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平成一二年(行コ)第五〇号 特許料納付書却下処分取消等請求控訴事件(平成一二
年九月一四日口頭弁論終結。原審・東京地方裁判所平成一一年(行ウ)第一六二
号)
         判    決
          控  訴  人     A
          控  訴  人     B
          両名訴訟代理人弁護士  木   村   峻   郎
                      大   橋   英   樹
              復代理人弁護士 田   瀬   英   敏
          被 控 訴 人     特許庁長官 C
          指定代理人       D
                      E
                      F
                      G
         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人らの負担とする。
         事実及び理由
第一 控訴人らの求めた裁判
「1 原判決を取り消す。
 2 (本件第一請求)特許番号第一九七一七六二号の特許権に係る第四年分特許
料納付書について被控訴人がした平成一一年一月四日付け却下処分を取り消す。
 3 (本件第二請求)平成一一年三月一二日付け行政不服審査法に基づく異議申
立てについて被控訴人がした却下決定を取り消す。」
 との判決。
第二 事案の概要
 原判決の事実及び理由中の「第二 事案の概要」の項に示されているとおりであ
る。本件は、控訴人らの共有していた本件特許権が特許料の納付期限の徒過により
登録を抹消されたため、特許料の追納により本件特許権の回復を図ろうとして、控
訴人Aが単独で本件納付書を提出したことに係る事案である。
第三 当裁判所の判断
 当裁判所も、本件第一請求に係る訴えは、訴訟要件を欠く不適法な訴えであり、
本件第二請求は理由がないものと判断するものであるが、その理由は、控訴理由に
即して次のとおり判断を付加するほか、原判決の事実及び理由中の「第三 争点に
対する判断」の項に示されているとおりである。
 一 控訴理由(要点)
 1 原判決は、「原告A(控訴人A)による本件納付書の提出は、存在しない特
許権について特許料を納付しようという行為であり、法律的に何ら意味のないもの
であるが、特許法一一二条の二が規定するところの、特許料の不納付により消滅し
たとみなされた特許権の回復を求めるための特許料の追納に当たると解することが
できる。そうすると、本件異議申立ての実質は、消滅した本件特許権の回復を求め
るものであって、共有者全員の有していた一個の権利の成否を決めるものであるか
ら、共有者全員につきこれを合一に確定する必要があると解するのが相当であ
る。」と判断するが、特許法一一二条の二に対応するパリ条約五条の二第一項の規
定によれば、特許法一一二条の二は特許権の存続に関する規定であり、そこに規定
する特許料の追納は、特許権の存続を図るためのものとして、共有の保存行為にほ
かならない。
 2 仮に、特許料の追納が遡及的に失効した特許権の回復を求めるものであると
しても、それは従前認められていた内容、範囲において当該特許権を回復するもの
であり、回復に当たって、権利の内容、範囲の変更を伴うものではない。
 このような権利の回復を共有者の一部が単独で行い得るものとしても、他の共有
者には影響はなく、特許料の追納は、共有者全員ですることまで要求されておら
ず、異議申立てについても、共有者全員による行使は求められていないと解すべき
である。特許権の処分や内容の変更に相当し、共有者の利害関係に重大な影響を及
ぼす審判の請求とはその性格が大きく異なる。
 特許権を従前どおりの内容で将来にわたって保有する意思を有していると解すべ
き他の共有者の合理的意思解釈によっても、共有者のうちの一部の者が異議申立て
を行ったとしても、他の共有者にとって何らの問題はない。
 3 さらに、本件異議申立てが不適法なものであったとしても、被控訴人は、行
政不服審査法二一条に基づき、控訴人らに対して相当の期間を定めて補正を命じな
ければならないのに、この補正を命じなかった。本件異議申立てが不適法とされた
理由は、控訴人Bが申立人に名を連ねていないというものであるが、このような手
続要件の不備は、補正可能なものである。したがって、被控訴人の本件処分(本件
第一請求に係る却下処分)は違法なものであって、本件第一請求及び第二請求は認
容されるべきである。
 二 控訴理由に対する判断
 1 控訴人らの控訴理由1の主張の骨子は、特許法一一二条の二で規定されてい
るのは共有の保存行為にほかならないというものであるが、特許法一一二条の二が
規定するところが、特許料の不納付により消滅した特許権の回復を求めるための特
許料の追納による特許権の回復であって、その効果は保存行為の範疇を超えるもの
であることは明らかである。控訴理由1の主張は採用することができない。そし
て、この追納によって他の共有者に影響がないということもできないから、これに
反するところを前提にする控訴理由2も採用することができない。
 2 行政不服審査法二一条所定の「審査請求が(中略)補正をすることができる
ものであるとき」とは、当該審査請求人(本件では異議申立人である控訴人A)に
対して補正を命じ得るものであるときと解すべきであり、他の審査請求人(異議申
立人。本件ではB)を補充することは、右事由には該当しない。したがって、本件
異議申立てが不適法とされた事由に関する補正は不可能なものであって、控訴理由
3も採用することができない。
第四 結論
 よって、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第一八民事部
         裁判長裁判官    永   井   紀   昭
            裁判官    塩   月   秀   平
            裁判官    橋   本   英   史

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