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平成16年(行ケ)第201号 審決取消請求事件
平成16年10月18日口頭弁論終結
     判    決
 原 告 富士通株式会社
 訴訟代理人弁理士 野澤裕
 被 告 フィーニックス・テクノロジーズ・リミテッド
 訴訟代理人弁理士 山川政樹,黒川弘朗,紺野正幸,西山修,山川茂樹
     主    文
 特許庁が取消2003-30879号事件について平成16年3月30日にした
審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定め
る。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 主文第1項と同旨の判決。
第2 事案の概要
 本件は,商標登録を不使用取消しとした審決の取消しを求める事件であり,原告
は取り消すとされた商標の商標権者,被告は取消審判の請求人である。
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は,「FastVIEW」の欧文字を標準文字で横書きしてなり,指定商品を商
標法施行令別表の区分による第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,
調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカ
ーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,
抵抗線,電極,レコード,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,金銭登録
機,現金自動預金支払機,家庭用テレビゲームおもちゃ」とする登録第42553
08号商標(平成9年9月4日出願,平成11年3月26日設定登録,以下「本件
商標」という。)の商標権者である。
 (2) 被告は,平成15年7月8日,商標法50条1項に基づき,本件商標の指定
商品のうち,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品に係る部分につい
て,商標登録の取消審判を請求した(取消2003-30879号事件として係
属)。なお,その登録(予告登録)が同月30日にされた。
 (3) 特許庁は,平成16年3月30日,「登録第4255308号商標の指定商
品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」については,その登録
は取り消す。」との審決をし,同年4月8日にその謄本を原告に送達した。
 2 審決の理由
 審決の理由は,以下のとおりであり,要するに,本件商標の審判の請求の登録前
3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれか
がその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をし
ていることを原告が証明せず,また,原告が,本件商標の使用をしていないことに
ついて正当な理由があると述べていないから,本件商標の登録は,商標法50条1
項の規定により,その指定商品中請求に係る「電気通信機械器具,電子応用機械器
具及びその部品」について,取り消すべきである,というのである。
 (1) 審決の判断
 ア 被請求人の提出に係る審判乙各号証を徴するに,審判乙1は,被請求人に対
する平成13年(2001年)8月10日付けの「物品注文書(写し)」である
が,これは,「本体内訳」の欄の品名について「FastVIEWクライアントライセンス
フリーパック」と記載されているが,この品名の物件と審判請求に係る指定商品と
の関連が不明なものであって,その内容がどのような商品を対象としているのか明
らかでない。
 審判乙2は,被請求人のホームページの抜粋(写し)であるが,後段に「マルチメ
ディア設備管理」「FastVIEW」とあるが,これがどのような商品を示しているのか
明らかでない。
 また,答弁書の理由中に「設備管理のシステム(電子応用機械器具)に係る商標
として使用されている」と述べているが,これが何故に請求に係る指定商品に関す
るものであるかを説明されているものでもなく,どのような商品についての商標の
使用を立証しているものであるかを把握することができないものである。
 さらに,提出に係る審判乙各号証及び答弁書全体を総合しても,本件商標を審判
請求に係る指定商品について使用していることをうかがい知ることができないもの
である。
 イ してみれば,被請求人の提出に係る全証拠によっては,本件商標の審判の請
求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者
のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標
の使用をしていることを被請求人が証明したとは認められない。
 また,被請求人は,本件商標の使用をしていないことについて正当な理由がある
と述べるものでもない。
 ウ したがって,本件商標の登録は,商標法50条1項の規定により,その指定
商品中請求に係る「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」につい
て,取り消すべきである。
第3 当事者の主張
 1 原告主張の審決取消事由
 (1) 審決は,本件商標の審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権
者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定
役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない
とした。
 (2) しかし,原告は,次のとおり,本件商標の審判の請求の登録前3年以内に,
被告の請求に係る指定商品について,本件商標を使用しているから,審決の判断
は,誤りである。
 ア 原告は,平成13年8月10日,顧客から,本件商標を付したパッケージソ
フトウェアの注文を受けた。
 イ 原告は,少なくとも平成13年8月28日,平成14年8月20日及び平成
15年4月19日の各時点における原告のウェブページにおいて,「マルチメディ
ア設備管理」との表題のもとに,本件商標を付したソフトウェア製品又はパッケー
ジソフトウェア製品を掲載した。
 2 被告の反論
 (1) 審決の判断は正当であり,原告主張の審決取消事由は,理由がない。
 (2) 原告が被告の請求に係る指定商品について本件商標を使用していたとは,次
のとおり,認めることができない。
 ア 原告が平成13年8月10日に注文を受けた事実があるとしても,その物品
注文書(甲31)の品名欄に「FastVIEWクライアントライセンスフリーパック」と
記載されていることからすると,「FastVIEWクライアントライセンスフリーパッ
ク」という名称の商品の注文を受けたというにとどまるから,本件商標を使用した
ということはできない。また,「FastVIEWクライアントライセンスフリーパック」
が商品の名称でないとしても,「FastVIEWクライアントライセンスフリーパック」
との商標を使用したものであって,かつ,その使用した商品が何であるかは明らか
でないから,被告の請求に係る指定商品について本件商標を使用したというもので
はない。
 イ 原告のウェブページにおいて,「共通業務」との表題のもと
に,「FastVIEW」が記載されているところ,他の項目には「ソフト」,「パッケー
ジ」という記載があることからすると,「マルチメディア設備管理」とは役務の提
供を意味するものと考えられるのであって,そうであれば,被告の請求に係る指定
商品について本件商標を使用したということはできない。
第4 当裁判所の判断
 1 甲13,15,22ないし26,31及び弁論の全趣旨によれば,次の事実
が認められる。
 (1) 原告は,被告による商標登録の不使用取消審判請求の登録前3年よりも前か
ら,設備情報と図面情報を統合管理し,オンライン化することで大幅な省力化を図
る統合パッケージソフトウェアに,本件商標を付して販売しており,上記登録前3
年以内においては,例えば,平成13年8月10日に,四国電力株式会社から,上
記ソフトウェアのクライアントライセンスフリーパック1式の注文を受けている。
 (2) 原告は,上記登録前3年以内である平成13年8月28日,平成14年8月
20日及び平成15年4月19日の各時点の自社のウェブページにおいて,製品情
報の中の導入パッケージのページで,「SymfowareServer,SymfowareNavigatorな
どの製品と連携し,優れたソリューションを提供する製品をご紹介します。こちら
に掲載されている製品は,お客様の要求を迅速に実現するために当社もしくはベン
ダー様から提供しているソフトウェアです。お客様の幅広いニーズと目的に合った
製品が豊富にそろっておりますので,これら製品をご活用いただくことで,優れた
ソリューションをご活用いただけます。」(なお,平成13年8月28日のもの
は,「SymfowareServer,SymfowareNavigator」が「SymfoWARE
Server,SymfoWARENavigator」になっており,平成15年4月19日のものは,
「ソフトウェア」が「パッケージソフトウェア」になっている。)との案内文のも
とに,「共通業務」の1つとして,「マルチメディア設備管理 FastVIEW」を掲載
している。
 2 被告は,平成13年8月10日に,「FastVIEWクライアントライセンスフリ
ーパック」という名称の商品の注文を受けたものであるか,そうでないとして
も,「FastVIEWクライアントライセンスフリーパック」との商標を付した商品の注
文を受けたものであると主張する。しかし,「FastVIEWクライアントライセンスフ
リーパック」という名称の商品があることをうかがわせるような証拠は全くない。
そして,前記1(1)のとおり,原告は,被告による商標登録の不使用取消審判請求の
登録前3年よりも前から,統合パッケージソフトウェアに本件商標を付して販売し
ていたのであるから,物品注文書(甲31)の品名欄に「FastVIEWクライアントラ
イセンスフリーパック」と記載されているからといって,このことのみから,原告
が,本件商標ではなく,「FastVIEWクライアントライセンスフリーパック」との商
標を使用したとは到底認めることができない。被告の上記主張は,採用の限りでな
い。
 また,被告は,「FastVIEW」を掲載した原告のウェブページにおいて,他の項目
には「ソフト」,「パッケージ」という記載があることからすると,「マルチメデ
ィア設備管理」とは役務の提供を意味するものと考えられると主張する。しかし,
上記ウェブページは,製品情報の中の導入パッケージのページであって,案内文に
も,「ソフトウェア」あるいは「パッケージソフトウェア」を掲載していることが
明記されているから,「マルチメディア設備管理」が,マルチメディア設備管理に
係るソフトウェアあるいはパッケージソフトウェアを意味するものであることは,
明らかである。これと異なる被告の主張は,採用することができない。
 3 本件商標を付したパッケージソフトウェアは,被告の請求に係る指定商品に
該当する(甲12)から,これと上記1の事実によれば,原告は,被告による商標
登録の不使用取消審判請求の登録前3年以内において,本件商標を使用したものと
いうことができる。
 したがって,本件商標の使用の事実を証明しなかったとした審決は,誤りであ
り,原告主張の取消事由は理由がある。
第5 結論
 以上のとおりであって,原告主張の取消事由は理由があり,これが審決の結論に
影響を及ぼすことは明らかであるから,審決は取り消されるべきである。
  東京高等裁判所知的財産第4部
         裁判長裁判官     塚  原  朋  一
            裁判官     塩  月  秀  平
            裁判官     髙  野  輝  久

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