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       主   文
一 原判決中、一審原告a、同b、同c及び同dに関する部分を取り消し、右一審
原告らの請求をいずれも棄却する。
二 一審原告e及び同fの控訴をいずれも棄却する。
三 一審原告a、同b、同c及び同dと一審被告との間に生じた訴訟費用は、第
一、二審とも右一審原告らの負担とし、一審原告e及び同fと一審被告との間に生
じた控訴費用は右一審原告らの負担とする。
       事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 平成五年(ネ)第三九三号事件関係
主文第一項と同旨。
二 平成五年(ネ)第四七九号事件関係
1 原判決中、一審原告e(以下「一審原告e」という。)及び同f(以下「一審
原告f」という。)に関する部分を取り消す。
2 一審被告は、一審原告eに対し、金二万一八六三円、同fに対し金二万〇〇三
二円及び右各金員に対する昭和六二年七月四日から支払済みまで年五分の割合によ
る金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件事案の要旨は、原判決五頁五行目から同一一行目までに記載のとおりである
(ただし、原判決五頁八行目の「考課査定権の濫用」を「不当労働行為として不法
行為」と、同九行目の「不当労働行為として不法行為」を「考課査定権の濫用」
と、同九、一〇行目の「夏季一時金(以下「一時金」という。)請求権又は不法行
為による損害賠償請求権」を「不法行為による損害賠償請求権又は夏季一時金(以
下「一時金」という。)請求権」とそれぞれ改める。)。
一 争いのない事実など
 次のとおり訂正するほかは、原判決の該当欄(六頁一行目から一一頁二行目ま
で)に記載のとおりである。
1 原判決六頁八行目の「原告f」を「同f」と、同九行目の「原告a」を「一審
原告a(以下「一審原告a」という。)」と、同一〇行目の「原告b」を「一審原
告b(以下「一審原告b」という。)」と、同行の「原告c」を「同c(以下「一
審原告c」という。)」と、同行の「原告d」を「同d(以下「一審原告d」とい
う。)」とそれぞれ改める。
2 同九頁五行目の「原告f」を「同f」と、同六行目の「原告a」を「同a」
と、同行の「原告b」を「同b」と、同七行目の「原告c」を「同c」と、同行の
「原告d」を「同d」とそれぞれ改める。
二 争点とこれについての当事者の主張
 本件の争点は、本件減率査定が不当労働行為又は考課査定権の濫用に該当するか
どうかということであり、この点についての当事者の主張は、次のとおりである。
(一審原告ら)
1 不当労働行為の主張
(一) 国労は国鉄の分割民営化に強く反対しており、分割民営化が実現した後に
おいても、その方針に変わりはない。そのため国鉄当局及び分割民営化によって設
立された一審被告を含む各会社は、国労を嫌悪し、敵視する労務政策をとり続けて
いる。このことは、分割民営化の過程で国鉄が求めた全面協力・協調をうたった
「労使協同宣言」を受諾した他の労働組合と対比しての、総裁をはじめとする国鉄
当局者のさまざまな場での国労を差別し非難する発言、人材活用センターへの国労
所属組合員の差別的な配属、新会社の採用・配属における国労所属組合員に対する
差別的取扱いなどに顕著に現われている。こうした労務政策の結果、国労の組織人
員は昭和六一年六月以降急速に減少し、当時、一六万一〇〇〇人であった組合員
は、その後、毎月一万人もが脱退し、同年九月には一三万五〇〇〇人になってしま
った。分割民営化によって設立された一審被告は、新会社とはいっても、国鉄から
鉄道事業という最も重要かつ基本的な事業とそれに必要な資産、施設及び機構のす
べてを引き継ぎ、事業は瞬時も休むこと継続され、その役員及び社員は、代表取締
役の一部を除いてすべて国鉄職員がそのまま採用されている。このように、国鉄と
一審被告との間には実質的に同一性、連続性が認められるのであり、本件減率査定
は、国鉄以来の一貫した国労を嫌悪し、敵視する労務政策の一環として、国労組織
の弱体化、壊滅を意図して行われたものである。このことは、減率査定を受けた者
の大半が国労所属組合員であること、本件減率査定は国労の役員・活動家を狙い撃
ちにしたものであること、後記のとおり、組合バッジ、シールを着用していること
を減率査定の事由としていること、一審原告らの考課査定に当たり、具体的な事実
の裏付けがないのに消極的評価をしたり、ささいな事柄をことさらにとり上げて問
題視する一方、積極的に評価すべき事柄をことさらに無視するという手法がとられ
ていることなどから明らかである。
(二) 本件減率査定においては、国労所属組合員であることを表象する組合バッ
ジ、シールを着用していたことが減率査定の事由とされている。しかしながら、組
合バッジ等の着用は、組合員が当該組合の一員であることを顕示して組合意識を高
め、組合の団結保持に資する目的を有するのであって、団結権行使の一態様なので
あるから、組合員が組合バッジ等を着用していても、それによって職場規律を乱し
たり、業務の運営を妨げるなどの特段の事情が認められない限り、正当な組合活動
として是認されるべきものである。また、組合バッジ等は、使用者に対する要求や
何らかの意思を記載したリボンやワッペンなどと異なって、争議行為の手段として
用いられるものではないのであるから、通常、これを着用したからといって、職場
規律を乱したり業務の運営を妨げるおそれはない。したがって、組合員が勤務時間
中に又は会社施設内でこれを着用したとしても、これは正当な組合活動の一つなの
であるから、就業規則(二三条)に違反する場合には当たらない。それにもかかわ
らず、一審被告が組合バッジ等の着用を減率査定の事由としたのは、一審原告らが
国労所属組合員であることを嫌悪したからにほかならない。
 組合バッジ等の着用は国鉄時代にも問題とされなかったことであり、労使間に確
立した慣行として、国鉄も認めていたところである。そして、国鉄と一審被告との
前記のような実体関係からすれば、この慣行は一審被告にも引き継がれるものであ
る。
(三) 以上のとおり、本件減率査定は、一審原告らが国労所属組合員であること
又は労働組合の正当な行為をしたことの故をもってされた不利益取扱いであり、こ
れにより国労の弱体化を図ったものであるから、一審被告の国労に対する支配介入
であって、労働組合法七条一号、三号の不当労働行為に該当する。したがって、こ
れは一審被告の一審原告らに対する不法行為を構成し、一審原告らは、それぞれ、
本件減率査定により減額された前記一時金相当額の損害賠償を請求することができ
る。
2 考課査定権の濫用の主張
(一) 本件減率査定は、その手続上にも次のような問題点があり、一審被告のい
うような「厳正かつ公正な査定」であるなどとはとうていいえない。すなわち、
(1)本件夏季手当に関する調査期間がいつからいつまでであるかについては、広
島支店には、調査期間を過ぎた昭和六二年六月四日まで連絡がなかったこと、
(2)個々の社員の考課を担当する各業務機関の長(以下「現場長」という。)に
対しては、右の時期には考課基準等が明示されておらず、何をもって考課すればよ
いかが不明確であったこと、(3)現場長に示された「考課査定基準なるもの」
は、その各項目自体極めて抽象的で、あいまいなものであり、考課担当者の恣意的
な判断や好き嫌いが入り込む余地が大きいこと、(4)そのなかの「調査期間実
績」や「評定項目」中には、それぞれの社員の担当職務の範囲を超えるようなも
の、たとえば、勤務時間外でなければすることのできない切符のセールスなどが挙
げられており、結果として、勤務時間外や休日労働をすることを事実上強制するな
ど、一見して不合理なものが含まれていること、(5)就業規則については、調査
期間の末期である昭和六二年五月末ころまでは社員に対して周知する手続がとられ
ていないこと、(6)後記のとおり、一審原告ら各人について減率査定の事由とさ
れた個々の具体的な事実についてみると、明らかに事実認識の誤りがあったり、ほ
んの小さな出来事をとんでもない誤りであるかのように誇張していること、(7)
組合員バッジ等の着用を減率査定の事由とするなど、憲法や労働組合法で労働者に
保障されている労働基本権に基づく行動を「成績不良」と評価する誤りを犯してい
ること、以上のような問題点を挙げることができる。
(二) 更に、これを一審原告ら各人についてみると、次のとおりである。
(1) 一審原告e
 一審被告は、一審原告eについて不安全行動があったことを減率査定の事由とし
ており、その基礎となる事実について、移動中の貨車と貨車の間に入ってエアホー
スを繋いだことを挙げている。しかしながら、これはまったく事実に反している。
実際は、突放されていったん完全に停止した貨車が自然の勾配に従ってやや動いた
という程度のものである。エアホース連結作業そのものは一秒そこそこで完了する
ものであり、このような状態での作業が何らの危険を生じさせるものではなく、日
常的に誰もが行っていることであり、減率査定の事由となるようなことではない。
 一審原告eは、本件調査期間中も、その後も、組合バッジを着用し続けている。
そのため一審原告eは、本件減率査定以後も、毎期の期末手当について減率査定を
受けている。このことからしても、本件減率査定は、一審原告eが組合バッジを着
用していること、とりわけ職場における中心的国労所属組合員であることを決定的
事由としてされたことは明らかである。
(2) 一審原告f
 一審被告は、一審原告fが作業中ヘルメットをあごひもで締めていなかったこと
を本件減率査定の事由として挙げているが、実際にはヘルメットのあごひもを締め
ていなくともそれほど危険なことではない。というのは、ヘルメットの内側には内
枠が入っており、パットで固定されるから通常の作業では危険はないのである。一
審原告fは、このことについて上司から個別に注意を受けたことは一度もない。た
だ、毎朝行われる点呼の際、助役から一般的な事柄として「服装の整正」について
の注意があったので、昭和六二年四月一五日以降はあごひもを締めている。このよ
うな事情からすれば、ヘルメットのあごひもを締めていなかったことが減率査定の
事由となるような事柄でないことは明らかである。
 一審原告fは、本件減率査定以後も、昭和六三年末の期末手当から一〇回連続し
て期末手当の減率査定を受けている。このことからしても、本件減率査定は、一審
原告fが組合バッジを着用していること、すなわち、国労所属組合員であることを
査定事由としたことは明らかである。
(3) 一審原告a
 一審被告は、一審原告aに対する本件減率査定の事由として、作業中の雑談が多
いことを挙げ、とくに、勤務時間中、職場を訪れたもとの職場の同僚(現在、JR
西日本の社員)と雑談をしていたことを問題としているようである。しかしなが
ら、このような事実は存在せず、一審被告は、関係者のあいまいな陳述からこれを
認定したものである。
 そのほか、ヘルメットに組合シール(ワッペン)を貼っていたことについては、
これを取れと強制すること自体問題であるが、それはさておいても、一審原告a
は、上司から指示されて間もなくこれを剥がしている。業務成果が乏しいとの点に
ついても、一審原告aが当時それまでにほとんど経験のない別の仕事に従事してい
たことを考慮すれば、これを減率査定の事由とすべきものではない。朝の点呼の際
に行われる指差呼唱に参加しないことについても、ほかにもこれに参加しない者が
いるのに、なぜ、一審原告aだけが減率査定をされるのか、その理由が不明であ
る。
(4) 一審原告b
 一審原告bに対する本件減率査定の事由は、ヘルメットのあごひもを完全に締め
ていなかったこと、工具の取扱いが乱暴であること、ヘルメットに組合シールを貼
っていたこと、指差呼唱に参加しないことなどである。しかしながら、ヘルメット
のあごひもはこれを固く締めておかなければ、作業上危険であるというものではな
い。ピットのような狭い場所で重量のある工具等を用い、上向きになって作業をす
る場合、きっちり締め過ぎると作業がしにくいため、あごひもを調節し、作業に当
たっているのが通常である。それでも安全上に何らの問題はなく、他の作業員も同
様にしていたし、一審原告bは、あごひもを固く締めるよう上司から指示されたこ
とはなかった。道具類の持ち運びの際、その重量に耐えかねて地面に落とすという
ことはあるが、これは誰もがしていることである。ヘルメットに貼ってある組合シ
ールを取れと強制することはそれ自体問題であるが、それはさておいても、一審原
告bは、上司の指示に従いこれを取り剥がしている。一審被告は作業の安全対策を
おろそかにしていた。具体的な安全対策を講じたうえでのことであれば、指差呼唱
も意味がないわけではないが、そうでなければ無意味である。一審原告bが朝の点
呼の際の指差呼唱に参加しなかったのは、一審被告にもっと具体的な安全対策を取
ってほしいとの思いからであって、取り立てて非難すべきほどのことではない。
(5) 一審原告c
 一審原告cに対する本件減率査定の事由は、ヘルメットのあごひもを緩めること
があったこと、指差呼唱に参加しないこと、作業中の雑談、勤務成績不良などであ
るが、ヘルメットのあごひもを緩めることがあること及び指差呼唱に参加しないこ
とについては、一審原告a及び同bと同様であり、作業中の雑談については、一審
被告において、正確にこれを現認したことの裏付けがない。一審原告cの勤務態度
がよくないとの点についても一審被告のまったくの主観に過ぎない。
(6) 一審原告d
 一審原告dに対する本件減率査定の事由は、ヘルメットのあごひもを完全に締め
ていなかったこと、指差呼唱に参加しないこと、技能の習得が低く、作業能率が悪
いことなどであるが、ヘルメットのあごひもを完全に締めていなかったこと及び指
差呼唱に参加しないことについては、一審原告a及び同bと同様である。一審原告
dは、国鉄当時、貨車の塗装作業に従事していたが、本件調査期間中は、とくに、
事前の研修を受けることもなく、それまで経験がなかった動力車の塗装作業に従事
するようになったのであるから、他の熟練作業員と単純に比較して作業能率を云々
するのはそのこと自体不合理である。
(三) 以上のとおり、本件減率査定は、その手続上に問題があるばかりか、それ
ぞれの一審原告との関係においても、何らの合理的根拠もなしに行われたものであ
るから、一審原告らは、それぞれ本件減率査定により減額された前記一時金を請求
することができる。
(一審被告)
1 不当労働行為の主張に対して
(一) 国鉄の経営状況は、昭和五六年度において累積赤字が一兆円を超え、ま
た、累積債務も一六兆四二〇〇億円に達しているなど、破産寸前の状態にあった。
この経営危機を脱却するには大規模な改革を断行するほかはなく、昭和五七年の臨
時行政調査会第三次答申(基本答申)は国鉄の分割民営化を提言し、昭和六〇年七
月の国鉄再建監理委員会答申も同様の提言を行った。これを受けて、国会では昭和
六一年九月から同年一一月にかけて国鉄改革法が審議、可決されて、昭和六二年四
月国鉄が分割民営化され、八つの新会社が設立された。このように、国鉄の分割民
営化は広く国民的合意のもとに実現されたものであり、それ以外に国鉄による鉄道
事業の生き残りの途はなかったのである。
 右のように、分割民営化によって設立された一審被告を含む八つの新会社は、従
来の公共企業体による全国一元的経営体制のもとにおいては、適切かつ健全な事業
の運営を確保することが困難であるとの認識と判断から、効率的経営体制を確立す
るために国鉄の経営形態を抜本的に改革したことによって生まれたものである。国
鉄と新会社との間の権利義務の帰属等は、国鉄改革法その他の関係法令によっての
み確定されるものであって、新会社は国鉄とは別個独立の企業体であり、その間に
実質的同一性、連続性は存しない。その経営方針、とりわけ労務政策も、それぞれ
の会社が実状に応じて独自の見地に立ってこれを策定し、実施しているのであり、
一審被告は、その事業を成功に導くことができるかどうかは、社員、とくに社員が
所属する労働組合の協力が得られるかどうかが重大な鍵になるとの判断から、社員
の所属するそれぞれの労働組合に対し強く協力を求めているが、これに協力的でな
いからといって国労の組織を弱体化し、壊滅させようとする意図は全くない。本件
調査期間中の社員に対する考課査定は、後記のとおり、厳正かつ公平に行われたも
のであり、本件減率査定の対象となった社員のうち国労所属組合員が割合的に多く
なったのは、右厳正かつ公平な考課査定の結果であって、一審被告が国労所属組合
員について差別的取扱いをしたからではない。
(二) 臨時行政調査会は、その答申中で、国鉄の経営悪化の原因の一つとして
「不安定な労使関係による職場規律の乱れ」を挙げている。これは、国鉄当時、労
働組合の協力が十分に得られなかったために合理化が進展せず、生産性が向上しな
かったこと、これと並んで、ヤミ休暇・団体交渉や現場協議などに出席した場合の
振替休日の付与、突発休み、ブラ勤務などの悪慣行の常態化、服装の乱れや実態の
伴わない手当・超過勤務の日常化、組合による当局者のつるし上げの場となった現
場協議会等々、職場規律の乱れが顕著であったことをいうのである。そこで、一審
被告は、会社発足に当たって、このような国鉄の轍を踏まないように職場規律の確
立を重要な経営指針の一つとした。就業規則中に「服装の整正」についての規定を
おき、勤務時間中に又は会社施設内での組合バッジ等の着用を禁止した(二〇条二
項)のもその一環である。
 国労は、国鉄の分割民営化が実現した後においても、「分割・民営化反対」を標
接し、一審被告が推進しようとする施策に対して非協力の態度を堅持し、一審被告
の施策及び具体的な業務指示等に対し、その所属組合員による妨害及び反抗等が日
常的に繰り返されている。国労所属組合員が一審被告の指示にあえて反抗して組合
バッジ等を着用したということは、勤務時間中に国労所属組合員であることを誇示
する意味と作用があり、経営能率の向上、職場規律の健全化等に取り組む一審被告
の施策に反対して、ことさらに、労使間の対立を意識させ、増大させるものであっ
て、職場の規律と秩序を乱すものである。また、一審被告の社員が加入する労働組
合は、国労のほかにも複数の労働組合があり、これらの労働組合が、それぞれの組
合員に対し勤務時間中に組合バッジ等を着用させ、組合意識を高め、組合の団結を
相互に競い合うようなことになれば、職場規律の確立に努める一審被告にとってゆ
ゆしい事態であり、とうてい是認できるところではない。そのうえ、国労所属組合
員が勤務時間中に組合バッジ等を着用し、職場の同僚で他の労働組合に加入してい
る社員、とりわけ国労を脱退して他の労働組合に加入した社員に対して、国労所属
組合員としての団結を示して訴えかけるという行為は、国鉄改革法に従って新会社
の運営を推進しようとする、分割民営化に賛成した他の労働組合との対立を意識さ
せ、そのことによってこれらの社員が注意力を職務に集中することを妨げるおそれ
がある。
 以上のように、組合バッジ等の着用は、職場秩序を乱し、職務専念義務に違反す
るものであるから、一審被告が勤務時間中に又は会社施設内での着用を禁止したこ
とには十分な理由がある。
(三) 以上のとおり、一審原告らが本件減率査定の対象となったのは厳正かつ公
平な考課査定の結果であり、一審原告らが国労所属組合員であることとは無関係で
ある。もっとも、一審原告らが組合バッジ等を着用したことが本件減率査定の事由
の一つとなったことは事実であるが、それは、あくまで組合バッジ等を着用したが
故のことであって、一審原告らが国労所属組合員であるためではない。
2 考課査定権の濫用の主張に対して
(一) 本件減率査定は、次のような厳正かつ公平な手続段階を踏んで行われた。
(1) 本件夏季手当の支給に関して、一審被告関西支社(以下「関西支社一とい
う。)に勤務する社員の成績率の決定権者は、関西支社長(以下「支社長」とい
う。)である。支社長は、広島支店長を通じて各業務機関の長(現場長)に対し、
本件調査期間における各社員の勤務成績を所定の考課査定基準に従って把握し報告
することを指示した。
(2) 広島支店管内の各現場長は、配下の個々の社員について、その日々の勤務
振りを、現認したところの具体的事象に基づき、右考課査定基準を適用して評定
し、広島支店総務課長に報告した。
(3) 広島支店総務課長は、右報告について、更に、各現場長から直接意見聴取
をしたうえ、各業務機関の間における不均衡を是正するなど十分な検討をして、支
店案としての各業務機関ごとの増減率適用者を決定し、関西支社へ上申した。
(4) 支社長は、右支店案について、更に、広島支店総務課長から直接意見聴取
をして、本件夏季手当の支給に関して、各従業員の成績率を決定した。
(二) 右考課査定基準においては、従業員の業務遂行能力、執務態度、業務成果
等企業への貢献度などを総合評価して、勤務成績の良、不良を考課査定することと
されている。このうち、業務遂行能力は、業務知識、処理能力、指導力に着眼して
の、執務態度は、勤怠度、規律性、協調性、責任性、積極性、自己啓発意欲に着眼
しての、業務成果は、仕事の質、仕事の量、創意工夫に着眼しての各評価をいうの
であるが、本件調査期間は、新会社発足の直後のことであったので、組合バッジ等
の着用を含む職場規律違反行為の有無、作業中の傷害事故発生につながるような不
安全行動の有無、業務改善についての熱意ないしは意欲及び創意工夫等が重視され
た。
(三) 右考課査定の結果、一審原告らは勤務成績が良好でない者に該当すると判
断され、その成績率を五パーセント減率されることになったのであるが、その各一
審原告ごとの事由は、原判決一八頁七行目から同二四頁一一行目までに記載のとお
りである。
第三 争点に対する判断
一 一般に、使用者がその雇用する労働者の昇進、昇給、賞与(期末手当)額の算
定等の基礎資料を得る目的で行う労働者の勤務成績の査定については、それが労働
者の勤務状況のみでなく、人柄や能力等の人格的側面にまで及ぶものであることか
ら、その性質上、使用者に広い範囲の裁量の余地が認められるべきであるが、使用
者の右考課査定権の行使が合理的な裁量の範囲を超え、これが不当労働行為に該当
したり、あるいは何の根拠もなくして不当に低い査定が行われた場合には、その対
象となった労働者は、使用者に対し、不法行為による損害賠償等の請求をすること
ができると解するのが相当である。これを本件についてみるのに、本件減率査定
は、一審被告の一審原告らに対する考課査定権の行使に当たるところ、一審原告ら
は、これが不当労働行為に該当するとすれば、不法行為による損害賠償として、本
件減率査定により減額された前記一時金相当額を請求することができ、考課査定権
の濫用であるとすれば、本件減率査定は効力を有しないものとして、本件減率査定
により減額された前記一時金を請求することができるというべきである。
二 本件夏季手当の支給に関し、一審被告が行った成績率の査定方法及び一審原告
らに対する考課査定の内容
 この点についての認定・判断は、次のとおり、訂正するほかは、原判決二六頁一
〇行目から同四六頁九行目までに記載するとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二七頁一行目の「証人g」を「原審証人g」と、同行の「同h」を「原
審及び当審証人h」と、同二行目の「同i」を「原審証人i」とそれぞれ改める。
2 同八行目の「総務業務」を「これに関する業務」と改める。
3 同三五頁三、四行目、同三六頁一〇行目及び同一一行目に「国労バッジ」とあ
るのを「組合バッジ」とそれぞれ改める。
三 不当労働行為の主張について
1 右認定の事実によれば、本件夏季手当の支給に関し、一審被告が行った社員の
勤務成績についての考課査定は、日ごろ社員と直接接触してその勤務態度、人柄、
能力等をつぶさに把握し得る立場にある現場長からの報告に基づき、第一次的には
広島支店総務課長の、第二次的には関西支社総務課長の、それぞれの下位者からの
直接の事情聴取を含めた点検、調整を経たうえ、最終的には支社長がそれぞれの社
員の成績率を決定するという極めて慎重なものであり、その手続過程において、一
審原告らが国労所属組合員であること、あるいはその活動家であることを直接に一
審原告らの勤務成績を考課査定するうえで考慮に入れた形跡を見て取ることはでき
ない。もっとも、右考課査定の結果、広島支店において減率適用者とされたのは八
名であり、そのうちの六名が国労所属組合員である一審原告らであることは右認定
のとおりである。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、国労は、国鉄の分割民営
化が実現した後においても、「分割・民営化反対」の活動方針を堅持し、一審被告
が推進しようとする施策に対しても反対の姿勢を貫いていることが認められる。こ
れからすると、国労役員であったり、その活動家である一審原告らが国労のこのよ
うな姿勢を体してそれぞれの職場において一審被告が推進しようとする施策や具体
的な業務指示等に対し、反対したり、非協力的な態度をとることがあり得ることは
容易に推認できるところであり、現場長からの一審原告らにかかる減率調書の箇所
長意見欄に、規律性、協調性に欠けるとか、業務に対する積極性が見られないと
か、改善工夫の努力がうかがえないなどの記述が見られるのもそのためであるとみ
ることができる。そうであるとすれば、減率適用者中に国労所属組合員の占める割
合が高いのは、国労所属組合員のそれぞれの職場における右のような執務態度と無
関係とはいいがたく、一審被告が意図的に一審原告らを国労所属組合員であること
の故に減率適用者に選定したとみることは困難であり、したがって、右のことから
直ちに、一審被告の不当労働行為意思を推認することはできない。
2 ところで、一審原告e及び同fについては勤務時間中に組合バツジを着用して
いたこと、ないしは着用しないよう注意しても外さなかったことが、一審原告a及
び同bについては作業用ヘルメットに組合シールを貼っていたことが、それぞれ本
件減率査定の事由の一つとされていることは右認定のとおりである。
 そこで、このことが国労ないしはその所属組合員である右一審原告らに対する不
当労働行為に該当するかどうかについて検討するのに、乙第五号証、第一五号証、
第二〇号証、第四〇号証の一ないし七、第四一号証、原審及び当審証人h、当審証
人jの各証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば、以下の各事実が認められる。
(一) 分割民営化前の国鉄においては、労使関係が極めて不安定であり、多くの
職場でヤミ休暇、ヤミ手当、ヤミ専従、突発休、リボン及びワッペンの着用、勤務
時間中の組合活動、飲酒及び無断外出などの悪慣行が常態化し、職場秩序の乱れが
顕著であった。昭和五七年七月の臨時行政調査会第三次答申(基本答申)は、この
ことを重視し、国鉄の経営悪化の原因の一つとして「不安定な労使関係による職場
規律の乱れ」を挙げ、国鉄再建監理委員会も、昭和六〇年七月の「国鉄改革に関す
る意見」のなかで「不正常な労使関係」を健全化することの必要性を指摘した。ま
た、右のような国鉄の労使関係の実態がマスコミを通じて広く世間に公表され、国
民の強い批判を招くこととなった。
(二) そこで、一審被告は、会社の発足に当たって、国鉄当時の前記のような悪
弊を払拭し、労使関係の正常化とこれを基にした職場規律の確立を重要な経営指針
の一つとした。昭和六一年四月一日の会社発足と同時に施行された就業規則は、こ
のような考え方に立って制定されたものであり、一審被告は、広島支店に所属する
社員に対しては、同支店総務課の事務担当者や現場長に対し、社員が休憩時間等を
利用してこれを閲覧できるよう見易い場所に備えおき、点呼の際にはその備付け場
所を示し、閲覧を求めることを指示するなどして、その趣旨・内容の周知に努め
た。
(三) 就業規則では、まず、その二三条において、会社が許可した場合のほか
は、社員が勤務時間中に又は会社施設内でする一切の組合活動を禁止し、その二〇
条には「服装の整正」についての規定を設け、社員が勤務時間中に又は会社施設内
で会社が認める以外の胸章、腕章等を着用することをを禁止している(同条二
項)。しかしながら、会社発足後も、国労所属組合員のなかには勤務時間中に組合
バッジを着用している者や作業用ヘルメットに組合シールを貼付している者がいた
ところ、一審被告は右組合バッジ等の着用は前記就業規則の各条項に違反するとし
て、現場長を介してこれを取り外すよう注意し指導しているが、これに従わず、右
組合バッジ等の着用を続けている者がある。
(四) 一審被告が右組合バッジ等の着用を禁止するのは、次のような事情が存す
ることによるものである。すなわち、①国鉄時代からの経験からすると、勤務時間
中のささいな組合活動であっても、これを黙認しあるいは放置すると、その活動範
囲が次第に広がり悪慣行化すること、②一審被告の社員が加入する労働組合は、国
労のほかにも複数あるところ、国労を含むこれらの労働組合間には微妙な組織上の
競合関係があり、とくに、国労以外の労働組合の組合員のなかには国労を脱退して
別の労働組合に加入した者もいること、③国労は、国鉄の分割民営化が実現した後
においても、「分割・民営化反対」の姿勢を崩さず、一審被告とは、依然として厳
しい対立関係にあるところ、勤務時間中に国労所属組合員が組合バッジ等を着用す
ることは、国労所属組合員であることを誇示する意味があるため、国労所属組合員
と職場で社員の指導監督に当たる現場長等との間に労使間の対立を意識させ、ま
た、他の労働組合に所属する組合員との間にも微妙な意識関係を生じさせるおそれ
があること、④社員の加入する労働組合が複数ある以上、一審被告としては、これ
らの労働組合をすべて平等に取り扱わざるを得ない立場にあるところ、国労所属組
合員が組合バッジ等を着用していることについては、他の労働組合に所属する組合
員からの苦情の申立ても聞かれること、以上のことから、一審被告は、国労所属組
合員が勤務時間中に組合バッジ等を着用することは職場秩序を乱すと判断している
ことによるものである。
(五) 一審原告らは、主として、東広島駅及び広島車両所で貨車の入換え、車両
の点検、整備等の現場作業に従事している者であり、職務上で一審被告の取引関係
者等と接触する機会はほとんどない。一審原告らが着用した組合バッジ等は、小さ
く目立たないものであって、これに何らかの主義主張が表現されているわけではな
く、国鉄時代には組合バッジ等の着用が国鉄当局から問題とされたことはない。
 右認定の事実によれば、一審原告らは、主として、東広島駅及び広島車両所で貨
車の入換え、車両の点検、整備等の現場作業に従事している者であり、一審原告ら
が組合バッジ等を着用しても、そのこと自体は、右作業に何らの支障も生ずるもの
でないことは明らかである。しかしながら、国鉄当時の不安定な労使関係、これに
起因する常識の範囲を超えた慣行の常態化などの事実に鑑みるときは、一審被告
が、会社の発足に当たり、国鉄当時の悪弊を払拭し、新たな基盤の上に安定した労
使関係を確立して行こうとしたことは極めて当然のことであり、勤務時間中の国労
所属組合員による組合バッジ等の着用が、職場におけるこれらの組合員とその監督
者の立場にある現場長等との間、あるいは他の労働組合所属の社員との間に前記の
ような微妙な心理的影響を及ぼすものであってみれば、一審被告がこれを職場秩序
を乱すものとした前記の判断は当を得たものであるということができる。したがっ
て、一審被告が就業規則で会社が認める以外の胸章、腕章等の着用を禁止し、国労
組合員による組合バッジ等の着用がこれに該当するとして取り外し等を命じても、
これに従わない場合には職務専念義務(就業規則三条)及び勤務時間中等の組合活
動の禁止(同二三条)に違反するとしたのには合理的な理由があり、このことをそ
の裁量によって本件減率査定の事由の一つとしたことを目して不当労働行為に該当
するということはできない。
3 以上の次第であるから、本件減率査定が国労ないしはその所属組合員である一
審原告らとの関係で不当労働行為に該当することを前提とする一審原告らの請求は
いずれも理由がないといわなければならない。
四 考課査定権の濫用の主張について
1 一審原告らは、本件夏季手当の支給に関し、一審被告が行った考課査定(本件
減率査定)には、手続上にもその挙示するような問題点があると主張する。
 しかしながら、使用者がその雇用する労働者の考課査定をどのような手段・方法
ないしは手続で行うかは本来的に使用者の裁量に属することであり、これが著しく
合理性に欠け、そのために極端に不合理な考課査定の結果を招来するなどの関係が
存しない限り、手続上に存する問題点が考課査定権の濫用の根拠となるわけではな
い。したがって、この点に関する一審原告らの主張は、単に一審原告らの立場から
みた手続上の問題点を指摘したものと解するほかはなく、採用することはできな
い。
2 次に、一審被告が一審原告らに対してした本件減率査定が考課査定権の濫用に
当たるかどうかを一審原告ら各人についてみると、次のとおりである。
(一) 一審原告eについて
 先に認定(原判決引用部分一1(三))の事実に、甲第一七号証、乙第二一号
証、第三〇号証、原審及び当審証人kの証言、原審及び当審における一審原告eの
本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を合せれば、一審原告eは昭和四四年四月に国
鉄に入社以来、東広島駅において貨車の入換作業及びこれに付随する業務に従事し
ていること、同一審原告は、昭和六二年四月二七日、機関車から切り離されて突放
された九両連結の貨車が完全に停止していない状態で貨車と貨車との問に入って空
気ホースの連結作業を行い、これを目撃して危険な作業と判断した駅長kから助役
を通じて注意を受けたが、「どこで見とったんですか」と言って、必ずしも真剣と
は受け取れない対応を示したこと、同一審原告は、本件調査期間中、作業服に国労
の組合バッジを着用して勤務していたため、勤務時間中は着用しないよう注意され
たが、その後もズボン右側ポケット上部に右バッジを付けて勤務していたこと、現
場長はこれらの事象から同一審原告には規律性、協調性に欠けるとの評価をしたこ
とが認められる。
 右事実によれば、本件調査期間中、一審原告eには問題となる具体的事象が見受
けられ、一審被告が右事象等から同一審原告について本件減率査定をしたことは、
その裁量の範囲内のことであって、これを考課査定権の濫用ということはできな
い。
(二) 一審原告fについて
 先に認定(原判決引用部分一1(三))の事実に、甲第二〇号証、第二一号証、
乙第三一号証、第三六号証、原審及び当審証人kの証言、原審及び当審における一
審原告fの本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を合せれば、一審原告fは、昭和四
九年に国鉄に入社以来、東広島駅において貨車の入換作業及びこれに付随する業務
に従事していたこと、同一審原告は、昭和六二年四月二日、同月四日及び同月一五
日の各点呼の際、同一審原告を含む参加者全員に対しヘルメツトのあごひもを十分
締めるよう注意があったにもかかわらず、あごひもが外れたヘルメットを使用し、
同月二一日まで、ヘルメットのあごひもを全く締めない状態のまま入換作業に従事
していたこと、同一審原告は、本件調査期間中、作業服に国労の組合バッジを着用
していたため、勤務時間中は外すよう注意されたが、その後も、作業服に右バッジ
を着用して勤務していたこと、現場長は、これらの事象から同一審原告には規律性
に欠けるとの評価をしたことが認められる。
 右事実によれば、本件調査期間中、一審原告fには問題となる具体的事象が見受
けられ、一審被告が右事象等から同一審原告について本件減率査定をしたことは、
その裁量の範囲内のことであって、これを考課査定権の濫用ということはできな
い。
(三) 一審原告aについて
 先に認定(原判決引用部分一1(三))の事実に、甲第三三号証、乙第二三号
証、第三三号証、第六二号証、原審証人i、当審証人lの各証言、原審及び当審に
おける一審原告aの本人尋問の結果によれば、一審原告aは、広島車両所において
車両の整備、補修等の業務に従事していること、広島車両所においては、毎朝仕事
にかかる前に、全員で安全体操をしたあと、「右よし、左よし、前よし、ゼロ災害
で行こう、よし」と唱和するいわゆる指差呼唱を行っていること、この指差呼唱
は、社員の安全意識を高め、気持ちを引き締めることを目的とするものであるが、
同一審原告は、これを一審被告の一方的な押付けと受け取り、行わなかったこと、
同一審原告は、ヘルメットに国労の組合シールを貼付していたが、かなり以前から
のことなので、このことを失念していたところ、昭和六一年五月一九日、上司であ
ったiから剥がすように注意され、翌日にはこれを剥がしたこと、現場長は、右指
差呼唱を行わないことなどから、同一審原告には規律性、協調性に欠ける面がある
としたほか、業務に対する積極性が見られないなどの評価をしたことが認められ
る。
 右事実によれば、本件調査期間中、一審原告aには指差呼唱を行わないなどの問
題となる具体的事象が見受けられ、一審被告が右事象等から同一審原告について本
件減率査定をしたのは、その裁量の範囲内のことであって、これを考課査定権の濫
用ということはできない。
(四) 一審原告bについて
 先に認定(原判決引用部分一1(三))の事実に、甲第三五号証、第三八号証の
一ないし六、乙第二三号証、第六二号証、原審証人i、当審証人lの各証言、原審
及び当審における一審原告bの本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を合せれば、一
審原告bは、広島車両所において車両の整備、補修等の業務に従事していたこと、
同一審原告は、広島車両所で、毎朝仕事にかかる前に行われるいわゆる指差呼唱に
ついては、一審原告aと同様、これに参加しなかったこと、一審原告bは、国鉄当
時からヘルメットに組合シールを貼っていたが、昭和六二年四月一五日ころの朝の
点呼の際、これを剥がすようにとの注意があったので、その翌日又は翌々日には剥
がしたこと、現場長は、右指差呼唱を行わないことなどから、同一審原告には協調
性に欠けるとしたほか、作業上での創意工夫の努力がうかがえないなどの評価をし
たことが認められる。
右事実によれば、本件調査期間中、一審原告bには指差呼唱を行わないなどの問題
となる具体的事象が見受けられ、一審被告が右事象等から同一審原告について本件
減率査定をしたのは、その裁量の範囲内のことであって、これを考課査定権の濫用
ということはできない。
(五) 一審原告cについて
 先に認定(原判決引用部分一1(三))の事実に、甲第四〇号証、乙第二三号
証、第六二号証、原審証人i、当審証人lの各証言、原審及び当審における一審原
告cの本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を合せれば、一審原告cは、広島車両所
において車両の整備、補修等の業務に従事していたこと、同一審原告は、広島車両
所で、毎朝仕事にかかる前に行われるいわゆる指差呼唱については、一審原告aと
同様、これに参加しなかったこと、現場長は、このことから、同一審原告cには協
調性に欠けるとしたほか、業務に対する積極性を欠き、責任感に乏しいなどの評価
をしたことが認められる。
 右事実によれば、本件調査期間中、一審原告cには指差呼唱を行わないなどの問
題となる具体的事象が見受けられ、一審被告が右事象等から同一審原告について本
件減率査定をしたのは、その裁量の範囲内のことであって、これを考課査定権の濫
用ということはできない。
(六) 一審原告dについて
 先に認定(原判決引用部分一1(三))の事実に、甲第三九号証、乙第二三号
証、第六二号証、原審証人i、当審証人lの各証言、原審及び当審における一審原
告dの本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を合せれば、一審原告dは、広島車両所
において車両の塗装業務に従事していたこと、同一審原告は、広島車両所で、毎朝
仕事にかかる前に行われるいわゆる指差呼唱については、一審原告aと同様、これ
に参加しなかったこと、現場長は、このことから同一審原告dには協調性に欠ける
としたほか、仕事に対する意欲が感じられず、改善の努力もうかがえないなどの評
価をしたことが認められる。
 右事実によれば、本件調査期間中、一審原告dには指差呼唱を行わないなどの問
題となる具体的事象が見受けられ、一審被告が右事象等から同一審原告について本
件減率査定をしたのは、その裁量の範囲内のことであって、これを考課査定権の濫
用ということはできない。
3 以上を要するに、一審被告が一審原告らについて本件減率査定をしたのにはそ
れなりの根拠がないわけではなく、これを合理的な裁量の範囲を超えた考課査定権
の濫用ということはできないのであり、これを前提とする一審原告らの請求はいず
れも理由がないといわなければならない。
四 よって、一審被告の控訴に基づき、原判決中、一審原告a、同b、同c及び同
dに関する部分は失当であるから、これを取り消したうえ、右一審原告らの請求を
いずれも棄却し、一方一審原告e及び同fの控訴は理由がないから、いずれもこれ
を棄却することとし、主文のとおり判決する。
広島高等裁判所第二部
裁判官 笠原嘉人
裁判官 金子順一
裁判長裁判官大塚一郎は退官のため署名押印できない。
裁判官 笠原嘉人

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