弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の理由は、別紙抗告理由書記載のとおりである。
 本件記録によれば、昭和四〇年八月二五日抗告人は浜名板紙株式会社より金三〇
〇万円を借り受け、同時に抗告人はその所有にかかる本件手続の目的物件たる各不
動産に右債権を被担保債権とする抵当権設定契約を締結し、昭和四〇年九月七日そ
の旨の抵当権設定登記を了したこと、右債権者浜名板紙株式会社は昭和四一年八月
六日右債権ならびに抵当権を浜名紙業株式会社に譲渡し、同月九日その旨の抵当権
移転登記を了したこと、右浜名紙業株式会社はさらに昭和四二年一月二〇日、右譲
渡を受けた債権ならびに抵当権を本件手続の債権者である有限会社大石商事に譲渡
し、同年二月一日その旨の抵当権移転の登記を了したこと、そして右浜名紙業株式
会社は昭和四二年四月二七日に内容証明郵便で抗告人に対し、前記債権ならびに抵
当権を有限会社大石商事に譲渡した旨の通知をなしたことが認められるが、最初浜
名板紙株式会社が、同社から浜名紙業株式会社に債権譲渡したことにつき、その旨
の通知を抗告人に対しなした事実については、これを認めるに足る資料はない。
 ところで、本件記録によれば、本件手続の債務者たる抗告人は、昭和四二年五月
三〇日、通知書と題する書面を内容証明郵便にて有限会社大石商事に送付してお
り、右書面によれば、「当社(債務者たる抗告人)と浜名板紙株式会社との間に昭
和四〇年八月二五日締結したる金員借用抵当権設定契約に基づく債権額金三〇〇万
円也の抵当権は債権と共に昭和四一年八月六日浜名板紙株式会社より浜名紙業株式
会社に譲渡され、昭和四一年八月九日静岡地方法務局浜名支局申請受付第二三三七
七号により抵当権付債権譲渡の登記をなされたものを、浜名紙業株式会社より更に
貴社が昭和四二年一月二〇日前記の抵当権付債権の譲渡を受けられた様ですが、此
の件に付解決したいが為、貴殿が浜名紙業株式会社に有する債権の明細書を当方に
回答願いたく通知する。」旨記載されているが認められる。
 右事実に冒頭認定の事実を併せ考えると、債務者たる抗告人は、冒頭認定のとお
り、本件債権ならびに抵当権の各譲渡がそれぞれなされたことを了知しており、こ
の認識を右通知書において表示しているのであるか<要旨>ら、これをもつて抗告人
は右各債権譲渡の承諾をなしたものと認めるのを相当とすべく、また右承諾の通知
は、浜名板紙株式会社から浜名紙業株式会社になされた債権譲渡の関係で
は、右両社以外の有限会社大石商事に対しなされているのであるが、すでに認定し
たとおり、本件では右浜名紙業株式会社から更に有限会社大石商事に前記のとおり
債権ならびに抵当権の譲渡がなされているのであるから、かかる場合には、右浜名
紙業株式会社に対し債権譲渡の承諾をすることと実質的に異ならない同社の特定承
継人である有限会社大石商事宛になされた承諾の通知も債権譲渡の対抗要件として
適法なものといわねばならない。
 そうすると、浜名板紙株式会社と浜名紙業株式会社間の本件債権譲渡について
も、有限会社大石商事はその債務者たる抗告人に対し対抗できるものといらべきで
ある。
 なお、記録を精査するも他に原決定を取り消さねばならないような違法の点も存
しないから、本件抗告は失当として棄却すべきものである。
 よつて、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 青木義人 裁判官 高津環 裁判官 弓削孟)

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