弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主      文
原判決を破棄する。
被告人を禁錮1年8月に処する。
    当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
        理      由
 本件控訴の趣意は,検察官瀬戸真一作成の控訴趣意書に,これに対する答
弁は,弁護人八幡敬一作成の答弁書に,それぞれ記載されているとおりである
から,これらを引用する。
 論旨は,要するに,原判決は,検察官の禁錮2年6月の求刑に対し,「被告人
を禁錮2年6月に処する。この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予す
る。」とし,執行猶予を付したが,その量刑は,刑の執行を猶予した点において
著しく軽きに失し不当である,というのである。
 そこで,検討するのに,本件は,被告人が,平成12年8月18日午後零時こ
ろ,小樽市内の路上を普通乗用自動車を運転して時速約65キロメートルで走
行中,進路前方の横断歩道に設置された押しボタン式信号機の対面信号が黄
色を表示しているのを,その横断歩道の停止線の手前約95.8メートルの地点
において認めながら,速度を上げれば,対面信号が黄色を表示している間に通
過することができると考え,その信号表示に注意しないまま時速約75キロメート
ルないし80キロメートルに加速して進行した過失により,横断歩道上を信号に
従って歩行していた被害者A(平成8年8月24日生。当時3歳)に自車を衝突さ
せ,その直後に同人を死亡させた,という原判示のとおりの事案である。
本件事故を引き起こした被告人の過失はあまりにも重大といわなければなら
ない。被告人は対面信号が黄色を表示しているのを90メートル以上も前の地点
から認めていたのであるからこれに従って減速をすれば,横断歩道の手前で安
全に停止することが十分できたはずであるのに,若干制限速度を越えて走行し
ていた自動車の速度を更に上げて走行し,青色信号の表示に従って横断を開
始した被害者に衝突したのである。被告人は,速度を上げれば対面信号機が赤
色を表示する前に横断歩道を通過することができると考えたというのであるが,
被告人が黄色信号を認識した地点は前記のとおり横断歩道まで相当の距離が
あったのであって,黄色信号が表示されている間に横断歩道を通過することは
到底不可能だったのであり,本件は,自動車運転者として最も基本的な注意義
務を怠った極めて危険な無謀運転であったといわなければならない。しかも,被
告人は,この付近に押しボタン式信号機と横断歩道が設置されていることを以
前から知っており,黄色信号を認識する少し前から被害者とその母親と思われ
る女性が道路左側歩道の押しボタン式信号機の付近に立っているのを認めて
いたというのであるから,その無謀運転ぶりは際だっているといってよい。被告
人は,本件事故当時,空腹で食事を急いでいたなどというが,このような事情で
本件のような危険な運転をすることが許されないことは余りにも明らかである。
そして,本件事故の結果もまことに悲惨で重大なものである。被害者は,母親
と一緒に買い物に行く途中,その母親の目の前で,事故に遭遇し,4歳の誕生
日を1週間後に控えて,無限の可能性を秘めたその前途を一瞬にして奪われて
しまったのであり,まことに哀れである。被害者を養育し,その成長を楽しみに見
守ってきた両親の悲嘆と絶望には察するに余るものがある。未だ,被告人を許
す気になれず,厳しい処罰感情を抱いているのも理解できるというべきである。
 更に,被告人に速度違反による交通前歴が3件,罰金前科が1件あり,日ごろ
の運転態度も芳しいものではなかったことがうかがわれる。
 これらの諸事情に照らすとき,被告人の刑事責任を軽視することは許されない
というべきである。
 他面において,被告人の妻が現行犯逮捕された被告人に代わって被害者の
通夜,告別式に出席し,仏前に香典を供え被害者の冥福を祈ったこと,被告人
が,本件犯行を深く反省し,釈放された後,妻と共に度々被害者の両親の下を
訪れて謝罪し,面会を拒絶された後は妻と共に毎月の命日に本件事故現場に
供花をして被害者の冥福を祈っていること,被告人の勤務先会社の上司が,通
夜,告別式に参列して供花し,初七日と四十九日にも弔問するなど誠意を示し
たこと,被告人は,原審及び当審公判廷において,今後一生車を運転をするつ
もりはないと述べるなど反省の態度を示していること,被告人と被害者の両親と
の間に未だ示談は成立していないが,被告人の勤務先会社が保有する本件車
両には対人無制限の保険がかけられていて,適正な賠償がなされる可能性が
あること,被告人がこの賠償とは別に100万円の支払いを申し出ていること,被
告人には,交通前歴や罰金前科があるが,公判請求をされたのは今回が初め
てであること,被告人には投薬治療を受けている糖尿病の持病があり,被告人
自身で毎日2回インスリンの注射をしている状態にあること,被告人は,勤務先
において長年まじめに勤務し,家族の生活を支えてきたが,本件事故を引き起
こしたことにより取締役から降格され減給処分を受けたこと等,被告人のために
酌むべき事情も認められるが,これら諸事情を十分考慮しても,本件は刑の執
行を猶予するのが相当な事案とは認められず,原判決の量刑は,刑の執行を
猶予した点において不当であり,是正を要する。論旨は理由がある。
 そこで,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし
書により当裁判所において更に判決する。
 原判決が認定した罪となるべき事実(犯罪事実)に原判決の掲げる法条(刑種
の選択を含む。)を適用し,所定刑期の範囲内で,被告人を禁錮1年8月に処
し,刑訴法181条1項本文により当審における訴訟費用を被告人に負担させる
こととする。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成13年9月20日
札幌高等裁判所刑事部
裁判長裁判官 門野  博
裁判官   宮森輝雄
裁判官   小野博道

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