弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,3万7800円及びこれに対する平成10年3月26日から支
払済みまで年7.3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,自動車重量税に係る過誤納金の還付を受けるために自動車重
量税過誤納証明書の交付を請求したのに対し,関東運輸局埼玉陸運支局長がこ
れを受理しなかったのは違法であるとして,被告に対し,当該納付した自動車重量
税相当額(3万7800円)の損害金及びこれに対する還付加算金相当額の遅延損
害金の賠償を請求する事案である。
2 法令の定め
(1) 自動車重量税法(平成10年法律第74号による改正前のもの。以下「重量税
法」という。)3条は,「検査自動車及び届出軽自動車には,この法律により,自
動車重量税を課する。」と規定し,重量税法2条1項2号は,「検査自動車」とは,
道路運送車両法(平成10年法律第74号による改正前のもの。以下「車両法」と
いう。)60条1項(新規検査の場合の自動車検査証の交付),62条2項(63条3
項,64条3項及び67条4項において準用する場合を含む。)(継続検査,臨時
検査,分解整備検査及び構造等変更検査の場合の自動車検査証の返付)又は
71条4項(予備検査の場合の自動車検査証の交付)の規定による自動車検査
証の交付又は返付(以下「自動車検査証の交付等」という。)を受ける自動車を
いう旨規定する。
(2) 自動車検査証の交付等を受ける者は,当該検査自動車につき,自動車重量
税を納める義務があり(重量税法4条1項前段),その自動車検査証の交付等を
受ける時までに,当該検査自動車につき課されるべき自動車重量税の額に相当
する金額の自動車重量税印紙を政令で定める書類にはり付けて,当該自動車
検査証の交付等を行う運輸大臣若しくはその権限の委任を受けた地方運輸局
長若しくは地方運輸局陸運支局長又は軽自動車検査協会に提出することによ
り,自動車重量税を国に納付しなければならない(重量税法8条)。
(3) 重量税法16条は,自動車重量税について過誤納があった場合の還付の手続
について,次のとおり定める。
ア 自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受ける者は,次の(ア),(イ)
記載の各号のいずれかに該当するときは,その該当することとなった日から1
年を経過する日までに,政令で定めるところにより,当該自動車検査証の交
付等又は車両番号の指定に係る運輸大臣等(運輸大臣,地方運輸局長,地
方運輸局陸運支局長又は軽自動車検査協会)に申し出て,当該各号に掲げ
る自動車重量税の額その他政令で定める事項について確認を求め,証明書
の交付を請求することができる(同条1項)。
(ア) 1号
 自動車重量税を納付した後自動車検査証の交付等又は車両番号の指定
を受けることをやめたとき。 当該納付した自動車重量税の額
(イ) 2号
 過大に自動車重量税を納付して自動車検査証の交付等又は車両番号の
指定を受けたとき(国税通則法75条1項5号の規定による審査請求に対す
る裁決により重量税法12条1項の認定に係る処分の全部又は一部が取り
消されたときを除く。)。 当該過大に納付した自動車重量税の額
イ 運輸大臣等は,重量税法16条1項2号に該当する事実があることを知ったと
きは,既に同項の請求がされている場合を除き,遅滞なく,同号に掲げる自動
車重量税の額その他政令で定める事項を自動車検査証の交付等又は車両
番号の指定を受けた者に書面をもって通知するものとする(同条2項)。
ウ 自動車重量税に係る過誤納金の還付を受けようとする者は,同条1項の証
明書又は同条2項の書面を納税地の所轄税務署長に提出しなければならな
い(同条3項)。
(4) 災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律(以下「災免法」と
いう。)8条1項は,「自動車の販売業者又は自動車分解整備事業者が自動車の
使用者のために自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受ける目的で
保管している自動車のうち,当該保管をしている間に自動車重量税が納付され
自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受けたもので災害による被害を
受けたことにより当該自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受けた後
走行の用に供されることなく使用の廃止がされたもの(命令の定めるところによ
り使用の廃止がされたことが明らかにされる自動車に限る。以下この項において
「被災自動車」という。)については,命令の定めるところにより,当該被災自動
車につき当該自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受ける際に納付さ
れた自動車重量税の額に相当する金額を,当該被災自動車に係る自動車重量
税の納税義務者に還付する。」と規定する。
3 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠と弁論の全趣旨により容易に認めら
れる事実)
(1) 原告は,平成9年3月5日当時,自家用小型乗用車(登録番号大宮efg。以下
「本件自動車」という。)を所有していたが,その自動車検査証の有効期間は,平
成7年3月31日から平成9年3月30日までであった。
(2) 原告は,平成9年3月5日,関東運輸局埼玉陸運支局春日部自動車検査登録
事務所(以下「本件事務所」という。)において,本件自動車の継続検査を受け,
その検査の結果,保安基準に適合していると認められたので,重量税法8条に
基づく自動車重量税として3万7800円を印紙により納付し(以下,この納付され
た自動車重量税を「本件重量税」という。),有効期間を平成9年3月31日から
平成11年3月30日までとする自動車検査証の返付を受けた。
(3) ところが,原告は,平成9年3月7日,本件自動車で高速道路を走行中にエン
ジンの故障を生じ走行不能となったことから,本件自動車を廃車することにした。
(4) そこで,原告は,平成9年3月28日,本件事務所において,本件自動車の抹
消登録申請をして受理され,前記(2)の自動車検査証を返納した。
(6) 原告は,平成10年3月25日,本件重量税の還付請求のため,本件事務所に
対し,自動車重量税過誤納証明書交付請求書に必要事項を記入して提出した
(甲1。以下,これによる原告の自動車重量税過誤納証明書交付請求を「本件交
付請求」という。)。
(7) 関東運輸局埼玉陸運支局長は,原告の本件交付請求を審査し,本件交付請
求は重量税法16条1項に該当しないとしてこれを拒否する処分(以下「本件処
分」という。)をし,同月28日,原告に対し,「自動車重量税過誤納証明書交付請
求書の不受理について」と題する書面を送付して本件処分を通知した(甲2)。
3 争点
 本件処分の違法性(本件は重量税法16条1項1号に該当するか。)
(原告の主張)
 本件は,重量税法16条1項1号に該当する。
 したがって,本件は重量税法16条1項に該当しないとした本件処分は,違法であ
る。
(被告の主張)
 重量税法16条1項1号の「自動車重量税を納付した後自動車検査証の交付等
(中略)を受けることをやめたとき」とは,自動車重量税を自動車重量税印紙を所定
の用紙にはり付けて納付等したものの現実に自動車検査証の交付等を受ける前
に,自動車検査証の交付等を受けることをやめた場合に限られると解すべきであ
る。
 本件では,原告は,平成9年3月5日に現実に自動車検査証の返付を受けてお
り,その後に当該検査証を返納したとしても,同号には該当しない。
 したがって,本件は重量税法16条1項に該当しないとした本件処分は,適法であ
る。
(原告の反論)
 ①自動車重量税が現実に自動車の継続検査行程において納付された後に自動
車検査証が返付されるまでにわずかな時間しか要しないから,もし反対に解すると
きは現実の重量税法16条1項1号の適用場面がほとんど想定できなくなること,②
昭和46年9月8日付け自管第143号,自車第579号「自動車重量税法等の施行
に伴う事務の取扱いについて」(以下「重量税法取扱通達」という。)中の「記」6の
「過誤納金の還付」(2)には,自動車検査証の交付等の後にも還付がされる場合が
認められていること,③原告の場合のように,自動車検査証の有効期間が満了す
る日より前に継続検査がされたときは,新たな自動車検査証の有効期間の起算日
は従前の有効期間の満了日の翌日となるため,新たな権利の創設よりも前に自動
車検査証の返付がされることとなることからみて,重量税法16条1項1号の「自動
車重量税を納付した後自動車検査証の交付等(中略)を受けることをやめたとき」と
は,現実に自動車検査証の交付等を受ける前に自動車検査証の交付等を受ける
ことをやめた場合に限られないと解すべきである。
(被告の再反論)
 原告の①の主張については,同号はわずかな時間の間に交付等を受けることを
やめた場合に限定して適用されるものではなく,②の主張については,自動車検査
証の交付等を受けることをやめるとの申出があったにもかかわらず事務処理上の
過誤により交付等がされてしまったような場合が想定されているのであり,③の主
張については,権利創設のされる時期は新たな有効期間を記入した自動車検査証
が返付された時であることから,いずれも解釈の根拠として理由がない。
第3 争点に対する判断
1 自動車の検査を受けるなどして自動車検査証の交付等を受けた者は,当該検査
証の有効期間内に当該自動車を運行の用に供し得る権利ないし法的地位を取得
する(車両法58条1項等参照)。自動車重量税は,この権利ないし法的地位に伴う
利益に着目し,自動車検査証の交付等を受けることに担税力を見出して,自動車
検査証の交付等を受ける者に対し類型的に課税する一種の権利創設税と理解す
ることができる。
 そして,現実に自動車検査証の交付等を受けた者は,たとえその交付等を受け
たのが当該検査証の有効期間の起算日前であった場合においても,その交付等
により直ちに当該検査証の有効期間内に自動車を運行の用に供し得るという権利
ないし法的地位を取得するのであるから,その後に生じた事情により当該検査証を
返納したとしても,一旦発生した上記権利ないし法的地位を取得した事実は消滅せ
ず,自動車重量税の納付をする実体法上の理由があるというべきである。
 したがって,ここでの議論の対象外である過大な金額が納付された場合を除外す
れば,自動車重量税に係る過誤納金の還付が認められるのは,現実に自動車検
査証の交付等を受ける前に限られ,自動車重量税に係る過誤納金の還付を受け
ようとする者が納税地の所轄税務署長に提出すべき証明書(重量税法16条3項)
の交付要件を定める重量税法16条1項1号の「自動車重量税を納付した後自動
車検査証の交付等(中略)を受けることをやめたとき」とは,自動車重量税を納付し
た後,現実に自動車検査証の交付等を受ける前に,自動車検査証の交付等を受
けることをやめた場合をいうと解するのが相当である。
 この解釈は,災免法8条1項が災害被害者の負担を軽減するために一定の要件
のもとに限って特別に自動車検査証の交付等を受けた後にも自動車重量税額の
還付を受けられる場合を定めていることとも符合する。同項は,自動車検査証の交
付等を受けた後には,自動車が走行の用に供されることなく使用の廃止がされた
場合であっても,重量税法16条1項1号に基づき過誤納証明書の交付を受け自動
車重量税額の還付を受けることはできないことを前提として規定されたとみるほか
はないからである。
 上記解釈に反する原告の主張は,採用することができない。
(なお,原告は,重量税法16条1項1号の「自動車重量税を納付した後自動車検
査証の交付等(中略)を受けることをやめたとき」とは,現実に自動車検査証の交
付等を受ける前に自動車検査証の交付等をやめた場合には限られないとする上
記主張の根拠として,現実の自動車継続検査行程において自動車重量税の納付
後に自動車検査証が返付されるまでにわずかな時間しか要しないから,上記解釈
では現実の同号の適用場面がほとんど想定できなくなると主張している。
 しかしながら,原告の主張自体からも同号の適用場面があることは明らかである
上に,自動車の継続検査に様々な態様があることは公知であり,上記解釈によっ
ても法律上同号適用の場面が皆無となることはおよそ考えられないから,この点を
根拠とする原告の主張は理由がないというべきである。
 また,原告は,昭和46年9月8日付け重量税法取扱通達中の「記」6の「過誤納
金の還付」(2)において自動車検査証の交付等の後にも還付がされる場合が認め
られていることをも主張の根拠として指摘している。
 しかしながら,同通達の「記」6の「過誤納金の還付」(2)は,重量税法16条1項1
号が現実に自動車検査証の交付等を受ける前に自動車検査証の交付等をやめた
場合について定めていることを当然の前提として,自動車検査証の交付等をやめ
るとの申出などがあったにもかかわらず事務処理の過程でそれが知られずに自動
車検査証の交付等がされてしまった場合の事務の取扱いを規定したとみるのが相
当であり,この原告の指摘も失当である。)
2 本件についてみると,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成9
年3月5日に現実に自動車検査証の返付を受け,その後,同月28日に当該検査
証を返納し,平成10年3月25日に本件交付請求をしたことが明らかであり,原告
が上記返付を受ける前に自動車検査証の返付を受けることをやめた事実は認めら
れない。
 したがって,本件は,重量税法16条1項1号に該当するとは認められない。
3 以上のとおり,本件は,重量税法16条1項1号に該当するとは認められず,なお
かつ同項2号に該当するとも認められないことは明らかであるから,本件は同項に
該当しないとした本件処分について何ら違法性は認められないというべきである。
 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決
する。
       東京地方裁判所民事第16部
           裁判長裁判官    成  田  喜  達
裁判官    髙  宮  健  二
裁判官    笹  本  哲  朗

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛