弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人高橋由太郎の控訴趣意は同人作成名義の控訴趣意書と題する書面記載のと
おりであるからこれをここに引用しこれに対し次の如く判断する。
 第一点 論旨は要するに本件訴訟条件たる品川税務署長Aの告発書には被告人並
びに告発事実の特定がないのに本件公訴を受理し漫然裁判したのは違法であるから
原判決は破棄を免かれないというにある。よつて記録を調査するに、品川税務署長
A作成名義の告発書と題する書面によると「左記の者酒税法犯則事件につき国税犯
則取締法第十四条第二項により告発します」と記載されておるのみで所謂左記の者
の氏名並びにその犯則事件の内容を記載した書面が編綴されておらないから完備し
た告発書でないことは所論のとおりである。尤も該書面は何等の異議もなく証拠調
を終了しておることは記録に徴し明白であるが、告発書としては完備したものでな
い書面を宛もこれを完備した告発書の如く受理して証拠調を了しこれにより訴訟条
件を具備するものとして審理判決した原審の訴訟手続は失当なるを免がれない。し
かし当審において検事が提出し適法に取調をした告発状と題する書面の記載に徴す
ると本件に関してはその起訴前に品川税務署長Aから適<要旨>法な告発のあつたこ
とを明認しうるのである。而してこの種訴訟条件たる告発は適法な告発手続さえあ
れば、告発書自体が記録中に編綴されていないからといつて、該告発に基い
てなされた起訴並びに審理判決の効力を左右するものではない。従つて原審の訴訟
手続に所論のような違法の廉なく、論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 坂間孝司 判事 鈴木勇 判事 堀義次)

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