弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主     文
被告人を懲役3年及び罰金50万円に処する。
未決勾留日数中500日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換
算した期間,被告人を労役場に留置する。
理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,Aと共謀の上
第1(平成15年6月25日付け起訴状記載の公訴事実関係)
   平成14年1月23日ころ,大阪府B市Ca丁目D先の駐車場において,Eから,
窃盗犯人Fらが他から窃取してきた四輪駆動車である普通乗用自動車1台(時価250万
円相当)をそれが盗品であることを知りながら,代金90万円で買い受け,もって,盗品
を有償で譲り受けた
第2(平成15年6月2日付け起訴状記載の公訴事実関係)
   平成14年2月上旬ころ,神戸市G区H町b丁目c番d号I南側路上において,E
から,Jを介して,窃盗犯人Fらが他から窃取してきた四輪駆動車である普通貨物自動車
1台(時価500万円相当)を,それが盗品であることを知りながら,代金160万円で
買い受け,もって,盗品を有償で譲り受けた
ものである。
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―
省略
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,被告人が本件に関与しておらず無罪であると主張し,被告人も,同旨の弁
解をしているので,当裁判所が判示事実を認定した理由を補足説明する。
2 関係各証拠によれば,おおむね動かない前提事実として,①被告人は,平成8年ころ
から中古自動車輸出販売業を営んでおり,被告人の親戚であるAも,その援助を受けるな
どして同様に中古自動車輸出販売業を営んでいたものであるが,被告人には,Eから盗難
車を譲り受けたとして平成12年6月に懲役3年及び罰金50万円(懲役刑につき4年間
刑の執行猶予)に処せられた前科があること,②判示第1の普通乗用自動車(車種K。以
下「K」という。)は,平成14年1月21日午後7時ころ(以下の年月日の記載はいず
れも平成14年を意味する。)から翌日午前8時20分ころまでの間に,判示第2の普通
貨物自動車(車種L。以下「L」という。またKと合わせて「本件各被害車両」という。
)は,2月3日午前3時ころから同日午後零時30分ころまでの間に,いずれもFらによ
って窃取されたこと,③Kは,1月下旬から,Mが勤務する陸送業者の駐車場に駐車して
あったが,それを知ったMが被告人に電話連絡を取ったところ,被告人は,少しの間Kを
置いてほしい,鍵は持っていく旨応答したこと,④被告人は,上記電話連絡のあった後で
ある2月5日又は同月6日にKを上記陸送業者を使って,さらに,その二,三日後にはL
をAとともにそれぞれNが経営する修理工場に持ち込み,それらの修理を同人に依頼し,
修理が終わると被告人の依頼を受けた同じ陸送業者がO港運株式会社(以下「O」という
。)まで本件各被害車両を搬送するなどしたほか,被告人がそれらの修理代金及び搬送費
用を支払ったこと,⑤被告人は,同月18日ころ,A及びPと共にOに赴き,同社のQに
Pを紹介したほか,翌19日にも,Aらと共にOに赴き,本件各被害車両をP名義で輸出
しようとしたが,Oからこれを断られたため,Aが経営していたRモータース名義で輸出
することとしたが,同月27日S税関に本件各被害車両が盗難車であることが発覚したこ
となどの事実を認めることができる。
  なお,以上の各事実は,主にN,M,Q及びTの各供述によるものであるが,これら
の者はいずれも本件で第三者的な立場にあって虚偽供述をする理由がないこと,記憶にな
いことについてはその旨明言しており,反対尋問にも何ら崩れるところがないことなどに
加え,N供述とM供述とは本件各被害車両を搬送した状況などに関して相互によく符合し
ていること,Q供述は,当時の記録を参照して記憶を喚起しながら供述したもので,記憶
が混同しているとは考え難いことなどに照らし,上記4名の各供述はいずれも信用性が高
いということができる。
3 以上の前提事実を踏まえて,判示事実を認定する直接的な根拠となるE及びAの各供
述の信用性について検討することとするが,いずれも共犯者的な立場にあることから,そ
の判断に当たっては慎重な態度が必要となることはいうまでもない。
 (1) まず,Eは,被告人からの依頼に基づきFに盗難車の調達を依頼した上,Fが調
達してきた本件各被害車両を被告人に売却した旨供述する。その供述は,細部については
やや記憶が減退している部分も認められるものの,被告人との連絡状況,U河川敷におけ
る本件各被害車両の受渡しの状況等の根幹部分においてA供述と符合し,その信用性を相
互に補完している上,本件各被害車両の破損状況等に関する供述もN供述と符合している
。また,上記2で見たとおり,本件各被害者車両が窃取された後間もなく,被告人がこれ
らを保管したり運搬を依頼するなどしていることを整合的に説明できる内容ともなってい
る。さらに,Eは,本件に関連して既に有罪判決を受け服役中であるから,被告人を陥れ
るため殊更虚偽の供述をする理由はなく,Aらと口裏合わせをしたような形跡も認められ
ない。以上によれば,Eの上記供述の信用性は高い。
 (2) 次に,Aは,被告人と共謀して本件各被害車両をEから購入したと供述する。そ
の供述は,細部についてはややあいまいな部分があるものの,その根幹部分は具体的かつ
詳細であるとともに,上記E供述とおおむね符合している上,被告人が本件各被害車両の
修理を頼んだ点についてはN供述,同車両を輸出しようとした状況等についてはQ及びT
各供述によりそれぞれ裏付けられている。また,Aと被告人との関係等からすると,Aに
殊更虚偽の供述をする動機があるとも考え難く,被告人の関与を認めるようになった経緯
について供述するところも十分納得できる。以上によれば,Aの上記供述の信用性はこれ
また十分である。
 (3) なお,弁護人は,A及びE各供述の信用性を争い,EとAは,本件各犯行前に被
告人とその経営するインド料理店で出会ったと供述しているが,同店開店ビラによればそ
の開店日は1月22日であって,Kが盗難された後のことであると主張して,上記各供述
の信用性に疑問を呈している。しかし,同店の開店日については,被告人及びその妻の当
公判廷における各供述を前提にしても,幾度も変更された経緯があることがうかがわれる
上,開店日前日にも同店内で飲食するなどしていたというのであり,しかも,被告人の捜
査段階供述では,同店の開店日は1月中旬若しくは同月16日ころとされていたのである
から,これらの事情に照らせば,上記ビラの存在をもってA及びE各供述の信用性が揺ら
ぐものとは考えられない。
 (4) 以上のとおり信用性十分なA及びE各供述によれば,判示事実を優に認めること
ができる。
4 これに対し,弁護人は,被告人の供述に沿って,①被告人は,MやNに本件各被害車
両の搬送や修理の依頼などをしたことはない上,1月23日から26日までの間は名古屋
に,同月29日から2月7日までの間は札幌等に出掛けていたから,いずれについてもア
リバイがある,②本件は,もともと被告人が捜査当局に通報したために発覚したものであ
るところ,被告人が本件各犯行を犯したのであれば,上記のような通報をすることはあり
得ない,③上記①②に関し被告人の供述を裏付ける客観的証拠が少なからず存在するなど
と主張する。しかしながら,(1)搬送や修理の依頼などをしたことはないとの点は,前記
の各前提事実に反すること,(2)被告人の上記各供述を裏付ける客観的証拠であると弁護
人が主張する証拠の中には,偽造されたものであることが明らかな書証や偽造されたもの
と思われる書証が多く含まれており,それらの信用性には疑念を挟む余地が多分にあるの
であって,上記各主張が客観的証拠による裏付けを有するとはいえないこと,(3)仮に弁
護人主張のような事情が存在したのであれば,被告人に対する嫌疑を晴らす有力な根拠と
なり得たのに,捜査段階では,種々の弁解をしながらこれを供述せず,公判に至って初め
て供述しただけでなく,その内容を合理的説明なく度々変遷させていることなどの各事情
に照らすと,被告人の当公判廷における供述は到底信用できない。結局,弁護人の主張は
いずれも理由がなく,採用できない。
(法令の適用)
 被告人の判示各所為はいずれも刑法60条,256条2項に該当するところ,以上は同
法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により犯情
の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により各罪
所定の罰金の多額を合計し,その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役3年及び罰金50
万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中500日(その日数については,本件
における具体的審理経過を考慮した。)をその懲役刑に算入し,その罰金を完納すること
ができないときは同法18条により5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留
置し,訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこと
とする。
(量刑の理由)
 本件は,四輪駆動車に係る盗品等有償譲受け2件からなる事案である。
 いずれも動機,経緯に酌量の余地がないこと,職業的かつ常習的な犯罪でもあること,
本件各被害車両がいずれも高価なものであったこと,しかも,被告人にあっては,平成1
2年7月に盗品等有償譲受け罪により懲役3年及び罰金50万円(懲役刑について4年間
刑の執行猶予)に処せられており,その執行猶予中であったにもかかわらず,またしても
金銭的利欲のため同種犯行に及んだばかりか,上記のように不自然,不合理な弁解に終始
しており,規範意識の希薄さがうかがわれることなどに照らすと,その刑責は相当に重い
といわざるを得ない。
 そうすると,他方で,身柄拘束がかなり長期に及んだこと,扶養が必要な妻子がいるこ
となど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても主文の程度の実刑は免れないと
ころである。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成18年2月3日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官  的  場  純  男
   裁判官西  野  吾  一
   裁判官三重野  真  人

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