弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告指定代理人D(名義)、同E(名義)、同山田二郎、同山口三夫、同F(名
義)の上告理由第一点について。
 所論は、要するに、原判決には法人税法(昭和三七年法律第六七号による改正前
のもの。以下同じ。)三二条後段の解釈適用を誤つた違法がある、というのである。
 よつて、考えるのに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が
確定したところによれば、本件再更正処分の通知書には、更正の理由として、「建
物譲渡損の否認金五八万七五九四円、建物の譲渡益金一万二四〇六円、借地権計上
洩金三三〇万円、寄附金超過取消金六〇万三〇四二円」と記載されていたというの
であるが、右の記載によつては、右借地権の点につき、被上告人において、その借
地権がどのようなものか、その価額が何故に課税対象として計上されるのであるか
等を全く知ることができないというほかないのであつて、原判決が再更正処分の附
記理由には不備の違法があるとした判断は正当として首肯することができる。
 所論一ないし三および四の(一)は、法人税法三一条の三を適用して更正処分をす
る場合には、その旨の理由附記が法律上必要とされていないのであるし、また、申
告者の帳簿の記載を否定して更正する場合とは異なり、附記理由としてはせいぜい
のところ加除算科目と金額とを附記すれば足りるというが、右三一条の三を適用し
て更正処分をする場合にも同法三二条後段の規定により理由を附記すべきものと解
すべく、また、元来、右三二条後段の規定は、処分庁の判断の慎重、合理性を担保
してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立の便宜
を与える趣旨に出たものであると解すべきところ、本件再更正処分に附記された前
記理由においては、そもそも、所論借地権について帳簿の記載に誤りがあるという
趣旨であるのか、あるいは、所論のように前記三一条の三を適用した結果であるの
かさえ不明であるから、所論は採用できない。つぎに、所論四の(二)は、更正処分
の附記理由は被処分者に理解できれば足るのであり、所論乙号証の記載からすれば、
被上告人は借地権の評価額の点のみについて不服があるにすぎないのであり、した
がつて、被上告人にとつては、本件再更正処分に附記された理由により、その趣旨
を十分に理解できたものであるというが、右乙号証の書面の記載の趣旨は、後記の
ように、評価の点のみを不服とするものとは認められないのみならず、右書面は本
件再更正処分の通知書を受領した後に作成されたものであり、また、原判決の確定
するところによれば、被上告人は右通知書の記載自体からみてその理由を理解納得
できなかつたというのであるから、所論乙号証の書面の記載を根拠として本件再更
正処分の附記理由は不備ではないとすることはできない。さらに、所論四の(三)は、
仮に本件再更正処分の理由附記に不備があるとしても、そのかしは再調査決定の附
記理由によつて治癒されたというが、法人税法三二条後段の規定の趣旨が前記説示
のとおりであることにかんがみれば、再調査決定の附記理由が仮に不備でなかつた
としても、これにより遡つて更正処分の附記理由の不備が治癒されると解すること
はできない。以上、いずれの所論によつても、本件再更正処分の附記理由が不備で
ないとするには足りない。所論はすべて理由がなく、採用することはできない。
 同第二点について。
 所論は、要するに、原判決には法人税法三四条七項の解釈適用を誤つた違法であ
る、という。
 右三四条七項が再調査決定に理由を附記すべきものとしているのは、決定機関の
判断を慎重ならしめ、恣意を抑制するとともに、請求人の不服の事由に対する判断
を明確ならしめる趣旨に出たものであるから、附記さるべき理由は、請求人の不服
の事由に対応してその結論に到達した過程を明らかにしなければならないものとい
うべきである。もとより、附記の程度は具体的事案に応じて決せらるべく、また、
再調査請求を棄却する場合には、原処分の通知書の附記理由と相まつて、原処分を
正当として維持する理由を明らかにしていれば足りることは所論のとおりである。
しかし、本件においては、原判決の適法に確定した事実に徴すれば、被上告人の不
服申立の趣旨は、再更正処分には単に評価に納得しがたい点があるのみならず、無
償使用を事実上放任しているにすぎない本件土地使用関係の特殊性を無視したもの
であり、要するに、何故に借地権の計上洩であるとされるのかが理解しえないとい
うにあるところ、原判決の確定した本件再調査請求棄却決定の通知書の記載は、「
(株)B工業所並びに(株)Gはともに同族会社であり資産の譲渡による行為計算
は同族会社の行為計算否認に該当するとした当初の処分は相当であり、計算過程に
よる誤りはない、(株)Gの設立は新規設立であつて基本通達二五四の取扱は受け
ない。」というにすぎず、右の附記理由では、被上告会社の資産の譲渡による行為
計算は同族会社であるから否認することおよび計算過程に誤りがないことをいうだ
けであつて、法人税法三一条の三の規定の適用につき、否認の対象となつた行為ま
たは計算の内容、否認の根拠等が明らかではなく、結局、本件再更正処分の附記理
由と併せてみても、右処分が相当であつて再調査請求が理由がない、とする具体的
理由の記載があつたものということはできない。原判決が本件再調査請求棄却決定
の附記理由は不備であるとした判断は正当であり、また、原判断は所論判例の趣旨
に反するものではない。
 所論は、原判示にそわない事実または独自の見解を前提として原判決の違法をい
うものであり、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛