弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役3年6月に処する。
未決勾留日数中370日をその刑に算入する。
大阪地方検察庁で保管中の覚せい剤(大阪地方検察庁令和2年領第6
47号符号2及び同号符号3)及び大麻(大阪地方検察庁令和2年領
第648号符号1及び同号符号2)を没収する。
理由
【罪となるべき事実】
第1被告人は,みだりに,平成31年3月29日,大阪府岸和田市(住所省略)
被告人方(当時)において,
1覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶約0.153グ
ラムを所持した。
2Bと共謀の上,大麻である植物片約0.668グラムを所持した。
第2被告人は,法定の除外事由がないのに,平成31年3月28日頃,大阪府岸
和田市(住所省略)被告人方(当時)において,フェニルメチルアミノプロパ
ンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使
用した。
第3被告人は,公判係属中の覚せい剤取締法違反等被告事件について保釈取消決
定の執行を受け,刑事施設収容のため大阪府枚岡警察署に連行される途中で逃
走した際,自らが収容されるのを免れる目的で,令和元年11月9日午後1時
30分頃,大阪府大阪市a区bc丁目d番e号所在のCが管理する居宅におい
て,情を知るCに対し,自己をかくまうことを依頼し,Cにその旨決意させ,
下記1から4までのとおりCに行わせ,もって犯人蔵匿及び隠避を教唆した。
1令和元年11月9日午後1時30分頃から同日午後9時30分頃までの間,
Cが管理する前記居宅に被告人をかくまわせるなどした。
2同日午後9時30分頃から同日午後10時40分頃までの間,Cが管理する
前記居宅から大阪府大阪市f区gh丁目i番j号甲付近まで,普通貨物自動車
を運転させて被告人を運搬させた。
3同日午後10時40分頃から翌10日午前6時頃までの間,Cが管理する前
記甲k号室に被告人をかくまわせるなどした。
4同日午前11時45分頃,大阪府大阪市a区bc丁目l番m号乙において,
被告人に対し,Cが使用する自動車を供与させた。
第4被告人は,公安委員会の運転免許を受けないで,令和元年11月10日午前
11時45分頃,大阪府大阪市a区bc丁目l番m号付近道路において,Cか
ら供与を受けた前記自動車を運転した。
【証拠の標目】
省略
【事実認定の補足説明】
1弁護人は,判示第3の事実について,①Cが被告人を蔵匿,隠避する意思を
生じたのは,被告人の働きかけによるものではないから,被告人に教唆犯は成立し
ない,②被告人には教唆の故意が無い旨主張し,被告人は無罪であると主張する。
2判示第3の事実を認定するに当たって重要な証拠は,証人Cの当公判廷にお
ける供述(以下,「C供述」という。)である。
(1)Cは,被告人を蔵匿,隠避した者であるところ,本件以前から被告人と付き
合いがあり,互いの家を行き来し,家族ぐるみの付き合いをしていた者である。C
が,被告人に不利益な事実をあえて供述するような事実は,証拠上認められない。
また,C供述の内容は,判示第3の事実の当時,被告人やCと行動を共にしていた
Aの供述内容とも整合している。さらに,Cは,当時の具体的な心情を交えながら
経緯の流れを自然に供述している。以上によれば,C供述を信用することができ,
判示第3の事実を含む前後の事実経緯は,C供述に沿って認定することができる。
(2)弁護人は,Cが,本件犯人蔵匿等で被告人を匿うなどした結果,Cが,別件
の大麻取締法違反の罪に問われることになり,有罪判決の宣告を受けたこと等を指
摘するが,そのことでCが被告人を陥れる供述を行ったとは認められない。
3C供述によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)Cは,被告人が逃走したニュースを見て,ひょっとすると,Cが大阪市a区
bにおいて賃借している居宅(判示第3の1に記載の居宅。以下,「bの居宅」とい
う。)に,被告人が逃げ込んでくるかもしれないと思い,bの居宅の玄関の鍵を空け
ておいたが,被告人が来た様子がなかったので,被告人は来ないものと考えていた。
その後,A及びその交際相手が他に行くところがない旨を言っていたので,同人ら
を伴って再びbの居宅に行ったところ,被告人が同居宅の玄関で寝ていた。Cは,
被告人がいることに驚いたが,「分かってる」「よう来たな」などと言って,被告人
をbの居宅に上げた。
(2)Cは,被告人から手錠を外せないかと言われ,手持ちの工具で2時間ほどか
けて解錠してあげた。解錠しながらCが今後のことを尋ねると,被告人は,地元に
は行けない,頼る人もいないので助けてほしい旨言ってきた。Cは,被告人が匿っ
てほしい旨言っていると理解し,被告人を匿うことにし,被告人の求めに応じて食
事を提供するなどした。Cが,警察がbの居宅に来るのも時間の問題だと話すと,
被告人は,行くところがない,頼りにする人もいない,助けてほしい旨言ってきた。
Cは,妻から,あまり関わりを持たない方がいいと言われていたが,いまさら被告
人を追い返すこともできずにいた。
(3)Cは,bの居宅にいると警察に発覚するのは時間の問題だと思い,大阪市内
にCが賃借しているマンションの居室(判示第3の2に記載のマンション。以下,
「甲」という。)へ,被告人とともに車で移動した。移動の途中,知人からCに電話
があり,被告人の動静を尋ねられた。その際,被告人が黙っていて欲しいような動
作をしたので,Cは電話の相手に被告人の行方は知らないなどと嘘をついた。Cは,
自分は一体何をしているのだろうと,自責の念にかられた。
(4)翌朝,甲において,Cは,被告人から,お金がない,いくら持っているなど
と尋ねられ,被告人はお金が欲しいのだと思い,所持金5000円のうち4000
円を被告人に渡した。Cは,被告人とともに,行く当てもなく途方に暮れたが,被
告人との会話のなかで名前が出た共通の知人を訪ねることとした。同人方で,被告
人が携帯電話を欲しがる素振りをしたが所持金が無かったので,Cは,被告人のた
めに,自分のiPadと交換して携帯電話を入手してあげた。
(5)その後,Cは,被告人を再びbの居宅に連れて行こうと考え,被告人ととも
に車で移動し,判示第3の4記載の駐車場に車を停め,bの居宅の様子を見に行っ
た。その際,bの居宅の様子から,警察が来ているような様子もうかがわれたため,
Cが戻った車の中で待っていた被告人にその旨話したところ,被告人は驚いた様子
で「Cちゃん,かまへん」と,車を貸してほしいようなことを言ってきた。Cは,
友人から借りた車だったが,被告人に貸さないと被告人がその場を立ち去ってくれ
ないと思い,どうすることもできず,被告人に車を貸すこととし,車の鍵を渡した。
被告人は,「Cちゃん,ありがとう」と言って車に乗って行った。
4以上の事実によれば,Cは,もともと被告人がbの居宅に来るかもしれない
と思って同居宅の玄関の鍵をかけずにいたものの,Cが被告人を匿う意思を確定的
に生じたのは,被告人がCを訪れ,被告人から助けてほしい旨頼まれたからである。
実際,Cは,bの居宅をAとその交際相手に貸そうとしていたのであり,同居宅の
玄関に被告人が入り込んで寝ていた姿をみて驚いたと述べている。また,Cは自発
的に行動したことはない旨明言しており,その後のCの行動も,Cが自ら積極的に
被告人を匿おうとしたというよりは,助けてほしい旨の被告人の言動を受け,その
都度決断を迫られてのものと認められる。そうすると,前記認定の判示第3の1か
ら4までの各蔵匿,隠避行為は,いずれも,被告人の言動を契機としたCの行動選
択であったと認められ,被告人の教唆行為があったことは優に認定できる。
【法令の適用】
省略
【量刑の理由】
本件で量刑の中心となるのは覚醒剤の所持及び使用に関する罪である。被告人は,
同種の薬物事犯による執行猶予中であるにも関わらず,判示第1の覚醒剤及び大麻
の所持のほか,判示第2の覚醒剤の使用に及んでいる。薬物事犯に対する被告人の
規範意識の低さは明らかであり,その責任を軽視することはできない。また,被告
人は,判示第1及び第2の事件について裁判が係属中であるにもかかわらず,更に
判示第3及び第4の犯行にも及んでいる。判示第3の犯人蔵匿教唆,犯人隠避教唆
の犯行は,判示第1の事件について保釈中の被告人が,保釈条件を遵守しなかった
ことにより保釈を取り消され,いったんは身柄を拘束されたものの,押送中の車両
から片手に手錠を着けたまま逃走し,知人を頼って自らを匿わせるなどしたという
ものである。さらに,被告人は,逃走を図るために判示第4の無免許運転にも及ん
でいる。刑事手続を軽視し,身勝手な行動に出た被告人の責任を軽くみることはで
きず,被告人に対し,その刑の一部の執行を猶予することは考えられない。そこで,
被告人が本件各犯行について反省していること等,弁護人が指摘する被告人にとっ
て有利に酌むことのできる事情を全て考慮し,主文のとおり判断した。
(求刑懲役4年6月,覚せい剤及び大麻の没収)
令和2年11月6日
大阪地方裁判所第11刑事部
裁判官佐藤卓生

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