弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人吉田勇三郎の控訴趣意は記録に編綴されている同弁護人提出の控訴趣意書
記載のとおりであるから之を引用する。
 同控訴趣意について、
 記録によれば起訴状記載の公訴事実は、「被告人はA、Bと共謀して強盗をなさ
んことを企て昭和二十五年五月三十一日午前三時頃八幡市a町b丁目C方に於て、
被告人に於いて見張をなし、A、Bに於て右Cの長男D当十四年に対し「声を出す
と殺すぞ金はないか」と申し向けジヤツクナイフを突付けて脅迫した上同家大疊の
間にありたる布団を右D及び隣の子供E当十五年に覆せ同人等の反抗を抑圧しラジ
オ一台、大島袷一枚、錦紗長繻絆一枚等時価一万九千円位を強取したものであ
る。」というのであり又原審第四回公判調書によると、検察官は予備的訴因とし
て、「被告人は昭和二十五年五月三十一日午前三時頃、A、Bから賍物たるの情を
知りながら、八幡市a町b丁目F方附近において、ラジオ一台大島袷一枚錦紗袷一
枚(時価一万円位)を受取り八幡市c町d丁目G方二階に宿泊中のHの居室迄運搬
したものである」旨及びその罰条として刑法第二百五十六条第二項を追加し原審に
おいてこれを許<要旨>可していることか明かである。そこで右予備的訴因を記録に
ついて仔細に検討すると、検察官は本件強盗被告事件の審理の経過に鑑み、
被告人において強盗共謀の事実が認められないときは、被告人はA、Bが他家で盗
みをすることを知りながらこれに同伴して、C方近隣のF方附近で待受けており、
この間古A及びBにおいてC方で強取をした物件即ちラジオ一台、大島袷一枚、錦
紗長繻絆一枚(予備的訴因には錦紗袷一枚とあるが記録上錦紗長繻絆一枚と同一物
件であることが明かである)を被告人が待受けている石F方附近に持参したのを被
告人は該物件が盗賍であることの情を知りながら、右予備的訴因記載どおり運搬し
たものであるということに関するのであるから、前記起訴状記載の公訴事実と、右
予備的訴因とを対照するに、右強盗の時と賍物運搬開始の時とは相接し、その犯罪
場所は前者はC方で、その後者は原判決の挙示した原審における検証の結果により
明かな、同女方と僅かに五十米位隔れたF方附近で、しかも被告人は右強取物件を
運搬したものであつて被告人が強盗の共謀により見張りをし、他の共犯者において
実行した共同正犯としての公訴事実と、被告人が見張りをしていたという場所即ち
右F方附近で、主たる訴因における共犯者が盗をすることを知りながら待つてい
て、同人等が強取した物件を、待つていた場所から運搬したという予備的訴因とは
右諸点において、それぞれ極めて密接な関係があることが明白である。即ち右両者
はその構成要件が全く罪質を異にし且つ、具体的事実は枝葉の点において所論のご
とく多少の相違の点はあるが基本的事実関係において同一性があるものと認めなけ
ればならない。従つて前記公訴事実につき予備的訴因の追加を許可した原審の措置
には何等の違法があるものということはできない。しかして、原判決はその措辞粗
笨の譏りを免れないがその挙示の証拠を対照すれば被告人は昭和二十五年五月三十
一日午前三時三十分頃八幡市a町b丁目F方附近で、その友人A、Bから依頼され
その直前右両名がその附のC方で強取して来た物件中のラジオ一台を、それが盗賍
であることの情を知りながら原判示場所まで運搬したものであるというに帰し、前
記追加された予備的訴因に照応する事実を判示したることが明かで原判示事実は原
判決の挙示した証拠により優にこれを認定することができるのでこれを原判示法条
に間擬した原判決はまことに正当である。
 従つて、本件予備的訴因の追加が違法であることを前提とする論旨は採用するこ
とはできない。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 谷本寛 裁判官 藤井亮 裁判官 青木亮忠)

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