弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 申立人の代理人弁護士斉藤一好、同徳満春彦の抗告申立の理由は、別紙のとおり
である。
 職権により調査すると、本件準抗告申立の趣旨は、申立人に対する物品税法違反
嫌疑事件について、昭和四二年九月二一日台東簡易裁判所裁判官がした捜索差押許
可状五通による各差押許可の裁判の取消、ならびにA税務署収税官吏が右捜索差押
許可状五通のうちの四通により同月二三日にした各差押処分の取消を求めるという
にある。すなわち、本件準抗告は、国税犯則取締法二条の規定に基づき裁判官がし
た差押の許可、ならびにこれにより収税官吏がした差押処分に対する各不服申立に
つきそれぞれ刑訴法四二九条、四三〇条の規定が準用されることを前提として、申
し立てられたものである。そして、記録によれば、申立人主張のとおり捜索差押許
可状の発付ならびに差押のあつた事実を認めることができる。そこで、国税犯則取
締法二条に基づき収税官吏の請求により裁判官のした差押の許可に対する不服申立
について刑訴法四二九条が準用されるかどうか、また、収税官吏のした差押処分に
対する不服申立について同法四三〇条が準用されるかどうか、の二点について考察
する必要がある。
 まず、国税犯則取締法二条は、収税官吏は、犯則事件を調査するため必要がある
ときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所の裁判官の
許可を得て臨検、捜索または差押をすることができるものと定めている。この裁判
官の許可は、往々、許可の裁判または許可状発付の裁判と称されるが、しかし、裁
判所または裁判官が訴訟の当事者に宛てて行なう訴訟法上の通常の意義における裁
判ではなく、職務上の独立を有する裁判官が、公正な立場において、収税官吏の請
求に基づき、収税官吏が右の強制処分を実施することが適法であるかどうか等を事
前に審査したうえ、これを肯認するときは、許可状を交付することによつてその強
制処分を適法に行なうことを得しめるものにほかならない。すなわち、それは、収
税官吏に対して強制処分の実施を命ずるものではなく、また、一連の徴税手続の一
環としてなされる国家機関相互間の内部的行為にすぎないのであつて、強制処分を
受けるべき者に対して直接に効力を及ぼすものではないのである。このような行為
については、不服申立に関する明文の規定がないかぎり、独立の不服申立を認めな
い趣旨と解すべきであり、したがつて、刑訴法四二九条の規定の準用を認めるのは
相当でなく、その許可の取消を求める準抗告は不適法というべきである。そして、
このように解しても、右の許可に関して法律上の不服の理由を有する者は、後述の
ごとく、その許可により実施された強制処分の結果自己の権利が違法に侵害された
ことを主張して、行政訴訟により右許可自体の違法を理由としても当該強制処分の
取消を求めることができるのであるから、裁判を受ける権利を保障する憲法三二条
の規定に違反することはないものといわなければならない。
 つぎに、国税犯則取締法による国税犯則事件の調査手続は、その内容として収税
官吏の質問、検査、領置、臨検、捜索、差押等の行為が認められている点において
刑訴法上の被疑事件の捜査手続と類似するところがあり、また、犯則事件は、告発
によつて被疑事件に移行し、さらに告発前に得られた資料は、被疑事件の捜査にお
いて利用されるものである等の点において、犯則事件の調査手続と被疑事件の捜査
手続とはたがいに関連するところがある。しかし、現行法制上、国税犯則事件調査
手続の性質は、一種の行政手続であつて、刑事手続(司法手続)ではないと解すべ
きである。けだし、国税犯則取締法によれば、国税犯則事件の調査手続は刑訴法上
の被疑事件の捜査でないことが明らかであり、ことに間接国税犯則事件については
通告処分という行政措置によつて終局することがあり、また、国税犯則事件に関す
る法令に基づき収税官吏等のする処分に対する不服申立については、それが行政庁
の処分であることを前提として、行政事件訴訟法により訴訟を提起すべきものであ
るからである。国税犯則取締法二条による収税官吏の差押処分に対する不服申立も
またその例外ではなく、行政事件訴訟法に定める行政事件訴訟の方法によるべきで
あつて(なお、当裁判所昭和二六年(オ)第五四八号同二八年六月二六日第二小法
廷判決、民集七巻六号七六九頁参照。)、これにつき刑訴法四三〇条の規定の準用
を認めるべき理由はなく、かかる差押処分の取消を求める準抗告は不適法といわな
ければならない。
 以上に説示したとおり、本件準抗告は、もともと法律上許されないものであつて
不適法であり、したがつて、原裁判所が、本件準抗告を適法と解し、申立について
判断を加えたうえ理由がないとしてこれを棄却したのは誤りであつて、準抗告を不
適法として棄却すべきであつたといわなければならない。そして、本件抗告の理由
は、本件準抗告が適法であることを前提とするものであるところ、その前提を欠く
ことになるので、抗告の理由について判断するまでもなく、抗告を棄却すべきであ
る。
 よつて、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり決定する。
  昭和四四年一二月三日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    関   根   小   郷

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