弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人松永東、同小山胖の上告趣意書は末尾に添えた別紙の通りである。
 (一) 論旨第一点は、原審公判廷において被告人および原審弁護人から、本件
犯行当時被告人が脳梅毒のため心神耗弱の状態にあつた旨主張したにかかわらず、
原判決が右の主張に対する判断を示さなかつたのは違法である、というのである。
しかし原審の記録をしらべて見ると、被告人からの申立というのは、強盗共謀の点
についての裁判長の訊問に対して答えるとともに当時の気持について附加陳述した
に過ぎず、被告人自身から心神耗弱の主張がされたものとは考えられない。また原
審弁護人が最終弁論として被告人の当時の精神状態について陳述しているのは、単
に本件犯罪の動機、家庭の事情、現在の健康状態、改悛の模様等と共に専ら本件犯
罪の情状として述べたに過ぎない。要するに原審公判廷において所論のような主張
がされたものとは認められず、従つて原判決が被告人の精神状態についての判断を
示さなかつたことを違法とは言い得ないのであつて、論旨は理由がない。
 (二) 論旨第二点は、原判決は、押収のブローニング拳銃一挺および実弾六発
(東京高等検察庁昭和二三年押第三四一五号の四、五)を証拠物とし、またその没
収の言渡をしているが、本件記録中の証拠品総目録その他にその番号の物件は存在
しない、と主張する。しかし、前記の拳銃および実弾は「浦和地方検察庁昭和二三
年八月三〇日押第四六〇号の四、五」として押収され、東京高等検察庁に移管され
るとともに前記の番号に切りかえられたことは、別冊記録中に綴じ込まれた証拠物
件総目録の記載および本記録表紙に押された番号印によつて明白であつて、前記物
件の存在は疑なく、論旨は理由がない。
 (三) 論旨第三点は、原判決が被告人に言渡した懲役五年の実刑は憲法第三六
条にいわゆる「残虐な刑罰」に該当して違憲である、というのである。しかし憲法
第三六条にいわゆる「残虐な刑罰」の意義および普通の刑を法律に定められた範囲
で量定することがそれに当らないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二二年(れ)
第三二三号同二三年六月二三日判決、昭和二三年(れ)第三四八号同年九月二二日
判決等)の示すところであつて、論旨は理由がない。
 よつて旧刑事訴訟法第四四六条および最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項
に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二四年一一月二二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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