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平成24年12月26日判決言渡同日原本受領裁判所書記官
平成24年(行ケ)第10253号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年12月12日
判決
原告新日本カレンダー株式会社
同訴訟代理人弁護士藤川義人
木村一成
大林良寛
被告協和紙工株式会社
同訴訟代理人弁理士奥村茂樹
主文
1特許庁が無効2011-890107号事件につ
いて平成24年6月5日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文1項と同旨
第2事案の概要
本件は,原告が,被告の後記1の本件商標に係る商標登録を無効とすることを求
める原告の後記2の本件審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとし
た別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記
4のとおりの取消事由があると主張して,原告が本件審決の取消しを求める事案で
ある。
1本件商標
本件商標(登録第5369043号)は,「カラーラインメモ」の片仮名を標準文
字で表してなるものであり,平成22年8月2日に登録出願され,第16類「カレ
ンダー」を指定商品として,同年11月1日に登録査定を受け,同月19日に設定
登録されたものである(乙5,6)。
2特許庁における手続の経緯
原告は,平成23年12月5日,特許庁に対し,本件商標の登録を無効にするこ
とを求めて審判を請求した。特許庁は,これを無効2011-890107号事件
として審理し,平成24年6月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする
本件審決をし,その謄本は,同月14日,原告に対して送達された。
3本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,要するに,本件商標の登録が,商標法4条1項10号及び1
5号に違反してされたものではないから,同法46条1項によりその登録を無効と
すべきでない,というものである。
4取消事由
商標法4条1項10号の該当性に係る認定・判断の誤り(取消事由1)
商標法4条1項15号の該当性に係る認定・判断の誤り(取消事由2)
第3当事者の主張
1取消事由1(商標法4条1項10号の該当性に係る認定・判断の誤り)につ
いて
〔原告の主張〕
原告は,平成12年から,業として生産・譲渡する商品であるカレンダーに
ついて,「カラーラインメモ」という標章をカタログに付して頒布し,もって使用し
ていたところ(以下,原告使用に係る商標を「使用商標」という。),本件審決は,
原告提出の証拠によっては,使用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時,
取引者及び需要者間において原告の業務に係る商品(カレンダー)に使用する商標
として広く知られていた事実を認めることができず,周知・著名性を有していたと
はいえないとする。
ところで,カレンダーの販売ルートは,原告のようなカレンダーメーカーが
いったん販売代理店に販売し,販売代理店が広告主又は小売店に販売し,広告主又
は小売店が最終消費者に配布又は販売するというものである。そして,カレンダー
業界では,毎年3月頃,翌年版のカレンダーの展示会が開催され,次いで,カレン
ダーメーカーが販売代理店に対して自社商品のカタログを頒布し,毎年4月頃から
具体的な営業活動が開始されている実情にある。
原告が使用商標をカタログに付して使用していたカレンダー(以下「原告カ
レンダー」という。)には,3つの型番(NK-174,NK-162及びNK-4
50)があるところ,原告は,このうちNK-174については平成11年(平成
12年版)から,NK-162及びNK-450については平成18年(平成19
年版)から,その製造・販売を開始している。そして,原告は,平成12年版から
平成24年版までの原告カレンダーのカタログを,13年もの長きにわたり,合計
63万1962部頒布しており,その頒布先となる販売代理店は,延べ6035店
である。原告は,全国カレンダー出版協同組合連合会(全国に約35社存在するカ
レンダー専業メーカーのうち,85%を超える30社が加入している。以下「全国
連合会」という。)所属のカレンダーメーカーの中で,売上高が全国1位であり,毎
年400店を超える販売代理店に自社のカタログを頒布しているカレンダーメーカ
ーは,全国にも多くはない。
したがって,上記カタログは,相当多数の販売代理店に頒布されているものとい
ってよい。
原告は,平成12年版から平成24年版までの原告カレンダーを,13年も
の長きにわたり,合計1014万0107部販売しており,その販売先となる販売
代理店は,延べ4927店である。
原告は,毎年200を超える型番のカレンダーを販売しており,カレンダーの1
つの型番の年間販売数の平均は,せいぜい5万冊程度であるところ,原告カレンダ
ーは,平成19年版以降,一部については原告の九州支社や名古屋支社を介して,
毎年100万冊以上が販売されており,販売冊数が他のカレンダーに比べて圧倒的
に多いいわゆる大ヒット商品である。
インターネットの検索エンジンで平成24年7月9日に「カラーラインメ
モ」と検索すると,ヒットする上位100のホームページのうち,全てが原告カレ
ンダーである。このことから,本件商標出願時又は登録査定時においても使用商標
が広く知られていたことを容易に推認することができる。
前記のとおり,原告は,平成12年版から原告カレンダーを製造・販売して
いたものであるが,被告が「カラーラインメモ」との標章を付したカレンダー(以
下「被告カレンダー」という。)の平成23年版を販売していたことが判明したため,
平成22年7月29日,当該販売が原告の著作権を侵害し,不正競争防止法に違反
する旨の通知書を送付した。しかし,被告は,同年8月6日,原告に対し,無用な
争いを回避するため被告カレンダーの形態の変更を予定している旨を回答している
にもかかわらず,これに先立つ同月2日,原告からの権利行使に対する防衛のため
に本件商標を出願した上,被告カレンダーの販売を継続した。本件商標のこのよう
な出願の経緯に鑑みると,被告は,原告カレンダーに依拠して被告カレンダーの製
造・販売を企図したことが明らかであり,このことは,原告カレンダー又は使用商
標に周知性があることを被告自身が認識していたことを示すものである。
被告を除き,原告以外のカレンダーメーカーが使用商標を使用してカレンダ
ーを製造し,あるいは販売代理店が使用商標を自己商品の識別のために使用したこ
とはなく,現に,平成14年以降の全国連合会作成のカレンダー価格表には,原告
カレンダー以外に「カラーラインメモ」との語を使用したものは,存在しない。被
告が指摘する複数の会社は,いずれも単なる販売代理店であって,原告カレンダー
をそのホームページにおいて自社のカレンダーとして販売しているのではない。
以上のとおり,原告は,平成12年版から13年もの長きにわたり,販売代
理店に対し,使用商標とともに原告カレンダーが掲載されたカタログを多数頒布し
ており,かつ,販売代理店を通じて,最終消費者に対し,多数の原告カレンダーを
販売してきたのであり,被告も,このことを利用して原告カレンダーに酷似した被
告カレンダーの製造・販売を開始したものである上,原告以外のカレンダーメーカ
ーが使用商標を使用してカレンダーを製造し,あるいは販売代理店が使用商標を自
己商品の識別のために使用したことはないのであるから,使用商標が本件商標出願
時及び登録査定時において,原告の商品(原告カレンダー)に使用される商標とし
てカレンダーの取引業者及び最終消費者に広く知られ,周知性を備えていたことは,
明らかである。
そして,使用商標と本件商標とは,その外観,称呼及び観念が完全に一致するか
ら,類似する商標であり,使用される商品(指定商品)もカレンダーであって同一
である。したがって,本件商標の登録は,商標法4条1項10号に違反してされた
ものであり,これと異なる判断をした本件審決が誤りであることは,明らかである。
〔被告の主張〕
原告主張に係る原告カレンダーには,「」などと記載され
ているが,これは,「メモ可能な七色線模様付きカレンダー」であるという,当該カ
レンダーの内容を記述したものであり,書籍の題号と同様にその中身を表示したも
のであって,商標の基本的機能である出所表示機能を有するものではない。したが
って,上記「」は,商標として使用されているのではない。
むしろ,上記カレンダーの左上隅には,全国連合会が商標権を有する「図形化さ
れたJCAL」(JCALとは,全国連合会の英語での略称である。)との表示があ
るところ,書籍にその出版社の表示が商標として使用されているのと同様,この「図
形化されたJCAL」こそが,当該カレンダーという商品の出所を表示する商標で
ある。なお,一般的に,商標は,意匠を構成する要素ではないことから,意匠登録
出願を行う際には商標が削除される場合が多いところ,原告が意匠登録を受けてい
る上記カレンダーについての意匠からは上記商標が削除されていることからも分か
るように,当該カレンダーで商標として使用されているのは,「図形化されたJCA
L」であり,「」ではない。
また,原告が被告に送付した通知書には,被告カレンダーが著作権侵害又は不正
競争防止法違反である旨が記載されているが,「カラーラインメモ」なる商標を模倣
したとの記載はない。このように,原告も,「カラーラインメモ」が商標ではなく,
カレンダーという商品の内容を示す記述であると認識していたのであるから,この
点からも,「カラーラインメモ」は,商標として使用されているものではないといえ
る。
原告提出に係る全国連合会のカレンダー価格表には,「カラーラインメモ」なる記
載があるものの,そこに記載の他の商品については,同じ欄に「七福神」等のカレ
ンダーの内容が記述されているから,当該「カラーラインメモ」との記載は,カレ
ンダーの内容を記述したものであって,出所表示機能を基本的機能とする商標とし
て使用されているものではない。
以上のとおり,「」又は「カラーラインメモ」は,カレンダーの
内容を表す記述であって,これが使用されていても,取引者及び需要者は,特定の
出所を示す商標であると認識しない。
「カラーラインメモ」なる題号のカレンダーは,原告とは異なる複数の会社
のホームページにおいて自社のカレンダーとして紹介されている。また,「カラーラ
インメモ」との用語によるインターネットの検索結果によれば,複数の会社が出所
を表示することなく「カラーラインメモ」を使用している。さらに,原告が「カラ
ーラインメモ」との記載を含むカレンダーのカタログを多数頒布したとしても,そ
こには数百種類のカレンダーがその題号とともに紹介されているのであって,「カラ
ーラインメモ」のカタログではないから,このように数百分の1の記載によって「カ
ラーラインメモ」との商標が取引者又は需要者に周知になるとは認められない。ま
た,上記カタログの題号の記述は,カレンダーの内容を示したものであり,取引者
又は需要者によって商標として認識されていない。
このように,「」又は「カラーラインメモ」は,特定人の出所を
表示するものとして使用されていないから,原告という出所を示すものとはいえず,
原告が使用している周知商標とはいえない。
原告は,平成24年7月作成のカレンダーの販売先一覧により原告カレンダ
ーを多数販売した旨を主張するが,納品書,請求書,領収書等の伝票類を全く提示
していないから,当該一覧がいかなる資料により作成されたか不明であり,そこに
記載の販売冊数が真実であるか否かの確認ができない。また,上記一覧は,原告自
身の九州支社や名古屋支社に対する販売が記載されているように,基礎資料が不明
であり,販売されていないものも含めて作成されている可能性が大きい。
さらに,原告は,カレンダーの販売冊数一覧表を提出しているが,これにカレン
ダーの販売価格を乗じると,平成22年の場合,約337億円の売上高が得られる。
他方,原告は,同年の卸売価格による売上高が約60億円であった旨を訴状に注記
しているから,卸売価格は,販売価格の約18%となるところ,販売代理店が約8
0%以上ものマージンを得ることは,考えられない。このように,上記販売冊数一
覧表の記載は,疑わしい。
原告は,以上のほかに,客観的に「カラーラインメモ」が周知であることを立証
する証拠,例えば業界紙や雑誌等で「カラーラインメモ」が原告の商標であって名
声を博しているなどの記事等を何ら提出していない。むしろ,「カラーラインメモ」
は,カレンダーの内容を表示するものとして自由に使用されていることがうかがわ
れる。
以上のとおり,「カラーラインメモ」は,特定人が使用している周知商標で
あるとは認められず,本件商標は,商標法4条1項10号の規定に違反して登録さ
れたものではないから,本件審決の判断は,正当である。
2取消事由2(商標法4条1項15号の該当性に係る認定・判断の誤り)につ
いて
〔原告の主張〕
本件審決は,使用商標が本件商標の登録出願時において原告の業務に係る商
品を表示する商標として需要者の間に広く認識されている商標とはいえず,また,
本件商標と使用商標とが混同を生ずるとすべき格別の事情も見いだし難いから,被
告が本件商標を指定商品(カレンダー)に使用しても,これに接する需要者が使用
商標を連想又は想起するとはいえず,その商品が原告又は原告と経済的若しくは組
織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その出所につ
いて混同を生じさせるおそれはないとする。
しかしながら,前記1〔原告の主張〕に記載のとおり,原告は,使用商標を
平成12年版から13年もの長きにわたって使用してきており,かつ,その使用状
況も広範にわたっている。原告の取引先は,カレンダーに付された使用商標をみれ
ば,原告の商品であると認識しているところ,同じカレンダーに使用商標と外観,
称呼及び観念が完全に一致する本件商標が使用されれば,混同が生じることが明ら
かである。
よって,本件商標の登録は,商標法4条1項15号に違反してされたものであり,
これと異なる判断をした本件審決には取消事由があることが明らかである。
〔被告の主張〕
「カラーラインメモ」は,前記1〔被告の主張〕に記載のとおり,特定人が使用
している周知商標であるとは認められないから,著名商標でもないことはいうまで
もない。
よって,本件商標は,商標法4条1項15号の規定に違反して登録されたもので
はなく,本件審決の判断は,正当である。
第4当裁判所の判断
1認定事実
後掲証拠(枝番は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
原告は,昭和14年11月2日に設立されたカレンダーの製造・販売等を目
的とする会社であり,本件商標の登録出願時点(平成22年8月2日)及び登録査
定時点(同年11月1日)において,全国連合会に所属する我が国の主要なカレン
ダーメーカー30社の中では最も売上高の大きい会社である(甲10,14)。
カレンダーの製造・販売業界では,カレンダーメーカーが製造した商品を販売代
理店に販売し,販売代理店が広告主又は小売店に販売し,広告主又は小売店が最終
消費者に譲渡するという取引形態で流通が行われており,カレンダーメーカーは,
毎年4月頃,翌年版のカレンダーに関する自社商品のカタログを販売代理店に頒布
して営業活動を行うほか,全国連合会は,所属各社のカレンダーの価格表を作成し
て頒布している。そして,原告は,全国に存在する販売代理店(平成22年当時に
おいて,少なくとも439箇所)に対して上記カタログを頒布し,多数の種類(同
年当時において,283種類)のカレンダーを販売していた(甲2,5,11,1
4,16)。
原告は,平成11年4月頃,その製造・販売に係る平成12年版のカレンダ
ーの名称(商品名)として,「カラーラインメモ」という文字の結合を用いたもの(使
用商標)を採用し,自社商品に関する広告又は取引書類である販売代理店用のカタ
ログに,「カラーラインメモ」という商品名,型番(型番NK-174)及び見本写
真等を掲載して,これを全国に所在する販売代理店に対して頒布した(甲1)。
原告は,以後,毎年,全国に所在する販売代理店に対し,翌年版のカレンダーで
ある「カラーラインメモ」という名称を付した商品について,その商品名,型番及
び見本写真等を掲載した上記カタログを頒布しているが,その頒布数(冊)及び頒
布先数(箇所)は,証拠上確認できる範囲内では,少なくとも次のとおりである(甲
1,2)。
ア平成13年(平成14年版)4万4059冊638箇所
イ平成14年(平成15年版)4万3944冊631箇所
ウ平成15年(平成16年版)3万7989冊507箇所
エ平成16年(平成17年版)3万9838冊549箇所
オ平成17年(平成18年版)3万9585冊622箇所
カ平成18年(平成19年版)4万0889冊695箇所
キ平成19年(平成20年版)4万1176冊521箇所
ク平成20年(平成21年版)4万3278冊488箇所
ケ平成21年(平成22年版)4万1651冊468箇所
コ平成22年(平成23年版)4万2555冊439箇所
原告は,前記のとおり,平成11年(平成12年版)から,全国に所在する
販売代理店に対し,翌年版のカレンダーとして「カラーラインメモ」という名称の
商品(型番NK-174)を販売しているが,平成18年(平成19年版)以降は,
「カラーラインメモ・3ヵ月文字」(型番NK-162)及び「カラーラインメモ(小)」
(型番NK-450)という,いずれも「カラーラインメモ」との名称を付した商
品も販売するようになり,全国連合会も,毎年作成する所属各社のカレンダー価格
表に,これらの原告カレンダーの名称を記載するようになった。そして,原告は,
販売代理店に対して自社が販売したカレンダーの請求書を作成する際,原告カレン
ダーのうち,型番NK-174について「カラーラインメモ」と,型番NK-16
2について「カラーL3ヶ月」と,型番NK-450について「カラーライン小」
と標記しているほか,原告カレンダーを販売する販売代理店又は小売店も,原告カ
レンダーに「カラーラインメモ」との商品名を付してこれを販売している。これら
の原告カレンダーは,平成12年(平成13年版)以降,一貫しておおむね類似し
た構成の意匠を備えており,平成14年(平成15年版)以降,その表紙中央部に
は,やや小さな欧文字で,「」と印刷されているが,その販売数(部)
及び販売先数(箇所)は,証拠上確認できる範囲内では,少なくとも次のとおりで
ある(甲1,3~5,17~19,乙3,4)。
ア「カラーラインメモ」(型番NK-174)
ア平成13年(平成14年版)25万6448部223箇所
イ平成14年(平成15年版)34万2794部234箇所
ウ平成15年(平成16年版)40万1089部248箇所
エ平成16年(平成17年版)50万4671部266箇所
オ平成17年(平成18年版)55万2786部287箇所
カ平成18年(平成19年版)66万6702部290箇所
キ平成19年(平成20年版)75万6989部341箇所
ク平成20年(平成21年版)82万0066部405箇所
ケ平成21年(平成22年版)84万4657部401箇所
コ平成22年(平成23年版)88万4196部414箇所
イ「カラーラインメモ・3ヵ月文字」(型番NK-162)
ア平成18年(平成19年版)4万2245部119箇所
イ平成19年(平成20年版)6万9995部163箇所
ウ平成20年(平成21年版)9万0324部206箇所
エ平成21年(平成22年版)11万7516部198箇所
オ平成22年(平成23年版)13万5679部217箇所
ウ「カラーラインメモ(小)」(型番NK-450)
ア平成18年(平成19年版)4万5439部107箇所
イ平成19年(平成20年版)7万9505部145箇所
ウ平成20年(平成21年版)9万4423部151箇所
エ平成21年(平成22年版)12万1457部155箇所
オ平成22年(平成23年版)13万7215部171箇所
原告カレンダーのうち,「カラーラインメモ」(型番NK-174)は,原告
が販売したカレンダー(平成20年に合計272種類,平成21年に合計278種
類,平成22年に合計283種類)のうちで,平成20年及び平成22年には,「星
座入文字月表」(型番NK-180),「並月表チ」(型番NK-1492),「星座入
メモ付文字」(型番NK-181)及び「御暦・格言入り」(型番NK-186)に
次いで5番目に販売数が多く,平成21年には,これらに加え,「ジャンボ3色文字」
(型番NK-191)に次いで6番目に販売数が多かった(甲11)。
被告は,平成22年,「カラーラインメモ」との名称を付したカレンダーの
販売を開始したが,それまで,「カラーラインメモ」との名称をカレンダー又はこれ
に類似する商品に付して販売した者は,原告以外には存在しなかった(甲5,6,
12,15,16)。
2使用商標の周知性について
前記認定事実によれば,カレンダーの製造・販売業界においては,販売代理
店がカレンダーの流通に当たって重要な役割を果たしているから,カレンダーにつ
いては,販売代理店が第一次的な取引者又は需要者であるといえるところ,原告は,
平成11年4月頃から,「カラーラインメモ」の片仮名を標準文字で表してなる使用
商標について,自社の製造・販売に係るカレンダー(原告カレンダー)の名称とし
て自社商品のカタログに記載して販売代理店に対する頒布という形で使用を開始し,
本件商標出願時(平成22年8月2日)及び登録査定時(同年11月1日)に至る
約11年間にわたって,原告カレンダーの販売に当たり,毎年使用商標を自社商品
のカタログに記載し,販売代理店に対する請求書にも原告カレンダーを意味するも
のとして使用商標を記載してきたものである。
また,原告が上記カタログを頒布し,原告カレンダーを販売した販売代理店は,
全国に所在しており,その数も毎年数百箇所に及んでいるばかりか,販売代理店に
頒布された当該カタログの数は,毎年おおむね4万冊前後であり,販売代理店に販
売された原告カレンダーの数も,平成13年に25万6448部であったものがそ
の後順調に増加を続け,本件商標出願時及び登録査定時の属する平成22年には,
合計115万7090部という大部数に及んでいるのであって,これは,全国連合
会に所属する会社の中で最大規模である原告が販売する全カレンダー(合計283
種類)の中でも,売上げ部数が5番目に多いものであるから,かなりの数量である
といえる。
しかも,「カラーラインメモ」との語は,英語の「カラー(色,色彩)」,「ライン
(線)」及び「メモ(書き付け,備忘)」を複合した造語であって,カレンダーの名
称として使用された場合,強いていえば「色彩」,「線又は線による区切り」及び「メ
モ余白の存在」を想像させるが,それ以上に特定の観念又はカレンダーとしての構
成を想像させるものではなく,一定の特異性が認められるものであるところ,原告
が,平成12年(平成13年版)以降,一貫しておおむね類似した構成の意匠を備
えたカレンダー(原告カレンダー)の名称として「カラーラインメモ」との語を使
用しており,かつ,「カラーラインメモ」との名称をカレンダー又はこれに類似する
商品に付して販売した者が,平成22年まで,原告以外には存在しなかったことは,
前記認定のとおりである。
以上の事情を総合すると,使用商標(「カラーラインメモ」)は,本件商標出
願時及び登録査定時において,原告が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)
を表示するものとして,全国に所在する多数の販売代理店の間に広く認識されてお
り,原告カレンダーの販売期間,販売数量及び原告以外に「カラーラインメモ」と
の名称をカレンダー等に使用した者が存在しなかったことなどに照らすと,当該販
売代理店を通じてカレンダーを入手する全国の最終消費者の間においても,特定の
業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するものとして広く認
識されていたものと認めるのが相当である。
3被告の主張について
被告は,①原告カレンダーで商標として使用されているのが全国連合会の商
標であって「」との記載ではない,②原告作成の通知書(甲6)
にも「カラーラインメモ」が商標であるとの記載がない,③全国連合会のカレンダ
ー価格表の「カラーラインメモ」との記載がカレンダーの内容を記述したものであ
って出所を表示するものではないなどとして,これらに接した取引者及び需要者が
特定の出所を示す商標として認識しないと主張する。
しかしながら,原告は,原告カレンダーに記載された「」との
文字をもって使用商標の使用を主張しているものではないから,原告カレンダーの
記載に関する被告の上記主張は,それ自体失当である。また,原告は,カレンダー
の製造・販売業者として,その製造・販売に係るカレンダーの名称として,「カラー
ラインメモ」という文字の結合を用いているのであって,かつ,「カラーラインメモ」
という文字の結合を,商品に関する広告又は取引書類であるカタログ等に付して頒
布したものであるから,「カラーラインメモ」という文字の結合は,商標法2条1項
1号所定の商標であって,原告は,これを同条3項8号所定の行為により使用する
ものであるといえる。したがって,原告が被告に対する通知書において「カラーラ
インメモ」が商標であると記載しなかったからといって,原告が「カラーラインメ
モ」との商標(使用商標)を使用していなかったことになるものではない。さらに,
商品としてのカレンダーには各種の名称があり,中には,その内容や構成を想像さ
せる名称のほか,その仕様について符牒を用いて説明するものも少なくないとはい
えるものの,前記2に説示のとおり,「カラーラインメモ」との語は,カレンダ
ーの名称として使用された場合,強いていえば「色彩」,「線又は線による区切り」
及び「メモ余白の存在」を想像させるが,それ以上に特定の観念又はカレンダーと
しての構成を想像させるものではないから,カレンダーの内容を記述したものとは
いえない。
よって,被告の上記主張は,採用できない。
被告は,①原告以外の会社が原告カレンダーを自社のカレンダーとして紹介
しているほか,複数の会社が出所を表示せずに使用商標を使用しているから,使用
商標が原告という出所を示すものとはいえず,②原告カレンダーが原告作成のカタ
ログに記載の多数の商品の中の1つであるにすぎないから,原告が使用している周
知商標とはいえないと主張する。
しかしながら,被告が指摘する原告カレンダーを販売している会社(乙3,4)
は,いずれも原告から原告カレンダーを購入した販売代理店又は小売店であって,
原告カレンダーを自社の製造に係るカレンダーとして販売しているものでないこと
は,上記証拠の記載から明らかである。また,前記1に認定した事実によれば,前
記2に説示のとおり,使用商標は,本件商標出願時及び登録査定時において,原
告ないし特定の業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するも
のとして,全国の取引者及び需要者に広く認識されていたものと認められるのであ
って,原告以外の会社が原告カレンダーを販売等するに当たり,これを特定するた
めに原告の会社名に触れずに使用商標に言及し,あるいは原告カレンダーが原告の
製造・販売に係る多数のカレンダーの中の1つであるという事情があるとしても,
かかる事情は,上記認定を左右するに足りるものではない。
よって,被告の上記主張は,採用できない。
被告は,原告が提出した原告カレンダーの販売先一覧表等の作成根拠が不明
であり,その内容が信用できないほか,カレンダーの価格表に記載の販売価格を基
に算出した売上高と原告主張に係る卸売りによる売上高との差異が大きいことから,
当該一覧表が信用できないと主張する。
しかしながら,原告が提出した原告カレンダーの販売先一覧表(甲4,18,1
9)及び販売数一覧表(甲11)は,その内容及び体裁に加えて,その裏付けとな
る証拠(甲17)が提出されていることから,原告がその事業に関連して作成した
ものと優に認められる。また,カレンダーの小売りに当たって,実際に全ての商品
について上記価格表に記載の販売価格が適用されるとは限らないし,上記販売先一
覧表及び販売数一覧表は,いずれもその記載内容が詳細であり,相互に矛盾も見当
たらないから,これを信用することができる。
よって,被告の上記主張は,採用できない。
4商標法4条1項10号の該当性について
以上によれば,使用商標は,本件商標出願時及び登録査定時において,原告ない
し特定の業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するものとし
て,全国の取引者及び需要者に広く認識されていたものと認められるところ,本件
商標は,使用商標と同一の商標であり,かつ,その指定商品も,使用商標が用いら
れていた商品と同一であるから,本件商標は,「他人の業務に係る商品を表示するも
のとして需要者の間に広く認識されている商標であって,その商品について使用を
するもの」に該当し,商標法4条1項10条により,商標登録を受けることができ
ないものであるというべきである。
5結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由1には理由があり,その余の点につ
いて判断するまでもなく,本件審決は,取り消されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官土肥章大
裁判官井上泰人
裁判官荒井章光

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