弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における未決勾留日数中、被告人Aに対し九〇日、被告人Bに対し
八〇日を各本刑に算入する。
         理    由
 弁護人大野康平ほか四名の上告趣意のうち、爆発物取締罰則一条にいう「治安ヲ
妨ケ」るという概念が不明確であるとして憲法三一条違反をいう点は、右概念が不
明確であるとはいえず(最高裁昭和四六年(あ)第二一七九号同四七年三月九日第
一小法廷判決・刑集二六巻二号一五一頁、同昭和四九年(あ)第二一九三号同五〇
年四月一八日第二小法廷判決・刑集二九巻四号一四八頁、同昭和五二年(あ)第一
四三五号同五三年六月二〇日第三小法廷判決・刑集三二巻四号六七〇頁参照)、同
罰則三条の憲法一四条違反をいう点は、同罰則三条は所定の目的をもって同条に定
める行為をした者を思想、信条によって差別し重く処罰する趣旨でないから、いず
れも前提を欠き、原判決の適用違憲をいう点の実質は、単なる法令違反、事実誤認
の主張であり、その余の点は、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条
の上告理由に当たらない。
 被告人Bの上告趣意のうち、同罰則の規定違憲をいう点は、その前提として所論
が指摘する諸点はすべて首肯することができないから、前提を欠き、その余の点は、
単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に
当たらない。
 被告人Aの上告趣意第一のうち、同罰則の立法趣旨に関連して違憲をいう点は、
同罰則は所論のような趣旨で立法されたものでないから、前提を欠き、最高裁昭和
三二年(あ)第三〇九号同三四年七月三日第二小法廷判決・刑集一三巻七号一〇七
五頁の違憲をいう点は、判例の変更を求めるものであり、同罰則の形式的効力に関
して憲法七六条二項違反をいう点は、同罰則の効力と憲法七六条二項とは何ら関係
ないことが明らかであり、同罰則にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念が不明確であ
るとして憲法三一条違反をいう点は、右概念が不明確であるといえないことは前述
のとおりであり、また、同罰則の憲法一九条、二一条、三六条違反をいう点は、同
罰則は各条項に定める行為をした者を処罰するものであって思想、信条自体を処罰
しようとするものでなく、他の刑罰規定との比較で憲法一四条一項、三六条違反を
いう点は、同罰則が人種、信条、性別、社会的身分又は門地により差別的取扱いを
しているとはいえないから、いずれも前提を欠き、同第二は原判決の違憲をいうが、
その実質は単なる法令違反の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に
当たらない。
 よって、同法四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条により、裁判官全員一致
の意見で、主文のとおり決定する。
  平成二年五月二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    四 ツ 谷       巖
            裁判官    橋   元   四 郎 平

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