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       主   文
一 申立人原告全逓信労働組合、被申立人郵政大臣および新宿郵便局長間の昭和四
〇年(不)第二号事件につき、被告が昭和四二年二月一三日にした別紙命令書記載
の命令中、(1)新宿郵便局長P1が昭和四〇年五月一三日貯金募集打合会でした発
言、(2)同郵便局長が同月一六日自宅においてした郵政労働組合への加入のしよ
うよう、(3)同郵便局長が同年四月二〇日同郵便局長室において臨時補充員P2ら
にした発言、(4)同年五月一〇日の原告組合新宿支部の職場集会に対する妨害、
(5)同年六月七日の原告組合新宿支部の職場集会に対する監視および(6)同月
一一日の原告組合新宿支部の職場集会に対する監視がいずれも不当労働行為を構成
しないとして、ならびに(7)同郵便局庶務課長P3らが同月一〇日原告組合新宿支
部の組合掲示物を撤去した行為に対して救済命令を発する必要がないとして、これ
らの点に関する原告の救済申立てを棄却した部分を取り消す。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用中、本訴によつて生じた部分を二分し、その一を原告の、その余を被
告の負担とし、参加によつて生じた部分を二分し、その一を原告の、その余を参加
人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 原告
(一) 被告が昭和四二年二月一三日にした主文第一項記載の命令を取り消す。
(二)訴訟費用は、被告の負担とする。
二 被告
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は、原告の負担とする。
第二 請求原因
一 本件命令
 原告は、郵政大臣および新宿郵便局長を被申立人として、別紙命令書中、理由第
一に記載した事項(1ないし3)を不当労働行為であるとして、被告に対し、
(1)速やかに原状回復の措置をとること、(2)今後一切この種の不当労働行為
を行なわない旨の誓約および右不当労働行為に対する陳謝の意を掲載することの救
済命令を求める申立てをした。被告は、昭和四二年二月一三日右申立てを棄却する
旨の命令を発した。この命令書の写しは同月一五日に原告に交付された。
二 命令の違法性
 しかし、命令は理由第二(当委員会の認定した事実)の二(全逓脱退・新生会加
入しようよう等関係)の(一)(全逓脱退しようよう・新生会加入しようよう等に
ついて)の1ないし3、5、6、(二)(全逓の誹謗・郵政労の賞揚等について)
の1ないし3、三(差別人事関係)の1ないし4、四(職場集会の妨害、掲示物の
撤去等関係)の1、2、4ないし7記載の事実が、いずれも不当労働行為を構成し
ないとして、また四の3の行為に対して救済命令を発する必要がないとして、これ
らの点に関する申立てを棄却しているが、これは事実の認定および法令の適用を誤
つたもので違法である。よつて、右命令の取消しを求める。
三 背景事実
(一) 命令書理由第二・一(背景事実)の認否
新宿郵便局長が勤務時間の厳守、服務の厳正を期するとともに施設の改善等の諸施
策を講じたのが郵便業務の正常運行を図るためであつたことおよび三九会の目的が
親睦を図るためであつたことを否認し、その余の事実を認める。
(二) 当時の新宿郵便局における郵便遅配の原因は、郵便物の増加、大型化等と
これに対処する定員不足および施設の狭隘・不備にある。新宿郵便局長P1(以下P
1局長という。)が遅配を解消するため採つたとされる諸施策は、原告組合新宿支部
を弱体化させ、活動家を職場外に排除することを目的とするものである。
 原告組合(以下全逓ともいう。)新宿支部における第二組合は、昭和三八年一二
月二〇日年末闘争の最中に結成された二〇日会が、昭和三九年一二月一〇日同様年
末闘争の最中に結成された三九会へ発展し、それがさらに昭和四〇年四月五日結成
された新生会へ発展し、その新生会が郵政労働組合(以下郵政労と略称する。)新
宿支部へ発展したのである。これら原告組合に対する批判的勢力は、第二組合の結
成を奨励するという管理者側の働きかけによつて結成されたものである。
四 全逓脱退しようよう・新生会加入しようよう等について
(一) P5職員に対する新生会入会のしようようについて
新宿郵便局次長P6(以下P6次長という。)は、昭和四〇年四月二四日の昼ごろ同
郵便局の洗面所で、原告組合の組合員である保険課職員P5に対し、「新生会へこな
いか。」と言つたのである。
(二) P7職員に対する新生会入会のしようようについて
(1) 命令書理由第二・二(一)2記載事実の認否
 P7職員が五月五・六日ごろ河野酒店においてP8職員から新生会への入会をすす
められたこと、P7職員が同月一七日午後七時ごろ新宿郵便局の廊下で同郵便局庶務
課長P3(以下P3課長という。)に会つたことを認める。その余の事実を否認す
る。
(2) P7職員は、その際および同月二〇日にP3課長から「この間のP8さんの話
はどうするんだ。」「新生会に入るのか、入らないのか。」とただされたのであ
る。
(三) P1局長の貯金募集打合会での発言について
(1) 命令書理由第二・二(一)3記載事実の認否
 認める。
(2) P1局長は、右認定の発言とともに「新生会は善良な人がやつたことで間違
いではない。あなたたちも善良な人たちだから、今やつている組合の行動はよくわ
かるだろう。極力組合の方にはいかないように。」と述べたのである。
(四) P1局長自宅における郵政労加入のしようようについて
(1) 命令書理由第二・二(一)5記載事実の認否
 認める。
(2) P1局長、同郵便局第一郵便課長P9(以下P9課長という。)および同課課
長代理P10(以下P10課長代理という。)らは、共謀してP11らに対する郵政労加
入のしようようを行なつたのである。
(五) 職員の父兄の呼出について
(1) 命令書理由第二・二(一)6記載事実の認否
 前段認定の事実を認める。
(2) P1局長は、その際P4ら一〇名の職員の父兄に対し、原告組合への加入を
思いとどまらせるか、あるいは、原告組合を脱退するよう職員に働きかけるよう要
請するとともに、もしこれに応じないならば、本採用にしないか、あるいは研修所
への入所を遅らせることもありうる旨示唆した。
五 全逓の誹謗・郵政労の賞揚等について
(一) P2職員らに対するP1局長の発言について
(1) 命令書理由第二・二(二)1記載事実の認否
 認める。
(2) P1局長は、その際被告認定の発言とともに、「職場を明るくする会という
のがある。そういう人たちはいいですね。」と述べた。
(二) P12書記長およびP13執行委員についての誹謗について
 命令書理由第二・二(二)2記載の事実中、P14課長の注意が執務上のことであ
ることを否認し、その余の事実を認める。
(三) P15青年部副部長およびP13執行委員の誹謗について
 命令書理由第二・二(二)3記載の事実中、P14課長の注意が執務上のことであ
ることを否認し、その余の事実を認める。
六 差別人事関係について
(一) P16執行委員およびP17職員の配置換えについて
(1) 命令書理由第二・三1記載事実の認否
 前段認定の配置換えの事実を認める。
(2) 右配置換は、組合活動を困難ならしめるためになされたものである。
(二) P18職員の統括責任者への任命について
(1) 命令書理由第二・三2記載事実の認否
 前記認定の任命の事実を認める。その余の事実を否認する。
(2) 右任命は、P18職員が原告組合を脱退するやいなやなされたもので、同人
の全逓脱退の褒賞としてなされたものである。
(三) P19職員の昇任について
(1) 命令書理由第二・三3記載事実の認否
 前段認定の任命の事実を認める。その余の事実を否認する。
(2) 右任命は、P19職員が新生会を結成して自らその会長の地位に就き、また
組織的大量に及ぶ全逓からの脱退を企て、これに一応成功したことに対する論功と
してなされたものである。
(四) 研修所への入所遅延について
(1) 命令書理由第二・三4記載事実の認否
 研修所への入所が勤務成績良好な者に対して行なわれていたこと、P4職員および
P20職員の勤務成績が不良であつたこと、P11職員の入所予定が七月七日とP9課長
から内示されていたことを否認する。その余の事実を認める。なお、P21職員に対
する入所遅延の事実は主張しない。
(2) 右三名について入所が遅れたのは、同人らが臨時補充員として原告組合に
加入したがためになされた報復的措置にほかならない。
七 職場集会の妨害、掲示物の撤去等関係について
(一) 四月二〇日の職場集会妨害について
(1) 命令書理由第二・四1記載事実の認否
 第一段認定の事実を認める。
(2) P1局長は、その際、P12書記長の身体を押して、同人を室外へ追い出そう
としたり、「全逓は革命の練習をしている。」と叫んで集会を妨害した。
(二) 五月一〇日の職場集会妨害について
 命令書理由第二・四2記載の事実中、前段認定の事実を認める。その余の事実は
否認する。
(三) 組合掲示物の撤去について
 命令書理由第二・四3記載の事実を認める。
(四) 六月七日の職場集会の監視について
(1) 命令書理由第二・四4記載事実の認否
 認める。但し、これによつて集会の運営が影響を受けたのである。
(2) P3課長らは、集会にとどまつて、集会における発言内容をメモしたりした
のである。
(五) 郵政労新宿支部への掲示板の供与について
 命令書理由第二・四5記載の事実を認める。
(六) 六月一一日の職場集会の監視について
(1) 命令書理由第二・四6記載事実の認否
 認める。但し、これによつて集会の運営が影響を受けたのである。
(2) P3課長らは、集会にとどまつて、集会における発言内容をメモしたりした
のである。
(七) 庁舎使用に関する差別取扱いについて
 命令書理由第二・四7記載の事実中、新宿郵便局が食堂を他の目的になるべく使
用しない方針であつたことを否認する。その余の事実を認める。
第三 請求原因に対する被告の答弁
一 第一項(本件命令)
 認める。被告は、別紙命令書記載のとおり事実上および法律上の主張をする。
二 第二項(命令の違法性)
 原告主張のような理由で、原告の申立てを棄却していることを認める。原告の申
立てが不当労働行為を構成しないか、または不必要であることは、別紙命令書記載
のとおりであるから、本件命令は適法である。
三 第三項(背景事実)
 (二)の事実を否認する。
四 第四項(全逓脱退および新生会加入しようよう)
 (一)の事実、(二)の(2)の事実、(三)の(2)の事実、(四)の(2)
の事実および(五)の(2)の事実をいずれも否認する。
五 第五項(全逓の誹謗・郵政労の賞揚)
 (一)の(2)の事実を否認する。
六 第六項(差別人事)
 (一)の(2)の事実、(二)の(2)の事実、(三)の(2)の事実、(四)
の(2)の事実を否認する。
七 第七項(職場集会の妨害等)
 (一)の(2)の事実、(四)の(2)の事実、(六)の(2)の事実を否認す
る。
第四 参加人の答弁と主張
一 請求原因に対する認否
(一) 第一項(本件命令)および第二項(命令の違法性)については、被告と同
様に答弁する。
(二) 第三項(背景事実)の(二)の事実を否認する。
 新宿郵便局においては、原告組合新宿支部が、同局管理者の再三の注意にもかか
わらず、ことさらに就業規則に違反して集会を開催し、勤務時間中においても上司
の作業指示に従わず、郵便物は放つて置けば管理者が処理するから、組合員は積極
的に処理しないこと、配達のため持ち出した郵便物でも、持ち帰つてよいから早く
帰局することなどを指導実践させ、また作業中の無断離席、無届欠勤、ポカ休が数
多く行なわれ、さらに事をかまえては管理者を取り囲んで吊し上げを行ない、就業
規則に違反して制服を着用しない等著しく職場秩序が乱れていた。そのため郵便物
の著しい滞留が生じたのである。心ある職員がこのような原告組合の活動に批判的
になるのは当然なことであつて、二〇日会、三九会、新生会、郵政労新宿支部は、
これら常識派によつて自然発生的に、しかも自主的に結成されたものである。
二 命令書記載事実の認否
 命令書理由第二・二(一)5の事実中、P10課長代理がP11・P22両職員に郵政
労加入届を配つて、郵政労への加入を要請したこと、P22職員がこれにサインし、
P11職員の質問に対しP1局長が「これは郵政省の正規の組合だ。」と発言したこと
を否認する。命令書において認定したその余の事実を認める。
第五 証拠(省略)
       理   由
一 本件命令
 請求原因第一項記載の事実および本件命令は、原告主張のとおり、原告主張の事
実がいずれも不当労働行為を構成しないか、または救済命令を発する必要がないと
して、原告の申立てを棄却したことは、当事者間に争いない。
二 本件の背景
(一) 全逓に対する批判的勢力の台頭と郵政労新宿支部結成まで
(1) 郵政省は、昭和三八年七月簡易保険積立金を都道府県を通じて特定郵便局
長に貸し付け、特定郵便局の局舎を改善する措置(以下この措置を簡保転貸債とい
う。)を実施することとしたこと、ところが、全逓はこの措置に反対し、年末闘争
ともからめて長期にわたつて闘争を行ない、このため、同年末には、約一か月間三
六協定が結ばれない状態が続いたこと、これに対して、全逓新宿支部組合員P23、
P24、P25、P26、P27およびP28ら六〇数名は、この全逓の闘争を批判して、同
年一二月二〇日に「簡保転貸債問題は一まず棚上げし、年末闘争を早期に終結せ
よ。」「公衆の迷惑を考え三六協定を締結せよ。」「全逓幹部は、下部組合員なら
びに家族の困窮をみつめよ。」という抗議声明を発したことは、当事者間に争いな
い。
 成立に争いない乙第三六号証の三(以下書証の成立に争いないものは、その旨を
特に摘示しない。)および証人P12の証言によれば、右抗議声明を発したグループ
は二〇日会と称していたこと、二〇日会は、その後前記一二月二〇日の全逓に対す
る抗議声明にもかかわらず、全逓の闘争主義的な態度が改まつていないので、重大
な決意をせざるを得ないという決議をして、全逓からの脱退をほのめかし、また同
会の有力な一員であつた新宿郵便局第一郵便課主事P10(後に同課課長代理に昇任
した。)は、全逓を脱退しようというビラを配つたり、これに対する賛成者の署名
を求めたりしたこと、しかし、簡保転貸債反対および年末闘争は、同年一二月二七
日妥結したため、二〇日会の活動は自然に消滅したことが認められる。
(2) 昭和三九年一二月一〇日、新宿郵便局の課長代理、主事ら二〇数名が同局
近くのいでゆ旅館に集合し、三九会という会を結成し、引きつづき同旅館で忘年会
を行なつたことは、当事者間に争いない。乙第三六号証の三によれば、三九会は、
名目上親睦を目的とすることを標榜していたが、同会が年末闘争のさ中に結成され
たことや、後記認定のとおり同会の集会に郵便局職制が出席したことなどから、全
逓は、同会を反組合的な勢力の結集と受けとめていたことが認められる。
(3) 昭和四〇年三月二五日、全逓組合員P10、P19、P8ら一〇数名が新宿郵便
局附近の相模屋旅館に集まり、新宿郵便局の職場を明るくすることを標榜して、新
生会の結成準備会を開き、同会会長にP19、同会副会長にP29を決めたこと、同人
らは、同年四月五日四谷ユースホステルで新生会の結成大会を開いたこと、この大
会において決定された新生会会則によれば、同会は、「管理者および全逓組合員を
除く」新宿郵便局職員で構成し、「会員の親睦と社会的地位の向上および労働条件
の維持改善をはかり新宿郵便局の職場を明朗にすることに寄与する」ことを目的と
していたこと、同日、同人らは、新宿郵便局有志の名で、全逓新宿支部長P30に対
して、最近における同支部の運営と行動には全く常軌を逸したものが多く、看過し
得ないものがあるとして、「公衆に迷惑をかける能率ダウンをやめさせよ。」、
「公衆のひんしゆくをかうような被服の不正常な着用、言動を改めさせよ。」「三
六協定をかるがるしく闘争の具に供するな。」「役員は総退陣し、民主的、建設的
な組合に改組すべきこと。」その他数項目について申し入れ、これが直ちに実行さ
れない場合には、同人らは独自の判断に基づき断固たる行動に出ざるを得ないこと
を付言したことは、当事者間に争いない。
 そして、乙第一六号証(乙第三〇号証)と証人P12の証言によれば、新生会の幹
部であるP19ら七名は同年四月六日新宿郵便局を明るくするための有志という名
で、良識ある新宿局員の皆さんに訴えると題する書面に「ここ数年来闘争にあけく
れる新宿局に勤務して、しみじみと職場の暗さや、いやさを味わいました。そこで
新宿郵便局の職場を明るくしようという志のある者が集まりまして、明るい職場を
作るために、四月五日全逓新宿支部長あて、次の申入書を提出し立ち上りました。
良識ある新宿郵便局員の方々のご参加とご支援を願います。」と記載し、これに前
記申入書の文言を付記して、同郵便局職員に配付したことが認められる。
(4) 全逓新宿支部は新生会の前記申入れに対して回答をしなかつたため新生会
会員の大部分の者は同年四月一九日全逓を脱退する旨の手続をとつたことは、当事
者間に争いない。
 甲第四号証、乙第一五および第一七号証、乙第三六号証の三、証人P12の証言に
よつて成立を認める乙第一四号証ならびに同証言によれば、同日全逓脱退の手続を
とつた新生会員は三〇名であること、新生会会長P19は、同月二三日新宿郵便局員
にあて、新生会の会則と全逓脱退声明書を同封した書簡を発送して、新生会への加
入を勧誘したこと、その声明書の一節には、「全逓支部執行部は我々の申入れに対
して一顧だに与えず、しかも依然として世論を無視し、また正しい労働運動を提唱
する多くの組合員の声をふみにじつておいて、物ダメ闘争に狂奔し……」と記載し
て全逓新宿支部の闘争の仕方を非難していること、全逓新宿支部は、四月一九日を
第一波として、同月二三日および三〇日と春闘の実力行使を行なつたが、その都度
脱退する組合員が続出したことが認められる。
 そして、昭和四〇年六月一日、郵政労新宿支部が組合員約六〇名をもつて結成さ
れ、新生会会員は大部分これに加入し、全逓新宿支部の組合員が約四七〇名となつ
たことは、当事者間に争いない。
(5) 以上認定の事実によれば、新宿郵便局において、全逓新宿支部の組合活動
の行き方に批判的な勢力の萠芽は、遠く昭和三八年の年末闘争中ごろに発生したも
のであるが、それら一部有志の集まりがやがて新生会という団体に結集し、それが
発展的に郵政労新宿支部という組合に団結したものと認められるのである。そし
て、これら一連の反組合的勢力を支えて来た基調は、全逓新宿支部の闘争は、独走
する組合幹部が指導する非民主的なもので、徒らに闘争を事とし業務の運営を阻害
して能率ダウンを目指すものであつて、かくては公衆に迷惑を及ぼし、世論の支持
も得られないし、また労使の対立を激化させて、陰惨な職場を作り出すものである
から、このような方針には断固反対するというのである。したがつて、郵政労新宿
支部は、その誕生の由来においては、巷間応々にして激しい闘争の過程から生ずる
いわゆる第二組合的な性格を有する。
(二) 郵政労新宿支部結成までの過程において新宿郵便局当局のこれに対する態

(1) P1局長、P6次長および各課長らが三九会から招待されて、昭和三九年一
二月一〇日の忘年会および昭和四〇年二月初旬の新年会に出席して、新宿郵便局の
郵便事情が悪いので、諸君も協力してほしいと挨拶したこと、全逓東京地区本部副
執行委員長P31が昭和四〇年四月七日P1局長に会見し、「職場を明るくする会がで
きたようだがどうなんだ。」と質問したところ、同局長は、「私はビラを見て知つ
たが職場を明るくする会の趣旨は結構だと思う。」と答え、さらに同副委員長が
「組合が二つできたりなんかすると局長もやりにくいでしよう。どう思います
か。」と質問すると、同局長は、「仕事をまじめにやろう、きちんとやろうという
ことについては大賛成です。」、「私が新生会をどうするわけにもまいりませ
ん。」と答えたことは、当事者間に争いない。
(2) 乙第四一号証の二および証人P1の証言によれば、昭和三九年七月P1局長
が新宿郵便局長に任命されたが(この事実は、当事者間に争いない。)、当時同郵
便局には郵便物が相当滞留していたので、同局長は、職場規律を確立し、郵便業務
の正常化を図ることが必要であると考え、職員に対し、勤務時間の厳守、服務の厳
正などを命じたが、職場秩序の乱れは容易に改まらず、P1局長の業務命令も素直に
従われないような状態であつたこと、P1局長は、このような職場規律の紊乱や能率
の低下は、全逓新宿支部の誤つた指導にも原因があるものと考え、苦々しく思つて
いたこと、一方新生会など台頭し始めた反組合的批判的勢力は、業務の運営にも協
力的であると考え、このような勢力が増大することは郵便局としても歓迎すべきこ
とであるとし、その発展を期待していたことが認められる。
(3) 以上の事実と後記認定のような新宿郵便局当局による全逓新宿支部に加え
られた数々の支配介入不当労働行為の事実によれば、同郵便局職制は、全逓新宿支
部の活動を一般的に嫌悪する反面、新生会から郵政労新宿支部へと発展する反組合
的勢力の育成に留意し、その成長を期待していたことが明らかである。
三 全逓脱退しようよう・新生会加入しようよう等について
(一) P5職員に対する新生会入会のしようようについて
 乙第三三号証の六には、P6次長が昭和四〇年四月二四日昼ごろ郵便局洗面所にお
いて、P5職員に対し、新生会に入らないかと言つた旨の記載があるが、これは乙第
三八号証の二および証人P6の証言に照らし措信しない。その他原告主張の事実を認
めるに足りる証拠はない。
(二) P7職員に対する新生会入会しようようについて
 P7職員が五月五・六日ころ河野酒店において、P8職員から新生会への入会をす
すめられたこと、P7職員が同月一七日午後七時ごろ新宿郵便局の廊下でP3課長に
会つたことは、当事者間に争いない。
 乙第三六号証の二には、P7職員が原告主張のとおり、P3課長から新生会へ入会
するかどうかをただされた旨の記載があるが、これは乙第三七号証の二に照らして
措信しない。その他原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
(三) P1局長の貯金募集打合会での発言
(1) 事実関係
 P1局長が五月一三日の貯金募集打合会の席上、命令書理由第二・二(一)3記載
のとおり発言したことは、当事者間に争いない。乙第三二号証の二および三、証人
P32の証言によれば、P1局長は、その際、外務主事以下外務員約二〇名に対して、
「新生会は、善良な人達が作つた会であるから悪い会ではない。あなた達は善良な
人達だから、今やつている組合の行動はよくわかるだろう。極力組合にはいかない
ように。組合の行動にはまき込まれないように。」と言つたことが認められる。乙
第四〇号証の三および証人P1の証言中右認定に反する部分は措信しない。
(2) 不当労働行為の成否
 労働者または労働組合が言論の自由を保障されていると同様に、使用者もまた言
論の自由を有する。使用者がこれと対抗関係にある労働組合の綱領や運動方針につ
いて一般的に意見を述べることは、それが批判ないし非難にわたることがあつて
も、一般的な意見の範ちゆうにとどまる限りは、言論の自由に属するから、不当労
働行為を構成しない。しかし、一般的な意見の表明にとどまらず、具体的に組合の
結成・運営または個々の労働者の組合への加入、組合からの脱退に立ち入つて個別
的な発言をすることは、違法性を帯びて、労働組合の結成または運営に対する支配
介入となるのである。
 新生会が昭和四〇年四月五日に結成され、既に原告組合に対する批判的勢力とし
て台頭しており、同月一九日からは新生会員が続々と原告組合を脱退し、六月一日
の郵政労新宿支部の結成に向つて結集しつつあつたことは、前認定のとおりであ
る。時あたかも、組合は分裂の危機に直面していたのである。P1局長は、いわばこ
の天王山ともいうべき非常事態において、公式の席上で前認定の発言をしたのであ
る。それは、新生会を賞揚するとともに、逆に原告組合が行なつている運動を非難
し、これを支持しないように働きかけを表明するものである。それは、言外に、職
員が新生会(第二組合たる郵政労の胎児)に加入することを期待するとともに、逆
に具体的な原告組合の運動に反対することを要請することによつて、その弱体化を
意図したものといわなければならない。このことは、分裂の渦中にある組合員に
は、その表現自体と当時の状況から十分察知できることである。一企業内に両立す
る組合がある場合に、両者を比較して、一方を賞揚してこれに加担し、他方を非難
してこれを否定するような使用者の言葉は、も早一般的な組合の方針に対する批判
として言論の自由の枠内において保障されるものではない。これは、原告組合の運
営に対する支配介入として、不当労働行為を構成するのである。したがつて、これ
が不当労働行為を構成しないとして、この点に関する原告の申立てを棄却した本件
命令は、この部分に限り違法である。
(四) 局長自宅における郵政労加入のしようようについて
(1) 事実関係
 P10課長代理が五月一六日午後八時半ごろ第一郵便課臨時補充員P33、同P22お
よび同P11を連れてP1局長自宅を訪れたこと、その時先客として集配課長代理P
34、統括責任者であるP35、P36、P18およびP37が来ており、六畳の部屋で酒肴
を並べて歓談中であつたこと、当時右五名のうちP37は全逓組合員であつたが、P
34は郵政労組合員であり、P35、P36およびP18は全逓新宿支部に脱退届を出して
いたこと、P1局長は、P10課長代理ら四名を同席させたが、同課長代理は、「ここ
に集まつた者は同じ考えの者で、私と同じ第一郵便課に勤務している者です。」と
言つてP11職員らを先客に紹介したこと、P1局長はP11職員らに酒をすすめたが、
その席上、「郵便事業は三代しなければ一つの仕事を達成できないと私は考えてい
る。全逓の闘争主義者たちは三代かからなければできないことを破壊する。」旨の
発言をしたことは、当事者間に争いない。
 乙第三四号証の二、乙第三六号証の四、証人P11の証言によれば、P10課長代理
は、その席で、P11、P22およびP33の三職員に対し、「君達三名で臨時補充員を
郵政労へ入れてくれ。」と要請し、P11およびP22両職員に郵政労への加入届を配
り、三名にそれに署名捺印を求めたこと(P33職員には予め加入届が交付されてい
た。)、P22職員は、その場で加入届に署名してP10課長代理に提出したが、P
11職員が「これはどういう用紙ですか。」と質問したところ、同人の隣に坐つてい
たP1局長は、「これは郵政省の正規の組合だ。」と言つたこと、P11職員が「しば
らく研究さして下さい。」と言つたところ、P1局長は、「ええ」とうなずいたこと
が認められる。乙第四〇号証の三、乙第四一号証の二、証人P1の証言中、右認定に
反する部分は措信しない。
(2) 不当労働行為の成否
 P1局長が郵政労を指して、それが郵政省の正規の組合であるという発言だけを単
独に取り上げるならば、それ自体は至極当然なことで、不当労働行為と無縁なもの
と考えられないではない。しかし、事は、その発言がなされた当時の状況の下で、
その発言がどう理解され、その結果労使関係にいかなる影響を及ぼすかということ
である。五月一六日といえば、既に全逓に対する批判的グループは、反旗を翻して
新生会を結成し、その同志は陸続として全逓を脱退し、六月一日の郵政労新宿支部
の結成に向つて前進していたことは、前認定のとおりである。郵政省の職員は、労
働者として去就を決すべき重大な時機であつたし、特に採用後日の浅い臨時補充員
は、いずれに組すべきか決断を迫られる時機に際会していた。P1局長は、このよう
な時に、自宅の酒席において、しかも全逓に離反した多くの幹部職員の目の前で、
臨時補充員に対して、全逓の闘争主義者たちは郵政事業を破壊すると言つて、公然
と全逓を非難し、あまつさえ、新生会の有力な推進者たるP10課長代理が郵政労加
入をしようようするのを座視するだけではなく、はたから郵政労は郵政省の正規の
組合だと口をはさんでいるのである。
 これによつてみれば、P1局長の一連の発言は、全逓の運動方針を誹謗することに
よつて、臨時補充員が全逓に加入することを阻止し、逆に郵政労を暗に賞揚するこ
とによつて、臨時補充員が郵政労に加入することを奨励するものと解されるのであ
る。労働者が労働組合に加入するかどうか、加入するとすれば、どの組合を選択す
るかは、団結の自由または団結権として法の保障するところである。使用者がこれ
に関与して、労働者の権利または自由に影響を及ぼすことは、許されない。使用者
がこれに容かいすることは、組合の結成ないし運営に対する支配介入となるのであ
る。そうすると、P1局長の発言は、組合の結成に対する支配介入として不当労働行
為を構成する。したがつて、これが不当労働行為を構成しないとして、原告の申立
てを棄却した本件命令は、この部分に関する限り違法である。
(五) 職員の父兄の呼出について
 命令書理由第二・二(一)6前段の事実は、当事者間に争いない。
 乙第三三号証の五には、集配課臨時補充員P4の母が五月二八日郵便局から呼出を
受け、P1局長らからP4が組合の先頭に立つてやつてはだめだと言われたとの記載
(伝聞)がある。しかし、これは、乙第三七号証の二、乙第三八号証の二、乙第四
〇号証の二、三、証人P6の証言により成立を認める乙第二五号証、同証人および証
人P1の各証言に照らして措信しない。その他原告主張の事実を認めるに足りる証拠
はない。
四 全逓の誹謗・郵政労の賞揚等について
(一) P2職員らに対する局長の発言について
(1) 事実関係
 P1局長が昭和四〇年四月二〇日午前九時ごろから二・三〇分間、集配課の臨時補
充員であるP2、P38、P39、P40、P41およびP42を局長室に呼んで話をしたこ
と、この際、P1局長は、「仕事になれたか。」ときりだし、自己の少年時代の苦労
話をしたあと、「組合に入りましたか。一度組合に入るとなかなか出られなくなる
から、入るんだつたらよく考えて入りなさい。」「職場でも休憩室でも暗くなつて
しまうほどビラがはつてある。職場の中でもゴタゴタしている。」という趣旨の話
をしたことは、当事者間に争いない。
 乙第三二号証の四および五によれば、P1局長は、前記のとおり組合に入つたかと
尋ねたところ、右臨時補充員らは、まだ入つていないと答えたこと、次いで同局長
は、その際「職場を明るくする会がある。そういう人たちがいるけれど、その人た
ちはいいですね。」と言つたこと、これを聞いたP2は、後日新生会の存在を知つ
て、P1局長の言つた職場を明るくする会とは、新生会のことだと感じたことが認め
られる。乙第四〇号証の三、乙第四一号証の二、証人P1の証言中右認定に反する部
分は措信しない。
(2) 不当労働行為の成否
 P1局長の前認定の発言は、全逓の組合活動の仕方を批判するとともに、職場を明
るくする会(新生会)を賞揚することによつて、言外に臨時補充員が全逓に加入し
ないことを期待していることをにおわすものである。右発言が、新生会結成後で、
新生会の会員の大部分(三〇名)が全逓から脱退する手続をとつた日の翌日になさ
れ、しかもその対象が採用後日浅く、まだいずれの組合にも加入していない臨時補
充員であることに思をいたせば、これは、前記三(四)(2)に説示したと同様の
理により、組合の結成に対する支配介入として不当労働行為を構成する。したがつ
て、これが不当労働行為を構成しないとして、この点に関する原告の申立てを棄却
した本件命令は、この部分に関する限り違法である。
(二) P12書記長およびP13執行委員についての誹謗について
 P14集配課長がP4職員に対して、命令書理由第二・二(二)2記載のような注意
をしたことは、当事者間に争いない。しかし、乙第三三号証の五によつても、P
14集配課長がP12書記長およびP13執行委員の組合活動に関して同人らを非難した
ことを認めるに足りず、その他これを認めるに足りる証拠はない。
(三) P15青年部副部長およびP13執行委員の誹謗について
 P14集配課長が集配作業中の職員の前で、「P15だとか、P13だとか一回まわる
のに何日かかるんだ。」と言つたことは、当事者間に争いない。
 乙第三三号証の四には、P15は、同人らと同程度の作業能率の職員が外にもいる
のに、P15とP13が特に注意されたのだから、これは同人らが組合役員として組合
活動をしていたためになされたものと思つたという供述記載がある。しかし、これ
は単なる意見の陳述にとどまるから、これをもつてP15らに対する注意が組合活動
の故になされたと認めることはできないし、他にそのような事実を認めるに足りる
証拠はない。かえつて、乙第四〇号証の二および証人P14の証言によれば、P15お
よびP13は、集配課員として担当する郵便物配達の作業能率が、他の者と比べて極
端に劣悪であつたがために、P14課長が同人らに前記のような注意をしたことが認
められるのである。全逓役員であるがために、担当する職務を怠つても、看過さる
べきであるという理由は全くないから、右発言は不当労働行為とはならない。
五 差別人事関係について
(一) P16執行委員およびP17職員の配置換えについて
 同人らが命令書理由第二・三1記載のとおり配置換えされたことは、当事者間に
争いない。しかし、この配置換えが同人らの組合活動を困難ならしめるためになさ
れたことを認めるに足りる証拠はない。
(二) P18職員の統括責任者への任命について
 P1局長が四月二一日付で新生会会員である集配課主任P18を同課の班の統括責任
者に任命したことは、当事者間に争いない。しかし、右任命が、P18が全逓を脱退
したための褒賞としてなされたことを認めるに足りる証拠はない。
(三) P19職員の昇任について
 第一郵便課主任P19が五月一四日付で主事に任命されたことは、当事者間に争い
ない。
 P19が昭和四〇年三月二五日の新生会結成準備会で同会の会長に決つたこと、新
宿郵便局職制が新生会の成長を期待していたことは、前認定のとおりである。そし
て乙第三五号証の二によれば、郵便局においては、職階制は主任から主事に昇格す
るのであり、P19は主任在職約二年余りで前記のとおり主事に昇任したが、当時新
宿郵便局においては、同人より先任にして、当時までに既に七、八年間主任として
在職していた者がいることが認められ、また乙第三九号証の二によれば、P19の昇
任人事は、新宿郵便局としては、他に類例をみない特殊な例であつたことが認めら
れる。
 これらの事実によれば、P19の昇任は、同人が新生会会長として活動したことに
対する論功としてなされたものではないかという疑がないではない。しかし、職員
の昇任人事は、職員の配置、欠員の状況、本人の経験、能力、適性などを総合して
決められるものであるから、ある昇任が他と比較して不当に有利な処分であるとさ
れるためには、他の職員との能力の比較等について具体的な根拠が示されなければ
ならない。そうすると、前認定の事実だけでは、P19の昇任が合理性がないものと
判断するには十分ではないし、したがつてまたこれだけでは、それが新生会活動の
論功として行なわれたことを認めるに足りない。その他原告主張の事実を認めるに
足りる証拠はない。
(四) 研修所への入所遅延について
(1) P4およびP20職員について
 同人らが昭和三九年八月新宿郵便局に臨時補充員として採用されたこと、当時同
局においては、採用後ほぼ六・七か月後に研修所へ入所するのが通常であつたが、
同人らは採用後約一一か月後の昭和四〇年七月に研修所に入所したことは、当事者
間に争いない。
 乙第三三号証の五によつても、右遅延の原因が同人らが原告組合に加入したこと
の報復としてなされたことを認めるに足りず、その他これを認めるに足りる証拠は
ない。
(2) P11職員について
 同人が昭和四〇年三月新宿郵便局に臨時補充員として採用されたものであり、同
人とともに臨時補充員として採用されたP33およびP22が同年七月七日研修所入所
予定であつたのに、P11職員は同日入所できなかつたことは、当事者間に争いな
い。
 乙第三六号証の四および証人P11の証言によつても、P11が同日入所できなかつ
たことが、同人が原告組合に加入したための報復としてなされたことを認めるに足
りず、その他これを認めるに足りる証拠はない。
六 職場集会の妨害、掲示物の撤去等関係について
(一) 四月二〇日の職場集会妨害について
(1) 事実関係
 全逓組合員約六〇名が昭和四〇年四月二〇日午後五時ごろから、保険課外務室に
おいて職場集会を開いたこと、しかしこの集会に外務室を利用することについて郵
便局管理者の許可を得ていなかつたので、P1局長らが同集会場におもむき、解散す
るように通告したが、この集会が五時一〇分ごろまで続行されたことは、当事者間
に争いない。
 乙第三三号証の三によれば、P1局長は、右通告後帰りがけに「新宿支部は革命の
練習をやつている。」と言つたことが認められる。右認定に反する乙第四〇号証の
三の記載は措信しない。
(2) 不当労働行為の成否
 組合が職場集会を開くことは、適法な組合活動である。しかし、職場集会の開催
それ自体と、そのために庁舎の一部を使用することとは別問題である。職場集会が
適法だからといつて、庁舎の使用までが適法化されるものではない。郵便局の保険
課外務室は、郵便局職員の事務のための建物の一部であつて、公用財産に属する国
有の公物である。郵便局長は、大蔵大臣の権限に由来する公物たる郵便局施設の管
理権を有するから、その一部が公物設置の目的に反して、第三者によつて無断使用
される場合は、その目的に対する障害を除去するため、その排除すなわち解散の通
告をする権限を有する。第三者がいわゆる企業内組合である全逓の支部であつて
も、この理は異ならない。けだし、全逓も、郵便局舎の管理権者からみれば第三者
であるからである。そうすると、P1局長が前認定のとおり無許可集会の解散を命じ
たことは適法な庁舎管理権の行使というべきであるから、組合の運営に対する支配
介入とはならない。
 使用者の発言が不当労働行為となるかどうかは、その発言がなされた時期、場
所、環境、相手方等を総合して組合の運営に対して支配力を及ぼしたかどうかによ
つて決すべきである。前認定によれば、P1局長は、帰りがけに、「新宿支部は革命
の練習をやつている。」と言つたのである。これによれば、P1局長の発言は、いわ
ば独白的になされたものと考えられるから、他に特段の事情のない限り、これによ
り原告組合の運営に対して悪影響を及ぼす程度のものとは解されない。そうする
と、この発言が原告組合の運営を支配すると認めることはできない。
 したがつて、この点に関しては、不当労働行為が成立しない。
(二) 五月一〇日の職場集会妨害について
(1) 事実関係
 休憩時間中の全逓組合員約七・八〇名が昭和四〇年五月一〇日午後零時三五分ご
ろから、集配課休憩室において、職場集会を開いたこと、この集会に休憩室を利用
することについて、特に郵便局管理者の許可を得ていなかつたので、同集会場にP
6次長らがおもむき、再三携帯マイクまたは大声で解散するよう通告したこと、この
集会が一時ごろまで続行されたことは、当事者間に争いない。
 乙第二二号証および乙第三七号証の二ならびに証人P12の証言によれば、郵政省
の就業規則第二一条は、「国有財産の使用に関する取扱いは、次によること」と
し、その第一号は、「組合から組合事務室以外の庁舎の一時的な使用を申し出たと
きは、庁舎使用許可願を提出させ、業務に支障のない限り、必要最小限度において
認めてさしつかえないこと」と定めていること、しかし、新宿郵便局の場合は、昭
和三九年一一月ごろからは、組合が休憩室を集会等に使用する場合は、使用許可願
を提出することなく自由に使用していたこと、しかもこの組合の休憩室自由使用に
ついて、郵便局当局が異議を述べたり、禁止措置をとつたりしたことはないことが
認められる。
(2) 不当労働行為の成否
 休憩室は、その施設設置の目的に徴し、本来職員の自由使用に委ねられている所
である。それを利用する職員が組合員であるからといつて、これを異別に取り扱う
べき理由はない。そして、職員が休憩室を利用する態様は、それが施設に損傷を及
ぼしたり、または排他的であつて他の職員の自由使用をことさら妨げたりしない限
り、使用者によつて制約されるべきものではないのである。その使用が、組合の集
会のためであることと、例えば娯楽のための集会であることによつて、許否を区別
すべき理由はない。現に新宿郵便局の場合には、昭和三九年一一月ごろから組合
は、休憩室を特段に使用許可を受けることなくして使用し、当局もこれについて別
段の禁止措置を講じなかつたのである。これは、集会が休憩室本来の使用目的に背
馳する態様のものではなかつたからと思われる。したがつて、組合の休憩室の排他
的使用によつて、非組合員たる他の多くの職員の休憩室使用が顕著に妨害されると
か、その集会に職員以外の者を導入するとか等休憩室使用目的の障害事由が発生し
ない限り、庁舎管理権の発動としては、その集会の解散を命ずることは許されない
のである。
 そのような特段の事情の存在したことについては、主張立証がない。それなのに
P6次長らは、携帯マイクまたは大声で解散を通告したのである。そうするとこの解
散通告は、必要なものとも、適当なものとも認められないから、適法な職場集会に
対する妨害行為といわざるを得ない。したがつて、これは、組合の運営に対する支
配介入として、不当労働行為を構成する。よつて、この点に関する原告の申立てを
棄却した本件命令は、この部分に関する限り、違法である。
(三) 組合掲示物の撤去について
(1) 事実関係
 命令書理由第二・四3記載の事実は、当事者間に争いない。
(2) 不当労働行為の成否と救済命令の要否
 使用者が組合に掲示板の使用を一旦認めた以上、組合がいかなる内容の掲示をし
ようとも、それは組合の権限に属する。掲示物の貼布について、いちいち使用者の
許可を得なければならない根拠はない。貼布について使用者の許可を得ない組合の
掲示物を、使用者が組合に無断で撤去することは、組合の情報宣伝活動の妨害行為
として、組合の運営に対する介入となる。前認定の事実は、まさにこの場合に当た
るから、P3課長らが掲示物を撤去した行為は不当労働行為を構成する。
 労働委員会は、申立てにかかる事項が不当労働行為と認定できる場合は、救済命
令を発しなければならないが、いかなる内容の救済命令を発するかについては、明
文の規定がないから、労働委員会の裁量に委ねられていると解するより外ない。し
かも、それが行政委員会の命令であることを考えれば、判決のように申立てに拘束
される(民訴一八六条)ものとは解しえないのである。そうすると、労働委員会
は、不当労働行為の態様、程度、その前後の労使関係などを総合的に判断して、過
去になされた不当労働行為の原状回復的な救済または将来同種の不当労働行為が繰
り返されないための予防措置等の方法を命ずることによつて、労使間の不公正を是
正し、正当な労使関係の樹立を期すべきなのである。不当労働行為がなされた場合
に、救済命令を発するかどうかおよびその内容をどうするかについては、以上のよ
うな救済命令の目的に照らし、自ら制約があるのであつて、労働委員会の全くの自
由裁量に委ねられたものではない。もつとも不当労働行為があつても、どのような
救済命令を発することも、法律上も事実上も無意味である場合が存在することを観
念的には認めざるを得ない。このような場合には、申立てを棄却することは、労働
委員会の裁量に属することを法は予定していると考えるべきであろう。法は無意味
なことを要求するものではないからである。しかし、いやしくも不当労働行為の事
実が認定され、それに対して何らかの救済命令を発することが無意味でない場合
は、労働委員会が救済命令を発することを拒むことは許されないのである。これを
拒否することは、労働者救済という不当労働行為制度の目的をじゆうりんし、労働
委員会がその任務を放てきするに等しいからである。
 本件においては、原告は、前記掲示物の撤去を不当労働行為であるとして、被申
立人たる郵政大臣または新宿郵便局長が、(1)速やかに原状回復の措置をとるこ
と、(2)今後一切この種の不当労働行為を行なわない旨の誓約および右不当労働
行為に対する陳謝の意を掲載することの救済命令を求める申立てをしている。撤去
した掲示物の内容は明らかでないが、それがある特定の日に開かれる組合の集会の
告知のようなものであれば、その日時後に原状回復の救済命令を発することは無意
味であろう。しかし、この場合にも、被申立人が今後この種の不当労働行為を行な
わない旨誓約するとか、右不当労働行為に対して原告に陳謝することを命ずる旨の
救済命令を発することは、決して無意味なことではないのである。もつとも、被告
委員会が認定したとおり、郵政省は組合に掲示板の設置を許可した以上、個々の掲
示物の許可は必要でないという取扱いに改めたというならば、将来この種の不当労
働行為をしない旨誓約させることも、無意味であるかもしれない。しかし、掲示物
撤去という明白にして典型的な不当労働行為が厳として存在する以上、陳謝を命ず
る等により救済命令の実効を期することは、決して無意味でも不可能でもないので
ある。この場合、被告は、陳謝という申立ての内容自体には拘束されないとして
も、救済命令を発しないという自由は有しないのである。そうすると、前記掲示物
撤去を不当労働行為と認定しながら、これに対する救済命令を不必要として、原告
の申立てを棄却した本件命令は、その部分に関する限り、裁量を誤つた違法があ
る。
(四) 六月七日および同月一一日の職場集会の監視について
(1) 事実関係
 命令書理由第二・四4および第二・四6記載の事実は、当事者間に争いない。
 乙第三七号証の二、証人P12および同P6の各証言によれば、P3庶務課長および
P24労務担当主事は、六月七日の場合は、五時一五分ごろから集会の終了する五時
四五分ごろまで、六月一一日の場合は午後零時二〇分ごろから集会の終了する零時
五五分ごろまで、集会の場所にとどまり、組合員の発言の内容をメモしたり、集会
の中に割つて入つて大声で解散を求めたりしたこと、従来新宿郵便局においては、
組合が休憩時間中職場集会を開く場合は、業務に支障のない限り、庁舎の一部を使
用しており、管理者はこれに対して特別の異議や禁止措置をとらなかつたこと、前
記集会を開いた四階年賀区分室附近というところは、会議室と称しているが、通常
職員が執務する場所でもないし、事務用品や書類もなく、いわば予備室的なもので
あつたことが認められる。そして六月七日および一一日とも、組合が年賀区分室附
近を集会の場所として使用したことによつて、業務に支障を及ぼしたことの主張立
証はない。
(2) 不当労働行為の成否
 無許可集会によつて庁舎の一部を使用することが、庁舎管理権に抵触するがため
に、郵便局長が庁舎管理権に基づいて、無許可集会の解散を命ずることができるこ
とは、前述したとおりである。庁舎管理権とは、庁舎が国有の場合は、本来財産権
に胚胎する権能であつて、公物たる建物等に損害または危険を及ぼす虞れがある場
合に、その損害または危険を除去または予防するために相当な措置を講ずることを
第一の内容とし、これとともに公物設置の目的に対する障害の防止と除去をも内容
とするものである。一方労働組合の集会は、組合活動として法の保障するところで
ある。わが国のように企業内組合が組合の主流を占めるところにおいては、組合の
集会は、多く使用者の施設を使用せざるを得ないことになる。ここに庁舎管理権と
団結権(組合活動)との相克を生ずる。いかなる権利といえども、絶対的無制約な
ものはなく、他の権利による制約を受忍し、これと両立すべき相対性を内包する。
すなわち、両者の調和の必要性が生ずるわけである。企業内組合の組合活動が庁舎
使用を余儀なくされる場合の多いことを考慮すれば、施設に損害または危険を生ず
る虞れや施設設置の目的に障害を及ぼす虞れのない限り、正当な組合活動に対する
庁舎管理権の発動は、できる限り抑制的であるのが好ましいということになる。
 前認定のとおり、郵政省の就業規則が、組合から組合事務室以外の庁舎の一時的
な使用を申し出たときは、業務に支障のない限り認めてさしつかえない旨規定して
いることと、現に従来は原告組合新宿支部が庁舎の一部を集会等に使用しても、そ
の場所の使用が業務に支障を及ぼさない限り、別段の異議が述べられなかつたこと
は、前記理念に適合した措置といえる。本件においても、組合が使用した四階年賀
区分室附近は普段郵便業務に使用している場所でもないし、また、これを組合の集
会に使用することによつて、新宿郵便局の業務上特別の支障や庁舎に損害を及ぼす
危険等もなかつたのである。そうすると、同局長が組合または集会の責任者に対し
て使用禁止を通告することはともかく、集会の運営そのものを妨害するような挙に
出ることは、庁舎管理権の目的を逸脱したものと解せざるを得ない。集会そのもの
は違法ではないのであるから、集会の中に割つて入つて大声で解散を叫ぶとか、組
合員の発言の内容をメモする等は、管理権の行使としては行き過ぎである。殊に、
労働組合の集会は、個々の労働者の意思を組合の運営に民主的に反映するための最
良の手段である。そのため、集会においては、組合員の自発的意思決定と自由な発
言が保障されなければならない。労働者が労働組合のために正当な発言をしたこと
によつて不利益な取扱いを受けてはならないことは、法律的には確立しているが、
実際には、職制監視の下の組合集会において個々の労働者が不利益取扱いを恐れる
ことなく、自由な組合活動的発言をすることを期待できるほどには、言論の自由の
保障や民主主義の理念は、わが国社会一般には浸透していない。このような社会に
おいては、職制が組合集会を監視することは、組合の構成員としての労働者の自主
的な意思決定と自由な発言を阻害し、組合の運営に影響を及ぼすことになるから、
組合運営への支配介入となるのである。本件においては、P3課長らは、ほとんど終
始集会の状況を監視し、組合員の発言をメモしたりしているのである。組合員の発
言をメモすることは庁舎管理権とは、ごう末も関係がない。ここに至つて、P3課長
らの前記行為は、組合の運営に対する介入と解さざるを得ないのである。したがつ
て、この行為が不当労働行為に当たらないとして、原告の申立てを棄却した本件命
令は、この部分に限り違法である。
(五) 郵政労新宿支部への掲示板の供与について
(1) 事実関係
 命令書理由第二・四5記載の事実は、当事者間に争いない。
(2) 不当労働行為の成否
 掲示板は、組合の情報宣伝活動のために必要な施設である。組合員数の多少によ
つて、情報宣伝活動の必要性や規模に差を生ずる必然性はない。したがつて、郵政
労新宿支部に全逓新宿支部と同一大の掲示板を供与したことは、後者に対する不当
労働行為とはならない。使用者から見れば、企業内に複数の組合がある場合には、
その間に実質的な差別取扱いをしてはならないというのが鉄則であり、両者を差別
して取り扱うところに不当労働行為発生の契機がある。原告の言い分は、組合員数
に比例して掲示板の大きさを決めるべきであるということのようであるが、それこ
そ、郵政労新宿支部への不当労働行為を誘発する虞れがあつて、とうてい採用に値
しない所論である。
(六) 庁舎使用に関する差別取扱いについて
(1) 事実関係
 命令書理由第二・四7記載の事実は、新宿郵便局が食堂を他の目的になるべく使
用しない方針であつたことを除いて、その余の事実は、当事者に争いない。
(2) 不当労働行為の成否
 右の事実によれば、使用願の対象たる場所が、全逓新宿支部においては食堂であ
り、郵政労新宿支部においては貯金課外務室であるし、前者は集合人員が一五名で
組合事務室が供与されているのに、後者は集合人員が二〇名であるのに組合事務室
が供与されていない等、諸条件が違つている。この場合は、異なつた条件の下で異
なつた取扱いをすることは、一理があると考えられる。これを差別取扱いというた
めには、他の特別の事情がなければならないから、右の事実だけでは、これを不当
労働行為ということはできない。
七 以上により、本件命令中、(1)P1局長が昭和四〇年五月一三日貯金募集打合
会でした発言、(2)同局長が同月一六日自宅においてした郵政労への加入しよう
よう、(3)同局長が同年四月二〇日同局長室において臨時補充員P2らにした発言
(4)同年五月一〇日の原告組合新宿支部の職場集会に対する妨害(5)同年六月
七日の同支部の職場集会に対する監視および(6)同月一一日の同支部の職場集会
の監視がいずれも不当労働行為を構成しないとして、ならびに(7)同月一〇日同
支部の組合掲示物を撤去した行為に対して救済命令を発する必要がないとして、こ
れらの点に関する原告の救済申立てを棄却した部分を違法として取り消し、原告の
その余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九
条、第九二条本文、第九四条後段を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岩村弘雄 安達敬 飯塚勝)
(別紙)
 命令書
公務委昭和四〇年(不)第二号
昭和四二年二月一三日命令
申立人 全逓信労働組合
被申立人 郵政大臣外一名
       主   文
 本件申立を棄却する。
       理   由
第一 申立ての概要
 申立人は、被申立人側が、
 全逓信労働組合(以下全逓という。)新宿支部を破壊しようと企て、
1 新宿郵便局職員に対し、全逓に加入しないことまたは全逓から脱退すること、
あるいは新生会または郵政労働組合(以下郵政労という。)に加入するようしよう
ようする等し、
2 全逓組合員を新生会会員または郵政労組合員より人事管理のうえで不当に差別
的に取り扱い、
3 全逓新宿支部の職場集合を妨害したり、同支部の掲示物を一方的に撤去する等
して、申立人組合の運営に介入したが、これらは、労働組合法第七条第三号の規定
に該当する不当労働行為であるとして、本件申立てを行なつた。
 これに対し、被申立人は、申立ての棄却を求めた。
第二 当委員会の認定した事実
一 背景事実
1 昭和三八年七月、郵政省は、簡易保険積立金を都道府県を通じて特定郵便局長
に貸し付け特定郵便局の局舎を改善する措置(以下簡保転貸債という。)を実施す
ることとした。
 全逓は、この措置に反対し、年末斗争ともからめて長期にわたり斗争を行なつ
た。
 このため、同年末には、約一カ月間三六協定が結ばれない状態がつづいた。
 一二月二〇日、全逓新宿支部組合員P23、P24、P25、P26、P27、P28ら六十
数名が、この全逓の斗争を批判して、「簡保転貸債問題は一まず棚上げし、年末斗
争を早期に終結せよ。」、「公衆の迷惑を考え三六協定を締結せよ。」、「全逓幹
部は、下部組合員並びに家族の困窮をみつめよ。」と抗議声明を発した。
2 昭和三九年七月、新宿郵便局(東京都新宿区)局長にP1が任命された。当時の
新宿郵便局は、郵便物が相当滞留していたので、同局長は職場規律を確立し、郵便
業務の正常運行を図ることが必要であると考え、勤務時間の厳守、服務の厳正を期
するとともに施設の改善等諸施策を講じた。
3 昭和三九年一二月一〇日、新宿郵便局の課長代理、主事ら二十数名が新宿郵便
局附近のいでゆ旅館に集まり、親睦を図るために三九会を結成し、引きつづき同旅
館で忘年会を行なつた。この忘年会には、P1局長、同局次長P6および各課長らが
招かれて出席した。その際、P1局長は、新宿は郵便事情が悪いので自分も一生懸命
やるから諸君も協力してほしい旨の挨拶をした。
 なお、同局長および同次長は、昭和四〇年二月初旬に行なわれた同会の新年会に
も招かれて出席した。
4 昭和四〇年三月二五日、全逓組合員P10、P19、P8ら十数名が新宿郵便局附近
の相模屋旅館に集まり、新宿郵便局の職場を明るくすることを標榜して、新生会の
結成準備会を開き、同会会長にP19、同副会長にP29を決めた。同人らは、四月五
日四谷ユースホステルで新生会の結成大会を開いた。この大会において決定された
新生会会則によると、同会は、「管理者および全逓組合員を除く」新宿郵便局職員
で構成し、「会員の親睦と社会的地位の向上および労働条件の維持改善をはかり新
宿郵便局の職場を明朗にすることに寄与する」ことを目的としていた。同日、同人
らは、新宿郵便局有志の名で、全逓新宿支部長P30に対して、最近における同支部
の運営と行動には全く常軌を逸したものが多く、看過し得ないものがあるとして、
「公衆に迷惑をかける能率ダウンをやめさせよ。」、「公衆のひんしゆくをかうよ
うな被服の不正常な着用、言動を改めさせよ。」、「三六協定をかるがるしく斗争
の具に供するな。」、「役員は総退陣し民主的、建設的な組合に改組すべきこ
と。」その他数項目について申し入れ、これが直ちに実行されない場合には、同人
らは独自の判断にもとづき断固たる行動に出ざるを得ないことを附言した。四月一
九日に至つても回答がなかつたので、同日、新生会会員の大部分の者は全逓脱退の
手続をとつた。
5 昭和四〇年四月七日、全逓東京地区本部副執行委員長P31らが、P1局長に会見
し、同副執行委員長が、「職場を明るくする会ができたようだがどうなんだ。」と
質問したのに対して、同局長は、「私はビラをみて知つたが職場を明るくする会の
趣旨は結構だと思う。」と答え、さらに同副執行委員長が、「組合が二つできたり
なんかすると局長もやりにくいでしよう。どう思いますか。」と質問したのに対し
て、同局長は、「仕事をまじめにやろう、きちんとやろうということについては大
賛成です。」、「私が新生会をどうするわけにもまいりません。」と答えた。
6 昭和四〇年六月一日、郵政労新宿支部が、組合員約六〇名をもつて結成され、
新生会会員の大部分の者はこれに加入し、全逓新宿支部の組合員は約四七〇名とな
つた。
二 全逓脱退・新生会加入しようよう等関係
(一) 全逓脱退しようよう・新生会加入しようよう等について
1 P5職員に対する新生会入会のしようようについて
 申立人は、全逓組合員である保険課職員P5が、四月二四日の昼ごろ洗面所で、P
6次長から新生会へこないかといわれたと主張するが、その事実は認められない。
2 P7職員に対する新生会入会しようようについて
 申立人は、全逓組合員である保険課職員P7は、五月五・六日ごろ、新生会会員で
ある貯金課職員P8から新生会に加入するようすすめられたが、その後庶務課長P
3から、五月一七日および同月二〇日に、「この間のP8さんの話はどうするん
だ。」、「新生会に入るのか、入らないのか。」とただされたと主張する。
 しかしながら、五月五・六日ごろ、P7職員は、新宿郵便局附近の河野酒店におい
て、新生会会員であるP8職員に新生会への入会をすすめられたこと、五月一七日午
後七時ごろ、P7職員は、新宿郵便局の廊下でP3庶務課長に会つたが、その時P7職
員はかなり酒を飲んでおり同課長に、「上官殿、私は覚悟をしました。ゆうべ家内
と相談したところ家内も賛成してくれたので新生会に入ります。」といつたことお
よび五月二〇日午後五時ごろ、P3庶務課長が課長席にP7職員を呼んで、お酒を飲
んで局内に入ることはよくないと注意をしたことは認められるが、申立人が主張す
る発言を、P3庶務課長がしたとは認められない。
3 P1局長の貯金募集打合会での発言について
 申立人は、五月一三日、P1局長が、貯金課外務室で開かれた職員の貯金募集打合
会に出席し、新生会を賞め全逓に加入しないようすすめたと主張する。
 しかしながら、五月一三日の貯金募集打合会の席上、同局長が、「新生会の会員
の家庭を訪問して新生会から抜けださなければ、宿舎に入れないようにするとか、
脅迫めいたことが行なわれているらしいが、お互いにゆきすぎのないようしなさ
い。」と話したことその他五月一〇日の職場集会会場での全逓新宿支部P12書記長
のけがにふれて、「このけがは、組合はP6次長の暴行によるものであるといつてい
るが、実は自分で郵袋につまずいて倒れたのであつて決して次長が暴行を働いたも
のではない。」と話したことは認められるが、申立人が主張する事実があつたとは
認められない。
4 P43職員に対する新生会入会しようようについて
 申立人は、五月一三日ごろ、新生会会員である第一郵便課課長代理P10が、全逓
組合員である同課職員P43に対し、新生会に加入するようしようようしたが、その
際、第一郵便課長P9が、同人に対し、「いい話だからよく聞いて考えた方がよ
い。」と述べたと主張するが、これについてはなんらの立証がない。
5 局長自宅における郵政労加入のしようようについて
 五月一六日(日曜日)昼ごろ、第一郵便課P10課長代理は、同課臨時補充員P
33および同P22から、「局長に遊びに来ないかといわれているので局長の家へいき
たいと思うけれども一緒に案内してくれないか。」といわれ、同課長代理は局長の
家を知らなかつたので、これらについてP9第一郵便課長に話した。同課長は、第一
郵便課には新規採用者で大学卒は、P33、P22両職員のほかにP11職員がいるか
ら、P11職員も誘つていつたらどうかとP10課長代理にすすめ、P11職員にもすす
めた。同日午後七時半すぎ、P10課長代理は、P1局長自宅にこれから若い者を二・
三名連れていくと電話し、P33、P22およびP11職員の三名とともにタクシーで午
後八時半ごろP1局長自宅(東京都品川区<以下略>)に着いた。その時先客として
集配課のP34課長代理(郵政労組合員)、P35、P36、P18およびP37職員の四名
の統括責任者(当時、P35、P36およびP18職員は、全逓新宿支部に脱退届を出し
ており、P37職員は、全逓組合員であつた。)が来ており、六畳の部屋で酒肴を並
べて歓談中であつた。P1局長は、P10課長代理ら四名を同席させたが、同課長代理
は、「ここに集まつた者は同じ考えの者で、私と同じ第一郵便課に勤務している者
です。」といつてP11職員らを紹介した。P1局長はすぐにみんなに酒をすすめた。
その席上、同局長は、「郵政事業は三代しなければ一つの仕事を達成できないと私
は考えている。全逓の斗争主義者たちは三代かからなければできないことを破壊す
る。」との旨発言した。しばらくたつたあと、P10課長代理は、P11、P22両職員
に郵政労加入届をくばつて、「君達三名で臨時補充員を郵政労へ入れてくれ。」と
要請した。P22職員はその場で加入届にサインしたが、P11職員は、「これはどう
いうことですか。」といつたところ、P1局長は、「これは郵政省の正規の組合
だ。」と発言した。P11職員が、「しばらく研究さして下さい。」といつたら、P
1局長は、「ええ、」とうなずいた。
 午後九時すぎ、前記P34課長代理ら五名の集配課職員は、局長自宅を辞去した。
P10課長代理ら四名は午後一一時ごろ辞去し、P1局長の息子の運転する同局長の私
用車で新宿駅まで送つてもらつた。その車中、P10課長代理は、「新生会のバツク
がわかつたろう。」と述べた。
6 職員の父兄の呼出しについて
 五月二一日、P1局長は、集配課臨時補充員P4(全逓組合員)、同P20ら一〇名
の職員の父兄に対し、同人らの勤務振り等について問題があるので来局されたい旨
手紙で依頼した。五月下旬から六月にかけて、前記職員の父兄ら八名が来局し、局
長室または次長室で局長または次長、庶務課長および集配課長がこれら父兄らと個
別に面接した。
 申立人は、この際、P1局長らが、前記父兄らにその子弟を組合に入らせないよ
う、または組合から脱退させるようすすめ、もし応じなければ本務採用しない、あ
るいは研修所への入所遅延もありうる旨示唆したと主張するが、申立人申請にかか
るP4証人もそのような趣旨の証言をしておらず、申立人が主張する事実があつたと
は認められない。
(二) 全逓の誹謗・郵政労の賞揚等について
1 P2職員らに対する局長の発言について
 P1局長は、昭和四〇年四月二〇日午前九時ごろから二・三十分間、集配課の臨時
補充員であるP2、P38、P39、P40、P41およびP42を局長室に呼んで話をした。
申立人は、P1局長がこのとき全逓を誹謗し、新生会の前身である職場を明るくする
会を賞揚したと主張する。
 しかしながら、P1局長は、この際、「仕事になれたか。」ときりだし、自己の少
年時代の苦労話をしたあと、「組合に入りましたか。一度組合に入るとなかなかで
られなくなるから、入るんだつたらよく考えて入りなさい。」、「職場でも休憩室
でも暗くなつてしまうほどビラがはつてある。職場の中でもゴタゴタしている。」
という趣旨の話をしたことは認められるが、申立人が主張する事実があつたとは認
められない。
2 P12書記長およびP13執行委員についての誹謗について
 申立人は、五月五日、集配課長P14が、全逓組合員である同課職員P4を課長席に
呼んで、全逓新宿支部P12書記長および同支部P13執行委員を誹謗したと主張す
る。
 しかしながら、P14集配課長が、P4職員を課長席に呼んで、作業態度について注
意を与えたことおよびその際、同課のP13職員(全逓新宿支部執行委員)とP15職
員(全逓新宿支部青年部副部長)を引き合いにだし、「ああいう人達の態度が悪い
から見習つてはいけない。」という趣旨の注意をしたことは認められるが、これは
執務上のことについて注意を与えたものにすぎない。
 なお、同課長がこの際、P12書記長の名をあげたという事実は認められない。
3 P15青年部副部長およびP13執行委員の誹謗について
 申立人は、六月一五日、P14集配課長が、全逓組合員である同課職員P15(全逓
新宿支部青年部副部長)およびP4が局内で作業中大声で、P15青年部副部長および
P13執行委員を誹謗したと主張する。
 しかしながら、この点については、P14集配課長が「P15だとか、P13だとか一
回まわるのに何日かかるんだ。」といつた事実は認められるが、これは両人の執務
態度に注意を与えたものにすぎない。
三 差別人事関係
1 P16執行委員およびP17職員の配置換えについて
 P1局長は、昭和四〇年三月一日付で全逓新宿支部執行委員P16を第一郵便課通常
係から保険課内務係に、五月三一日付で同支部の元支部長であつたP17を第一郵便
課窓口係から同課特殊係に、それぞれ配置換えした。
 申立人は、これらの配置換えは組合活動を困難ならしめるためのものであると主
張するが、これについては立証がない。
2 P18職員の統括責任者への任命について
 P1局長は、四月二一日付で新生会会員である集配課主任P18を同課の班の統括責
任者に任命した。
 これは、同職員が当該班の主任中の最古参であつて、順当な人事であるというべ
く、同職員が新生会会員であつたがためになされた措置とは認められない。
3 P19職員の昇任について
 新生会会長である第一郵便課主任P19は、五月一四日付で主事に任命された。
 これは、同職員の勤務成績にもとづいて行なわれたものであつて、同人が新生会
会長であつたがためになされた措置とは認められない。
4 研修所への入所遅延について
 申立人は、P1局長が、臨時補充員P4、同P20、同P11および職員P21に対し同
人らが全逓組合員であること、あるいは新生会に加入しないことを理由に慣例を無
視して、研修所への入所を遅らせたと主張する。
 P4およびP20職員は、昭和三九年八月、新宿郵便局に臨時補充員として採用され
たものであり、当時同局においては、採用後ほぼ六・七カ月後に研修所へ入所する
のが通常であつたが、両職員は、採用後約一一カ月後の昭和四〇年七月に研修所
(初等部訓練)に入所したことは、被申立人も認めるところである。
 しかしながら、研修所への入所は、将来本務者に任命換えすることが適当である
と認められる勤務成績良好な者に対して行なわれるものであつて、P4職員およびP
20職員の研修所入所が通常の場合よりも遅れたのは、両職員の勤務成績が良好でな
いと当初認められたためである。
 P11職員は、昭和四〇年三月、新宿郵便局に臨時補充員として採用されたもので
あり、大学卒で、ほぼ同じごろ同局に臨時補充員として採用されたP33仲義および
P22とともに、七月七日に研修所入所予定になつた。
 このことは、P9課長が六月二〇日同職員にあらかじめ内示しておいたところであ
る。ところが同職員は、六月二九日および三〇日の両日年次有給休暇の承認を得
て、郷里の長野に帰つていた。休暇期間がすぎても出勤しなかつたのでP9課長が、
七月一日および同月三日に電報でP11職員に出局を命じたがなんら返事がなかつ
た。七月六日に至つてP11職員の兄から、「扁桃腺炎のためあとわずかよろしくた
のむ。」との返電があつたので、局では、翌日の入所に間に合わないとみてこれを
取り消したことが認められる。
 P21職員は、昭和三九年四月採用と同時に初等部郵便外務特別訓練研修員として
研修所に入所しているのであつて、入所遅延の事実は認められない。
四 職員集会の妨害、掲示物の撤去等関係
1 四月二〇日の職場集会妨害について
 昭和四〇年四月二〇日午後五時ごろから、保険課外務室において、全逓組合員約
六〇名が職場集会を開いた。この集会は、外務室利用について郵便局管理者の許可
を得ていなかつたので、同集会場にP1局長、P6次長およびP3庶務課長らがおもむ
き解散するよう通告したが、この集会は、五時一〇分ごろまで続行された。
 申立人は、その際、P1局長らがP12書記長の身体を押して、同人を室外へ追いだ
そうとしたり、「全逓は革命の練習をしている。」と叫んで集会を妨害したと主張
する。
 しかしながら、P1局長らが、組合幹部に対して解散するよう強く指示したことは
認められるが、申立人が主張する事実があつたとは認められない。
2 五月一〇日の職員集会妨害について
 五月一〇日午後〇時三五分ごろから、集配課休憩室において、休憩時間中の全逓
組合員約七・八〇名が、職場集会を開いた。この集会は、休憩室利用について、郵
便局管理者の許可を得ていなかつたので、同集会場にP6次長、P3庶務課長および
P14集配課長らがおもむき、再三携帯マイクまたは大声で解散するよう通告した。
この集会は、一時ごろまで続行された。
 この解散通告に対して、組合員が抗議した。P12書記長はマイクで解散を通告し
てる管理者の方へ向つていつたが、郵袋につまづいて倒れてけがをした。
3 組合掲示物の撤去について
 六月七日ごろ、新宿郵便局一階通用口附近にある全逓新宿支部の掲示板に、当局
の許可を得ないで同支部の掲示物が貼布されていた。六月八日、P3庶務課長は、P
30同支部支部長に対し、許可を得ていないという理由でこれを撤去するよう申し入
れた。さらに六月九日同課長は、組合が応じなければ局側で撤去する旨口頭で通告
したが、同支部がこれに応じなかつたので、六月一〇日、P3庶務課長および庶務課
労務担当主事P24が、掲示物を撤去した。
4 六月七日の職場集会の監視について
 六月七日午後五時ごろから、四階年賀区分室附近において、全逓組合員約八〇名
が職集会を開いた。この集会は、年賀区分室利用について、郵便局管理者の許可を
得ていなかつたので、五時一五分ごろ同集会場にP3庶務課長およびP24労務担当主
事らがおもむき解散するよう通告したが、この集会は、五時四五分ごろまで続行さ
れた。P3庶務課長らは、組合員が解散するか、勤務時間中の者がいないかをみきわ
めるため同集会場にとどまつたが、これによつてこの集会の運営が影響をうけたと
は認められない。
5 郵政労新宿支部への掲示板の供与について
 六月八日、郵政労新宿支部からの申し出により、P1局長は、同支部に全逓新宿支
部のものとほぼ同一大の掲示板を供与した。当時の新宿郵便局における郵政労の組
合員数は約六〇名であつたのに対し、全逓の組合員数は約四七〇名であつた。
6 六月一一日の職場集会の監視について
 六月一一日正午ごろから、四階年賀区分室附近において、全逓組合員約一二〇名
が、組合掲示物撤去に対する抗議集会を開いた。この集会は、年賀区分室利用につ
いて郵便局管理者の許可を得ていなかつたので、午後〇時二〇分ごろ同集会場にP
3庶務課長らが、おもむき解散するよう通告したがこの集会は〇時五五分ごろまで続
行された。P3庶務課長らは、組合員が解散するか、勤務時間中の者がいないかをみ
きわめるため、同集会場にとどまつたが、これによつてこの集会の運営が影響をう
けたとは認められない。
7 庁舎使用に関する差別取扱いについて
 六月一四日の昼ごろ、全逓新宿支部業対部長P16から、当日の午後五時半から九
時までの間の食堂の使用許可願がだされた。
 P3庶務課長は、使用目的が職場集会でかつ集合人員が一五名とあるのをみて、P
16業対部長に、「それ位の人数なら組合事務室(約二〇平方メートル)でできるの
ではないか。組合事務室でやりなさいよ。」といつて、使用許可願を同人に返し
た。P16業対部長は何もいわず、これを持ち帰つた。
 なお、食堂は夜間勤務者に対する給食等の必要もあり、新宿郵便局としては、他
の使用目的になるべく使用許可しない方針であつた。
 他方、六月一四日の昼ごろ、郵政労新宿支部から、当日の午後五時半から六時半
までの間の貯金課外務室の使用許可願がだされた。P3庶務課長は、使用目的は組合
事務で集合人員は二〇名であつたが、同支部には、組合事務室を供与してなく、さ
らに業務に支障がないと認めたので、これを許可した。
第三 当委員会の判断
一 全逓脱退・新生会加入しようよう等関係
1 局長自宅における郵政労加入しようようについて
 第二・二・(一)5で認定したとおり、P10課長代理(郵政労新宿支部結成の中
心人物)が、P1局長の自宅で、P11職員らに郵政労加入のオルグ活動を行なつたこ
とは事実である。
 申立人は、P1局長が、P10課長代理と共謀して、P11職員らに郵政労に加入する
ようしようようしたと主張したが、これについての立証はなく、そのような事実は
認めることができない。申立人も最終陳述書においては、P1局長はP10課長代理の
郵政労のオルグ活動に積極的に協力したと主張するに至り、その具的体事実として
P1局長の自宅における同局長の言動を指摘する。
 P10課長代理がいずれの組合にも属していないP11職員らに対するオルグ活動を
行なうについて、局長自宅の酒食の席を利用したことは疑惑をまねく軽卒な行為で
あるが、局長がこれを制止しなかつたことあるいは局長のこの際の発言をもつて全
逓の運営に介入したということはできない。
2 その余の点については、第二・二・((一)・5を除く)で認定した事実に徴
し、当局が全逓の運営に介入したものとはいえない。
二 差別人事関係
 申立人は、P16執行委員およびP17職員の配置換えは、組合活動を困難ならしめ
るための措置であると主張し、またP19職員およびP18職員の昇任等の措置は、同
人らが新生会の会長または会員であるためになされた措置であると主張するが、第
二・三・1から3までに認定した事実に徴し、その主張は認められない。
 申立人は、被申立人が、臨時補充員P4らを同人らが全逓組合員であることあるい
は新生会に加入しないことを理由として、それらの者の研修所への入所を遅延せし
めたと主張するが、第二・三・4で認定したとおり、P4およびP20職員について
は、同人らの勤務成績によつて入所が遅れたものであり、P11職員については、同
人が無断欠勤によつて入所に間に合わなかつたため入所を取り消されたものであ
り、さらにP21職員については入所遅延の事実はないので、申立人の主張は認めら
れない。
三 職場集会の妨害、掲示物の撤去等関係
1 四月二〇日および五月一〇日の職場集会妨害について
 申立人は、被申立人が、これら職場集会を不当に妨害したと主張するが、第二・
四・1および2で認定した事実に徴し、その主張は認められない。
 なお、当局の許可を得ないで局庁舎内で行なわれた集会に対して、当局が解散す
るよう通告することが集会に対する不当な妨害といえないことは当然である。
2 六月七日および六月一一日の職場集会監視について
 申立人は、被申立人がこれらの職場集会を監視して運営に介入したと主張する
が、第二・四・4および6で認定した事実に徴し、その主張は認められない。
3 組合掲示物の撤去について
 当局は、第二・四・3で認定したとおり、全逓新宿支部の掲示物を撤去した。申
立人は、この組合掲示物の撤去は組合の運営に対する介入であると主張してその救
済を求めている。
 当局が、組合掲示板を認めながらも、これに掲示する物について事前に許可を要
求することが妥当でないことおよび掲示された掲示物を無許可であるという理由で
撤去してしまうことが組合の運営に対する介入にあたることは、すでに当委員会が
昭和四〇年三月八日命令第二七号(郵政省延岡郵便局事件)において示したところ
であり、本件は、これにあたるものであるが、その後、郵政省は、この取扱いを、
組合に掲示板の設置を許可した以上、個々の掲示物については許可は必要でないと
いう取扱いに改め、全逓もこの措置を了承し、今日に至つている。したがつて、こ
れは解決している問題であつて救済命令を発する必要はない。
4 郵政労新宿支部への掲示板の供与
 申立人は、当局が郵政労に対して全逓と同じ大きさの掲示板を供与したことが、
全逓の運営に対する介入であると主張する。
 しかしながら、組合員数の少ない組合に対して、組合員数の多い組合と同じ大き
さの掲示板を供与してはならないという理由はない。
5 庁舎使用に関する差別取扱いについて
 申立人は、被申立人が、全逓新宿支部の食堂使用許可申請を拒否しながら、郵政
労新宿支部に対しては貯金課外務室の使用を許可したことは全逓の運営に対する介
入であると主張するが、第二・四・7で認定した事実に徴し、その主張は認められ
ない。
 よつて当委員会は、公共企業体等労働関係法第二五条の五第一項および第二項な
らびに公共企業体等労働委員会規則第三四条を適用して、主文のとおり命令する。

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