弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
1本件訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
○事実
第一当事者の求める判決
一請求の趣旨
1被告建設大臣(以下「被告大臣」という)に対する請求。
被告大臣が昭和四七年四月一日建設省告示第七二五号をもつてなした別紙第二目録記載の
都市計画事業の認可(以下「本件事業認可」という)のうち街路第四号(以下「本件街。
路」
という)に関する部分は無効であることを確認する。。
2被告品川区長(以下「被告区長」という)に対する請求。
東京都知事(以下「都知事」という)が昭和三三年九月一六日東京都告示第八五六号を。

つてなした別紙第三目録記載の建築基準法四二条一項四号に基づく道路の指定(以下「本
件道路指定」という)は無効であることを確認する。。
3被告品川区(以下「被告区」という)に対する請求。
建設大臣が昭和三二年十二月二八日建設省告示第一七八三号をもつてなした別紙第一目録
記載の都市計画変更、追加決定(以下「本件都市計画決定」という)は無効であること。

確認する。
4訴訟費用
訴訟費用は被告らの負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁(各被告)
1本案前の答弁
主文と同旨
2本案の答弁
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一請求の原因
1本件都市計画決定とその経緯
(一)昭和二一年一二月七日、戦災復興院総裁は、同院告示第二五三号をもつて、主務
大臣である内閣総理大臣が大井町駅付近の広場及び街路に係る都市計画を決定した旨告示
した。
(二)昭和三二年一二月二八日、主務大臣である被告大臣は、建設省告示第一七八三号
をもつて、別紙第一目録記載のとおり、右(一)の都市計画を変更・追加する旨本件都市
計画決定をし、これを告示した。
(三)昭和三三年八月二三日、被告大臣は、建設省告示第一三二七号をもつて本件街路
等に係る東京都都市計画事業及びその執行年度割を決定し、その旨告示した(以下同決定
を「本件事業決定」という。。)
()、、、、四本件事業決定の右執行年度割について被告大臣はその後次のとおり変更し
その旨を告示した。
(1)昭和三六年三月二九日建設省告示第八二五号
(2)昭和三九年三月三一日建設省告示第一〇七七号
(3)昭和四四年三月三一日建設省告示第一一五七号
(五)昭和四四年六月一四日、
現行の都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号。以下「新法」という)が施行され、都。

計画法施行法(昭和四三年法律第一〇一号)二条によつて本件都市計画決定は新法の規定
による相当の都市計画とみなされることとなつた。
(六)そして、本件都市計画決定に係る本件街路は幅員一五メートルであるから、新法
(。「」。)一五条一項三号及び都市計画法施行令昭和四四年政令第一五八号以下令という
九条二項一号ロによれば、これに関する都市計画は市町村が定めるべき都市計画に当たる
が、東京都の特別区の存する区域においては、地方自治法二八一条二項、新法八七条の二
第一項及び令四六条三号、新法一一条一項一号により、特別区である被告区が定めるべき
都市計画となつた。
2本件事業認可とその経緯
(一)昭和四七年四月一日、被告大臣は、建設省告示第七二五号をもつて、別紙第二目
録記載のとおり、本件都市計画決定について事業の認可(本件事業認可)をし、その旨告
示した。
(二)本件事業認可のあつた右事業について、被告大臣は、その後、次のとおり事業の
施行期間を延長する事業計画の変更をいずれも認可し、その旨を告示した。
(1)昭和五〇年三月三一日建設省告示第五八一号(施行期間昭和五三年三月三一日ま
で)
(2)昭和五三年三月三一日建設省告示第六四四号(施行期間昭和五六年三月三一日ま
で)
()()3昭和五六年三月九日建設省告示第四一四号施行期間昭和五九年三月三一日まで
(4)昭和五九年三月三一日建設省告示第四三六号(施行期間六二年三月三一日まで)
3本件道路指定とその経緯
(一)昭和三三年九月一六日、建築基準法上の特定行政庁である東京都知事は、東京都
告示第八五六号をもつて本件街路(街路第四号)等について同法四二条一項四号の道路と
して指定する旨の本件道路指定をし、これを告示した(以下、右指定道路を「本件道路」
という。。)
(二)昭和五八年四月一日、建築基準法施行令一四九条(昭和五七年政令第三〇二号に
よる改正後のもの)が施行され、同法四二条一項四号による特定行政庁としての事務は都
知事から特別区長である被告区長の所管へ移つた。
4原告適格
(一)原告らの居住関係
原告らはそれぞれ頭書記載のアパート隆明荘の部屋を次に記載する時期から賃借して居住
している。
(1)原告A昭和二〇年
(2)同B同二八年
(3)同C同二二年
(4)同D不詳(本訴提起前)
(5)同E同一八年
(6)同F同二〇年
(7)同G同一八年
(8)同H同一一年
(9)同I同二〇年
(10)同J同二一年
(11)同K同一五年
(12)同L同二一年
右隆明荘の所在地は、別紙「位置関係図」のとおり、本件街路の敷地外であるが、これに
近い位置にある。
(二)再開発基本構想との関連
本件道路は、被告区の都市再開発本部において計画中の「大井町駅周辺地区再開発基本構
想(以下「基本構想」という)の一環として位置付けられている。」。
特に、原告らが居住する大井町駅東口A地区は八潮団地住民の交通対策、文化会館の老朽
化および機能低下による建て替え等緊急を要するので最優先地区とされ、同地区の整備方
針として、事業区域一・七八ヘクタール、事業手法第一種市街地再開発組合施行、事業区
域内の駅付近広場第二号、街路第三号、同第四号については東京都が道路事業として施行
する旨が定められた。
そして「事業のすすめ方」として「基本構想を地元に提示するとともに東京都施行の、、

路事業終了後、直ちに市街地再開発事業に着工できるよう住民意向調査を中心とする各種
調査の実施および準備組合の組織化をすすめる」とされているとおり、基本構想と本件都
市計画決定とは密接不可分の関係にあり、右基本構想の最優先地区内にある原告らは、本
件都市計画決定の事業施行の有無、時期につき、この面からも法律上の利害を有する。
(三)日照等の被害
、、()平和開発株式会社は昭和五五年九月二四日品川区建築主事Mから本件道路本件街路
を前面道路とすることによつて、別紙第四目録記載の建物(第ニアーバンハイム)の建築
確認(番号第四九二号)を受けた。
原告らは右建物の建築完成により、現に日照、採光、天空及びプライバシーを奪われてい
る。
5各処分の無効原因
(一)各処分の違憲性
(1)本件都市計画決定及び本件道路指定は原告らの誰にも知らされることなくなされ
た。
(2)本件事業決定(本件事業計画と執行年度割)施行期間は前述のとおり再三、再四
変更されたが、今日に至るまで買収または収用手続すら行われていない。
(3)原告らの居住する隆明荘は老朽化したアパートであるのに、前記4(三)のとお
り、本件道路指定の存在により第二アーバンハイムの建築が可能となつた結果、日照、採
光、天空及びプライバシーを奪われている。
(4)原告らにかかる奴隷的生活をもたらした本件都市計画決定、本件事業認可及び本
件道路指定はいずれも憲法一三条、一四条一項、二五条一項に違反し、その違憲性は重大
かつ明白であるから、無効である。
(二)本件事業認可の無効原因
(1)本件事業認可の時点で、本件事業決定から約一四年間、本件都市計画決定に係る
事業は進行していなかつた。
(2)従つて、被告大臣としては本件都市計画決定について事業認可をしても、更に長
期間、原告らの権利を制限した状態が放置されるであろうことを充分予測しえたのに、安
易に本件事業認可をなしたものであり、本件事業認可は行政の権利の著しい濫用であるか
ら無効である。
(三)本件道路指定の無効原因
(1)本件道路指定は、建築基準法四二条一項四号にいう「二年以内にその事業が執行
される予定」が存在しないことが明白であるのになされた瑕疵があり、同瑕疵は重大であ
るから、無効である。
(2)本件道路指定は「二年以内にその事業が執行され」ないことを解除条件としてな
されたものであり、右条件が成就したから、失効した。
(3)本件道路指定は、その前提となつた本件事業決定が昭和四七年三月末日までに都
市計画事業及び執行年度割の変更(延長)がなく、事業未執行のまま終了したので、同日
限り失効した。
6結論
よつて本件都市計画決定、本件事業認可及び本件道路指定が無効であることの確認を求め
る。
二請求原因に対する認否並びに主張
1被告大臣
(一)請求原因1の各事実は認める(但し(二)のうち、第一目録の起点及び終点は、

川区<地名略>、街路の延長は一〇九メートルが正しい。。)
(二)同2の各事実は認める。
(三)同4の(一)のうち、隆明荘の所在位置は認め、その余の事実は不知。
同(三)は後段の事実を否認する。
(四)同5の(一)の(1)ないし(3)の各事実は否認し、同(4)の主張は争う。
同(三)の各事実は否認する。
(五)本件事業認可は抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
すなわち、本件事業認可は、都市計画決定において、当該都市施設としての道路が、円滑
な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するために必要なものであると判断されてい
ることを前提として、建設大臣が、本件事業の内容が右都市計画に適合するものであるか
どうか、事業施行期間が適切であるかどうか等、施行主体の事業遂行能力を含めて申請に
係る事業内容が円滑・合理的に都市計画を実現できるものであるかを判断して、東京都に
都市計画事業として本件事業を行うことに同意を与えたのであり、まさに、いわば上級機
関としての建設大臣が下級機関としての東京都に対してなす監督手段としての承認の性質
を有するものであり、行政機関相互の行為と同視すべきものだからである。
なお、都市計画決定に係る事業については、都市計画法(以下「法」という)六九条の。

定により、土地収用法三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなされ、法七〇条
の規定により、法五九条の規定による認可(又は承認)をもつて土地収用法二〇条の規定
による事業の認定に代わるものとされ、その事業地内の土地を収用又は使用できることに
なる。しかし、これは単に施行者に対して将来一定の手続を経て土地を必要に応じて収用
又は使用することかできる包括的な法律的地位を与えるだけで、このことによつて直接国
民の法律的地位または具体的権利義務に変動を及ぼすものではない。
もつとも、本件事業認可の告示により、同認可に係る都市計画事業を施行する土地(以下
「事業地」という)について利用権原を有する者に対しでは、建築等の制限等の効果が。

ぶこととなるが、かかる制限は、本件事業を円滑に施行するために法が特別に与えた附随
的効果にすぎず、これをもつて特定個人に向けられた具体的処分ということはできない。
従つて、本件事業認可は抗告訴訟の対象となる処分には当たらない。
(六)原告らは本件事業認可の無効確認を求める法律上の利益を有しない。
抗告訴訟において原告となり得る者は、当該処分によつて権利又は法的に保護された利益
を直接侵害される者に限られると解すべきところ、本件事業認可によつてもたらされる権
利その他の利益に対する制限としては、本件事業地内における建築等の制限以外には考え
られないのであつて、
事業地内の土地について何らの利用権原を有しない原告らには、本件事業認可によつて侵
害される権利又は法的に保護された利益はない。
原告らは、本件道路が基本構想の一環として位置付けられ、同基本構想に、本件「道路事
業終了後、直ちに市街地開発事業に着工できるような住民意向調査を中心とする各種調査
の実施および準備組合の組織化をすすめる」とされていることから、本件事業認可の無効
の確認を求めるにつき法律上の利益がある旨主張する。
しかし、基本構想はあくまでも行政の内部的ガイドラインの性格を有するにすぎないもの
であり、基本構想により、本件都市計画事業終了後同区域において第一種市街地再開発事
業が行われることが法律上当然に予想されたものではない。基本構想記載のとおりに、同
、、区域において市街地再開発組合により第一種市街地再開発事業が行われるためにはまず
、、同区域について第一種市街地再開発事業に関する都市計画の決定が必要であり右決定は
都市計画地方審議会の議を経て、更に建設大臣の認可を受けた後に、東京都知事により定
められるものであり(法一八条、またこれを事業化するには市街地再開発組合の設立に)

いて東京都知事の認可を受ける必要があるのである(都市再開発法一一条。これらの手)

は基本構想あるいは本件事業終了にかかわらずいつでも行えるものであり、また、基本構
想に定められているからといつて当然行われるものでもないのである。
従つて、基本構想において、本件事業終了後同区域において第一種市街地再開発事業を実
施することが予定されていたとしても、現段階においては、第一種市街地再開発事業が行
われることは法律上不確定であるといわざるを得ず、このような本件事業とは法的に関係
のない、しかも不確定な第一種市街地再開発事業によつて将来不利益を被るかもしれない
ことを理由として、本件事業認可の無効確認を求める法律上の利益があるなどといえない
ことは明らかである。
(七)本件事業認可の適法性について
都市計画決定に係る事業の認可が適法であるためには、手続的には、認可申請書が法六〇
条の規定に従つた適式なものであることを要し、また内容的には法六一条の認可基準を満
たしていることが必要である。
被告大臣が行つた本件事業認可については、東京都から法六〇条の規定に従つた認可申請
書が提出されており、手続的に問題とすべき点は何らない。
また、認可基準について、法六一条は、一号において「事業の内容が都市計画に適合し、
かつ、事業施行期間が適切であること」と、二号において「事業の施行に関して行政機。

の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があつたこと又
はこれらの処分がされることが確実であること」とそれぞれ規定しているところ、本件。

業認可にあつては、本件事業が都市施設として都市計画に定められた広場、街路の整備を
図るものであつて、都市計画に定められた当該施設の位置、区域、種別及び構造等に適合
しているし、事業施行期間も三年であつて事業地の規模等に照らして適切であつて、右一
号の規定に何ら反するものでなく、また、認可申請者である東京都は当該事業の施行に関
して行政機関の免許等の処分を必要としないものであるから、右二号の規定違背の有無を
論ずるまでもないのである。
以上のとおり、本件事業認可の申請は、手続的にも内容的にも何ら違法な点はなく、従つ
て、被告大臣が行つた本件事業認可には何らの違法もなかつた。
2被告区長
(一)請求原因3の(一)の事実は認める。
(二)同4の(一)のうち、原告B及び同Dがアパート隆明荘に居住していることは否
認つし右原告両名の転居については被告区の主張を援用する。隆明荘の所在位置は認め、
その余の事実は不知。
同(三)のうち、原告ら主張の被害の点は不知、その余の事実は認める(但し、別紙第四
目録の延べ面積は七六一・四九平方メートルが正しい。。)
(三)同5の(一)のうち(1(2)の各事実は否認(3)の事実は不知(4)、)、、、

主張は争う。
同(三)の各事実は否認する。
建築基準法四二条一項四号に基づく道路指定が、都市計画法等による事業の存在を不可欠
の前提とするのは、あくまでも指定の際の要件として考慮されるにすぎないのであつて、
その指定後は、むしろ指定と事業そのものとは直接かかわりのない別個独立の存在を有す
るものとなると解するのが相当である。
しかも本件道路指定の前提となつた都市計画事業は形式上昭和四七年三月三一日に終了し
ているが、翌日の同年四月一日付けをもつて右事業と実質上同一の事業につき認可がなさ
れているのである。
従つて本件道路指定が失効するいわれはない。
(四)本件道路指定は抗告訴訟の対象となる行政処分ではない。
本件道路指定は、
建築基準法四二条一項四号により、指定の対象となつた計画道路を同法上の道路とするた
めに、特定行政庁たる東京都知事が行つた行為であつて、それ以外の何らの効力も有する
ものではない。
この点において、同条同項五号による道路位置指定が、単に指定に係る一定の土地を同法
上の道路とするだけでなく、右一定の土地の関係権利者に対してなるべく速かに指定どお
りに道路幅員を拡幅すべき拘束力を有するのとは異なる。
また、同法四四条の建築制限は、同法上の道路という制度ないし道路の告示に法が与えた
付随的効果であつて、指定そのものの効果として発生する権利制限とはいえないから、本
件道路指定は、直接特定個人に向けられた行政処分とはいえない。
仮に、同法四四条の建築制限が、本件道路指定そのものの効果であるとしても、右建築制
限は、同法上の道路内に課せられた一般的制限であつて、右道路内の利害関係者の具体的
権利に直接変動を与えるものではない。
(五)原告らには本件道路位置指定の無効確認を求める法律上の利益がない。
すなわち、建築基準法上の建築制限の諸規定は、土地所有者、借地権者、土地使用貸借の
借主等、建築物を建築しうる者に対する一般的規制であるところ、原告らは、借家人であ
るから、本件道路指定により、何らの権利制限も受けていない。
のみならず、原告らは本件街路の敷地内に居住する者ではなく、この点においても、本件
指定の無効確認を求める訴えの利益を有しないものである。
(六)本件道路指定には無効原因がない。
特定行政庁である東京都知事は、本件道路指定に際しては、建築基準法四二条一項四号所
定の指定要件について充分調査検討のうえなしたものであるが、特に、事業が二年以内に
執行される予定のものである点に関しては、本件事業の当時の施行者である東京都知事と
事業の内容及び施行期間等について協議を重ねた末、事業の執行を具体的に予想しうる段
階に達したものと認められたため本件道路指定をなしたものであつて、右指定には、原告
ら主張のような重大かつ明白な瑕疵は認められない。
3被告区
(一)請求原因1の各事実は認める(但し(二)のうち、第一目録の起点及び終点は、

川区<地名略>、街路の延長は一〇九メー卜ルが正しい。。)
(二)同2の(一(二(1(2)の各事実は認める。)、))
(三)同3の(一)の事実は認める。
(四)同4の(一)のうち、原告B、同Dを除くその余の原告らが、現にアパート隆明
荘を賃借しで居住していることは認めるが、その各始期については不知。
原告B、同Dは、隆明荘に本訴提起当時は居住していたが、その後、原告Bは昭和五八年
一一月二六日、東京都港区<地名略>に、原告Dは昭和五八年九月一日、東京都<地名略
>に、各転居した。
同(三)のうち、原告主張の内容の建築確認のあつたことは認め(但し、延べ面積は七六
一・四九平方メートルが正しい、その余の事実は否認する。。)
()()、()、()、()(()五同5一のうち12の各事実は不知3の事実請求原因4三
の事実を除く)は否認し(4)の主張は争う。。、
(六)本件都市計画決定は直接特定の個人に向けられた具体的な処分ではないから、抗
告訴訟の対象とはなり得ない。
(七)原告らは、本件都市計画決定によつて隆明荘の賃借人としての権利に具体的な変
動を受けないから、本件無効確認請求は訴えの利益を欠くものである。
三被告らの主張に対する原告らの認否
1被告大臣の主張についで
被告大臣の主張(七)のうち、第一段及び第二段は認める。第三段は、法の各規定の存在
及び認可申請者である東京都が当該事業の施行に関して行政機関の免許等の処分を必要と
しないため、法六一条二号の違背を論ずるまでもないことは認め、その余の事実を否認す
る。第四段は争う。
2被告区長の主張について
被告区長の主張(六)の事実は否認する。
第三証拠(省略)
○理由
一原告適格について
1原告らの居住関係
原告B及び同Dを除くその余の原告らが頭書記載のアパート「隆明荘」に居住しているこ
とは、原告らと被告区及び同区長との間で争いがなく、同大臣との関係では成立に争いの
ない甲第三号証及び弁論の全趣旨により認めることができる。
原告B及び同Dが同アパートに居住していることは、弁論の全趣旨により真正に成立した
と認められる甲第二四号証及び第二五号証によりこれを認めることができないではない。
右隆明荘が、別紙位置関係図のとおり、本件街路の敷地外であるがこれに近い位置にある
ことは原告らと被告大臣及び同区長との間で争いがなく、同区は右事実を明らかに争わな
いからこれを自白したものとみなされる。
2法律上の利益の有無
(一)本件都市計画決定は、旧都市計画法(大正八年法律第三六号)の規定によつた。

のであるが、現行の都市計画法施行法二条により都市計画法(現行法)による都市計画と
みなされ、本件街路は、都市計画法一一条一項一号、四条六項の都市計画施設として、本
件事業認可後は同法五三条三項、六五条一項(都市計画法施行法三条一項、二項四号)に
よつて、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更もしくは建築物
の建築等が制限されているものである。
また、本件道路指定によつて、本件街路内には建築物等の建築等は原則として禁止される
(建築基準法四四条一項本文。)
(二)右にみたとおり、本件都市計画決定を前提とする本件事業認可は、事業の施行の
妨げとなるような本件街路(本件道路)敷地の利用に対して一定の制約を及ぼしているか
ら、右制約に抵触する態様で同敷地を使用する権利を有する者は、その抵触する限度で右
決定及び認可の全部又は一部の無効確認を求める利益が認められる場合があるけれども、
原告らは、前記1のとおり、同敷地外に存在するアパート隆明荘の各区画の賃借権者にす
ぎないから、右のような確認の利益を考える余地はない。
本件道路指定についても、右敷地の使用権原に対する制約をもつて無効確認の利益を基礎
づけようとするかぎり、原告らの訴えは同様に確認の利益を欠くものである。
原告らは、本件道路が品川区の基本構想(請求原因4(二)に取り入れられ、同構想に)

ける最優先地区内にあることによつて、右訴えの利益が認められると主張するが、同構想
自体は原告らの右賃借権に法律上の制約(不利益)を加えるものではないから、右主張は
失当である。
(三)なお、原告らは、本件街路を前面道路とした別紙第四目録記載の建物による日照
等の被害をもつて右確認の利益を基礎付ける事実と主張する(請求原因4(三。そし))
て、
右建築確認申請のあつた建物が、接道義務、斜線制限等の建築基準法上の要求を充足して
いるか否かは、本件道路指定すなわち本件道路(本件街路敷地と同一)の存在を前提とし
て判断される関係にあるから、本件道路指定ひいて本件事業認可、本件都市計画決定の有
効、無効が右建築確認の効力を論じる上で先決関係にあることは事実である。
しかし、原告らが主張する被害、換言すれば法律上の不利益は、
右建築確認によつてもたらされたものに他ならず、同建築確認がなければ、仮に本件道路
指定が無効であつたとしても発生しない性質のものである。すなわち、このような法律上
の不利益は、当該建築確認をなした行政庁(建築主事)を被告として同建築確認処分の無
効確認の訴えを提起できる場合にのみ、その除去が法律上可能なものであつて、この可能
性がないときは、同処分の先決関係にある本件各処分に係る無効確認の訴えは、結局利益
がないものと言わなければならない
そこで、本件をみると、別紙第四目録記載の建物すなわち第ニアーバンハイムの建築が既
に完成していることは、原告が自認するところであり、成立に争いがない乙第二七号証、
本件街路付近の写真であることに争いがない丙第一号証の三ないし五及び九、被告大臣及
び被告区との間では右建物の写真であることに争いがなく、被告区長との間では弁論の全
趣旨により同建物の写真と認められる甲第一一号証の四及び六、甲第一二号証の一、二及
び六によつても認めることができる。そうすると、原告らは、右建物の建築確認処分の取
消し又は無効確認の訴えを起こす利益を有しないことになるから、その先決関係としての
本件各処分の無効確認請求についても、右被害の存在をもつて訴えの利益を基礎付けるこ
とはできないものである。
(四)以上のとおり、原告らは本件各無効確認請求について訴えの利益を有しないもの
といわなければならない。
二結論
よつて、原告らの訴えは、その余の点につき判断するまでもなく、不適法であるから、い
ずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条・九三条一項
本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官山本和敏太田幸夫大鳥隆明)
別紙第一∼四目録及び位置関係図(省略)

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