弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
  検察官の上告趣意は、憲法違反、法令違反、事実誤認を主張する。
 一、違憲の論旨について。
 論旨は、破壊活動防止法(以下破防法という。)三八条二項二号所定の文書は、
その内容自体が公共の福祉に反する言論であり、かかる文書を正当な理由なく頒布
する行為は明らかに表現の自由の著しい濫用として憲法二一条の保障の範囲外のも
のである。また、同号にいわゆる内乱罪を実行させる目的も違法なものであるから、
原審の如く右目的の解釈適用について言論自由の保障の見地からさらに限定的な顧
慮を払うことは憲法二一条、一二条の解釈を誤つたものである旨主張する。
 しかし、原審が破防法三八条二項二号にいう内乱罪を実行させる目的について説
示するところは、結局同罪の成立には、内乱罪実行の正当性、必要性を主張する文
書を、その内容について認識しながらこれを頒布することだけでは足りず、内乱罪
を実行させることを目的としてなされることを要するのであるから解釈上この目的
を軽視することは許されず、その存否の判断に当つては、特に同法の適用を公共の
安全確保のために必要な最小限度にとどめ、その拡張解釈を禁止する旨規定してい
る同法二条の法意にてらし、慎重になさるべきであるという趣旨に帰するのであつ
て、破防法三八条二項二号の解釈適用についての見解を示したに止まり、所論の如
く右目的の解釈適用が憲法上の言論自由の保障によつてさらに制限を受ける旨を判
示したものと解することはできない。したがつて、違憲の主張は前提を欠くもので
ある。
二、法令違反の論旨について。
 論旨は、採証法則違反および破防法三八条二項二号の解釈適用の誤りをいう単な
る法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。原審が本件被告
人らが内乱罪を実行させる目的を有していたか否かの判断に際し、当時の客観情勢
ないし被告人らと被頒布者との関係等を考慮したことが採証上合理性を欠くもので
はなく、また、これになり原審が事実上具体的危険犯説を採用したものと解するこ
とはできず、その他原判決に所論の如き違法の点は認められない。
三、事実誤認の論旨について。
 論旨は、、原審の証拠の取捨判断に対する非難を前提とする事実誤認の主張であ
つて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。本件被告人らが破防法三八条二項二号
にいう内乱罪を実行させる目的を有していたとは認められないとする原審の判断は
正当として是認することができる。
 また記録を調べても本件に刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三九年一二月二一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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