弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を次の限度で取り消す。被控訴人は控訴人に対し金十万円
及びこれに対する昭和二十五年十一月九日より右支払済まで年五分の割合による金
員を支払え。訴訟費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人
は主文同旨の判決を求めた。
 当事者雙方の事実上の陳述、証拠の提出、認否、援用は原判決事実摘示と同一で
あるから、こゝにこれを引用する。(但し原判決に被控訴人が「甲第三号証の一、
二」を援用したように記載してあるのは「甲第三号証」の援用の誤記と認める。)
         理    由
 本訴請求の原因として控訴人の主張するところは、要するに、「控訴人は被控訴
人のした不法な処分禁止の仮処分によつて、控訴人が以前から所有し一時被控訴人
に売却したが、その後売買契約を解除し現に控訴人の所有する京都市a区所在の宅
地三百坪余と同地上建設の建物についての一切の処分権を昭和二十三年七月から昭
和二十四年十二月まで拘束された。その間に右不動産の時価は変動したが、右仮処
分がなかつたとすれば控訴人は昭和二十三年九月頃金百万円以上の対価を得て一般
に売却し得られた筈であるのに、仮処分のため売却することができず、仮処分取消
直後の昭和二十五年一月に至つては、売るとすれば金七十万円の効価しか得られな
い一般経済状態となりその間少くとも金三十万円の差損を被つたから、不法行為に
因る損害賠償として被控訴人に対しその内金十万円とこれに対する遅延損害金の支
払を求める」というのである。およそ不法行為に因る財産上の損害賠償請求権の成
立の基本的要件は財産的損害が現実に発生することであり、たとえ、不法行為があ
つたとしても、それにより現実に財産的損害を生じなければ損害賠償請求権は発生
するに由がない。
 財産的損害が生じたといわんがためには、損害の原因たる事実が発生しなかつた
と仮定した財産状態と、現実の状態との間に、財産上の不利益な差異が現実に生じ
ていなければならない。もとより既存の財産が減少したという積極的損害に限ら
ず、得べかりし新たな財産の取得を妨げられたという消極的損害であつても良い
が、損害は現実に発生していなければならない。不法行為に因る損害賠償とは不法
行為に因つて被害者の受けたこの現実の損害を填補することをいい、現実の不利益
な状態に変更を加えて、能う限り不法行為の発生しなかつた旧態に近い状態を成立
させることに外ならないのである。ひるがえつて考えてみるに、控訴人の前記主張
<要旨>は、仮処分によつて換価処分を禁ぜられた期間中の一定時期における目的不
動産の時価による評価額と、仮処分取消後のある時期における同一不動産の
時価による評価額との間に差額の存することを以て財産的損害を生じたとしてその
賠償を求めるというに帰着する。かような時価による評価損は観念上存在するに過
ぎないものであつて、それは賠償を求め得べき損害と見ることはできない。控訴人
は仮処分の以前から現在まで同一不動産を訴有しており、仮処分に拘らず財産状態
には差異がないわけであるから、本訴請求はその余の争点についての判断をなすま
でもなく、前段説明に照し失当といわなければならない。(しかも原審における鑑
定人A、同B、同Cの各鑑定の結果を綜合すれば、本件不動産の時価は昭和二十三
年九月頃に比べて昭和二十五年一月頃は下落していたが、昭和二十六年六月頃の時
価は、昭和二十三年九月頃の時価と同じかむしろこれを上廻つていることが認めら
れるのであるから、時価による評価損さえも控訴人は被つていないのである。要す
るに控訴人が本件不動産を仮処分期間中の或る時期の時価もしくは当時既に定つて
いたある売買価格よりも低廉な価格で、仮処分取消後に現実に売却した事実があつ
た場合初めてその差額について損害賠償の問題が生ずるものというべきである。)
 そうだとすれば、控訴人の本訴請求を排斥した原判決は相当であるから、民事訴
訟法第三百八十四条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 田中正雄 判事 平峰隆 判事 藤井政治)

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