弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決を取消す
     被控訴人等の請求を棄却する。
     訴訟費用は、第一、二審共被控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴人等は「主文同旨の判決」を求め、被控訴人等は「控訴を棄却するとの判
決」を求めた。
 当事者双方の事実上の主張、提出援用の証拠及びその認否は、原判決の摘示する
ところと同一であるから、ここにこれを引用する。
         理    由
 訴外Aが、昭和二十六年三月十九日直系卑属及び直系尊属竝びに配偶者なくして
死亡し、同訴件人の亡弟、Bの子である被控訴人等が代襲により、Aの共同相続人
となつたことは当事者間争がない。(尤も成立に争のない甲第一号証から第三号証
まで及び同甲第五号証中Cの戸籍抄本の記載によると、被控訴人等と共に、Aの弟
DもAの相続人であることが認められる。)
 成立に争のない甲第五号証の一部(本件記録四六丁から四九丁までと五六丁から
七八丁まで)及び成立に争のない乙第一号証の一、二竝びに当事者弁論の全趣旨に
依ると、大分家庭裁判所臼杵支部は、昭和二十六年四月十一日右Aの自筆証書の形
式による遺言書として、その本文の文言が被控訴人主張の通りの記載ある乙第一号
証の一、二の遺言書を検認したこと、右遺言書の本文(封筒の内容のこと、即ち民
法第九百六十八条にいう所の全文、氏名及び印影)及びこれを納むる封筒の各記載
と印影は、総てAの自書、押印するところで、同人は死亡数日前の昭和二十六年三
月十四日本文を自書し、同月十九日封筒(乙第一号証の一)の表に遺言状と、同裏
面に自己の氏名及び数字をもつて「26319日」と日附を自書し、本文の同人名
下に自己の印をおした上これを右封筒に入れて封〆めをなし、又本文の同人名下に
押した印で、封筒裏面の上部竝びに下部の折締めに封印を施したことが認められ
る。(尚附言すれば、Aがその内縁の妻である控訴人E及びAの妹Fの夫たるCの
両名に動不動産一切を与え、弟Bの妻子等には一品たりとも与えない旨の本件遺言
したのは、Aは生前Bと不仲で、親族交際をなさず、A死亡のことを知れば、相当
の所要は放置して通夜、葬式に参列すべきであるのに死亡の通知に接しながら、B
の長男である被控訴人Gは、当日偶会社の宿直であるとて葬式にも参列せず、二男
Hも、同様の理由によりA方に悔みにも赴かず、Bの妻で、被控訴人I外二名の法
定代理人である意恵亦死亡の通知を受けながら格別の所要もなく、悔みにも赴かな
い程の間柄であつたがためであることが推認される。)以上の認定に反する甲第五
号証のJ審問調書の記載は当裁判所の措信しないところで、他に右認定を動かす何
等の証左も存しない。
 然るに被控訴人等は、本件遺言書(の本文)に日附の自書がないからこの一事に
よつて本件遺言書は無効で<要旨>あると主張する。然しなから、自筆証書による遺
言書に、法が日附の自書を要求する所以は、遺言者が遺言をなす当時におい
て遺言能力を有するや否やと二個以上の遺言が抵触するが如き場合に、遺言の前後
を確定する必要あるに対処しようとするに外ならないから、日附は必ずしも遺言書
の本文に自書するの要なく、前記認定のように、遺言者たるAが遺言の全文及び氏
名を自書し印をおし、これを封筒に入れて、右の印章を以つて封印し、封筒に、日
附を自書したような場合は、たとえその日附が数字をもつて「26319日」と記
載されたとしても、民法第九百六十八条第一項所定の日附の自書ありというを妨げ
ない。従つて被控訴人の右主張は採用しない。
 その他に本件遣言を無効とする証左も存しないから、これが無効確認を求める被
控訴人等の請求を棄却すべく、これを認容した原判決は不当であるから、民事訴訟
法第三百八十五条により、これを取消し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九
十六条第八十九条第九十三条を適用し主文の通り判決する。
 (裁判長判事 二階信一 判事 吉田信孝 判事 秦亘)

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