弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意について。
 論旨は第一審及び原審裁判所における証拠の採否並びに事実の認定を非難するに
帰着し適法な上告理由とならない。(第一審では被告人側の証人申請は殆ど全部採
用されている。)
 弁護人諌山博の上告趣意第一点について。
 論旨は、原判決は判例に違反して採証法則に背き事実誤認をおかしていると主張
する。しかし第一審判決挙示の証拠を綜合すれば、第一審判決中判示第二の事実は
認め得られるのであつて、かゝる認定が所論援用に違背するものとは解されない。
論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、原審が弁護人側からした証人申請を却下したのは憲法三七条二項の違反
であると主張する。しかし憲法三七条二項は、被告人の申請した証人はすべてこれ
を取調べなければならない趣旨を規定したものではないこと、当裁判所の判例(昭
和二三年(れ)八八号同年六月二三日大法廷判決)の示すとおりであるから、違憲
の主張は理由がない。その余の論旨は単なる刑訴法違反の主張であつて刑訴四〇五
条の上告理由にあたらない。論旨は弁護人側の申請した証人Bについては、原審裁
判所は刑訴三九三条一項但書によつて必ずこれを取調べなければならないものであ
つたと主張するけれども、右証人が判決に影響を及ぼすべき事実誤認を証明するた
めに欠くことができないものであるか否かは、原審の判断によつて決すべきである
から(昭和二七年(あ)第八〇一号同二八年七月一八日第三小法廷判決参照)、原
審がこれを採用しなかつたからとて右の法条に違反するということはできない。
 同第三点について。
 論旨は、原判決が爆発物取締罰則三条の罪で起訴された被告人Aに対し同六条の
罪を認定した第一審判決を支持したのは違法であり、判例にも違反すると主張する。
よつて按ずるに、本件公訴事実は被告人が治安を妨げ且つ身体財産を害する目的を
もつて昭和二七年七月二一日福岡市a町自宅においてダイナマイト七五瓦包一個等
を所持したというにあり、これに対し、第一審判決は同被告人が同日同所において
ダイナマイト七五瓦包一個等を所持した事実を認めたことは起訴状及び第一審判決
上明瞭であるから、第一審判決が公訴事実と同一性のある事実を認定したといいう
ること勿論である。しかして、右起訴状においては訴因を右罰則三条の罪としたの
に第一審判決が訴因変更の手続をとらずして右罰則六条によつて処断したことも記
録上明白であるが、右罰則三条の罪の審判の範囲には当然右治安を妨げ又は身体財
産を害する目的の存否が包含せられる(ことは被告人側の予見すべき且つ容易に予
見し得べきところである)のであつて、右訴因を変更せずして裁判所が罪質の軽い
右罰則六条によつて処断したとしても被告人側の意表に出でその防禦権を侵害した
違法あるものというを得ず、所論の各判例に違背するものでもない。論旨は理由が
ない。
 同第四点について。
 論旨は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年一〇月一八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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