弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決主文二項を取り消す。
2(本案前)
 本件予備的請求を却下する。
(本案)
 本件予備的請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
 主文同旨
第二 当事者の主張
 当事者双方の事実上の主張は次に付加、訂正する他、原判決事実摘示のうち、
「予備的請求関係」と同一であるから、これを引用する。
一 右「予備的請求関係」において引用する原審主位的請求に関する摘示のうち、
「本件不支給処分」とあるのは、すべて「本件公務外認定処分」と読み替える。
二 原判決二四頁三行目冒頭以下五行目末尾までを「虚血性心疾患が、別表の「そ
の他業務に起因することが明らかな疾病」に該当することを要することは、前記の
とおりであるが、業務が当該疾患発症に相対的に有力な原因を与えたものであるこ
とを認定するについては、」と、同二六頁三行目「右Iイの要件」とあるのを「右
Iの要件」と、同四〇頁初行から二行目にかけて「支部審査会」とあるのを「地方
公務員災害補償基金支部審査会(以下「支部審査会」という。)」と、同四行目
「審査会」とあるのを「地方公務員災害補償基金審査会(以下「審査会」とい
う。)」と各改める。
第三 証拠関係
 原審・当審記録中の証拠目録記載のとおりである。
       理   由
一 当裁判所も被控訴人の本件予備的請求は理由があると判断するものであって、
その理由は次に付加、訂正する他、原判決理由説示(原判決四六頁二行目冒頭以下
同一〇四頁五行目末尾まで)と同一であるから、これを引用する。
1 原判決四九頁一〇行目末尾に次のとおり付加する。
「控訴人は、前記最高裁判所判決のいう「特段の事情」が認められる場合とは旧訴
ないしは主位的請求が適法に提起された場合に限られるべきところ、本件はもとも
と主位的請求が不適法なものであるから、出訴期間を徒過した予備的請求の瑕疵は
治癒されるべき筋合いのものではないと主張する。しかしながら前記判決を子細に
検討して判断しても控訴人の主張は独自の解釈として直ちにこれを採用することは
できない。本件は主位的請求を提起するについて被控訴人が誤って不支給処分の取
消しを求めたとしても、その前提には控訴人が昭和六〇年五月三一日付けでなした
唯一の処分(本件公務外認定処分)が存するだけであるから、主位的請求を提起し
た時に変更後の予備的請求にかかる公務外認定処分の取消しの訴えがあったと解す
べき特段の事情があったと解される。」
2 原判決五四頁初行「基準」とある次に「、特に業務過重性と相対的有力原因」
と付加し、同三行目冒頭以下末尾までを削除し、同五六頁三行目「相対的」とある
のを「客観的に見ても相対的」と改める。
3 原判決五六頁八行目冒頭以下同六二頁三行目末尾までを削除し、同八行目「第
一〇四号証」とある次に「、甲一三一ないし一三三、甲一四一、一四二、甲一四
六、甲一五〇」と、同九行目「第二八号証」とある次に「、乙二九」と、同末行
「a」とある次に「(原審・当審)、b(当審)」と各付加する。
4 原判決六二頁末行以下同六三頁初行にかけて「以下の事実が認めら事実が認め
られ、」とあるのを「以下の事実が認められ、」と改める。
5 原判決六四頁八行目末尾に「なおcの健康診断における血液検査は、名古屋市
立学校教職員保健管理要領に従って昭和五六年度中に五〇才になる者として行われ
たもので、同市においては全教職員に対して毎年血液検査が行われているものでは
ない(乙四二)。。」と付加する。
6 原判決七六頁初行末尾に次のとおり付加する。
「(六)自治医科大学総合医学第一講座教授bの意見
 自治医科大学総合医学第一講座教授であるbは、その意見書(乙六二)及び当審
における証人尋問において、概ね次のとおりの意見を述べている。
(1) cの死因は、急性心筋梗塞である可能性が高い。
(2) 過労やストレスの蓄積が、心筋梗塞の危険誘因であることは学説上は認め
られているが、そのことだけで発症する実例はなく、cの場合は長く生徒指導主事
の職にあったのであるから、ストレス適応が働くもので、前日及び一週間前の勤務
状況を見る限り、これが心筋梗塞の有力な原因になってはいない。」
7 原判決七七頁末行「第九三号証」とある次に「、甲一二一、一二二」と、同行
「乙三〇号証」とある次に「、乙六一」と付加する。
8 原判決七八頁初行「同d」とあるのを「同d(原審・当審)、証人e(当
審)」と改め、同二行目末尾に次のとおり付加する。
「(なお控訴人は、甲二一の一、二及びそれに基づいて作成された甲四二の信憑性
を争うけれども、原審証人f、同gの各証言によれば、甲二一の一、二は、cと共
に勤務していた同僚達が、同人の死の公務災害の認定申立てを希望して、同人の残
したメモや手帳だけでなく、同僚達のそれ、昭和五七、五八年度の三年生の全生徒
や父兄に対する調査票や警察署への照会を集め、校長以下教頭、学年主任、生徒指
導担当者や同人と親しかった同僚十数人がcの死の直後の夏休みに早朝から深夜ま
で二日間にわたり、それらの内容の突き合わせを行って作成したもので、作成の動
機、作成者の構成、作成経過からみて、日時に多少の食い違いがあったとしても、
それが直ちに信憑性を低下させるものとは認めがたいのでこの点の控訴人の主張は
採用しない。)」
9 原判決九〇頁八行目末尾に次のとおり付加する。
 「昭和五七年の夏以降は、cの帰宅が遅くなることが多くなり、同五八年になる
と、家で『疲れた』とか『休みたい』とよく口にするようになり、帰宅後もただ休
息するだけで家族で団らんをすることも少なくなり、妻が学校を変わることを勧め
たりなどした。死の前々日には歯痛で食事が十分できなくなり、妻が治療を勧めた
が通院の暇がないと言ううちに死を迎えた。」
10 原判決九五頁二行目「全く取らず、」以下「行動に出ていたなど、」までを
「全く取らず、特に同五八年初めには豊正中学校の状況がマスコミを通じて報道さ
れたことや、学校の方針変更や職員構成の変更は古くからの生徒指導主事であるc
の責任の重大さを更に自覚させて、休日も返上し、我が身の健康状態も顧ることな
く生徒指導を兼ねた行動に出させたなど、」と改める。
11 原判決九五頁一〇行目の末尾に次のとおり付加する。
 「控訴人は、cは昭和五七、五八年度に年次休暇を取っていなかったとしても、
昭和五七年九月から同五八年六月までの間に一か月延べ六日ないし一五日の休暇を
取っており、この間教員には夏休み、冬休み等の長期研修日という出勤を要しない
日もあるのであるから、疲労困憊などしていなかった旨主張する。
 しかしながら控訴人の休日の計算は土曜日も休日に計上するなどその算定方法に
問題があるし、原判決添付の問題行動一覧を子細に検討し、又dの当審供述によれ
ば、校長でも一人で校内を歩くのに危険を感じることもあったという事実を合わせ
考えれば、当時の豊正中学校の異常な事態は十分理解できるところ、これによれば
同校の教師が当時おかれていた状況や苦慮は休暇の有無で対応できるものではなか
ったこと、甲一二、二八の一、二八の五ないし一三及び証人gの原審における供述
によれば、cは生徒指導主事として一応は校外指導を分担し、その下には学年主
任、副主任がつけられていたし、各主任各自は協力していたとはいえ、生徒の問題
行動はすべて総括責任者であるcの下に伝えられ、cは直接、間接にすべてのこと
に関わらねばならなかったことはもとより、職員ばかりでなく問題行動を起こす生
徒に指導力のあったcはなにかにつけ重宝がられ、歯医者に通う時間も惜しんで職
務を全うせざるを得なかったこと、教員には超勤という概念はただちにはいれられ
ないまでも、乙六、甲四二によって認められるcの時間外勤務は、昭和五七年九月
から同五八年六月までの一〇か月に限っても約三三九時間三〇分(一か月平均約三
四時間)、昭和五八年二月から同年六月までに限れば約二七二時間(一か月約五四
時間)になること、さらに昭和五八年度から校長以下職員の約四分の一が移動し、
新たに地域の協力も得ると共に、問題行動に対しては直ちに警察通報も辞さない校
長の方針に変更したこと等を総合して判断すると、荒れる中学校として世間の注視
を集める学校の生徒指導主事としてのcの責任は前にも増して重くなり、更に一方
では問題行動を起こす生徒やその父兄からも一定の信頼を集めていた同人は学校の
方針転換との間にジレンマを感じていたであろうことは容易に推認されるところ、
結局問題行動を少なくするにしくはないとして異常な努力をして疲労を増大させた
ものと認められる。当時のcの状態については同人とわずかに二か月間ばかり勤務
しただけのd校長さえ同人が疲れていると感じていたばかりでなく、同人の死後容
易に後任者を選ぶことができなかったことによっても大変なものであったと認めら
れる(d当審供述)。
 以上のとおりであるから控訴人のこの点の主張は採用しない。」
12 原判決九八頁三行目「しかし」以下同六行目「明かである上、」までを「正
規の勤務時間内の日常業務を基準とすべきという控訴人の主張は、本件のcの学校
における役割を考えると教育基本法に言う教員の役割をわきまえない見解と言わざ
るを得ず、又」と改める。
13 原判決一〇一頁八行目冒頭以下末尾までを「証拠はない。即ち乙四二、甲八
によれば、昭和五六年の血液検査はたまたま当時cは同年中に五〇才になる者とし
て検査対象になっただけでなっただけで検査結果である総コレステロール値二七一
mg/dl(高脂血症二度・中等度)が恒常的なものかは疑わしいし、血糖値につ
いては既に認定したとおり(原判示)証拠上確たるものとはいえない。他にこの点
の控訴人の主張を認めるに足る反証はない。」と改める。
三 よって被控訴人の本件公務外認定処分の取消しを求める被控訴人の予備的請求
は理由があるとしてこれを認容した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却する
こととし、訴訟費用については、行訴法七条、民訴法六七条一項、六一条を適用
し、主文のとおり判決する。
(口頭弁論の終結の日)平成一〇年七月一四日
名古屋高等裁判所民事第一部
裁判長裁判官 笹本淳子
裁判官 丹羽日出夫
裁判官 戸田久

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