって、本件接続約款の内容を知りうる立場になかったとする原告らの
主張はその前提を欠くものである。
     さらに、被告は、原告らを含む接続事業者からも公平に意見を聴取して
いるのであるから、原告らのWTO基本合意参照文書に反するとの主張は失当であ
る。
  (2) 原告らの他事考慮等の判断過程の過誤に基づく違法主張(違法事由②)に
ついて
   ア 原告らは、①NTT東西の意見を優先的に聴取したこと、②NTT東西
均一の接続料を認めるに至った過程が不透明であること、③NTT東西の経営問題
を優先的に斟酌したことは、判断過程に他事考慮等の看過し難い過誤・欠落がある
もので違法である旨主張しているが、以下に述べるように上記主張はいずれも失当
である
   イ NTT東西の意見を優先的に聴取したとの主張に対する反論
  (ア) 原告らの主張は、平成14年答申に係る情報通信審議会電気通信事
業部会の接続委員会における審議の過程においてNTT東西の意見を優先的に聴取
した旨主張するものであるが、これは被告が同審議会に対し、平成14年3月27
日付けでした「長期増分費用モデルの見直しを踏まえた接続料算定の在り方」につ
いての諮問における原告ら利害関係人の意見聴取の機会を問題とするものであると
ころ、上記諮問は、そこで検討された接続料算定の在り方が本件省令の改正内容と
して反映されることを予定していたため行われたものであり、本件省令の制定又は
改廃そのものについてのものではないから、事業法上要求されているものではな
く、原告らの上記主張は、本件各処分の手続要件でないものに関するものであっ
て、まずこの点で主張自体
失当である。
(イ) 合同ヒアリング
  上記接続委員会は、関係者からの意見聴取を目的として、平成14年
4月16日、同月18日、同年6月21日、同年8月29日の4回にわたり、電気
通信事業部会と合同で公開ヒアリング(以下「合同ヒアリング」という。)を行っ
たところ、各合同ヒアリングに招致されたのは、原告フュージョン・コミニュケー
ション以外の原告4社を含む電気通信事業者等であった。
(ウ) 接続委員会ヒアリングの実施
  接続委員会は、4回にわたる合同ヒアリングの他に審議に必要な事実
関係の調査を行うことを目的とし、平成14年5月10日、同月30日、同年6月
13日、同月28日及び同年7月12日の5回にわたり、関係事業者からヒアリン
グを実施した(以下「接続委員会ヒアリング」という。)。
平成14年6月13日のヒアリングは、接続料の算定に当たりどのよ
うな通信量を用いるかについて検討することを主たる目的とし、NTT東西、KD
DI、日本テレコム及びTTnetの各電気通信事業者を招致し、これらの事業者
から通信量の今後の動向について意見を聴取した。
平成14年5月10日、同月30日、同年6月13日、同月28日及
び同年7月12日の接続委員会ヒアリングは、2次モデルに基づく算定値を適用し
た場合のNTT東西の経営に対する影響を検証することを目的とし、NTT東西を
招致して、その経営状況等について意見を聴取した。
(エ) NTT東西に対するヒアリングと資料提出要求について
  合同ヒアリングにおけるNTT東西と他の事業者の招致回数には差異
はなく、各合同ヒアリングは、各電気通信事業者に公平な時間配分で意見を述べる
機会を付与し(乙19の1ないし19の3)、何ら不公平なところはなかった。ま
た、接続委員会ヒアリングは、NTT東西のみを対象として、両社に対してのみ資
料の提出を求めたことがあったが、これは、NTT東西の現実の費用構造、長期増
分費用方式に基づき接続料を算定した場合にNTT東西の経営にいかなる影響を及
ぼすか、NTT東西の経営効率化が十分であるか、さらには長期増分費用モデルに
基づく費用が接続料の原価として適正であるか否かを検証し、NTT東西の財務状
況その他の経営上の秘密にかかわる事項についても、両社に対して説明と資料の提
出を求めたからであり
、合理的な理由があった。
    (オ) 平成14年答申等の内容がNTT東西の意見のみに基づくものであ
るとの主張について
平成14年答申、本件改正省令及び本件各処分の内容がNTT東西の
意見を一方的に反映したものでないことは、これらの内容にNTT東西が提出した
意見とは反対の結論を導いたものが含まれていることからも明らかである。
すなわち、NTT東西は、長期増分費用モデル研究会から本件改正省
令のパブリック・コメント時に至るまで、一貫して①長期増分費用方式を廃止する
こと、②仮に長期増分費用方式を使用する場合でも、事後精算は全額について行う
こと、③長期増分費用方式の適用対象機能を拡大しないこと、④トランクポート
(電話線中継接続器)等を個別事業者の負担とすべきことなどを主張したが(甲4
1、42)、本件改正省令においては、①については平成15年度以降も長期増分
費用方式を採用することとし、②については、事後精算を行う場合を通信量が15
パーセント以上変動した場合とし、精算額についてもNTT東西とそれ以外の事業
者とで通信量を変動させた割合に応じることとし、③については、平成15年度か
らPHS基地局回線伝送機
能及び中継伝送専用機能について新たに長期増分費用方式で原価算定することと
し、④については、ヒアリングにおける接続事業者の意見を踏まえて(乙20の1
ないし20の2)、トランクポート等の扱いについてパブリック・コメントに付し
た答申案を変更した(乙20の3、11)。これらの事実に照らしても、NTT東
西の一方的な意見に基づき平成14年答申が作成され、本件省令の改正がされ、あ
るいは本件各処分がされたとする原告らの主張は事実を誤認するもので失当であ
る。
    (カ) WTO基本合意参照文書に反するとの主張について
      原告らは、被告がNTT東西の意見のみに基づいて本件省令を改正
し、本件各処分をしたもので、このことはWTO基本合意参照文書(サービスの貿
易に関する一般協定の第4議定書第5項)に反する旨主張する。
しかし、そもそもWTO基本合意参照文書が直ちに本件省令改正の手
続的違法を基礎づけるものとは解されず、また、上記のとおり前提となる事実を誤
認するもので失当である。
ウ NTT東西均一接続料を認めるに至る過程が不透明であるとの主張につ
いて
 (ア) 原告らは、被告及び情報通信審議会の意思決定過程が不透明である
旨主張するが、そのことが何故本件各処分の違法性を根拠づけるのか明らかではな
いことに加え、そもそも被告や情報通信審議会の意思決定過程の透明性なるもの
は、本件各処分の手続的要件ではないから、原告らの主張は、本件各処分の取消事
由として主張自体失当である。
 (イ) NTT東西均一接続料を認めるに至った経緯の反論
   原告らは、①衆参両院の総務委員会において、NTT東西の接続料が
均一にすべきとの決議がされたこと、②情報通信審議会の委員が再任されなかった
こと、③反対意見が有力であったにもかかわらず、情報通信審議会が従前の意見と
矛盾する意思決定を行ったこと等をもって、本件改正省令・本件各処分に至る手続
が透明性・公平性を欠くことを裏付けている旨主張する。
   しかし、①については、国民の代表機関の責務として、ある政策課題
について時々の情勢に応じて迅速に対応するものであって何ら不自然ではなく、国
会の委員会での議論は、会議録あるいは報道を通じて国民の監視の下で行われるも
のであり、その結果としての委員会の意思は決議により表明されたものであるか
ら、何ら不透明なものではなく、②については、委員の選任については被告の合理
的な判断にゆだねられ、任期の満了した委員の再任を義務づけられるものではな
く、再任されなかったことが異例の事実であるということも、被告が外部の働きか
けに応じたということもなく、③については、平成14年答申が公表された後、被
告に対して、西日本の地方自治体、地方議会、経済団体を中心にNTT東西均一の
接続料の維持を求める要望
書が多数提出されるなどした(乙28)ことから、情報通信審議会及び被告は、こ
れらの意見も斟酌した上で意思決定をしたものであり、情報通信審議会及び被告
が、反対意見を押し切って一方的にNTT東西均一接続料としたかのごとき原告ら
の主張は、前提となる事実を誤認するものであり、いずれも失当である。
エ NTT東西の経営問題を優先的に斟酌したとの主張について
 (ア) 原告らの上記主張の根拠として主張する点は、本件省令の改正過程
の問題ではなく、本件改正省令の内容が違法といえるかに帰着する問題であり、主
張自体失当である。
 (イ) なお、前記被告主張で述べたように、情報通信審議会は、NTT東
西にとって有利な点も不利な点も含めて答申をし、被告においてもその結論を尊重
して本件省令を改正したものであり、被告及び情報通信審議会は、NTT東西の経
営問題を優先的に斟酌したという事実がないことは明らかである。
(3) 事業法が認めない事後精算制度を導入した違法の主張(違法事由③)につ
いての反論
 ア 本件改正省令附則8項ないし10項は、平成15年度及び16年度に適
用する接続料について、通信量が大幅に変動する場合には事後的に精算を行う旨規
定しているが、これは、長期増分費用モデルによる算定値がNTT東西にとって目
標値であって、接続料の変動がわずかである場合には精算を行うべきではないとの
考慮に基づき、精算の発動する場合を限定することとし、これまでの通信量の変動
のうち最大のものを超える水準をもって精算を行うべきとの観点から15パーセン
トの変動をもって精算発動の要件としたものであり、これらの規定は、被告が、事
業法38条の2第3項本文及び同項2号によって付与された裁量的権限に基づき、
通信量が大幅に変動した場合に、接続料が適正な原価を算定するものとして本件改
正省令で定める方法
により算定された原価に照らして公正妥当なものとするために設けたものであっ
て、合理性を有し、事業法38条の2第3項本文及び同項2号に反しない。
   イ これに対し原告らは、①事業法に事後精算を認めた規定がなく、同制度
が事業法の委任の範囲を超えていること、②長期増分費用方式では、事後精算を認
めないのが立法者意思であること、③事後精算が遡及効の禁止という法の一般原則
に反し無効であること、④長期増分費用方式の本質であるフォワードルッキング性
に反すること、⑤事後精算の方法が公正妥当な接続料の算定という趣旨に反するこ
と、⑥事後精算制度が再計算規定に反すること等を挙げて、事後精算制度は事業法
に反する旨主張するが、以下に述べるように失当である。
ウ 上記①(事業法に事後精算を認めた規定がない)について
原告らは、事業法に事後精算を認めた規定がなく、接続料の再計算の規
定のみがあることを理由に、本件改正省令は事業法の委任の範囲を超えている旨主
張する。
しかし、事後精算制度は、通信量等が変動した場合に接続料が適正な原
価を定めるものとして本件改正省令で定める方法により算定された原価に照らして
公正妥当なものとするためのものであり、合理性を有し、事業法38条の2第3項
本文及び2号に反しない。
エ 上記②(立法者意思に反する)について
原告らは長期増分費用方式が導入された際には精算の対象外とされたこ
とをもって立法者が事後精算を認めない趣旨であるかのように主張するが、これ
は、激変緩和措置として、平成12年から14年までの接続料について、平成10
年度の通信量を用いて比較的達成が容易な目標値としての接続料を設定し、これを
3年間かけて段階的に実施するという内容であったことから、事後精算を行うと結
果的にかかる激変緩和措置の効果が没却されることを考慮した措置であり、長期増
分費用方式の導入当初において精算の対象外とされたことを理由として長期増分費
用方式に精算制度を導入することが許されないとするのはかかる経緯を正解しない
ものである。
 オ 上記③(事後精算制度が遡及効の禁止に反し無効である)について
原告らは、事業法に接続料を遡及適用する旨の規定がないことから、事
後精算が遡及効の禁止という法の一般原則に反し無効である旨主張するが、原告ら
のいう遡及効の禁止なる法の一般原則が何を指すのか不明であるし、事後精算制度
が事業法38条の2第3項及び同項2号に反しないことは前記のとおりであり、そ
の他の違法も何ら存しないから、原告らの上記主張は失当である。
 カ 上記④(事後精算制度が長期増分費用方式におけるフォワードルッキン
グ性に反する)について
原告らは、フォワードルッキングという概念を将来を予測した値を用い
て算定するという意味にとらえ、事後精算制度がフォワードルッキング性を本質と
する長期増分費用方式とは相容れない旨主張する。
しかし、平成11年9月の「長期増分費用モデル研究会報告書」では
「現在と同じ加入者数規模とトラヒックに対する処理能力を備えたネットワークを
現時点で利用可能な最も低廉で最も効率的な設備と技術で新たに構築した場合の費
用額」を「フォワード・ルッキング・コスト」と称しており、また、平成8年12
月19日答申においては「フォワードルッキング(将来志向的)なコストデータ」
という用語が用いられていることからもわかるとおり、フォワードルッキング(将
来志向的)とは、実際に使用している設備・ネットワークを前提とするのではな
く、現時点で利用可能な最も効率的な設備や技術を利用することを意味するもので
あるから、原告らの上記の主張は、フォワードルッキングの意義を正解しないもの
で失当である。
なお、原告らは、精算の意義を債務の確定前に概算で支払った費用につ
き債務の確定後に過不足を調整するための概念であり、実際費用方式を前提とする
ものであるとも主張する。
しかし、長期増分費用方式であっても、当該年度の実績としての通信量
等が判明した後に適正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算
定された原価に照らして公正妥当なものではなかったと評価される可能性があるこ
とには変わりはなく、原告らの主張は、かかる点を看過するものであり失当であ
る。
 キ 上記⑤(事後精算の方法が公正妥当な接続料の趣旨に反する)について
原告らは、精算をするための要件を通信量が15パーセントを超えて変
動した場合と定めたことには、合理的な根拠がなく恣意的に設定された要件である
と主張する。
しかし、事後精算制度は、通信量の変動により直近の通信量を用いて事
前に算定した接続料が適正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法によ
り算定された原価に照らして公正妥当でなかったことが判明した場合にこれを是正
する手段であり、この趣旨に照らせば、通信量の変動の幅によらずに、いかなる変
動であろうとも通信量の変動が認められる限り精算することも考えられるが、長期
増分費用モデルによる算定値がNTT東西にとって目標値であることから、接続料
の変動がわずかである場合には精算を行うべきでないとの考慮に基づき、精算を行
う場合を限定したものである。そして、過去の状況に鑑み、これまでの通信量の変
動のうち最大のものを超える水準をもって精算を行うべき変動があったものと判断
することとし、この観
点から15パーセントの変動をもって精算を行う要件としたのであり、合理性を有
する。
なお、原告らは、全体の通信量が15パーセントを超えて変動した場合
に精算を行うことから、ある社が通信量を増加させても他社が通信量を減らしてし
まえば、全体として精算を要することとなり不合理である旨主張する。
しかし、前記の事後精算制度の趣旨からは、本来的にいかなるものの原
因により通信量が減少したかにかかわらず通信量の変動がある限り行うものである
し、接続料が通信量に応じて支払う性質のものである以上、通信量を増加させた者
ほど結果として精算総額が増大するのは当然のことであり、原告の上記主張は失当
である。
 ク 上記⑥(事後精算制度が再計算規定に反する)について
原告らは、事後精算について、事業法38条の2第12項で定める場合
以外に精算のための再計算が義務付けられることとなり違法であると主張する。
しかし、事業法38条の2第12項が再計算の義務を規定したのは、時
間の経過に伴い、原価及び接続料の算定に用いる数値の元となるデータが変動する
可能性があり、適正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算定
された原価に照らし妥当な接続料が変わりうることから、新たに適用される接続料
が適正な原価に照らし公正妥当かを定期的に検証することとしたものであり、この
ような趣旨に照らすと、同項は、その委任を受けた接続料規則20条において定め
る期間とは別の時期に一定の要請に基づき再計算を行うことは何ら禁じていないと
いうべきである。
したがって、事後的な精算により事業法38条の2第12項に定める以
外の場合に再計算を行うことは何ら同項に反しない。
  (4) 原価の異なるNTT東西の接続料を均一とした違法主張(違法事由④につ
いて
ア 本件改正省令附則6項は、平成15年度及び16年度に適用する主に
長期増分費用方式が適用される接続料について、NTT東日本及びNTT西日本の
原価及び通信量等を合算して算定する旨規定しているが、これは、被告が、事業法
38条の2第3項本文及び同項2号によって付与された裁量的権限に基づき、ユニ
バーサルサービスの考え方に基づくNTT法3条及び事業法72条の5の趣旨を考
慮し、NTT東西の接続料に格差が生じることにより利用者料金に看過し難い格差
が生じることがないようにし、もって、接続料が適正な原価を算定するものとして
本件改正省令で定める方法により算定された原価に照らし公正妥当なものとするた
めに設けられたものであって、合理性を有し、事業法38条の2第3項本文及び同
項2号に反しない。
すなわち、電話の役務の提供は国民生活に不可欠なものであり、利用
者である国民の生活に与える影響を考慮し、国民の電気通信サービスの利用の公平
を実質的に確保するためには、全国民が公平に電気通信役務の提供を受けられるよ
うに電気通信設備を整備するにとどまらず、地域間の利用者料金に看過し難い格差
が生じることのないようにすることが望まれるところ、接続料は、NTT東西が電
気通信役務を提供することの対価であり、利用者が支払う利用者料金の原価の一部
として利用者料金と密接な関係にあるから、NTT東西の接続料に看過し難い格差
が生じれば、利用者料金に影響を与えることになることからすれば、被告が、接続
料について、適切な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算定さ
れた原価に照らし公正妥
当なものとするため、NTT法3条及び事業法72条の5の趣旨を考慮に入れて、
NTT東西の接続料の格差により利用者料金に看過し難い格差を生じることのない
ようにすることは、事業法38条の2第3項2号が予定しているところであり、本
件においては、長期増分費用モデルを前提に、NTT東西別に接続料を試算したと
ころ、両社の間に約30パーセントの格差が生じることとなり、これは、NTT東
西の市内通話3分間当たりの利用者料金で約2円の格差が生ずることを意味するも
のであることから、主に長期増分費用方式により原価が算定されることになるNT
T東西の接続料について、NTT東西のそれぞれの原価及び通信量を合算して算定
するものとして、両社均一とすることを規定したものであり、合理性を有するもの
である。
    イ これに対し、原告らは、①本来NTT東西の接続料の原価が異なるこ
と、②平成15年法律第125号により、NTT法に附則16条を追加したのは、
それ以前にされた本件各処分が違法であることの証左であること、③ユニバーサル
サービスの責務は、NTT東西均一接続料によるべきではなく、ユニバーサルサー
ビス基金によって措置すべきである旨主張している。
    ウ しかし、上記原告の主張①については、NTT法3条の趣旨は、事業
法においても考慮されるべきであり、不当な料金格差が生ずることのないように是
正措置を採ることは、事業法38条の2第3項2号に反せず、原告らの主張は、N
TT法3条の趣旨と事業法の関係、同法38条の2第3項2号の解釈を誤ってお
り、失当である。なお、原告らは、本件で問題となっているのは接続料の均一性で
あり、利用者料金の均一性ではないとも主張しているが、接続料と利用者料金とは
密接な関係にあることを看過するものであって、この点も失当である。
    エ 上記原告の主張②については、もともと、基礎的電気通信役務につい
てNTT東西均一料金とすることは事業法38条の2第3項2号に合致するもので
あるが、NTT法附則16条の交付金の対象となる機能については総務省令で委任
されており、基礎的電気通信役務に係る機能以外の機能に係る接続料もNTT東西
均一とされ、交付金が交付されることとなる可能性があったことから、そのような
場合に違法ではないかとの疑念を解消するために同条2項が注意的に規定されたも
のであり、この規定によって違法な行為を適法なものとする趣旨ではないから、失
当である。
    オ 上記原告の主張③については、NTT法附則16条に基づく金銭の交
付制度に対する批判とはなり得ても、接続料を均一とすることの適否とは関係がな
く、またNTT法附則16条に基づく金銭の交付制度があること自体、費用補填の
方法としてユニバーサルサービス基金による交付金以外に金銭を交付することを許
容しているというべきであるから失当である。
  (5) 適正な原価に基づかない接続料を認めた違法の主張(違法事由⑤)につい
ての反論
 ア 原告らは、本件改正省令が、①き線点装置等のNTSコストを接続料の
原価に含めていること、②伝送装置について不適切な耐用年数を使用しているこ
と、③不適切な効率化係数を使用していることは、事業法38条の2第3項2号及
び4項の委任の範囲を逸脱しており、本件接続約款の定める接続料は適正な原価に
基づかない旨主張しているが、以下の理由により原告らの主張は失当である。
 イ 本件改正省令の事業法適合性
(ア) NTSコストを接続料の原価に含めていることに関する主張(①)
  事業法38条の2第4項は、原価の算定方法について、「通信量又は
回線数の増加に応じて増加することとなる当該第一種指定電気通信設備に係る費用
を勘案する」と規定しており、ここにいう回線数には加入者回線数も含まれると解
すべきところ、本件改正省令4条別表第1の1は、事業法38条の2第4項が総務
省令に委任した原価の算定方法に関する事項としてNTSコストを接続料に関する
原価に含める旨規定しているが、これは情報通信審議会の平成14年答申を踏ま
え、NTSコストを基本料金の費用範囲とすれば値上げ圧力となることや、我が国
が従来から政策的にNTSコストの一部を接続料で回収し、基本料を安く設定して
きたという経緯に照らしても国民の利便を可及的に確保することに資することなど
を考慮した結果定められ
たものであって、合理性を有し、何ら委任の趣旨に反しない。
すなわち、情報通信審議会の平成14年答申では、費用の発生要因に
応じて当該費用を回収すべきであるとの考え方に基づけば、通信量ではなく、加入
者回線数に応じて需要が変動するき線点装置の費用は、回線単位で回収することが
適当との議論もあり、その場合の費用負担の方法として、利用者が負担する基本料
の費用範囲とする方法、加入者交換機とは別に回線単位でNTT東西及び接続事業
者が負担する方法も検討されたが、き線点装置のみでも1回線当たり月額約107
円の費用増となり、基本料の費用範囲とすれば値上げ圧力となること、また、意見
聴取の場において、消費者団体から同費用の回収方法の変更に対して反対の意見が
多く提出されたことから、基本料の費用範囲とする方法はなお慎重な検討を要し、
社会的合意も困難である
と指摘され、また、事業者が回線単位で負担する方法については具体的な接続料の
設定が技術的に困難であること等が指摘されたことから、本件改正省令では、き線
点装置の費用を原価算定の際に斟酌することとしたものである。なお、我が国にお
いては、加入電話ネットワークへの加入を可能な限り低廉な形で国民全体に保証す
るという考え方から、従来から政策的にNTSコストの一部を通話料で回収し、基
本料を安く設定してきたという経緯があり、このような経緯に照らしても、国民の
利便を可及的に確保するため、NTSコストを接続料の原価に含めたことは、合理
性を有する。
これに対して、原告らは、本件改正省令がNTSコストを接続料の原
価に含めていることが事業法の委任の範囲を超える旨の主張の根拠として、①き線
点装置に係る費用を接続料の原価に含めないことは、経済理論上も、欧米諸国にお
ける実務上も支持されていると考えられること、②NTSコストを原価に含めるこ
とはWTO基本合意参照文書に反すること、③き線点装置は加入者交換機の機能を
代替していないにもかかわらず、接続料原価に含めていること、④利用者は、NT
Sコストを通信コストとして負担する以上、それが基本料として回収されるか、通
信料として回収されるかの違いにすぎないこと、⑤規制緩和及び競争政策に関する
日米協議において平成14年中にNTSコストの扱いについて決定することにした
との合意に違反している
ことなどの点を挙げている。
しかし、原告らの上記①の主張については、き線点装置の費用は、接
続料から回収するものであるか、回線単位のものとして基本料から回収すべきかに
ついて両論が成り立ち得るものであり、一義的に決まるものではなく、諸外国にお
けるき線点装置を含むNTSコストの回収方法をみても、欧州各国では従量制接続
料からNTSコストを回収しないが、米国では接続料による事業者負担から基本料
による利用者負担に移行してきているとされているのであって(乙11)、結局、
各国は、NTSコストの回収方法を政策的に決定しているのであり、経済理論上、
NTSコストを接続料の原価に含めるべきか否かが一義的に決定されるものではな
いというべきである。
原告らの上記②の主張は、WTO合意参照文書に違反することが、直
ちに本件改正省令の違法を基礎付けるものではない点において既に失当であるのみ
ならず、WTO基本合意参照文書に規定する「cost-oriented」と
は、相互接続が「原価に照らして定められる」料金に基づいて提供されることを求
めるものであり、原価と料金の間の関連性の存在を要求するものであるが、その意
義については確定的な解釈はなく、「cost-oriented」な原価にはN
TSコストを含まないということが確定しているものではないから失当である。
原告らの上記③の主張は、平成11年9月20日付けの「長期増分費
用モデル研究会」報告書(甲43)を根拠とするものであるが、同報告書は、「き
線点装置型についても、交換機の機能の一部を提供しているという考え方も可能で
はある。」旨記載しており、き線点装置について、端末回線に帰属する設備である
という側面の他に、交換機の機能の一部を提供しているという側面も有しているこ
とを指摘しているのであるから、同報告書を恣意的に引用するもので失当である。
原告らの上記④の主張は、基本料は通信量の多寡にかかわらないもの
であり、通話料で負担するか、基本料で負担するかで、現実の負担の在り方は大き
く異なること、基本料については、事業法31条3項により「能率的な経営の下に
おける適正な原価及び物価その他の経済事情を考慮して、通常実現することができ
ると認められる水準の料金を料金指数により定める」こととされており、その在り
方について事業法上別の規制がされているのであるから、単純に通話料でなければ
基本料で負担すればよいなどとすることはできないのであるから失当である。
原告らの上記⑤の主張は、法的拘束力のない「第3回日米共同現状報
告」を根拠とするものであって、その違反が本件改正省令の違法を基礎付けるもの
ではないことは明らかであるし、NTSコストの取扱いについて、上記報告に違反
してその決定が正当な理由なく先送りされている事実もなく、いずれにせよ失当で
ある。
(イ) 伝送装置の経済的耐用年数に関する主張(②)
  本件改正省令6条別表第4の3が、事業法38条の2第4項が総務省
令に委任した原価の算定方法に関する事項として、接続委員会による審議結果を踏
まえ、伝送装置の耐用年数を8.8年と設定したのは、合理性を有し、何ら委任の
趣旨に反しない。
すなわち、接続委員会では、伝送装置の撤去実績が把握されていなか
ったことからモデルに用いられている各種の伝送装置について事業者に最長使用年
数を照会したところ、ADM以外の伝送装置は10年を超え、ADMのみは法定耐
用年数である6年を下回るという回答があった。そこで、接続委員会においては、
伝送装置の大容量化・容量当たりの料金低廉化は今後も継続され、短期間に機能の
陳腐化が生じると見込まれることから、最新式のADMは、法定耐用年数である6
年も使用されることはないと予想されたものの、その一方で、ADMの使用年数の
見込みを断定できるだけの根拠もなかったことから、経済的耐用年数については法
定耐用年数である6年とみなすこととした。
本件改正省令は、このような接続委員会での議論を踏まえてADMを
含めた伝送装置全体について8.8年という経済的耐用年数を設定したもので、内
容的にも合理性があり、何ら委任の趣旨に反しない。
これに対して、原告らは、電気通信設備が法定耐用年数を超えて使用
されることを当然の前提として、英国及び米国と比較して我が国の伝送装置の耐用
年数が恣意的に低く抑えられている旨主張している。
しかし、対象となる資産によっては、経済的耐用年数が法定耐用年数
を上回る場合もあれば、他方で、技術革新等により、高性能化、陳腐化の速度が速
く、機器の入れ替えが頻繁であるために経済的耐用年数が法定耐用年数を下回る場
合もあるから、電気通信設備が当然に法定耐用年数を超えて使用されるとの前提に
誤りがある。また、平成14年3月に公表された長期増分費用モデル研究会報告書
(甲53)においても指摘されているとおり、例えば、管路やメタルケーブルにつ
いては、日本のモデルと米国のモデルがほぼ同等の数値を用いる一方で、英国では
管路について、日本と米国の2分の1に相当する数値を用いるなど、米国モデル、
英国モデルにおいても、それぞれの事情に応じて異なる経済的耐用年数を設定して
おり、原告らが伝送装置
の一部のみをもって、経済的耐用年数の算定が不合理であるとすることには、合理
的な根拠がない。
(ウ) 効率化係数に関する主張(③)
  本件改正省令6条別表第4の3は、事業法38条の2第4項が総務省
令に委任した原価の算定方法に関する事項として、年間3パーセントという効率化
係数を用いて算定された施設保全費を規定しているが、これはNTT東西の平成1
2年度事業計画における保守委託費の低減目標値である3パーセントを効率化係数
として採用することとしたもので、合理性を有し、何ら委任の趣旨に反しない。
これに対し、原告らは、平成14年度における実際費用方式による労
務費について、NTT東日本において年間6.9パーセント、NTT西日本におい
て年間10.5パーセントの引き下げがなされ、NTT東西の実情が明らかになっ
ていたにもかかわらず、長期増分費用モデルの入力値に年間3パーセントという効
率化係数を用いたことはNTT東西の実情を反映しないもので事業法に反すると主
張する。
しかし、この労務費は平成14年度における見込みを反映したもので
実績値でないことに加え、既に年間10パーセントの低減を実現すれば毎年度10
パーセントの低減を目標としなければならないわけではなく、あくまでも合理的な
根拠に基づき目標値が設定されれば、毎年度どのようにその水準に向けた効率化を
実施するかは事業者の自主的な判断にゆだねられるべきであり、効率化係数が単年
度における費用低減の状況と一致しないことをもって直ちに不当となるものではな
いから、原告の主張は失当である。
  (6) 変更約款の適用時期を認可前に遡及させた違法主張(違法事由⑥)につい
ての反論
 ア 原告らは、事業法には、本件接続約款の効力を遡及させる規定がないの
に、平成15年4月22日にされた本件各処分により本件接続約款の適用期間が同
月11日からとされていることは、法律行為不遡及という法の一般原則に反し違法
であると主張する。
 イ 原告らの主張の根拠は明らかではないが、仮に刑罰法規の不遡及(憲法
39条)の趣旨を援用するもの又は名宛人に不利益を及ぼすような法的効果を規定
した法規の遡及適用を禁止するという一般原則が存在するという趣旨であれば、以
下のとおり、失当である。
すなわち、本件接続約款は、NTT東西と接続事業者との間で締結され
る契約の内容となるものであって、それ自体法規ではなく、接続約款は事業法38
条の2第2項に基づく被告の認可を受けなければならないところ、認可とは、私人
間の法律行為を完成させ、そこに新たな法律関係を設定させるものにすぎず、契約
の内容の決定は当事者間の意思によるものであって、契約成立前に遡及して契約の
効果を及ぼすこと自体は当事者間の合意によって可能である。
したがって、本件接続約款において、その適用期間の始期を遡及させ、
本件各処分がその内容を認可するものだとしても、その適用期間の始期はあくまで
も契約によって決定されることであり、不利益な法的効果を規定した法規の遡及適
用が問題となる場面とは全く異なるものであるから、原告らの上記主張は失当であ
る。
(7) 独占禁止法違反の違法主張(違法事由⑦)に対する反論
 ア 原告らは、本件接続約款の認可申請は、NTT東西均一接続料の設定を
目的にされたものであり、不当な取引制限を禁止する独禁法3条に違反し、また、
独禁法の目的とする公正競争を電気通信市場に適用したものが事業法1条(目的)
の規定であり、独禁法に違反する本件接続約款の申請は、事業法1条にも違反する
として、本件接続約款を認可した本件各処分は違法である旨主張する。
     しかし、原告らの主張は、独禁法の解釈適用を誤るものであり、失当で
ある。
 イ 独禁法3条の不当な取引制限に該当しないこと
(ア) 独禁法において「不当な取引制限」とは、「事業者が、契約、協定
その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、
維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を
制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に
反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」と定義されている
ことからすれば(独禁法2条6項)、「不当な取引制限」というためには、上記の
「他の事業者と共同して対価を決定…する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂
行する」という共同行為が必要となる。
そして、独禁法2条6項にいう「共同して」に該当するというために
は、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に意思の連絡があったと
認められることが必要であり、複数の事業者相互間において価格の引き上げ等につ
いて「意思の連絡」があるというためには、事業者がある程度自由に価格を決定で
きること等が前提となる。
    (イ) そこで、本件における接続料設定の在り方をみると、まず、本件接
続約款は、接続料についてNTT東西で均一に設定されているが、これは、本件改
正省令附則6項が原価及び通信量等を合算して接続料を算定すると規定しているこ
とに基づくものであり、この点についてNTT東西が自由に決定できる余地はな
い。
また、同項が規定する機能のうち本件接続約款の認可申請対象となる
のは、原価の算定について長期増分費用方式が適用される機能であり、原価の算定
に当たってNTT東西が自由に決定できる余地はない。
さらに、本件改正省令附則5項は、接続料の前提となる原価の算定等
に用いる通信量等は平成13年度下半期及び平成14年度上半期のものを用いると
規定しているが、この点においてもNTT東西が自由に決定できる余地はない。
したがって、接続料の設定について、NTT東西には、その意思によ
って決定する自由はなく、「意思の連絡」はあり得ず、NTT東西による共同行為
は観念できないから、本件接続約款の認可申請は、独禁法の不当な取引制限に該当
しない。
 3 争点
   以上によれば、本件の争点は、①情報通信審議会の諮問手続において、原告
ら事業者の意見聴取をしなかった点が手続違法事由といえるか、また処分の取消事
由となるか、②被告の判断過程に他事考慮等の過誤に基づく違法事由があったかど
うか、③事後精算制度を総務省令において定めた点が事業法の委任の範囲を逸脱し
た違法事由といえるか、④総務省令においてNTT東西の接続料を均一に定めた点
が事業法の委任の範囲を逸脱した違法事由といえるか、⑤総務省令の原価算定方法
に事業法の委任した適正な原価に基づかないという違法事由があるといえるか、⑥
変更接続約款の適用時期を認可前に遡及させた点が違法事由といえるか、⑦NTT
東西が接続料を均一とする約款を作成したこと等が独占禁止法3条に違反するかで
ある。
第3 当裁判所の判断
 1 違法事由①(接続事業者の意見聴取をしなかった違法)について
  (1) 法令の定め
 事業法94条1号は、接続約款の認可については審議会に諮問すべき旨規
定し、これを受けた情報通信審議会は同審議会議事規則を定め、審議会は、その調
査審議に当たり、必要と認めるときは、当該調査審議事項と関連する利害関係者そ
の他の参考人から公聴会その他の方法により意見を聴取することができる旨規定し
ている(同規則5条1項、甲18)。そして情報通信審議会電気通信事業部会(以
下「部会」という。)が接続等に関する事項の調査審議を行う場合の議事手続につ
いて定めた議事手続規則2条3号(甲19)は、部会長は、第一種指定電気通信設
備に関する接続約款に関する認可について調査審議を行う場合は、軽微な案件であ
って、部会が意見の聴取を要しないと認めるものを除き、情報通信審議会議事規則
5条の規定による意見
の聴取を行わなければならない旨規定している。
  (2) 電気通信審議会(当時)は、平成8年12月19日付けで、接続の基本的
ルールの在り方についての答申を出し、その中で接続ルールの策定・執行に関する
行政における透明性及びデュープロセスの確保を図るため、①接続ルールの見直
し、接続約款の認可など接続ルールの策定・執行に関して措置を講じる場合には、
原則として審議会に諮問すべきこととし、②審議会においては、関係者に対して意
見を述べる機会を与えることを提言した。(甲20)
    なお、電気通信審議会は、これまでは、接続約款の認可に当たり、接続事
業者の意見聴取を実施しており(甲21、24ないし28)、接続約款認可の前提
となる省令改正の際に意見聴取がなされていたことを理由に接続約款認可の際の意
見聴取が省略された例はなかった(甲29)。
(3) 本件接続約款認可に至る経緯
被告は、平成14年3月27日、長期増分費用モデルの見直しを踏まえた
接続料算定の在り方について情報通信審議会に諮問し(乙10)、同審議会は同年
9月13日平成14年答申をまとめたこと(乙11)、総務省は、平成14年答申
を受けて、平成15年2月14日、本件省令の一部改正案について情報通信審議会
に諮問を行い(乙7)、同審議会は、同年3月28日、精算の方法や遡及日等の一
部の修正事項を除いて、前記諮問案を適当とする旨の平成15年答申をまとめたこ
と(乙8)、これを受けて、総務省は、同年4月11日、平成15年答申にそって
本件省令を改正したこと、NTT東西は同年4月18日、被告に対し、本件改正省
令に基づき接続約款の変更申請を行い、総務省は同月22日、情報通信審議会に諮
問したところ、同審議
会は、同日審議を行い、本件の問題点は、平成14年答申、平成15年答申におい
て審議が尽くされており、新たに意見募集に付す必要はないとして、即日認可する
ことが適当であるとの答申を出し、被告は同日、上記答申を受けて本件各処分をし
たことは当事者間に争いがない。
(4) 諮問手続の瑕疵と処分の違法性との関係について
  原告らは、「本件接続約款の認可について諮問を受けた情報通信審議会
が、利害関係人である原告らの意見を聴取しないまま答申を行ったことは違法であ
り、このような違法な答申に基づく本件各処分も違法である。」という趣旨の主張
をするのに対し、被告は、「情報通信審議会が利害関係人の意見聴取を行うことは
法律上の義務ではないし、仮にこれが法律上の義務であったとしても、先行して行
われた手続において、利害関係人の意見聴取が十分にされており、改めて意見聴取
をする必要はなかったものであるから、いずれにせよ情報通信審議会の答申に違法
はなく、したがって、本件各処分も違法ではない。」という趣旨の主張をする。
  ところで、一般に行政庁が行政処分をするに当たり諮問機関に諮問し、そ
の決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁
が、諮問機関の答申を慎重に検討し、これに十分な配慮を払い、特段の合理的な理
由のない限りこれに反する処分をしないよう要求することにより、当該行政処分の
客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられ
るから、このような諮問手続の重要性にかんがみると、行政処分が諮問を経ないで
された場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、答申の
過程に重大な法規違反があることなどにより、その答申自体に上記のような趣旨に
反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てされた行政処分も違法と
なるものと解される
(最高裁判所第1小法廷昭和50年5月29日判決、民集29巻5号662頁)か
ら、本件においては、情報通信審議会の審理、答申の過程に上記のような意味での
重大な法規違反等があるかどうかが問題となるので、以下、この点について判断す
る。
(5) 重大な法規違反等の有無について
   ア 情報通信審議会における利害関係人の意見聴取については、事業法上特
段の規定は置かれていないが、前述のとおり、情報審議会議事規則5条は、審議会
は、その調査審議に当たり、必要と認めるときは、利害関係人その他の参考人から
意見を聴取することができる旨を定め、議事手続規則2条は、部会長は、接続約款
に関する認可については、軽微な案件を除き、上記の意見聴取を行わなければなら
ない旨を定めている。
     被告は、「これらの規定は、情報通信審議会の内部手続を定めたものに
すぎないから、これに違反があったとしても、同審議会の審理、答申が違法となる
ものではない。」という趣旨の主張をしている。しかし、事業法が、本件接続認可
について情報通信審議会への諮問を要求しているのは、同審議会における専門的か
つ中立的な審議を経た上で最終判断を下すことが、専門技術的判断が要求される同
処分の適正を図る上でも、また、公正な処分の実現という観点からも相当であると
いう趣旨に基づくものであると考えられるところ、同審議会における審議が、上記
のような目的にかなうものとなるためには、その基礎となるべき関連諸事項に関す
る具体的事実について、多面的で、かつ、できるだけ正確な客観資料を収集し、そ
の分析、究明に基づ
く適切な事実認定が行われ、それに基づいて判断がされる必要があるものと考えら
れるところ、利害関係人への意見聴取がこのような目的を達する上で果たす意義は
小さくないものと考えられる。
     また、認可の許否は、認可申請者のみならず原告ら接続事業者にも重大
な影響を及ぼすものである上に、接続条件は、もともと事業者間協議による接続協
定により契約方式で決定されてきたが、接続に関して公正有効競争条件を確保する
ため、接続約款認可制度が導入されたものであり、このような経緯に照らしてみて
も、接続約款の認可に当たっては接続事業者に意見を述べる機会を与える必要があ
るものと考えられる。
     以上のように考えていくと、情報通信審議会議事規則や議事手続規則の
上記各規定は、単に内部手続を定めたにすぎないものではなく、情報審議会の審理
の適正と公正を担保するとともに、接続事業者ら利害関係人の利益を保障すること
を目的としたものであると解すべきであるから、これらの規定に違反した場合に
は、同審議会の審理手続が違法となり、ひいては、その答申に基づく認可が違法と
なることもあり得るものというべきである。
   イ そこで、本件において、本件各処分の違法をもたらすような手続違反が
あったどうかを検討するに、本件接続約款の諮問を受けた情報審議会において利害
関係人の意見聴取は行われなかったことは前認定のとおりであるが、他方、同審議
会は、これに先だって、本件改正省令に関する諮問を受け、平成15年答申を行っ
ており、その審理に当たっては、利害関係人である接続事業者を含む国民一般を対
象に意見聴取が行われている(乙8)。そして、本件接続認可と本件改正省令で
は、その内容がほぼ一致しており、本件接続認可において取り上げられた事項であ
る仮精算の手続も、平成15年答申の審理に当たり、接続事業者から、予測困難な
事後精算制度の導入は事業計画の策定を困難にし、安定的な経営を阻害するという
意見が出されたため、
接続事業者が当該年度中に概算払いによって費用計上をすることを可能とするため
に、NTT東西において通信料等の見込みに基づいて年度末に仮精算を行うことと
したものであり、利害関係人の意向を反映した事項であるといえることなどを考慮
すると、本件接続認可の諮問手続において問題とされていた事項は、基本的には、
平成15年答申の審理の際に、既に利害関係人からの意見聴取が行われた事項であ
ったと評価することが可能である。
     これに対し、原告らは、①本件改正省令の前後では、精算の内容に変更
があり(トラヒック減少分5パーセントは精算の対象外とする規定を除外しNTT
東西又は接続事業者各々の通信量の変動率に応じて精算する)、②接続約款の施行
時期についても変更があった上、③本件改正省令の審議に当たって行われた意見聴
取においては、接続事業者から更に議論を深める必要があるとの意見が提出されて
いたのであるから、本件接続約款認可の諮問の際には、再度、利害関係人である接
続事業者から意見聴取すべきである旨主張する。
     しかし、①の点は、本件省令の改正案においては事後精算を行う場合
が、「その影響額のうち5パーセントを超えた部分について精算する」とされてい
たのを、情報通信審議会における意見聴取手続で、精算制度が導入されれば、NT
T東西は、トラヒックの減少により接続料の値上げを享受するため、トラヒックを
増加させようというインセンティブが働かなくなるという意見が出されたことを踏
まえて、平成15年答申において、精算を行う場合には、NTT東西と接続事業者
との間の精算に係る負担額を各々の通信量の変動量の比率で配分したものとし、自
らのトラヒックの変動に対して応分の負担をすることが適当であるとの答申がされ
たものであり(乙8)、利害関係人の意見聴取の手続がとられ、その意見が反映し
た結果の変更であり、
②の点は、本件省令の改正案においては、認可を受けた接続約款に定める接続料を
平成15年4月1日に遡及して適用するとしていたのを(乙26)、本件改正省令
交付の日(平成15年4月11日)から本件各処分までの日のいずれかの日まで遡
及することができることに変更したものであるが(本件改正省令附則7項)、本件
約款を遡及適用すること自体は、本件省令改正の諮問に係る審議手続において、既
に利害関係人から意見聴取していた事項であり、また遡及の起算日について当初の
諮問案よりも接続事業者の予見性に配慮した内容になっていたのであるから、これ
らの点については、いずれも既に利害関係人の意見聴取がされていたものと評価す
ることが可能である。そして、③の点については、情報通信審議会が、本件省令改
正の諮問については
、既に議論を尽くしたものとして平成15年答申を行ったものである以上、利害関
係人から更に議論を尽くす必要があるとの主張がされていたからといって、これに
従わなければならない理由はないものといわざるを得ない(このような意見に従わ
なければならないとすれば、同審議会における審理手続が際限もなく続くことにな
りかねないし、議論を尽くしたとする同審議会の判断に明らかな誤りがあったと認
めることもできない。)。
     以上の点に照らしてみると、本件接続約款の認可そのものは、議事手続
規則2条にいう「軽微な案件」とはいい難いところがあり、その意味において、利
害関係人の意見聴取を行わなかったことが同条の規定に適合したものといえるかど
うかには疑問の余地があるものの、諮問に係る事項については、既に平成15年答
申のための審理手続において、利害関係人の意見聴取が行われており、改めて意見
聴取を行う必要性は必ずしも高いものではなかったことからすると、その瑕疵が、
情報通信審議会に対する諮問を経ることを定めた事業法の規定の趣旨を損なうほど
重大なものであったということはできない。したがって、同審議会の答申に基づい
てされた本件各処分も、違法ということはできないものというべきである。
 2 違法事由②(他事考慮等の判断過程の過誤に基づく違法)について
  (1) 原告らは、本件省令改正・本件各処分に至る過程においては、①NTT東
西の意見を優先的に聴取したこと、②NTT東西均一接続料を認めるに至った過程
が不透明であること、③NTT東西の経営問題を優先的に斟酌したことといった問
題点があり、これらは、本件各処分が他事考慮等に基づくものであって、違法であ
ることを裏付けていると主張する。
(2) ①(NTT東西の意見を優先的に聴取した)について
原告らの主張は、平成14年答申に係る情報通信審議会電気通信事業部会
の接続委員会における審議に際してされた利害関係人の意見聴取方法を問題とする
ものであるが、上記委員会での審議の経緯については、以下の事実が認められる。
ア 合同ヒアリング
 上記接続委員会においては、関係者からの意見聴取を目的として、原告
フュージョン・コミニュケーション以外の原告4社を含む電気通信事業者を招致し
て平成14年4月16日、同月18日、同年6月21日、同年8月29日の4回に
わたり電気通信事業部会と合同で合同ヒアリングを行った(乙11)。
 第1回、第2回、第4回合同ヒアリングは、主に電気通信事業者からの
意見聴取を目的として行われ、第1回合同ヒアリングは、NTT東西、原告KDD
I株式会社(以下「原告KDDI」という。)及び東京通信ネットワーク株式会社
(以下「TTnet」という。)を対象として、第2回合同ヒアリングは、エヌ・
ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、原告日本テレコム株式会社(以下
「原告日本テレコム」という。)、ボーダフォン・ジャパン株式会社、原告日本テ
レコム・アイディーシー株式会社(当時の名称は、原告ケーブル・アンド・ワイヤ
レス・アイディーシー株式会社)の各事業者及び全国消費者団体連絡会を対象とし
て、第4回合同ヒアリングは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
を除く上記各電気通信事
業者等を対象として、それぞれ開催された(乙17)。
 各合同ヒアリングは、各電気通信事業者に公平な時間配分で各論点につ
いて意見を述べる機会が付与された(乙19の1ないし3)。
 なお、第3回合同ヒアリングは、主に電気通信事業のユーザーからの意
見聴取を目的とし、消費者団体等を対象として開催された。
 そして、平成14年答申の草案は、接続委員会及び電気通信事業部会の
審議を経て、平成14年8月1日、いわゆるパブリック・コメント手続に付された
(乙18)。
   イ 接続委員会における調査
 接続委員会は、平成14年5月10日(第22回接続委員会)、同月3
0日(第24回接続委員会)、同年6月13日(第26回接続委員会)、同月28
日(第27回接続委員会)及び同年7月12日(第29回接続委員会)の5回(以
下「接続委員会ヒアリング」という。)にわたり関係事業者からヒアリングを実施
した(乙17)。
 第26回接続委員会のヒアリングは、接続料の算定に当たりどのような
通信量を用いるかについて検討することを主たる目的として行われ、NTT東西、
原告KDDI、原告日本テレコム及びTTnetの各電気通信事業者を招致し、こ
れらの事業者から通信量の今後の動向について意見を聴取した(争いのない事
実)。
 第22回接続委員会、第24回接続委員会、第26回接続委員会、第2
7回接続委員会及び第29回接続委員会の接続委員会ヒアリングは、2次モデルに
基づく算定値を適用した場合のNTT東西の経営に対する影響を検証することを目
的として行われ、NTT東西を招致し、長期増分費用モデルに基づく費用が接続料
の原価として適正か否かを判断するため、NTT東西の経営状況について意見を聴
取したほか、NTSコストを基本料から回収することが可能か否かを検討するた
め、今後の基本料収支の動向について意見を聴取するとともに資料の提出を求めた
(争いのない事実)。
   ウ このように合同ヒアリングにおけるNTT東西と他の接続事業者の招致
回数、時間配分には差異はなく、公平に行われたものと評価し得る。
     また、接続委員会ヒアリングは、NTT東西のみを対象としてなされ、
また両社に対してのみ資料の提出を求めた事実が認められるが、その目的が長期増
分費用モデルに基づく費用が接続料の原価として適正か否かを判断することにある
以上、その判断に当たっては、NTT東西から現実の費用構造等の資料の提出を求
めて、同モデルに基づく費用が接続料の原価として適正であるか検証することが必
要不可欠であるし、その際NTT東西の経営の内容、財務状況その他の経営の秘密
にかかわる事項についても説明と資料の提出を求めることがあり得ることからすれ
ば、NTT東西に対するヒアリングの回数が多くなり、両社に対してのみ経営資料
の提出を求めたとしても(もっとも合同ヒアリングにおいては他の接続事業者に対
して資料の提出を求
めている)、それには合理的な理由があり、直ちにNTT東西の意見を優先したと
認めるのは困難である。
(3) ②(NTT東西均一接続料を認めるに至った過程が不透明である)の主張
について
   ア 原告らは、東西均一接続料を強く主張した委員が再任されなかった点等
を問題として、NTT東西の接続料が均一とされるに至った意思形成過程が不透明
であるとの主張をするところ、この主張の趣旨は必ずしも明らかではないが、本件
各処分における判断過程において他事考慮等がなされ、一定の結論に導くために、
強引かつ不公正な手続が行われたという趣旨に理解することもできるので、以下こ
の点について検討を加えることとする。
   イ NTT東西均一接続料を認めるに至る経過
(ア) 平成14年答申
      長期増分費用モデルの1次モデルは、平成12年9月に設置されたモ
デル研究会における検討により見直され、2次モデルが提示されたため、被告は、
平成14年3月、2次モデルを踏まえた接続料の算定方法の在り方を情報通信審議
会に対して諮問した(乙10)。
      情報通信審議会は、平成14年答申において、NTT東西に適用する
接続料は、NTT東西それぞれの長期増分費用方式により算定したコストとするの
が最善の方法であるが、実際のモデル適用においては、NTT東日本の経営に及ぼ
す影響や、西日本エリアの利用者へ与える影響について配慮することが必要であ
り、例えば長期増分費用方式により算定したコストに基づく接続料水準を即時に適
用するのではなく、年度ごとに段階的に適用する等の措置を講じる必要があるとの
答申をした(乙11)。
(イ) 衆参両院総務委員会決議等
      衆参両院の総務委員会は、平成14年11月28日、ユニバーサルサ
ービスの趣旨に鑑み、NTTの接続料については平成15年度以降も引き続き東西
均一を維持し、ユーザー料金に地域格差が生じることがないよう適切な措置を講ず
る旨の決議を行った(乙9の1、2)。
    (ウ) 情報通信審議会委員の退任
      情報通信審議会委員29名は、平成15年1月6日に任期満了となっ
たため、被告は「学識経験のある者のうちから、総務大臣が任命する」と規定する
情報通信審議会令2条に基づき、この29名のうち20名を再任し、9名を再任し
ないこととしたが、再任されなかった委員の中には、東西均一接続料に強く反対す
る委員が含まれていた(争いのない事実)。
(エ) NTT東西の接続料を均一にすることについての意見聴取
      平成14年答申が公表された後、被告に対して、西日本の地方自治
体、地方議会、経済団体を中心に24件のNTT東西均一接続料の維持を求める要
望書が提出された(乙28)。
      情報通信審議会によるパブリック・コメント手続においては、主に地
方公共団体から、NTT東西均一接続料とすることに賛成する意見と、原告らを含
む事業者等からこれに反対する意見提出がなされた(乙8)。
      平成15年2月12日には、学者等21名からNTT東西均一接続料
とすることに反対する緊急声明が出された(乙29の1)。
(オ) 平成15年答申
      電気通信事業部会は、本件省令改正について審議し、平成15年3月
28日、平成15年度及び16年度に適用される接続料については東西均一とする
旨の答申をした(乙8)。
   ウ このように、NTT東西均一接続料を認めない旨の平成14年答申が公
表された後、NTT東西均一接続料の維持を求める意見も多数提出されていたもの
であり、情報通信審議会がこれらの意見を斟酌した上で平成15年答申を行い、本
件省令が改正されたものであることが認められる。原告らは、NTT東西均一接続
料に反対した委員が再任されなかったこと等を根拠に、何らかの不当な政治的圧力
がかかって、平成14年答申が覆されたもので行政の公平性、透明性に欠ける旨主
張するが、平成15年答申がなされるに至った経緯は上記認定のとおりであって、
東西均一接続料に反対する委員の不再任には、これまでの慣例と異なる側面があっ
たものの、他に審議会委員に対して何らかの圧力が加えられた等の事情を認めるに
足りる証拠はないこ
とからすれば、上記の点のみを根拠として、一定の結論に導くための強引かつ不公
正な手続が行われたと断ずることはできず、原告の主張を認めるのは困難である。
(4) ③(NTT東西の経営問題を優先的に斟酌した)の主張について
    原告らは上記③の主張の根拠として、本件改正省令、本件各処分において
は、東西均一接続料、NTSコストの接続料原価の算入、事後精算制度の導入など
NTT東西に有利な措置が採用されているなどと主張するが、これらはいずれも本
件改正省令及びこれに基づく本件各処分の内容の適否の問題として論ずべきもので
ある(この点については後に検討する。)。もっとも、本件省令改正及び本件各処
分に至る過程において、NTT東西の意見のみが採用されるというような事態が生
じていたとすれば、そのような事情を不公正な判断が行われたことを推認する一要
素とみる余地もないわけではないが、NTT東西が提出した意見のうち、①長期増
分費用方式を廃止すること、②仮に長期増分費用方式を使用する場合でも、事後精
算は全額について行
うこと、③長期増分費用方式の適用対象機能を拡大しないこと、④トランクポート
(電話線中継接続器)等を個別事業者の負担とすべきこと(甲41、42)等は採
用されず、①については平成15年度以降も長期増分費用方式を採用することと
し、②については、事後精算を行う場合を通信量が15パーセント以上変動した場
合とし、精算額についてもNTT東西とそれ以外の事業者とで通信量を変動させた
割合に応じることとし、③については、平成15年度からPHS基地局回線伝送機
能及び中継伝送専用機能について新たに長期増分費用方式で原価算定することと
し、④については、ヒアリングにおける接続事業者の意見を踏まえて(乙20の1
ないし20の2)、トランクポート等の扱いについてパブリック・コメントに付し
た答申案が変更されてい
る(乙11、20の3)ところ、これらの点は、いずれもNTT東西の利益に少な
からぬ影響を及ぼす事項であることを考えると、NTT東西の意見のみが採用され
たとは到底いうことができない。
  (5) 以上の次第で、この点に関する原告らの主張はすべて失当というほかはな
い。
 3 違法事由③(事業法が認めない事後精算制度を導入した違法)について
  (1) 本件改正省令の内容
    本件改正省令附則8項ないし10項は、平成15年度及び平成16年度に
適用する接続料について、平成15年度又は平成16年度の通信の総時間が平成1
3年度下期及び平成14年度上期の通信の総時間と比較して15パーセントを超え
て変動した場合には、事後的な精算を行うこととし、精算に係る負担額は、NTT
東西と接続事業者の各々の通信量の変動率の比率で配分したものとする旨規定して
いる。
  (2) 事業法38条の2第3項2号は、接続料は、能率的な経営の下における適
正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算定された原価に照ら
して公正妥当なものでなければならないと定め、同条4項は、上記の総務省令で定
める方法とは、第一種指定電気通信設備を通常用いることができる高度で新しい電
気通信技術を利用した効率的なものとなるように新たに構成するものとした場合
に、当該第一種指定電気通信設備との接続により当該第一種指定通信設備によって
提供される電気通信役務に係る通信料又は回線数の増加に応じて増加することとな
る当該第一種指定通信設備に係る費用を勘案して原価を算定するものでなければな
らないと定めている。
    このように、事業法は、接続料算定の根拠となるべき適正な原価の算定方
法として、長期増分費用方式を採用することを定めた上で、それに基づく具体的な
算定方法の定めを総務省令に委任したものであるが、このような委任がされた趣旨
は、接続料に関する原価の算定方法については、通信網の構造、電気通信技術の動
向等に関する専門技術的な知識や会計に関する専門知識等が不可欠であり、また、
事情の変化に適正に対応して判断する必要もあることから、算定方法の具体化を総
務省令に委任したものと解される。このような委任の趣旨に照らしてみると、総務
省令において算定方法を具体化するに当たっては、専門技術的観点からの裁量が認
められるものというべきであるが、他方、総務省令において、委任の趣旨に反する
ような定め、例えば
、長期増分費用方式が採用されたことと矛盾、抵触するような定めが置かれた場合
には、そのような定めは事業法の委任の範囲を超えるものとして違法無効となるも
のと解される。また、被告は、接続料の額がこのようにして定められた原価に照ら
して公正妥当なものであるかどうかを判断するについて裁量権を有するが、その裁
量権行使が、事業法の趣旨を逸脱する場合には、やはり違法になるものと解され
る。
    ところで、長期増分費用方式は、新規参入者が現時点で最も低廉で効率的
な設備と技術を前提として、現在需要をまかなうネットワークを構築した場合の費
用を算定するものであり、独占的な地域通信網に仮想的な競争を導入することによ
って、既存事業者の非効率性を排除したコスト計算を行おうとするものであり、一
つのモデルを前提とした計算方法なのであるから、モデルが採用した数値と現実の
数値とが乖離したからといって直ちにそれを是正する措置を講じるのではモデルを
採用した意味がなくなる反面、モデルの前提を覆すような事情の変更が生じた場合
にまで、あくまでもモデルに基づく計算にこだわることは非現実的であるといわざ
るを得ない。本件改正省令は、このような観点から、現在需要の指標であるトラヒ
ックに着目し、その
減少が僅かである場合にまで精算を行うことは、NTT東西が、トラヒックを減少
させた場合でも接続料に係る精算額を確保することが可能となるという結果をもた
らし、トラヒックを増加させようというインセンティブが働かなくなるおそれがあ
り妥当ではないが、過去の変動のうち最大のものである15パーセントを超えるト
ラヒックの減少が生じた場合には、モデルに基づく計算をそのまま適用することを
不相当とするような事情変更があったものとして、精算を行うが、その場合であっ
ても、トラヒックの減少が15パーセントに近い水準に達すると、トラヒックを減
少させることによって精算が行われ、逆にNTT東西の収益を増加させることが考
えられ、トラヒックを増加させるインセンティブが働かなくなるおそれがあること
から、精算を行う場
合には、NTT東西と接続事業者との間の精算に係る負担額を各々の通信量の変動
率の比率で配分したものとし、自らのトラヒックの変動に対し応分の負担をさせる
こととしたものであって、このような算定方法には、原価に照らして公正妥当な接
続料額を定める方法として一応の合理性があり、長期増分費用方式を採用した趣旨
にも反するものではないというべきである。なお、全体の通信量が15パーセント
を超えて変動した場合に精算が行われることから、ある社が通信量を増加させても
他社が通信量を減少させると、全体として精算が発生し、通信量を増加させた者ほ
ど精算総額が増加することになることは否めないが、接続料は、通信量に応じて支
払う性質のものである以上、このことは、必ずしも不合理な結果であるとはいえな
いものというべきで
ある。
したがって、本件改正省令において事後精算制度を設けたことが、事業法
の委任の範囲内を超えるものであるとはいい難い。
  (3) この点原告らは、①事業法には事後精算を認めた規定がないから、事後精
算制度を本件改正省令で規定したのは事業法の委任の範囲を超えている、②実際費
用方式においては省令で事後精算が規定されていたところ、長期増分費用方式が導
入された際に接続料規則22条かっこ書きにおいて精算の対象外とされたことから
すれば、事後精算を認めないのが事業法の趣旨である、③事後精算制度は法の一般
原則である遡及効禁止の原則に反している、④事後精算制度は長期増分費用方式の
本質であるフォワードルッキング性と相容れないものであるから、事後精算を認め
ないのが事業法の趣旨である、⑤事後精算の方法が公正妥当な接続料の算定という
事業法の趣旨に反している、⑥事業法38条の2第12項の再計算規定に違反して
いる旨主張している

しかし、①、④、⑤については、一定の事情変更があった場合に精算を行
うこととすることが、長期増分費用方式やこれを採用した事業法の規定に反するも
のではないことは前記のとおりであり(なお、原告らが強調する長期増分費用方式
のフォワードルッキング性も、事後精算をおよそ不相当とするものであるとはいい
難い。)、②については、長期増分費用方式導入当初において事後精算制度が設け
られなかったからといって、その後も事後精算制度を設けないことが事業法の趣旨
であると解する根拠はない上、導入当初の規定は、平成12年度から14年度にか
けての接続料について、NTT東西の経営に及ぼす影響を緩和するため、平成10
年度の通信量を用いることを可能とし、長期増分費用方式モデルによって算定され
た原価に基づく接続料
を平成14年度までの3年間段階的に実施することとしたことから、事後精算制度
を導入するとこのような激変緩和措置の効果が没却されることを考慮したものと解
することが可能であり、③については、事後精算は、本件改正省令において当初か
ら予定されている事柄であって、事情変更が生じた後になって省令を改正し、それ
を遡及適用させようとしているわけではないのであるから、遡及効禁止の問題が生
じる余地はないものというべきであり、⑥については、モデルの有効性を前提とし
た上で、事情変更に基づく調整を行う事後精算制度と、モデルの前提となっている
数値そのものの見直しを行う再計算制度という趣旨の異なる制度を同一視した誤っ
た前提に基づく主張であって、失当というほかはなく、結局、原告らの上記主張は
いずれも採用できな
い。
 4 違法事由④(東西均一料金を定めた違法)について
  (1) 事業法と本件改正省令の定め
 ア 事業法の定め
     事業法38条の2は、指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が定
めるべき接続約款に関して次のように規定している。
    同条2項 前項の規定により指定された電気通信設備(以下「第一種指定
電気通信設備」という。)を設置する第一種電気通信事業者は、当該第一種指定電
気通信設備と他の電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、当該第一種電気
通信事業者が取得すべき金額(接続料)及び接続の条件について接続約款を定め、
総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とす
る。
    同条3項 総務大臣は、前項の認可の申請が次の各号のいずれにも適合し
ていると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
    同項2号 接続料が能率的な経営の下における適正な原価を算定するもの
として総務省令で定める方法により算定された原価に照らし公正妥当なものである
こと
    同条4項 前項2号の総務省令で定める方法(同項第1号ロの総務省令で
定める機能のうち、高度で新しい電気通信技術の導入によって、第一種指定電気通
信設備との接続による当該機能に係る電気通信役務の提供の効率化が相当程度図ら
れると認められるものとして総務省令で定める機能に係る接続料に限る。)は、第
一種指定電気通信設備を通常用いることができる高度で新しい電気通信技術を利用
した効率的なものとなるように新たに構成するものとした場合に当該第一種指定電
気通信設備との接続により当該第一種指定電気通信設備によって提供される電気通
信役務に係る通信量又は回線数の増加に応じて増加することとなる当該第一種指定
電気通信設備に係る費用を勘案して原価を算定するものでなければならない。
   イ 本件改正省令の定め
  事業法38条の2第3項2号、4項を受けて、本件改正省令は次の趣旨
の規定をしている。すなわち、
    (ア) 附則6項は、NTT東西が設置する指定電気通信設備のうち、4条
の表が掲げる加入者交換機能(ただし同表備考三のヘの機能を除く)、信号制御機
能、優先接続機能、市内伝送機能、中継系伝送機能、中継伝送共用機能、中継伝送
専用機能、信号伝送機能に係る平成15年、16年度の接続料については、両社の
原価及び通信量等を合算して算定する旨を定め、これにより、平成15年、16年
度のNTT東西の前記機能に係る接続料は均一となった。
    (イ) 5条は、事業法38条の2第4項の総務省令で定める機能は、4条
の表に掲げる基地局設備用端末回線伝送機能、加入者交換機能(ただし同表備考三
のイからニまでの機能及びヘの機能を除く)、市内伝送機能、中継系伝送機能、中
継伝送共用機能、中継伝送専用機能、信号伝送機能とする旨を定めており、これに
よって、NTT東西均一接続料に係る機能は概ね事業法38条の2第4項(長期増
分費用方式)の適用があることになった。
  (2) 本件改正省令と事業法との整合性について
   ア 以上のような事業法の定めは、能率的な経営の下における適正な原価を
算定する方法について、長期費用増分方式を採用すべきことを定めた上で(事業法
38条の2第4項)、その具体的な計算方法の定めを総務省令に委任し(同条3項
2号)、また、最終的に定められるべき接続料は、総務省令によって具体的に定め
られた方法に従って算定された原価に照らして公正妥当なものでなければならない
旨を定めているものである(同号)。
     そして、総務省令において具体的な原価計算方法を定めるに当たって
は、専門技術的観点からの裁量が認められるものというべきであるが、その定めが
事業法の委任の範囲を逸脱するものであったり、著しく不合理なものであった場合
には、その定めが無効となることはいうまでもない。また、最終的な接続料の額
は、総務省令が定める方法に従って算定された原価に照らして公正妥当なものでな
ければならないところ、原価に照らして公正妥当かどうかの判断に当たっても、接
続約款の認可権限を有する被告の裁量が認められるべきものであるが、この点に関
する被告の判断が、事業法の趣旨を逸脱するものであったり、社会通念上著しく不
合理であったりした場合には、その判断は違法となるものというべきである。
     他方、本件改正省令附則6項は、この規定が、平成15年、16年度の
「接続料」については、NTT東西両社の原価及び通信料等を合算して算定すると
定めていることや、事業法38条の2が、接続料等を定める接続約款は、電気通信
事業者が個別的に認可申請をすることを予定しており、したがって、接続料を定め
る前提となるべき原価計算も、電気通信事業者ごとに行われることが予定されてい
るものと解されることからすると、原価計算の方法に関する定めとしてNTT東西
均一の原価計算を行うことを定めたものではなく(そのように解すると、同項の規
定は、NTT東西両社の原価等を合算して計算することを定めており、個別的な原
価計算を予定している事業法の趣旨に反することにならざるを得ない。)、原価計
算に照らして「公正
妥当」な接続料を定めるに当たって、NTT東西両社の合算計算を行う旨を定めた
ものと解される。なお、原告らは、本件改正省令の中で、公正妥当な接続料の算定
方法を定めることは、事業法の委任の趣旨を超える旨の主張もしているが、被告
は、事業法によって、公正妥当な接続料の認定権限を与えられているのであるか
ら、その権限行使の基準を本件改正省令において定めることが、事業法の委任の範
囲を超えるものではないことは明らかである。
   イ 本件では、上記のような附則6項の規定が、事業法の定めやその趣旨に
違反するものであるかどうかが問題となるわけであるが、本件改正省令に基づいて
算出されるべき原価の額は、NTT東西それぞれについて個別的に定められるべき
ものであって、両社で当然に異なると考えられるのであるから(被告は、非効率性
を排除したコストベースでは、NTT東西間で、原価に約30パーセントの格差が
生じたことを自認している。)、これに照らして公正妥当な接続料の額を、原価に
適正な利潤を加えた額であると考える限り、NTT東西均一接続料が公正妥当な接
続料であるということは困難であるといわざるを得ないし、このこと自体は、被告
も否定するものではないと解される。
     そこで、被告は、「NTT東西がユニバーサルサービスを提供すべきこ
とを定めるNTT法3条や、事業法72条の5の趣旨に照らし、NTT東西均一接
続料が要請されるものであるところ、接続料が原価に照らして公正妥当なものであ
るかどうかの判断に当たっては、このような要請を考慮することも予定されてい
る。そして、本件省令改正に当たって、構築された長期増分費用モデルを前提に、
NTT東西別に接続料を試算したところ、非効率性を排除したコストベースでは、
NTT東西間で、接続料に約30パーセントの格差が生じ、これは、NTT東西の
市内通話3分間当たりの利用者料金で約2円の格差を生ずることを意味するもので
あったため、ユニバーサルサービスの観点から、平成17年3月31日までの間
は、接続料を東西均一と
したものであって、このような定めは、原価に照らして公正妥当なものといえ
る。」という趣旨の主張をする。
   ウ 被告の主張の適否を判断する前提として、NTT法や事業法におけるユ
ニバーサルサービスの定めの内容をみると、次のとおりである。
    (ア) ユニバーサルサービスに関する法令の内容
     a NTT法3条は、NTT東西の責務として、NTT東西は、それぞ
れその事業を営むに当たっては、常に経営が適切かつ効率的に行われるように配慮
し、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安
定的な提供の確保に寄与するとともに、今後の社会経済の進展に果たすべき電気通
信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普
及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、もって公共の福祉の増
進に資するよう努めなければならない旨規定している。
       これは、電気通信分野における競争の進展は、より一層多様かつ低
廉なサービスを国民利用者が享受することが可能とする一方、国民生活に不可欠な
サービスであって、誰もが利用可能な料金など適切な条件で、あまねく日本全国に
おいて公平かつ安定的な提供の確保が図られるべきサービス(ユニバーサルサービ
ス)の提供の確保が不可欠であることから、NTT東西に対し、当該役務の提供確
保を法の責務としたものであると解される。
     b 事業法は、1条において、電気通信事業の公共性にかんがみ、電気
通信の健全な発展及び国民の利便の確保を図ることを目的とし、72条の5におい
て、基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における
提供が確保されるべきものとして総務省令で定める電気通信役務)を提供する電気
通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない旨規定し
ている。
    (イ) ユニバーサルサービス基金
     a ユニバーサルサービス基金制度の創設された経緯について
       郵政大臣(当時)は、平成12年7月、電気通信審議会に「IT革
命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方」について諮問をし、
これを受けて、同審議会は平成12年12月に第1次答申をまとめたが、その中で
基金方式によるユニバーサルサービス確保策を立法化するよう提言し(甲61)、
平成14年事業法改正によりユニバーサル基金制度が創設された。
     b 制度趣旨
       NTT東西の責務として加入電話サービス等のユニバーサルサービ
スの提供を確保している現行の法的枠組みにおいて、今後、地域通信市場、とりわ
け都市部等の採算地域において競争の進展が見込まれる中、従来、NTT東西の採
算地域から不採算地域への地域間の補てんによりその提供が確保されてきたが、N
TT東西のコスト負担のみによっては、その提供を維持することが困難となり、不
採算地域においては国民利用者の利便性の確保が図られないおそれがあると考えら
れることから、当該ユニバーサルサービスの提供に係る所要のコストについてNT
T東西以外の電気通信事業者についてもユニバーサルサービス提供の確保に係る応
分のコストを負担する新たな枠組みが必要であるとしてユニバーサルサービス基金
制度が創設された。
     c ユニバーサルサービス基金制度の基本的仕組み
      (a) 一定の要件の下に基礎的電気通信役務を提供する第一種電気通
信事業者は、当該事業者の申請により総務大臣から適格電気通信事業者の指定を受
け、当該役務の提供に係るコストの一部について、交付金の交付を受けることがで
きる(事業法72条の8、9)。
      (b) 上記の交付金の交付に充てるため、適格電気通信事業者が基礎
的電気通信役務を提供するために設置している電気通信設備と直接若しくは間接に
接続する事業者等から負担金を徴収する(事業法72条の10)。
      (c) 上記の適格電気通信事業者に対する交付金の交付、コスト負担
事業者からの負担金の徴収等の事務を行う機関として、総務大臣はその申請に基づ
き基礎的電気通信役務支援機関(以下「支援機関」という。)を指定することがで
きる(事業法72条の6)。
      (d) 具体的な交付金の交付の仕組みとしては、まず適格電気通信事
業者が交付金の算定に必要とされる資料(基礎的電気通信役務の提供に係る原価、
収益等)を支援機関に提出し、同機関は、提出された資料を元に交付金の算定を行
い、総務大臣の認可を経て、コスト負担事業者から負担金を徴収することとされて
いる(事業法72条の9、10)。
   エ このように、ユニバーサルサービスの考え方は、電話の役務の提供が国
民生活に不可欠なものであるため、すべての国民が公平に電気通信役務の提供を受
けられることを要請するというものであり、事業法1条で電気通信事業の公共性に
ついて規定し、同法72条の5において基礎的通信役務の提供についてユニバーサ
ルサービスの趣旨に基づく規定が設けられていることからすれば、事業法の解釈に
もユニバーサルサービスの考え方が反映される場合があると解するのが相当であ
り、この点では被告の主張には正当なものがあるといえる。
  しかし、ユニバーサルサービスとは、「国民生活に不可欠な電気の役務
のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供」を確保することを意味
するところ(NTT法3条、事業法72条の5)、「公平」な提供の中には、利用
料金の公平も含まれるとはいえ、そのことから直ちに利用料金が同一でなければな
らないとまではいえないし、利用料金の「公平」を実現するための手段としては、
様々なものが考えられるのであって、接続料を同一とすることがその唯一の手段で
あるということもできない。このように考えると、ユニバーサルサービスの定めが
あることから論理必然的に接続料が均一であることが導き出される、あるいは許容
されているとはいえないのであって、NTT東西均一接続料が要請あるいは許容さ
れているかどうかは、
あくまでも事業法の定めに基づいて解釈されるべきものである。
     この観点から考えてみると、事業法38条の2が規定している接続料額
は、あくまでも「原価に照らして」「公正妥当な」額なのであって、この額の算定
に当たってユニバーサルサービスの観点からの考慮をすべきことを明示的に規定し
ているわけではない。また、このように事業法38条の2にはユニバーサルサービ
スについて明示的な言及がされていない一方で、事業法72条の5において電気通
信事業者はユニバーサルサービスの提供に務めなければならない旨を定めた上で、
これに引続く72条の6以下の規定において、ユニバーサルサービス基金に関する
定めを置いていることからすると、事業法がユニバーサルサービス実現の手段とし
て用意しているのはむしろユニバーサルサービス基金制度なのではないかという疑
念も生ずるところで
ある。
     更に、NTTが東西に分割され、事業法に長期増分費用制度が導入され
た後の経緯についてみると、次のような事実が認められ、事業法の制定者として
も、将来的にはNTT東西の接続料の額が乖離していくこともあり得ることを予期
していたものと考えられる。すなわち、平成11年7月にNTTが持株会社を中心
としてNTT東西に再編成されたのは、NTT東西同士の比較競争(ヤードスティ
ック競争)やNTT東西の相互参入による通信料金の引き下げを大きな目的として
行われた措置であり、このようなNTT分割そのものが、将来的には接続料が別個
のものとなっていくことを前提とした措置であったといえる上、平成12年度に長
期増分費用方式が導入された際には、NTT東西均一接続料が維持されたものの、
それと併せて特定費用
負担金制度(NTT法附則(平成9年6月20日法律第98号)11条により、N
TT東会社はNTT西会社の経営の安定化を図る必要があるときは、NTT西会社
に対して、総務省令で定める金額の範囲内で、その事業に要する費用に充てるため
の金銭を交付することができるものとする制度。甲1の5)が導入されたのである
が、この制度は、3年間に期間を限定した時限措置とされており、この期間が経過
した後は、少なくとも、NTT西会社も独自の計算に基づく独立採算体制に移行す
る方向に進む可能性があったものというべきであるし、情報通信審議会が平成13
年7月19日に出した答申(「IT時代の接続ルールのあり方について」)におい
ても、「NTT東会社とNTT西会社とが電気通信事業者としてその経営実態に即
して事業展開を行っ
ていくことがNTT再編の趣旨であり、特定費用負担金制度が存続する平成14年
度までの期間が満了した後は、NTT東会社とNTT西会社とで異なる接続料を設
定すべきと考えられる。」として同趣旨の理解が示されていたのである。
     以上のように考えていくと、被告が主張するユニバーサルサービスの要
請を考慮したからといって、当然にNTT東西均一接続料が正当化されるものでは
ないといわざるを得ない。
   オ もっとも、事業法38条の2第3項2号は、「正当な原価に適正な利潤
を加えた額」というような定めではなく、「正当な原価に照らして公正妥当」な額
を接続料の額とするという定め方をしているところ、この、「公正妥当」かどうか
という判断に当たっては、その文言上、電気通信政策の観点からの諸要素も考慮要
素に含まれ得るのであり、また、これらの考慮に基づく判断に当たっては被告の裁
量が認められるべきであると解されることなどを考慮すると、長期増分費用方式に
基づいて算出された原価に基づき、各種の考慮なしに算定されるべき接続料との間
に不合理な乖離が生じない範囲内において、ユニバーサルサービスの要請を踏まえ
たある程度の調整をすることや、接続料の算定方法が一時に変更されることによっ
て生じることが予想
される不利益や混乱等を避けるために、いわば経過措置的な調整をすることまでが
すべて否定されるものではないというべきである。
     この観点から考えてみると、本件省令改正に当たって行われた試算によ
れば、長期増分費用方式に基づいて、各種の考慮なしに算定されるべき接続料の額
を比較すると、NTT東西で約30パーセントの格差が生じていたことは前認定の
とおりなのであるから、これを合算計算してNTT東西均一接続料を定めた場合に
は、単純計算で、NTT東会社関係では、接続料額が、本来よりも約15パーセン
ト高くなり、NTT西会社関係では、接続料額が、本来よりも約15パーセント低
くなることとなり、このように10パーセントを超える乖離をユニバーサルサービ
スの要請を踏まえた調整という観点のみによって正当化することができるかどうか
には疑問の余地が残るものといわざるを得ない。しかし、本件改正省令における東
西均一接続料の定め
は、平成15年、16年度に適用されるべき時限措置という位置付けを与えられて
おり、このような定めがされたのは、平成13年7月19日の情報通信審議会答申
において、いったんは、「平成15年度以降はNTT東西で異なる接続料を設定す
べきである。」という方向性が出され、それが平成14年答申においても維持され
たものの、関係者に対する意見聴取等においては、これを支持する意見がある一方
で、反対する意見も数多く出される状況があり、これを踏まえた平成15年答申に
おいて、「ユニバーサルサービスである電話通話料の地域格差に繋がる可能性があ
る東西別接続料の設定について、十分社会的コンセンサスが得られているとは言い
切れない。」「したがって、平成15年及び16年度に適用される接続料について
は、上述のような現
状に鑑み、東西均一とするものとする。ただし、IP電話の普及等により加入電話
サービスの社会的位置づけが変化することも予想されるところから、このような環
境変化を踏まえ、総務省において、ユニバーサルサービス基金との関係について更
に整理を行い、平成17年度以降の接続料の算定にその検討結果を反映させること
を要望する。」との意見が出されたことによるものである(乙8)。このように、
本件改正省令が、平成15年、16年度について東西均一接続料とする旨の定めを
置いたのは、ユニバーサルサービスの要請という点に加え、社会的コンセンサスが
十分に得られないまま直ちに東西別料金制度を導入することによって生じる可能性
のある混乱等を避けるという経過措置な調整という考慮に基づくものであったとい
うことができるとこ
ろ、NTT東西別料金という方向性を示した平成14年答申においてさえも、これ
を直ちに全面的に適用することは相当ではなく、段階的に適用することが相当であ
るとされていたことをも考慮すると、これら両面の要素を考慮した場合、それでも
なお2年に限った東西均一接続料の定めを置いたことが、事業法の趣旨を逸脱し、
あるいは著しく不合理であって被告の裁量権を逸脱、濫用するものと断定すること
は困難であるといわざるを得ない(なお、甲第103号証の2によれば、情報通信
審議会は、平成16年10月19日、平成17年度以降もNTT東西均一接続料を
維持する旨の答申をしていることが認められる。しかし、本件改正省令等の適否を
判断するに当たっては、あくまでも、平成15年、16年度の接続料を東西均一と
する旨の定めをした
ことの適否が問題とされるべきであって、その後、これが継続されることになった
かどうかは、その判断に影響を及ぼすものではないというべきである。)。
  (3) 結論
    以上によれば、ユニバーサルサービスの観点のみによってNTT東西均一
接続料の定めを正当化することができるかどうかには疑問があるものといわざるを
得ず、この点に関しては、原告らの主張にももっともなところがあるといえるもの
の、社会的コンセンサスが十分に得られない状況で別接続料制度を導入することに
よる混乱を避けるという経過措置的考慮も併せ考えるならば、少なくとも、平成1
5年、16年の2年間について、NTT東西均一接続料の定めをしたことが、被告
の裁量権を逸脱、濫用するものとまで断定することは困難であるといわざるを得
ず、結局、この点に関する原告らの主張は失当というほかはない。
 5 違法事由⑤(適正な原価に基づかない接続料を認めた違法)について
(1) 前記のとおり、事業法38条の2第3項2号及び4項は、接続料の原価算
定方式を総務省令に委任しているところ、上記委任事項の内容としては、①指定設
備が提供する機能のうち、どの機能に係る接続料に関する原価算定に長期増分費用
方式を適用するかという長期増分費用方式を適用する機能の特定のほか、②機能提
供に係る設備のうち、利用者が基本料として負担する部分、接続料の原価とする部
分、NTT東西を含む電気通信事業者が個別に負担すべき部分をどのように区分
し、接続料の原価に含めるべき設備及び費用の範囲を確定するか、更に、③長期増
分費用方式その他の方式の具体的な原価算定方法が含まれ、これらについては、被
告の裁量にゆだねられているものというべきであるから、その定めが違法となるの
は、その内容が明らか
に不合理である場合に限られると解するのが相当である。
(2) 本件改正省令の内容
 ア 本件改正省令は、①き線点装置(6条別表第1の1の「き線点遠隔収容
装置」)、②き線点装置と加入者交換機までの間の伝送路のうち遠隔収容装置設置
局との間に設置するもの(同別表の「中継系光ケーブル」等)、及び③加入者回線
を加入者交換機(又はき線点装置・遠隔収容装置)につなぐための技術対応設備
(同別表の「加入者交換機」等の一部)の3つのNTSコストを第一種指定加入者
交換機に該当する設備として挙げている(一般にNTSコストとは、通信量に依存
せず加入者回線数に依存するコストのことであり、接続料に関しては、そのうち現
在加入者交換機能に対応する設備として扱われているもののみを指している。)。
また、第一種指定加入者交換機は、同省令4条の表中の「機能の区分」における
「二端末系交換機能」の
「加入者交換機能」として、長期増分費用方式により原価を算定することとなる。
 イ 6条別表第4の3は、伝送装置の耐用年数を8.8年と設定し、(甲1
の3の64頁)、また、施設保全費については、年間3パーセントという効率化係
数を用いて算定された数値を採用している。
(3) NTSコストについて
   ア 原告らは、本件改正省令においてNTSコストを接続料の原価の対象に
含めているのは事業法38条の2第3項2号及び4項の委任の範囲を逸脱している
旨主張するところ、接続料に関する原価にいかなるコストを含めるかは、前記のよ
うに事業法が総務省令に委任した原価の算定方法に関する事項に含まれるから、そ
の内容が明らかに不合理である場合に違法なものと評価されることとなる。
   イ この点、原告らは、①き線点装置等のNTSコストは加入者回線数に依
存するものの通信量に依存するものではないから、適正な原価という観点からは接
続料の原価ではなく、基本料の原価と考えるべきであることや、②WTO基本合意
参照文書は接続料が「cost-oriented」でなければならないとすると
ころ、NTSコストを接続料に含めることが「cost-oriented」でな
いことは欧米諸国では当然のこととされていることなどを主な根拠として、NTS
コストを接続料の原価の対象に含めているのは不合理である旨主張する。
     ところで、NTSコストは、加入者回線数に依存するコストであるとこ
ろ、事業法38条の2第4項は、原価の算定方法について、「通信量又は回線数の
増加に応じて増加することとなる当該第一種指定電気通信設備係る費用を勘案す
る」と定めており、ここでいう回線数には加入者回線数も含まれるのであるから、
原価計算においてNTSコストを含めることが事業法の文言に反するものではない
ことは明らかであり、問題は、これを含めた原価計算を行うことが、長期増分費用
方式に基づくモデル計算として明らかに不合理であるといえるかどうかという点に
帰着することとなる。そこで、この点について検討してみるに、原告らがその主張
の根拠の一つとしている「長期増分費用モデル研究会報告書」(平成11年9月2
0日発表、甲43)に
おいては、NTSコストを構成する要素の1つであるき線点設置型について、「端
末回線に帰属する設備である」という指摘や、「トラヒック見合いの接続料の原価
は、TSコストからなるべきであるという考え方は、経済理論上も、米欧における
実務上も支持されていると考えられる。これに従えば、モデルにおいては、き線点
設置型収容装置の費用を端末回線伝送路に帰属させるべきであるといえる。」とい
った指摘がされている一方で、「き線点設置型は、交換機の機能の一部を提供して
いるという考え方も可能である。」との指摘もあり、また、き線点設置型収容装置
の費用負担についても断定的な結論が出されているわけではない。また、諸外国の
実情をみても、欧州においては、NTSコストを接続料に含めない扱いがされてい
るものの、米国の一
部やオーストラリアにおいては、NTSコストを接続料に含める扱いがされている
ことが認められるのであるから、(甲44)、NTSコストは接続料に含めるべき
ではないというのが国際的に確定的な理解になっていると断定することも困難であ
るといわざるを得ない。以上の点に照らしてみると、NTSコストをどの費用に転
嫁させるべきであるかということは、理論的に一義的に定まるものではないし、こ
の点についての確定した一般的な取扱いが存在するともいえないのであって、我が
国の社会的、経済的な実情や、これまでどのような形で費用負担が行われてきたか
という経緯等を踏まえた政策的観点から、これを決することも許される余地がある
ものというべきである。
     この観点から考えた場合、我が国においては、従来から料金政策の面に
おいてNTSコストの一部を従量制で回収して全加入者に対する基本料を安く設定
することにより、我が国の電話ネットワークへの加入を可能な限り低廉な形で国民
全体に保証するという考え方から、加入者回線コストは基本料によって回収してい
るが、交換機についてはNTSコストも含め従量制の接続料により回収してきた経
緯があること(乙11)、情報通信審議会の平成14年答申では、費用の発生要因
に応じて当該費用を回収すべきであるとの考え方に基づけば、通信量ではなく、加
入者回線数に応じて需要が変動するき線点装置等のNTSコストは、回線単位で回
収することが適当との議論もあり、その場合の費用負担の方法として、利用者が負
担する基本料の費用
範囲とする方法が検討されたが、き線点装置のみでも1回線当たり月額約107円
の費用増となって、基本料の費用範囲とすれば値上げ圧力となることや、意見聴取
の場において、消費者団体から同費用の回収方法の変更に対して反対の意見が提出
されたことから、社会的合意も困難であることから、NTSコストを基本料に転嫁
することはなお慎重な検討が必要であるとの見解が示されたことなどの事情が認め
られるのであり、これらの点を併せ考えると、少なくとも、本件省令改正の時点に
おいて、NTSコストを接続料の原価に含めるという取り扱いが継続されたことが
明らかに不合理であったと認めるのは困難である。更に、以上の点に照らしてみれ
ば、NTSコストを接続料に含めることがWTO基本合意に違反するとはいえない
し、日米協議(第3
回日米共同現状報告)には法的拘束力があるとは認められないから、これに抵触す
ることが直ちに違法の問題を生じさせることはなく、結局、この点に関する原告ら
の主張は採用できないものというほかない。
(4) 伝送装置の耐用年数について
 ア 原告らは、伝送装置の経済的耐用年数が8.8年と定められているの
は、本来の経済的耐用年数に比べると短すぎ、事業法の委任の範囲を超えている旨
主張するので、この点につき検討すると、接続料の原価の算定に当たり伝送装置の
耐用年数としていかなるものを用いるかは、接続料の原価の算定に係る事項である
から、事業法38条の2第3項2号及び4項が、接続料の原価の算定について総務
省令に委任した事項に含まれ、その内容が明らかに不合理である場合に違法なもの
と評価されることとなる。
 イ 原告らは、英国(13年)及び米国(10.24年)と比較して我が国
の伝送装置の耐用年数(8.8年)が低いことをその主張の根拠としている。
しかし、平成14年3月に公表された長期増分費用モデル研究会報告書
(甲53、163頁の表28)によれば、例えば、管路やメタルケーブルについて
は、日本のモデルと米国のモデルがほぼ同等の数値を用いる一方で、英国では管路
については、日本、米国の2分の1であるなど、諸外国の各設備の耐用年数は、各
国の利用実態や気候条件等により異なるものであるから、伝送装置の一部のみの比
較をもって経済的耐用年数の算定が不合理であるとはいえない。
そして、接続委員会では、伝送装置の撤去実績が把握されていなかった
ことから、モデルに用いられている各種の伝送装置について事業者に最長使用年数
を照会し、その結果ADM以外の伝送装置は10年を超え、ADMのみは法定耐用
年数である6年を下回るという回答を得たところ、伝送装置の大容量化、容量当た
りの料金低廉化が今後も継続され、短期間に機能の陳腐化が生じると見込まれるこ
とからすれば、最新式のADMは、法定耐用年数である6年も使用されることはな
いと見込まれたが、それ以外の根拠がないことから経済的耐用年数を6年とみなす
こととし、これらの結果を踏まえてADMを含めた伝送装置全体について8.8年
という経済的耐用年数を設定したものであり(乙30)、本件改正省令も、これに
基づくものであること
からすれば、原告らの主張するようにADMの使用年数が法定耐用年数である6年
に達しなかったのは、同設備が新しく、調査時点では法定耐用年数に満たなかった
という事情があるとしても、その判断には一応の合理性が認められるというべきで
あって、原告らの主張は採用できない。
(5) 効率化係数について
 ア 原告らは、本件改正省令が、長期増分費用モデルの入力値に年間3パー
セントという効率化係数を用いて計算された施設保全費(保守・点検等、設備の維
持、保全に必要となる経費)を採用しているのは、NTT東西の実情を反映しない
もので、事業法の委任の範囲を超えている旨主張するので、この点につき検討する
と、接続料の原価の算定に当たり、どのような効率化係数を用いるかは、専門技術
的な事項として、事業法38条の2第3項2号及び4項が、接続料の原価の算定に
ついて総務省令に委任した事項に含まれ、その内容が明らかに不合理である場合に
初めて違法なものと評価されることとなる。
 イ ところで、長期増分費用方式は、現時点で利用可能な最も効率的な設備
と技術で新たに構築した場合の費用額に基づいて計算する方式であり、このように
新たにネットワークを構築した場合に施設保全費をどのように想定するかは困難で
あるが、通常は、設備が効率化すれば施設保全も効率化するという考え方に基づ
き、実際に要する施設保全費に実際とモデルの投資額の比率を乗じてモデルにおけ
る施設保全費を算定しているところ、施設保全費の中には通常用いられる算定の方
法が十分に機能しない設備(例えばケーブルについては、投資額に占める人件費の
割合が高く、現在の人件費を利用すれば投資額が著しく高額になってしまう。)に
係るものがあり、それについて一定の効率化の目標値を加味するための係数として
効率化係数を設定して
いるものである。
 ウ 原告らは、平成14年度の実際費用方式による労務費について、NTT
東日本において年間6.9パーセント、NTT西日本において年間10.5パーセ
ントの引き下げがされ、長期増分費用方式の効率化係数を大きく上回る実績が明ら
かになったにもかかわらず、それをモデルに反映しないのは長期増分費用方式の定
義に反する旨主張しているが、この労務費低減割合は、平成14年度における見込
みを反映したもので実績値ではないことに加え、単年度の費用低減実績が、そのま
ま継続するとは限らないことからすれば、効率化係数が単年度における費用低減の
状況と一致しないことのみをもって直ちに不合理であるとまではいえないのである
から、少なくとも、本件改正省令の効率化係数が明らかに不合理であると認めるの
は困難であり、原告
らの主張は採用できない。
 6 違法事由⑥(変更約款の適用時期を認可前に遡及させた違法)について
  (1) 本件改正省令の内容等
    本件改正省令附則7項は、指定電気通信事業者は、附則3項の規定に基づ
いて申請し、事業法38条の2第2項の規定により認可を受けた接続約款に定める
法38条の2第4項の機能に係る接続料を、この省令の施行の日(施行日は同省令
附則1項により、公布の日である平成15年4月11日とされている。)から法3
8条の2第2項の規定による認可を受けた日までのいずれかの日から適用できると
規定し、これを受けて本件接続約款附則2項は、接続料を平成15年4月11日に
遡及して適用する旨規定している。
  (2) 原告らは、本件接続約款の適用を平成15年4月11日に遡らせることが
法律行為不遡及という法の一般原則に反するとして本件各処分は違法である旨主張
する。
    しかし、刑罰法規(憲法39条)についてはともかく、民事行政法規につ
いては、一般的に不遡及の原則が働くものではなく、新法の規定が遡及適用される
例は多く見られるところであるし、そもそも、本件接続約款はNTT東西と接続事
業者との間の契約内容となるものであり、それ自体法規となるものでもないのであ
るから、原告らの主張はその前提を欠くものである。また仮に本件接続約款が遡及
適用される結果、接続事業者である原告らに著しい不利益を与えるような事情が認
められる場合であれば、信義則等の一般法理により遡及効が制限される場合もあり
得るとしても、本件の場合、接続約款の内容を認可された日である平成15年4月
22日から11日程度遡及して適用するものにすぎず、著しく接続事業者に不利益
を及ぼすようなもの
とは認め難い。
したがって、原告らの主張は採用できない。
 7 違法事由⑦(独禁法違反)について
  (1) 原告らは、本件接続約款の認可申請は、NTT東西均一接続料の設定を目
的にされたものであり、不当な取引制限を禁止する独禁法3条に違反し、また独禁
法の目的とする公正競争を電気通信市場に適用した事業法1条にも違反するとし
て、本件接続約款を認可した本件各処分は違法である旨主張する。
  (2) 独禁法3条は、不当な取引制限を禁止しているところ、同法2条6項は、
不当な取引制限を「事業者が、契約、協定、その他何らの名義をもってするかを問
わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数
量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘
束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競
争を実質的に制限すること」と定義しており、ここでは、事業者の共同意思に基づ
く行為が存在することがその前提になっているものと解される。
(3) ところで、本件接続約款は、接続料をNTT東西で均一に設定している
が、これは本件改正省令附則6項の規定に基づくものであって、NTT東西が自由
に決定できるわけではない。また、接続約款については事業法38条の2第2項に
より被告の認可を受けなければならず、やはりNTT東西が、その内容を自由に決
定することはできないことは明らかである。
このように事業者の行為の内容が、法律や法律の個別規定を執行するため
に制定された省令等において明確に規定され、覊束されている場合、当該事業者に
おいて、自由にその内容を決定することはできないのであるから、そのような行為
を事業者の共同意思に基づく行為であるとは評価できない筋合いであり、独禁法3
条、2条6項の適用の前提を欠くものであるといわざるを得ない。
この点原告らは、どのような認可申請をするかは事業者が自主的に決定で
きるから認可料金においても独禁法違反となりうる余地があるとの主張もしている
が、少なくとも東西均一料金を設定するかどうかについては事業者が自主的に選択
する余地はないのであって、独禁法違反を問う余地はないものというほかない。
したがって、独禁法違反であるとの原告らの主張は採用できない。
第4 結論
   よって、原告らの請求にはいずれも理由がないから、これを棄却することと
し、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条の
規定を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
       裁判長裁判官    鶴   岡   稔   彦
          裁判官潮   海   二   郎
  裁判官金子直史は、填補のため署名捺印することができない。
       裁判長裁判官    鶴   岡   稔   彦

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛