弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は, 
第1(平成15年4月21日付け起訴状記載の公訴事実関係) 
   平成14年10月12日,神戸市a区b通c丁目d番e号所在のホテル
「f」605号室において,A(昭和61年6月17日生,当時16歳)が18歳
に満たない者であることを知りながら,同女に対し,現金5万円を対償として供与
することを約束して,同女と性交するなどし,もって,児童買春をした
第2(平成15年6月12日付け起訴状記載の公訴事実第1関係) 
 平成14年5月26日午前4時ころ,兵庫県g市h町i番j号所在のホテル
「k」205号室において,B(当時21歳)所有に係る現金約500円等在中の
財布1個及び母子健康手帳等4点在中のショルダーバッグ1個(物品時価合計約5
000円相当)を窃取した
第3(平成15年6月12日付け起訴状記載の公訴事実第2関係) 
   平成14年12月4日午前6時15分ころ,前記第1記載のホテル「f」6
06号室において,C(当時18歳)所有に係る現金約1000円等在中の財布1
個及び携帯電話機等2点在中の手提げ鞄1個(物品時価合計約7500円相当)を
窃取した
第4(平成15年7月8日付け起訴状記載の公訴事実関係) 
   平成15年3月21日,前記第1記載のホテル「f」606号室において,
D(昭和60年12月20日生,当時17歳)が18歳に満たない者であることを
知りながら,同女に対し,現金6万円を対償として供与することを約束して,同女
と性交するなどし,もって,児童買春をした
ものである
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―
省略
(補足説明)
1 弁護人は,いずれも犯罪行為の成立自体は争わないものの,判示第1及び第4
の各事実について,被告人において,各被害者がそれぞれ18歳未満ではないかと
の未必的認識があったことは事実であるが,それぞれその旨の確定的な認識があっ
たわけではない旨,さらに判示第1の事実について,被告人は,被害者と性交類似
行為は行ったが,性交していない旨主張し,故意の態様及び行為態様について争う
ところ,前掲関係各証拠によれば,被告人に各被害者の年齢が18歳未満であるこ
とのほぼ確定的な認識があったこと及び判示第1の被害者と性交した事実は優に認
められる。以下その理由を補足する。
2 判示第1の事実について
  Aは,検察官調書(検甲第1号証)において,いわゆる出会い系サイトの掲示
板に「17歳の高3です。梅田か三宮くらいで3で援してくれる人さがしてま
す。」旨,実際の年齢より一つ年上の17歳の高校3年生としていわゆる援助交際
を申し込むメッセージを登録したこと,被告人からAにメールがあり,A及び被告
人は,その後メール等のやりとりをして待ち合わせ場所で落ち合い,判示ホテルの
部屋に入室したこと,同所において,Aは被告人と性交類似行為のほか,二度にわ
たり性交したこと,その間,Aが学校の制服を被告人に見せると,被告人はAに対
し,「どこの学校に行ってるの。」と尋ねたこと等を供述するところ,その供述,
殊に被告人との間で各種の性交類似行為のほか二度にわたり性交渉に及んだ旨の供
述部分は,体験した者で
なければなしえない具体的かつ詳細な供述であって,その信用性は十分である。
  まず,性交の有無について検討すると,被告人は,捜査段階から公判に至るま
で,Aと性交しておらず,性交類似行為をしたに止まる旨供述するが,その供述に
よっても,自己の陰茎をAの陰部に押し当てたが,Aが痛いといって拒絶し,その
後も数回にわたり同様の行為に及んだが,結局,性交を断念したというのであっ
て,被告人の陰茎が同女の膣内に挿入された事実を必ずしも否定する内容ともいえ
ないのであるが,性交目的でホテルに入ったAが特段の理由なく性交を拒むことは
考えがたいところ,被告人は,捜査段階及び公判廷を通して,Aが性交を拒んだ理
由について曖昧な供述を繰り返すのみで,その供述自体具体性を欠く不自然な供述
であり,Aの前記検察官調書中の供述部分と比較検討すると,信用し難いというほ
かはない。弁護人は,
Aは被告人から援助交際の対償が支払われなかったため被告人に「騙された。」と
の被害感情を有しており,その意趣返し等のため,虚偽供述に及んだ可能性が否定
できないと主張するごとくであるが,Aは援助交際を申し込んだ自己にも非がある
と認めつつ,女性にとっては公表されたくないと思われる,見ず知らずの男性と
の,被告人も認める,同女において持参したバイブレーターを使用されたことなど
各種の性交類似行為を含め,性交の状況について具体的かつ詳細に供述しているの
であって,性交の有無のみについて虚偽供述に及ぶ理由は見出せない。
  次に,Aの年齢についての認識について検討すると,被告人は,捜査段階にお
いて,「メッセージの中で,17歳の高校3年生であると書いていましたので,A
さんが18歳未満であることも当然に分かりました。」「見た目にもちょうど17
歳くらいの女の子だなと思いました。」「私は,Aさんが16歳であることは知り
ませんでしたが,メールのやり取りの中で,Aさんが17歳だと言っていました
し,実際に17歳くらいに見えましたので,Aさんが17歳であると思っていまし
た。」旨(検乙第2号証),Aが18歳未満であったことについて確定的な認識が
あった旨供述しているところ,被告人自身が自己の携帯電話に「A’17,アサコ
武庫女」と記載していることに照らしても,その供述の信用性は十分である。被告
人は,当公判廷におい
て,年齢の認識の点について前記調書の訂正を求めたにもかかわらず訂正してもら
えなかったというが,信用できない。この点に関する被告人の公判供述は,見ず知
らずの女性と「援助交際」に及ぶ場合,身分証明書等により年齢を確認できていな
い以上,同人の年齢につき確定的認識がなかったと強弁する類の供述というべきで
あって,採用の限りではない。
3 判示第4について
  Dは,捜査段階において,「男に自分の住所や氏名,生年月日をメールで連絡
しておりましたので,・・当然私が17歳であることも知っております。」(検甲
第25号証),「17歳だけど高校には行っていません・・とその男性に返信メー
ルを送りました。」「返信メールには17歳と書いておきました。」「高校はやめ
てて,17歳というメールを送った。」「私は,本名以外については,全て本当の
ことを書いたメール・・具体的に言うと,私は1985年12月20日生まれ・・
などと・・メールに書きました。」「(被告人は,)ほんまに17なん,もっと若
く見えるわと私に言ってきました。」(検甲第26号証)などと供述するところ,
その供述の信用性は十分である。
  これに対し,被告人は,当公判廷において,17歳であるというはっきりとし
た認識はなかったが,18歳未満であるといわれた場合には,そうかもしれないと
いう曖昧な認識であった旨供述するが,前記Dの供述に照らし,信用し難い。
(法令の適用)
 被告人の判示第1及び第4の各所為はいずれも児童買春,児童ポルノに係る行為
等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号に,判示第2及び第3
の各所為はいずれも刑法235条にそれぞれ該当するが,判示第1及び第4の罪に
ついては各所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であ
るから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に
法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条
1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用
は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこと
とする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,18歳未満の児童に対し,対償を供与する約束をして,性交
等を行ったという児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関
する法律違反の事案2件(判示第1及び第4)と出会い系サイトを通じて知り合っ
た女性から現金等在中の財布等を盗んだという窃盗2件(判示第2及び第3)の事
案である。
 判示第1及び第4の各犯行は,被告人が自己の性的欲望を満たすために,出会い
系サイトを通じて知り合った18歳未満の児童に対し買春行為に及んだものであ
り,もとより,その犯行動機に斟酌すべき事情は認められないこと,対償の支払を
約束しながら金銭を支払わなかった犯行は計画的であって,その具体的犯行態様も
卑劣で悪質であること,被害児童の被害感情はそれぞれ厳しいこと,年齢の知情及
び判示第1の性交の有無等について,当公判廷において不自然かつ不合理な供述を
繰り返して止まないなど,本件各犯行を直視しこれを省みる態度が十分でないこ
と,判示第2及び第3の各犯行は,援助交際と称する買春行為に及んだ際,買春相
手の女性から金品を窃取したもので,被告人は買春相手あるいはその関係者から脅
された場合にそなえるた
め女性の身元がわかるような物を盗もうとしたというのであるが,その供述を信じ
るとしても,自らの悪行を棚に上げ,逆に相手方に異常な猜疑心を抱くなどという
その偏頗な性向には憂慮すべきものがあり,もとより,その犯行動機に斟酌すべき
事情は認められず,その犯行もまた計画的で卑劣であること等を併せ考慮すると,
被告人の刑事責任は重いというべきであって,この際,実刑に処することも考えら
れるところであるが,判示第3及び第4の被害者との間で宥恕文言を含む示談が成
立したこと,再犯に及ばない旨誓約していること,被告人の母親が今後の監督を誓
約していること,前科前歴がないこと,その心身の状況に加えて未決勾留が相当期
間に及んだことなど被告人のために斟酌すべき事情を最大限に考慮し,主文のとお
り量定した上,今回
に限り,その刑の執行を猶予することとするが,その猶予期間は法律上許される最
長期の5年とするのが相当である。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成16年3月9日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁 判 官   杉 森 研 二

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