弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小田久蔵、同椎原国隆の上告理由について。
 上告人(控訴人)は原審第一回口頭弁論期日において、新たに「本件土地売買に
ついてはこれにより上告人に賦課されるべき譲渡所得税額を第一審で主張した程度
に低額にされることの合意が上告人と被上告人国との間に存したのであり、若しそ
の合意がなかつたとすれば右契約上の意思表示の要素に錯誤あるに帰し本件売買契
約は無効である」旨主張したことは原判決事実摘示のとおりである。所論は審理不
尽、理由の不備、齟齬をいうので按ずるに、右上告人の主張の趣旨が、所論の如く
税額の減額化が本件契約の縁由ないし動機をなしその点に関し錯誤があつたから本
件契約は無効であるというにあるとみられるとしても、およそ、動機の錯誤が法律
行為の無効を来たすためには、その動機が明示又は黙示に法律行為の内容とされて
いて、若し錯誤がなかつたならば表意者はその意思表示をしなかつたであろうと認
められる場合でなければならない。従つて動機が表示されても意思解釈上動機が法
律行為の内容とされていないと認められる場合には、動機に存する錯誤は法律行為
を無効ならしめるものではない。されば、「本件売買契約にはその縁由ないし動機
について表意者たる上告人に要素の錯誤があつた」という右上告人の主張も、特段
の事情のないかぎり、、上告人が税金の減額を受けるという上告人主張の縁由ない
し動機が本件売買契約の内容にまでされていたとの趣旨を含むものであると解する
ことの方が上告人の主張に副いこれを意味あるものと解して活かす所以であるから
この点に関する上告人の主張についての原審の解釈判断は(上告人に不利益でもな
く)相当である。そして原判決は上告人の右主張につき税金の減額化が動機である
か否かを判示しなかつたとしても、上告人の右主張に関して重要なのは本件売買契
約においては右税金が上告人主張の程度に減額されないならば上告人は本件契約を
締結しなかつたであろうというほどの関係において税金の減額化が契約の内容とさ
れていたか否かの点であるから、原判決は直接この点について「譲渡所得税の賦課
に関しては被上告人側において税務署と折衝して法律上可能な限り税額を低きに止
めるように努力するとの旨の諒解事項があつたに過ぎない、右言明が上告人主張の
如き本件売買契約の内容にまでなるというような強い効力を持つものであつたとの
事実は証拠上認められない」との趣旨を判示したのである。換言すれば、右諒解事
項の言明は上告人に対する譲渡所得税を税務署に対する被上告人側の折衝によりで
きるだけ上告人主張の程度に低額に決定徴収させる約束を含むことや、かような言
明がなかつたならば上告人は本件売買契約を締結しなかつたであろうという如き関
係において、右言明が本件売買契約の内容にまでされていたこと等については、こ
れを認めるに足る証拠がないから、上告人の右主張は採用し難い、というのが原判
示の趣旨とするところであると解される。してみれば、右原判示は上告人の主張を
善解の上その主張に関する証拠を検討した結果右主張事実を認めるべき証拠はない
旨判断したものであること明らかであり、原審の判断には所論の違法なく、論旨は
理由がない。
 上告代理人江川庸二の上告理由第一点、第二点について。
 本件売買契約の内容とされていなかつた事項に関してはたとえ上告人主張の如き
錯誤があつても法律上これを要素の錯誤として契約の無効を来たすものといえない
ことは上告代理人小田久蔵、同椎原国隆の前記上告理由について説示したとおりで
ある。原判決はこれと同趣旨の見解に立つて、附加の上第一審判決の事実認定を是
認引用して、判示税金の減額化は証拠上、第一審判決説示のとおり本件売買契約の
内容にまでなつていたと認むべきでない、としたのであるから原審の右判断には何
ら「売買契約の内容」の意義の誤解その他所論の違法はない。
 その余の論旨は原審の証拠の取捨判断、事実認定の非難に過ぎず、上告適法の理
由とならない。
 同第三点について。
 所論は憲法三二条違反をいうが、実質は原審の証拠の取捨判断、事実認定の非難
にほかならず、上告適法の理由とならない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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