弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月に処する。
     原審における訴訟費用中証人Aに支給した分は被告人と原審相被告人
B、Cとの連帯負担とし、証人D、E、F、G及びHに支給した分は被告人と原審
相被告人Bとの連帯負担とし、その他の証人に支給した分は被告人と原審相被告人
B、C及びIとの連帯負担とする。
         理    由
 弁護人平田奈良太郎控訴趣意第一点について。
 訴訟記録について調べてみると、昭和二十五年七月十四日の第八回公判期日の調
書はその末尾に整理の日として同年九月十四日の記載があり、この日は判決宣告期
日である同年七月十九日より二カ月近くも後であることはまさに所論の通りであ
る。なお本件記録送付書の日付がひとたび同年九月十九日と記載された後、右九月
の「九」が「十二」と訂正せられ、当裁判所の受付日附印にもまた昭和二十五年十
二月十九日と表示されていること、及び裁判所職員が例年七月二十日から八月末日
までの間に交代で所定二十日間の休暇をとるため、この期間及びその直前において
事務が特に多忙であること等を考慮するときは、原判決は右休暇前である七月十九
日に宣告されその宣告調書は簡単であるため即日整理されたけれども、やや複雑な
第八回公判調書は休暇あけ後の九月十四日にやうやくその整理を完了したものとも
推察せられ、他に同調書末尾記載の九月十四日の文字は明らかに七月十四日の誤記
であると考えられるものがないから、右調書はその日附の同年九月十四日に整理さ
れたものと認めざるを得ない。ところで、刑事訴訟法第四十八条第三項は判決宣告
調書以外の公判調書については遅くとも判決を宣告するまでにこれを整理しなけれ
ばならない旨規定しているから、第八回公判調書<要旨>はこの規定に反することが
明らかである。しかしながら、右規定に違反した公判調書といえどもそれだけで
直ちにこれを当然無効であるとするわけにはゆかない。けだし、所論のよ
うに当然無効であるとすれば、整理期間経過後において当該公判調書を作成するこ
とは全くむだであるに拘らず、前記法条第一項はこの場合を除外することなく公判
手続については一律にその調書を作成しなければならない旨規定しているのであつ
て、この規定はその実質からしてもまたその排列の上からしても同条第三項の整理
期間に関する規定に比べて絶対的の要請であり、後者は単に手続の迅速と正確とを
期するための従属的要請に過ぎないから、これを以て右の絶対的要請を否定するよ
うな解釈はとうてい採用できないからである。
 論旨は更に判決宣告後に整理された公判調書は判決の基本とすることができない
ことを以て右公判調書の無効理由とするけれども、第一審判決は公判に現われた適
法な資料を裁判官が直接見聞したところに基いてするものであつて、当該公判調書
そのものに頼るものではないから、原判決当時において右調書が整理されていなく
とも原判決をするについて支障を来すものではない。
 次に論旨は判決宣告後に整理された公判調書は刑事訴訟法第五十一条による正確
性についての異議申立の機会を与えないことになるから無効であると主張するけれ
ども、同条第二項によれば判決宣告後にも異議の申立を許していること極めて明ら
かであつて判決宣告後に整理されたというだけでは当然に異議申立の機会を封ずる
ことにはならない。ただ、本件のように判決宣告後二カ月近くも遅れて整理された
公判調書に対してその正確性についての異議申立ができるかどうかについてはいさ
さか疑が存するけれども、少くとも公判調書の記載内容になんらの欠点はなく、訴
訟関係人に全然異論のあり得ないまでに正確である場合には、法定期間経過後の整
理にかかるとの一事を以て一般的にこれを無効視する実質的理由はない。ところ
で、所論はそもそも原審第八回公判調書の記載に誤りがあると主張するものではな
く、従つてその正確性について異議申立をする意思があつたとも主張するものでは
ないから、その異議申立権を害されたことにもならずその他右公判調書整理の遅延
が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとすべきものがない。この点の論旨は結局
理由がないといわねばならね。
 同第二点について。
 所論は、原審第八回公判調書が整理期間に関する規定違反の故に無効であり、そ
の他の公判調書によつても被告人及び弁護人に刑事訴訟法第二百九十三条第一項に
よる意見陳述の機会を与えたかどうか不明であるというのである。しかしながら右
第八回公判調書が整理期間経過後に作成されたというだけではこれを無効とすべき
ものでないことは前点において説明したとおりであつてこれによれば被告人及び弁
護人に対し右の機会を与えたことが明記せられており、その記載が誤りである旨の
異議調書がないのみならず当審においてすら真実右の機会を与えられなかつた旨の
主張を敢てしない本件については、原審がその機会を与えたものと認めざるを得な
いから、この点についても所論のような手続違反がないといわねばならない。
 弁護人平田奈良太郎控訴趣意第三点、弁護人幸節静彦、同馬淵健三及び被告人の
控訴趣意について。
 論旨はいずれも量刑不当に帰すので、記録を精査すると各被害者において寛刑を
切望し、被告人においても改悛の情顕著であることその他諸般の情状に照らし、被
告人に対する原審の科刑がいさゝか重過ぎると考えられるから、刑事訴訟法第三百
九十七条第三百八十一条、第四百条但書に則り原判決を破棄して更に次のように判
決をする。
 原判決認定の事実にその拳示した各法条を適用して主文第二項以下の裁判をす
る。
 (裁判長判事 荻野益三郎 判事 梶田幸治 判事 井関照夫)

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