弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人橋本辰夫、同榊原卓郎、同安田叡の上告理由第二の二について
 一 記録上認められる本件訴訟の経緯の概要は、次のとおりである。
 1 (一) 上告人(D町会の代表者の交代により、昭和五三年上告人Eが第一審
原告・被控訴人Fを、昭和五七年上告人承継人Aが上告人をそれぞれ承継した。こ
れらをいずれも単に「上告人」という。)は、(1)権利能力なき社団である「D会」
は、昭和二七年三月二三日、宗教法人Gから第一審判決別紙目録記載の土地(以下
「本件土地」という。)の贈与を受け、その所有権が同会の会員全員に総有的に帰
属したので、右総有関係を公示するため、昭和二九年六月二二日、本件土地につき
所有者を「中野区a町b番地D町会内H」とする所有権移転登記(以下「本件登記」
という。)を経由した、(2) 昭和二八年一〇月二〇日にD会に代わつて現在の「
D町会」が発足したが、両者は会員の範囲、目的等その実体において変更がなく、
社団として前後同一である、(3) 本件土地について、被上告人B1は東京法務局
中野出張所昭和四六年一〇月八日受付第二七二六四号所有権移転請求権仮登記(以
下「本件仮登記」という。)を主登記とする同出張所同年一二月二七日受付第三四
三二三号所有権移転の附記登記を、被上告会社は同出張所同年一一月三〇日受付第
三二三四一六七号所有権移転登記(以下「本件移転登記」という。)をそれぞれ経
由している、と主張した。(二) 上告人は、右主張事実によつて、D町会の代表者
会長として、右会の会員全員からの受託にかかる本件土地の所有権に基づき、本件
土地につき、亡Hの相続人である被上告人B2、同B3、同B4、同B5、同B6、
同B7及び同B8に対し所有権移転登記手続を、また、被上告人B1に対し本件仮
登記の、被上告会社に対し本件移転登記の各抹消登記手続を求める、と申立てた。
(三) 第一審は、上告人を代表者とするD町会がD会とその組織・構成において同
一であることその他上告人の右主張事実を認めて、上告人の請求を認容した。
 2 右第一審判決に対して被上告人らが控訴したところ、原審は、宗教法人Gの
D会に対する本件土地の前記贈与の事実は認めたものの、太平洋戦争前の「旧D町
会」が終戦直後のマツカーサー指令に基づき解散させられたのちに本件土地に存す
るI神社の維持に特別の熱意を有する十数名の地元有力者によつて組織されたD会
は、その運営方法等に明確な定めがなく、D町住民一般を会員として包容する組織
にはなりえなかつたものであり、町内会の結成が法的に可能になつた昭和二八年に
至り亡Hら地元有力者が民主的運営方法等を定め同町住民多数の入会を得て発足さ
せたD町会とは財産主体としての前後同一性を認めることは困難であるとしたうえ、
他にD町会の本件土地取得原因事実につき主張・立証がない以上、権利能力なき社
団であるD町会の全会員が本件土地につき総有的に所有権を取得したとの上告人の
主張は採用することができないとして、被上告人らの控訴を容れ、第一審判決を取
り消し、上告人の請求を棄却する旨の判決をした。
 二 しかしながら、記録によれば、上告人は、前記の主張事実のほかに、(一) 
(1) D会は太平洋戦争前から存した旧D町会が終戦直後マツカーサー指令に基づ
き解散させられたため同会と同様の役割を果たすものとして亡Hほか地元有力者に
よつて結成され、宗教法人Gから本件土地の前記贈与を受けたものであるところ、
亡Hほか右地元有力者は、昭和二八年に町内会の結成が可能になつたので、町内住
民全般に呼びかけて、D会と同様の目的を有しこれを発展させるものとしてD町会
の結成を企て、町内住民多数の入会を得、その代表者にD会代表者亡Hを選任して、
これを発足させ、それと同時にD会を解散したこと、(2) 本件土地は、戦前から
I神社の鳥居、御輿倉等の存する境内地であり、本件土地においては旧D町会及び
D会により祭礼等の行事が行われ、また、その一部は旧D町会及びD会の事務所敷
地として使用されてきたものであるところ、D町会は発足以来右事務所を引き続き
使用するなど本件土地を従前と同様の形態で占有使用してきたほか、昭和三二年に
はD町会代表者亡H名義で中野区に対して本件土地の一部を児童遊園地として貸し
渡す旨の契約を締結していること、(3) 本件土地については、D会代表者名義の
所有権移転登記は経由されず、D会の解散・D町会の発足ののちである昭和二九年
にD町会の代表者亡Hと解される前記所有者名義の本件登記がされていることを主
張していること、及び (二) 本件訴訟の当初においては本件土地につきD町会自
ら贈与を受けた旨を主張していたことが認められる。そして、これらの主張事実か
らすれば、上告人が、D町会の本件土地の所有権取得原因に関する主張としては、
不明確ながらD町会がD会から本件土地を承継した旨の主張をしていることが窺わ
れなくはないから、原審としては、上告人又はその訴訟代理人に対して、本件土地
の承継に関する主張の趣旨を釈明したうえ、これに対する当事者双方の主張・立証
を尽くさせ、もつて事案の真相をきわめ、当事者の真の紛争を解決することが公正
を旨とする民事訴訟制度の目的にも適合するものというべきであつて、かかる釈明
に及ぶことなく、前示の理由のみで直ちに上告人の各請求を排斥することは、釈明
権の行使において違法があるものといわなければならない。したがつて、原審は、
前記説示の点において釈明権の行使を怠り、ひいて審理不尽の違法を犯したものと
いうべく、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余
の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、前記のD
町会の本件土地の所有権取得原因につき更に審理を尽くさせるため、本件を原審に
差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    長   島       敦

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