弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成23年(あ)第1343号インターネット異性紹介事業を利用して児童を
誘引する行為の規制等に関する法律違反被告事件
平成26年1月16日第一小法廷判決
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
1弁護人福島正洋及び被告人本人の各上告趣意のうち,インターネット異性紹
介事業の届出制度に関し,憲法21条1項違反をいう点について
(1)インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関
する法律(以下「本法」という。)は,インターネット異性紹介事業を定義した上
で(2条2号),同事業を行おうとする者は,事務所の所在地を管轄する都道府県
公安委員会に所定の事項を届け出なければならない旨を定め(7条1項),その届
出をしないで同事業を行った者は6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処す
る旨を定めている(32条1号)。
(2)同弁護人の所論は,本法7条1項,32条1号所定の罰則を伴う届出制度
(以下「本件届出制度」という。)は,集会結社の自由を不当に制約するものであ
るから,憲法21条1項に違反する旨主張し,被告人本人の所論は,本件届出制度
は,表現の自由,集会結社の自由を不当に制約するものであるから,憲法21条1
項に違反する旨主張する。
(3)そこで検討するに,まず,本法は,インターネット異性紹介事業の利用に
起因する児童買春その他の犯罪から児童(18歳に満たない者)を保護し,もって
児童の健全な育成に資することを目的としているところ(1条,2条1号),思慮
分別が一般に未熟である児童をこのような犯罪から保護し,その健全な育成を図る
ことは,社会にとって重要な利益であり,本法の目的は,もとより正当である。そ
して,同事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪が多発している状況を踏まえ
ると,それら犯罪から児童を保護するために,同事業について規制を必要とする程
度は高いといえる。
また,本法は,同事業を行う者(以下「事業者」という。)に対する規制とし
て,その責務や義務等を定めるほか,都道府県公安委員会の権限として,事業者に
法令違反があり,当該違反行為が児童の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると
認めるときの指示(13条),事業者が事業に関し本法及び児童福祉法等に規定す
る一定の罪に当たる行為をしたと認めるときの事業の停止命令(14条1項),事
業者が欠格事由に該当することが判明したときの事業の廃止命令(同条2項),事
業に関する報告又は資料の提出要求(16条)に関する諸規定を設けている。そし
て,本件届出制度は,同事業を行おうとする者に対し,氏名,住所,広告又は宣伝
に使用する呼称,本拠となる事務所の所在地,連絡先等の事項(7条1項1ないし
5号)や,事業を利用する異性交際希望者が児童でないことの確認の実施方法その
他の業務の実施方法に関する事項(同項6号)を都道府県公安委員会に届け出るこ
とを義務付けるものであるところ,このような事項を事業者自身からの届出により
事業開始段階で把握することは,上記各規定に基づく監督等を適切かつ実効的に行
い,ひいては本法の上記目的を達成することに資するものである。
他方,本件届出制度は,インターネットを利用してなされる表現に関し,そこに
含まれる情報の性質に着目して事業者に届出義務を課すものではあるが,その届出
事項の内容は限定されたものである。また,届出自体により,事業者によるウェブ
サイトへの説明文言の記載や同事業利用者による書き込みの内容が制約されるもの
ではない上,他の義務規定を併せみても,事業者が,児童による利用防止のための
措置等をとりつつ,インターネット異性紹介事業を運営することは制約されず,児
童以外の者が,同事業を利用し,児童との性交等や異性交際の誘引に関わらない書
き込みをすることも制約されない。また,本法が,無届けで同事業を行うことにつ
いて罰則を定めていることも,届出義務の履行を担保する上で合理的なことであ
り,罰則の内容も相当なものである。
以上を踏まえると,本件届出制度は,上記の正当な立法目的を達成するための手
段として必要かつ合理的なものというべきであって,憲法21条1項に違反するも
のではないといえる。このように解すべきことは,当裁判所の判例(最高裁昭和
35年(あ)第112号同年7月20日大法廷判決・刑集14巻9号1243頁,
最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5
号793頁,最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判
決・民集38巻12号1308頁,最高裁昭和57年(あ)第621号同60年1
0月23日大法廷判決・刑集39巻6号413頁,最高裁昭和61年(行ツ)第1
1号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明ら
かである。
(4)なお,被告人本人の所論は,本件届出制度に関し,本法2条2号による
「インターネット異性紹介事業」の定義が漠然として不明確であるから,憲法21
条1項に違反する旨主張するが,その定義が所論のように不明確であるとはいえな
いから,前提を欠くものである。
2同弁護人及び被告人本人の各上告趣意のうち,本法32条1号,7条1項の
規定について,上記1(4)と同様の理由で憲法31条違反をいう点は,その定義が
所論のように不明確であるとはいえず,本法6条,11条,12条,33条の各規
定の違憲をいう点は,原判決の是認する第1審判決はこれらの規定を適用していな
いのであるから,いずれも前提を欠くものである。
3被告人本人の上告趣意のうち,被告人を本法7条1項,32条1号の届出義
務違反で処罰することは,被告人に対して,運営するウェブサイト内の説明文言の
編集や利用者による書き込み記事の削除を強要するものであって,検閲に当たる
上,被告人の良心の自由,表現の自由,集会結社の自由を侵害し,利用者の表現の
自由も侵害するとして,憲法19条,21条1項,2項違反をいう点は,本件は,
インターネット異性紹介事業を行おうとする者の届出義務に違反して同事業を行っ
た行為を処罰するものであって,所論のような編集や記事の削除を強要するもので
はないから,前提を欠くものである。
4同弁護人及び被告人本人のその余の上告趣意は,いずれも,憲法違反をいう
点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上
告理由に当たらない。
よって,刑訴法408条,181条1項本文により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官山浦善樹裁判官櫻井龍子裁判官金築誠志裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛