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裁判例


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○ 主文
原告の被告通商産業大臣に対する訴えを却下する。
原告の被告東京瓦斯株式会社に対する請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告通商産業大臣に対し
被告通商産業大臣が被告東京瓦斯株式会社に対し昭和四六年三月二〇日付四六公第
七七一号をもつてしたガス供給規程の変更の認可のうち、別紙一記載の条項を別紙
二記載の条項のとおりに改正する部分の認可を取り消す。
2 被告東京瓦斯株式会社に対し
被告東京瓦斯株式会社は原告に対し金五七四〇円を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決
二 被告通商産業大臣
1 本案前
主文第一及び第三項同旨の判決
2 本案
原告の被告通商産業大臣に対する請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
との判決
三 被告東京瓦斯株式会社
主文第二及び第三項同旨の判決
第二 原告の請求原因
一 被告通商産業大臣(以下「被告通産大臣」という。)は、昭和四六年三月二〇
日付四六公第七七一号をもつて、被告東京瓦斯株式会社(以下「被告東京ガス」と
いう。)申請に係るガス供給規程(昭和四二年九月一八日付四二公第九二一〇号に
より認可された一部変更後のもの。以下「旧規程」という。)を一般ガス供給規程
(本社地区)(以下「一般ガス供給規程」という。)に変更することを認可した。
その結果別紙一記載の条項(以下「旧条項」という。)は別紙二記載の条項(以下
「新条項」という。)に変更された。
二 旧条項は、本支管の延長について特殊な利益を有する使用者(本支管の延長の
ために特別多額な費用を要する工場等の場合をいう。以下「特殊使用者」とい
う。)に本支管の延長に伴う工事費の一部を負担させることを内容とするものであ
つたところ、新条項は右規定内容を変更し、特殊使用者以外の使用者(以下「一般
使用者」という。)にもすべて本支管の延長に伴う工事費の一部を負担させること
としているのであるが、被告通産大臣のした前記認可のうち、旧条項を新条項のと
おりに変更する部分の認可(以下「本件認可」という。)は、次に述べる理由によ
り違法である。
1 新条項は、ガス事業法第一七条第二項第三号に適合していないから、本件認可
は同項の規定に違反し違法である。すなわち、(一) 多数の使用者のために公共
地、道路等に敷設され、被告東京ガスの所有となるべき企業施設である本支管の工
事費用は、同被告において負担するのが当然であり、これを一般使用者に負担させ
るのは合理性を欠く。
(二) 同じく同被告の所有物件とされる供給管については一般使用者に工事費用
を負担させる制度はとられていないのであるから、使用者にとつてより受益度の低
い本支管について一般使用者に工事費用を負担させる制度は合理的でない。
(三) また、同種公益事業である電気、水道事業においてもこのような本支管に
相当する部分について一般使用者に工事費用を負担させる制度はとられておらず、
ガス事業においてだけ右のような特別の制度を認める合理的理由はないというべき
である。
(四) 使用者がガス使用の申込みをする場合、既に本支管が敷設されている場合
とそうでない場合とでは、前者の場合に本支管の工事費用を負担する必要がなく、
後者の場合はその必要があるという差異が生じ、また、本支管が使用者の意思とは
直接関係なく被告東京ガスの計画・道路状況に基づき敷設されることから、使用者
の居住位置関係にまり本支管の工事費用の負担の要否が決せられ、利用者間の公平
を欠くこととなる。更に、ガス事業が特許独占事業とされているため、使用者はガ
ス供給を受けるにつき他の選択を許されず、右不公平な費用負担を甘受しなければ
ならない結果となる。したがつて、新条項の前記内容は、到底適正明確なものとい
うことはできない。
(五) 一般ガス供給規程によると本支管の延長に伴う工事費用についてはその別
表第2に同被告の負担額が表示され、工事費が同被告の右負担額を超える場合に
は、その差額を使用者から徴収すると規定されているにすぎず、使用者の負担金額
についてその算定根拠は明らかでなく、しかも、使用者の負担金額について右のよ
うな定め方をするのは、物価高騰による工事費用の増大分を使用者に一方的に転稼
するという結果を招くものであつて不当である。
2 新条項は、被告東京ガスの所有となるべき本支管の工事費用の一部を一般使用
者に何らの対価なく負担させることとしており、しかも、ガス事業が特許独占事業
とされているため使用者は右工事費用負担金を支払わなければガスの供給を受ける
ことができないという実情にあり、したがつて、右工事費用負担制度は一般使用者
にとつて強制的性格を有している。
しかして、被告通産大臣が、右のように被告東京ガスにおいて一般使用者から何等
の対価なく負担金を徴収できることを内容とする新条項を認可したのは、憲法第二
九条第三項に違反する。
また、右のように対価なく強制的に徴収される負担金は憲法第八四条にいう租税に
類するものというべきであるから、このような負担金制度は法律の規定によつての
み設けることができ、行政庁において右負担金制度を認容すべきか否かの決定権限
を有するものとはいえない。したがつて、本件認可は憲法第八四条に違反する。
三 原告は、被告東京ガスに対し、昭和四六年九月二三日一般ガス供給規程による
原告宅のガス供給に関する申込み(以下「本件申込み」という。)をしたところ、
同被告から本支管の延長に伴う工事負担金として五七四〇円の支払いを求められた
ので、同年一二月一七日同被告に対し右五七四〇円を支払つた。
四 しかし、本件認可は前述のとおり違法であつて取り消されるべきであるから、
新条項に基づき被告東京ガスの受領した右五七四〇円は、法律上の原因を欠く不当
な利得というべきである。
五 よつて、原告は本件認可の取消しを求めるとともに、被告東京ガスに対し不当
利得返還請求権に基づき右五七四〇円の支払いを求める。
第三 被告通産大臣の主張
一 本案前の主張
1 出訴期間の徒過について
原告は、昭和四六年三月下旬頃本件認可があつたことを知つていたのであり、仮に
そうでないとしても、同年九月中又は遅くとも同年一二月一七日までには本件認可
があつたことを知つたものというべきところ、本訴が提起されたのは昭和四七年三
月一八日である。そうすると、原告の被告通産大臣に対する訴えは出訴期間を徒過
して提起されたものであるから不適法である。
(一) 原告が本件認可のあつたことを知つたのが昭和四六年三月下旬であること
は、次の事実から推知できる。
(1) 被告通産大臣に、被告東京ガスがした前記ガス供給規程の変更についての
認可申請につき、ガス事業法第四八条の規定に基づく公聴会を開くため、同法施行
規則第九〇条第一項の規定に従い同二月二〇日付官報に公聴会の件名、期日及び場
所並びに事案の要旨の掲載を行つた。
(2) 被告東京ガスは前記認可を受けた一般ガス供給規程をガス事業法第一九条
の規定に従い同年一二月二一日から同月三一日までの間同被告の各営業所、事務所
その他の事業場において公衆の見やすい場所に掲示した。
(3) 原告は昭和四六年三月当時には東京高等裁判所に係属中の訴訟において、
ガス事業者において一般使用者に本支管の工事費用を負担させる制度の可否を中心
に争つていた者であるから、ガス供給規程の変更の認可が行われたかどうかについ
て特に注意を払つていたものと考えられる。
(二) そうでないとしても、右(一)において述べた各事実に加えて、原告が本
支管の延長に伴う前記工事負担金を現実に支払うまでの次の経緯を総合すると、原
告は同年九月中又は遅くとも同年一二月一七日までに本件認可を知つたものという
べきである。
(1) 原告は、同年九月二三日被告東京ガス武蔵野サービス・ステーシヨンに来
所して本件申込みをしたのであるが、当時同被告は右サービス・ステーシヨンに一
般ガス供給規程をガス使用申込者が自由に閲覧しうるように閲覧しやすい場所に備
え付けていた。そして、右備付けに係る一般ガス供給規程には、被告通産大臣によ
る前記ガス供給規程の認可の日付けも記載されていた。
(2) 右使用申込みを受けた被告東京ガスにおいて調査したところ、原告にガス
を供給するためには、公道下に敷設中の本支管より原告宅まで分岐本支管を敷設す
る必要があることが判明したため、その旨の工事図面を作成するとともに、同被告
杉並営業所工事係長A及び技術員Bが同年一二月七日右事情を説明するため原告宅
に赴いたところ、原告から「隣家のC氏もガス使用を希望しているので両者が一諸
に導管を引いた場合、本支管工事費はどうなるか」。との質問があつた。これに対
し右両名は、その場合、右工事費の負担は両申込者の折半になる旨回答した。その
結果同被告は、原告とCとの共用の本支管敷設工事を実施し、同月一三日原告に対
し本支管工事費として五七四〇円を請求したが、原告は同月一七日何らの異議なく
右金員を支払つた。
2 訴えの利益について
本件認可は、次に述べるとおり、原告の法律上の地位ないし権利関係に影響を及ぼ
すものではなく、したがつて、原告は本件認可の取消しを求める訴えの利益を有し
ない。
(一) 新条項のうち別紙三記載の部分を除くその余の部分は、いずれも旧条項の
文言上の疑義を避けるため表現を改めて明確を期したにすぎず、旧条項の内容を実
質的に変更したものではない。すなわち
(1) 旧条項の「使用者の都合により」という部分の意義は、もともと新条項の
「使用者の申込みに伴い」と同意義に解釈されていたものである。
(2) 旧条項にいう「供給施設」とは、実質的には新条項にいう「本支管および
整圧器((3)の整圧器を除きます。)」と同一の意味内容を持つていたものであ
る。
すなわち、旧規程1の2によれば供給施設とは導管、整圧器及びガスメーターをい
い、導管とは本支管、供給管及び内管をいうものとされていた。しかし、右のうち
供給管については旧規程IIIの12の(6)で被告東京ガスが工事費用を負担す
ることとされており、内管、ガスメーター及び使用者のために設置する整圧器につ
いては旧規程上明示的に規定されていなかつたけれども、右各施設が使用者個人の
ために設置されるという性質上その工事費用は当然に使用者の負担になるものと解
釈されてきたのであり、したがつて、旧条項にいう「供給施設」とは、旧規程Iの
2に規定している供給施設から供給管、内管ガスメーター及び使用者のために設置
される整圧器を除いた本支管及び整圧器を意味していたのである。
(3) 旧条項の別表第5の被告東京ガスの負担額と新条項の別表第2同被告の負
担額との間に変更はない。
(二) 仮に旧条項の前記変更により使用者のために設置する整圧器の工事費用負
担について取扱いが異つてくるとしても、原告の本件申込みに伴う本支管の延長工
事において整圧器設置のための工事は施行されておらず、今後、原告宅付近では、
使用者のために設置する整圧器の必要性はないから、本件認可は原告の法律上の地
位ないし権利関係に影響を及ぼさない。
(三) 新条項のうち別紙三記載の部分は、昭和四五年法律第一八号によるガス事
業法の改正に伴つて新たに追加されたものである。しかし、右の部分は原告の本件
申込みによる本支管延長工事とは全く関係がなく、今後、原告宅付近では右の工事
をする必要はないから、右の部分の追加は、原告の法律上の地位ないし権利関係に
何ら影響を及ぼすものではない。
二 請求原因に対する認否
請求原因一の事実は認める。同二の事実のうち、本支管及び供給管が被告東京ガス
の所有となること、一般ガス供給規程上供給管の工事費用は同被告の負担となつて
いること、本支管が既に敷設されている場合とそうでない場合とで使用者間に本支
管工事費の負担について原告主張のような差異が生じることは認める。同二のその
余の主張は争う。三 本案についての主張
1 請求原因二の1について
使用者に本支管工事費の一部を負担させる本件負担金制度は、次に述べるとおり、
ガス事業法第一七条第二項第三号に違反しない。
(一) 本支管工事負担金制度について
一般ガス供給規程IIIの13の(7)が、使用者の申込みに伴い本支管な延長す
る場合において、本支管の設置に要する工事費が同規程別表第2の被告東京ガスの
負担額をこえるときは、その差額を使用者に負担させることとしているのは、既設
使用者を含む一般需要者の利益を擁護するとともに、ガスを低廉に供給することに
よつてガス事業の健全な発達を図るためである。仮に、原告が主張するように本支
管を延長する場合に、本支管の敷設費用を当該本支管によつてガスの供給を受ける
使用者に負担させることが許されないとすれば、これをガス料金の中に含ましめる
ためにガス料金を改訂して、広く既設の本支管によつてガスの供給を受けている者
にも分担せしめることとならざるをえない。しかしながら、現代における文化生活
の一般的傾向として、ガスの利用者ならびに利用区域が年々増加、拡大しているの
であるから、利用区域の拡大によつて本支管を敷設するたびごとに、ガス料金を改
訂することは、ガスの料金水準が高くなるのみならず、既設の本支管によつてガス
の供給を受けている者は、すでに従来のガス料金によつて既設の本支管の敷設費用
は負担済であるから、早期にガスの供給を受けた者に、新規にガスの供給を受けよ
うとする者の本支管の敷設費用を負担させること法なり、負担の公平が著しく阻害
されることになる。そうかといつて、もし将来の需要者を予定してガスの供給に要
する本支管の敷設費用を当初のガス料金の中に織り込もうとすると、ガス料金は当
然に相当高いものとならざるをえず、これまたかえつてガスの普及を妨げる結果と
なることは見易いところである。これらの弊害を除去するために、新規の使用者に
対しては、より高い料金を定めることが考えられるが、料金の種類が多岐化するこ
とにより事務の煩雑を招き、ひいては料金コストの上昇につながりガスの普及が妨
げられることとならざるをえない。むしろ、一般ガス供給規程IIIの13の
(7)に見られるように、本支管な延長する場合の工事費については、一定額を超
える分を利用者の負担とすることが、ガス事業法第一条の「ガスの利用者の利益を
保護し、及びガス事業の健全な発達を図る」目的に適することになるのである。
また、ガス事業法第一七条第二項第三号が導管・ガスメーター・その他の設備すな
わち工事費を含む費用を徴収しうろことを規定していることからすれば、同法は本
支管の延長等の場合における本支管の設置の工事費を使用者に負担させることを認
めているものと解される。
0供給管の工事費用をガス事業者の負担としていることについて
本件一般ガス供給規程IIIの13の(5)が、供給管の工事費用をガス事業者負
担としているのは、供給管が本支管から分岐して使用者の敷地の境界までの導管で
ある(一般ガス供給規程Iの3の(10)ため、個々の使用者によつてその延長に
大きな差異はなく、また、その工事費も比較的少額であるので、これをガス料金中
に算入してもなんら使用者の負担の公平を欠く虞がないことから、現行ガス料金に
算入済のものであることがその理由である。したがつて原告が主張するように、使
用者の受益の程度か高い供給管の工事費用がガス事業者の負担であるからといつ
て、当然に本支管の工事費用についてもガス事業者が負担しなければならないもの
ではない。
(三) 電気事業及び水道事業の工事負担金制度について
電気、水道事業に要する設備費用を回収する方法は、その事業の普及の度合、単位
当たり設備費用の大小等により異なるのは当然であり、ガス事業の場合において
は、これらの諸点を考慮して本支管工事負担金制度が最も妥当なものとして採用し
たものである。
(四) なるほど、ガスの使用申込みに伴い本支管を延長するために、ガス事業者
の負担限度額を超える部分について工事費の負担をしなければならない者と、既設
の本支管な利用するために本支管工事負担金を負担する必要のない者との間に差異
を生ずることは確かであるが、かかる差異は受益の程度による差異であつて、この
結果、相当高額の負担金を徴収することがあつたとしても、なんら不当な負担を課
するものではなく、ガスの普及過程においてやむをえないところである。
また、ガス事業者が使用者の申込みによらずに本支管を敷設する場合は、国・地方
公共団体の道路計画及び道路使用条件並びに需要者の動向等の諸点を考慮したうえ
で、本支管の敷設を決定するものであり、その結果、使用者間に本支管工事費の負
担について差異が生じたとしても、ガスの普及過程においてはやむをえないところ
である。
むしろ、本支管の設置に要する工事費をことごとくガス料金に算入することにすれ
ば、料金が高額となるだけでなく、使用者間の公平を欠き、公益事業の精神に反す
る結果となることについては、前述のとおりである。
2 請求原因二の2について
(一) 本支管工事負担金は、本支管工事費のガス料金未算入分として徴収される
ものであることは1の(一)で述べたとおりであつて、ガス料金で本支管工事費相
当金額を徴収したうえ、さらに不当に金員を徴収するものではない。
なお、本支管をガス事業者の所有としているのは、本支管が一般の住民が通行する
道路に埋設されるものであるので、その維持・管理は専らガス事業者が負うものと
する必要があること並びに供給世帯数の増加に伴つてガス供給上、支障・危険が発
生しないように常に本支管の入替え及び整備等を行う必要があることに基づくもの
であり、ガス事業の特殊性から生ずる必然的な措置である。
したがつて、本件認可が憲法第二九条第三項に違反するとする原告主張は、明らか
に理由がない。
(二) また、本支管工事負担金は、本支管工事費のガス料金未算入分として徴収
されるものであることについては、前述したとおりであつて、強制的賦課として租
税に類するものではないことに明らかである。したがつて、本件認可が憲法第八四
条に違反するとの原告主張は、なんら理由がない。
第四 請求原因に対する被告東京ガスの認否及び主張
一 請求原因に対する認否
請求原因一及び二の認否は被告通産大臣と同じである。
同三の事実に認める。同四の主張は争う。
二 主張
1 本件取消しの訴えは、被告通産大臣の本案前の主張第三の一記載のとおり不適
法であつて却下を免れない。そうでないとしても、同被告の本案についての主張第
三の三記載のとおり本件認可に原告主張のような違法事由はないから、原告の本件
取消請求は理由がない。したがつて、本件認可が取り消されるべきことを前提とす
る原告の被告東京ガスに対する請求は失当である。
2 仮に本件認可が取り消されても、そのことは原告の本件申込みに伴い昭和四六
年一二月原告と被告東京ガスとの間に成立したガス供給契約に影響を及ぼすもので
はないから、原告の同被告に対する請求は理由がない。
すなわち、ガス事業法ではガス使用者の利益保護、ガス事業の健全な発達及びガス
の製造供給等に伴う公共の安全確保と公害防止を図る目的で、ガス事業者とガス使
用者との間で締結される供給契約の内容については、これを定型化させて供給規定
として設定させるとともに、その設定及び変更については被告通産大臣の認可を要
するものとされているが、これは独占化するガス事業者の恣意を防いで、右目的が
達成されることを確保する手段にすぎず、それ以上の作用を予定しているものでは
ないから、ガス事業者とガス使用者との間に成立した供給契約が適法に認可された
供給規程に従つたものである限り、その後にその供給規程に関する認可が取り消さ
れても、それは既に成立した供給契約には影響を及ぼさないものといわなければな
らない。また、右のように解さなければ認可が取り消されることによりガス事業者
と多数のガス使用者との間に成立している法律関係に混乱を招く結果となるが、そ
れはガス事業法の立法趣旨に反する。
3 仮に本件認可が取り消されるべきであり、原告に新条項に基づく工事負担金の
支払義務がなかつたことになるとしても、原告は右の点を熟知しながら被告東京ガ
スに対し本件申込みをし、右工事費負担金の支払いをすることによつて供給契約関
係を成立させたうえ、現実に工事を完成させたものである。しかるに、その後にな
つて、本件認可が取り消されるべきであり、原告に右工事費負担金の支払い義務が
なかつたことを主張して同被告に対しその返還請求をするのは信義誠実の原則に反
するものといわなければならない。
第五 被告らの主張に対する原告の認否及び反論
一 被告通産大臣の本案前の主張に対する認否及び反論
1 本案前の主張1のうち、同1の(一)の(1)及び(2)の事実は知らない。
同1の(一)の(3)の事実のうち、原告が当時同被告主張のとおり本支管工事負
担金制度の可否について訴訟で争つていたことは認めるが、その余の点は争う。
同1の(二)の(1)の事実のうち、原告が同被告主張のとおり本件申込みをした
ことは認めるが、その余の事実は知らない。同1の(二)の(2)の事実は認め
る。その余は争う。
原告が本支管工事負担金制度について訴訟で争つていたとしても、右の点に関する
ガス供給規程の変更及びこれに対する被告通産大臣の認可について、原告に特別の
知悉義務が生じる理由はない。また、前記認可を受け、その旨の記載のある一般ガ
ス供給規程が被告東京ガスの営業所等に掲示されたとしても、それは処分庁のする
公示・公告とは性質を異にし、社会通念上一般に周知了解させる方法としては不十
分であつて、右掲示をもつて原告が本件認可を知つたものとみなすことは許されな
い。
しかして、原告は、昭和四七年三月一六日ころ被告東京ガスから一般ガス供給規程
を入手し、その結果はじめて本件認可があつたことを知つたものである。
2 本案前の主張2の(一)の(1)は争う。
旧条項にいう「使用者の都合により」本支管を延長する場合とは、使用者の特殊事
情ないし使用者側に帰責されるべき原因に基づき本支管を延長する場合をいうので
あつて、右のような事情のない一般的な使用者のガス供給申込みの場合を含まない
というべきである。したがつて、新条項は請求原因二記載のとおり、旧条項の規定
内容を実質的に変更したものといわなければならない。
原告は被告東京ガスに対し新条項に基づき本支管工事負担金として前記五七四〇円
を支払つているから、本件認可が取り消されることにより右金員の返還を受けるこ
とができる。また、原告居住地内には原告所有の物置があり、これを改築して同被
告に対しガス供給申込みをする場合に再び新条項に基づく本支管工事負担金を徴収
される虞がある。したがつて、原告は本件認可の取消しを求める利益を有する。
二 被告通産大臣の本案についての主張1の(一)の主張に対する原告の反論
本支管工事費は、原則としてガス事業者の営業費としてガス使用料金算定の際に料
金原価に組み入れ、これを長期的に多数の1使用者からガス使用料金として回収す
べきものである。そして、右の方法をとつても料金が当然に高額になるとはいえな
いし、ガス事業者は公益事業者として長期低利の融資や税法上の優遇措置を受ける
ことができるばかりでなく、独占事業者としてガス器具・工作物の製造販売につい
て他より優位に営業を行うことができるのであつて、これにより、また、企画的先
行投資をする等の企業努力により料金を低額に抑えることも可能であるといわなけ
ればならない。ガス事業法第一七条第二項第三号は単に導管と規定しているのであ
るから、本支管の設置費を使用者に負担させることを認めているものとはいえな
い。
三 被告東京ガスの主張に対する原告の認否
被告東京ガスの主張1ないし3は争う。第六 証拠関係(省略)
○ 理由
一 まず、被告通産大臣に対する訴えの適否について判断する。
1 ガス事業法第一七条第一項による通産大臣の認可が供給規定の全面的変更につ
いてされた場合、認可全部が取り消されれば、供給規程はもとの規程のまま存続す
るし、右認定のうち可分な部分が抽出されて取消しが求められ、それが取り消され
れば、その可分な部分に対応する変更に係る新しい条項が消滅し、もとの条項が存
続するものと解せられる。それ故、その抽出された可分な部分に対応する変更に係
るもとの条項と新しい条項とを対比し、その内容に実質的な変更がない場合には、
その可分な部分は、何人の法律上の地位ないし権利関係にも影響を及ぼさないとい
う意味において処分性を欠くというべきである。また、変更認可の可分な部分に対
応する変更が新しい条項の付加に係る場合、その可分な部分が取り消されれば、右
付加がなかつたこととなるが、その付加により法律上の地位ないし権利関係に影響
を受けないものは、右可分な部分の取消しを求める法律上の利益を欠くといわねば
ならない。
ところで、被告通産大臣に対する本件訴えは、同被告が昭和四六年三月二〇日付公
第七七一号をもつてした旧規程を一般ガス供給規程に変更するについての認可のう
ち、旧条項から新条項への変更に係る部分を可分な部分であるとして抽出し、その
取消しを求めているものであり、右認可の事実は当事者間に争いがない。そして、
右変更は、旧条項を別紙三記載の部分を除く新条項に変更する部分と新条項のうち
別紙三の部分を新たに付加する部分とからなるので、以下この二つの部分を分けて
処分性又は訴えの利益を検討することとする。
2 新条項のうち別紙三記載の部分を除くその余の部分について
右の部分が旧条項の内容を実質的に変更したものであるかどうかを遂一検討する。
(一) 旧条項の「使用者の都合により」という文言は新条項では「使用者の申込
みに伴い」と変更されている。ところで旧規程においては、使用者からの供給申込
みに伴い本支管の延長をする場合につき、あたかも使用者の都合による延長と使用
者の都合によらない延長とがあるかの如く読めないではないが、成立に争いのない
乙第六号証により旧規程の他の条項とを比較検討しても、使用者からの供給申込み
に伴い本支管を延長する場合、使用者の都合によらない延長を前提とする規定はな
く、旧条項の趣旨からみても、右にいう「使用者の都合により」との文言は、「使
用者の申込みに伴い」と全く同義に用いられたものと解すべきである。そしてこの
ことは、証人藤井陸司の証言により認めうる被告東京ガスの運用の実態に照らして
も明らかである。
この点について原告は、「使用者の都合により」とは、使用者の特殊事情ないし使
用者側に帰責されるべき原因に基づく場合のみをいうと主張する。しかしながら、
右の主張は、そもそも旧条項は特殊使用者についての規定であるとの前提に立つ議
論であるが、旧条項をそのように限定して解釈しなければならない根拠はないか
ら、右主張は採用できないし、右主張にそう成立に争いのない甲第五号証の二(鑑
定書)の記載も採用できない。
そうすると、右の変更は、単に表現を改めて明確にしたにすぎず、その内容を変更
したものではないというべきである。
(二) 旧条項の「推定使用量」の文言が新条項の「予定使用量」と同意義である
ことは文理上明らかである。
(三) 旧条項の「供給施設に要する工事費」の文言が、新条項では「本支管およ
び整圧器((3)の整圧器を除きます。)の設置に要する工事費」と変更されてい
る。ところで、旧規程によれば、供給施設とは導管、整圧器及びガスメーターをい
い、導管とは本支管、供給管及び内管をいうものと規定されている(旧規程Iの2
の(8)ないし(11))。しかし、右のうち供給管については右旧規程IIIの
12の(6)で被告東京ガスが工事費用を負担することとする旨規定されており、
内管、ガスメーター及び使用者のために設置する整圧器の工事費用の負担について
は明示的に規定されていなけれども、右各施設が使用者個人のために設置されると
いう事柄の性質上それは使用者の負担に帰すべきものであることは当然である。し
たがつて、旧条項の「供給施設」とは、右旧規程Iの2の(8)ないし(11)に
規定されている供給施設から供給管、内管、ガスメーター及び使用者のために設置
される整圧器を除いた本支管及び使用者のために設置する整圧器以外の整圧器を意
味していたものというべきである。そうすると、旧条項の右の点の変更は旧条項の
意味内容を変更するものではないといわなければならない。
(四) 前掲乙第六号証及び成立に争いのない甲第一号証(成立に争いのない乙第
八号証とともに、一般ガス供給規程)によれば、旧条項にいう「別表第5の当社
(被告東京ガス)の負担額」と新条項にいう「別表第2の当社の負担額」との間に
は、何ら変更がないことが認められる。なお、同被告の負担額が一定の金額をもつ
て規定されているため、物価の高騰により使用者の負担額は実質的に増大すること
となるが、それは規定に変更があつたかどうかの問題とは無関係の事柄である。
(五) 以上のとおり、新条項のうち別紙三記載の部分を除くその余の部分の変更
は、いずれも旧条項の表現を改めて明確にしたにすぎず、その意味内容を実質的に
変更するものではないことは明らかである。したがつて、本件認可のうち、右変更
に対応する部分の認可は、何ら個人の法律上の地位ないし権利関係に影響を及ぼす
ものではないから、抗告訴訟の対象とはならないと解すべきである。
3 新条項のうち別紙三記載の部分について
別紙三記載の部分は、特定ガス発生設備(ガス事業法第二条第三項参照)によるガ
スの供給の申込みに伴い一般ガス供給規程によるガスの供給を予定して本支管を敷
設する場合の規定であるが、原告のした本件申込みが特定ガス発生設備によるガス
の供給の申込みでないことは、原告の主張自体から明らかであるし、原告が現に特
定ガス発生設備によるガスの供給を予定している等の事実は原告の主張しないとこ
ろである。したがつて、本件認可のうち別紙三記載の部分に対応する部分の認可
は、原告の法律上の地位ないし権利関係に直接影響を与えるものではなく、原告は
右認可部分の取消しを求める法律上の利益を有しない。
4 そうすると、本件認可の取消しを求める原告の被告通産大臣に対する訴えは、
不適法である。
二 本件認可の取消しを求める原告の被告通産大臣に対する訴えが不適法である以
上、本件認可が取り消されるべきことを前提とする原告の被告東京ガスに対する本
件不当利得返還請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないといわ
なければならない。
三 以上によれば、原告の被告通産大臣に対する訴えは不適法であるからこれを却
下し、原告の被告東京ガスに対する請求は理由がないから棄却することとし、訴訟
費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文の
とおり判決する。
(裁判官 三好 達 時岡 泰 青柳 馨)
別紙一
旧規程IIIの12の(1)
使用者の都合により本支管を延長する場合においては、使用者の推定使用量に必要
な大きさの供給施設に要する工事費が別表第5の当社負担額をこえるときは、その
差額を工事負担金としていただきます。
別紙二
一般ガス供給規程IIIの13の(7)
使用者の申込みに伴い本支管な延長する場合において、使用者の予定用量に必要な
大きさの本支管および整圧器((3)の整圧器を除きます。)の設置に要する工事
費(特定ガス発生設備によるガスの供給の申込みに伴いこの規程によるガスの供給
を予定して本支管を敷設する場合にあつては、別に定めるところにより算定した工
事費)が別表2の当社の負担額をこえるときには、その差額を工事負担金としてい
ただきます。
注 一般ガス供給規程IIIの13の(3)
使用者の申込みによりその使用者のために設置する整圧器は、売渡しとし、当社
は、これに要する工事費を使用者からいただきます。
別紙三
一般ガス供給規程IIIの13の(2)のうち次の部分
(特定ガス発生設備によるガスの供給の申込みに伴いこの規程によるガスの供給を
予定して本支管を敷設する場合にあつては、別に定めるところにより算定した工事
費)

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