弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役1年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間
中被告人を保護観察に付する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,分離前の共同被告人A,B及びCと共謀の上,D(当時22歳)に対
し制裁を加えようと企て,平成14年12月18日午前9時30分ころから同日午
前10時30分ころまでの間,神戸市a区b通c丁目d番e号所在のf202号室
において,前記Dに対し,前記A及びBらにおいて,木製の杖様のもの及び手拳で
同女の頭部,顔面,腕部,背部等を多数回殴打するとともに,その大腿部等を足蹴
にし,被告人において,木製の杖様のもので同女の頭部,顔面等を殴打した上,前
記Bにおいて所携のドライバー様のもので同女の左上腕部を突き刺すなどの暴行を
加え,よって,同女に全治約3週間を要する顔面打撲及び左上腕刺創の傷害を負わ
せたものである。
(証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―
省略
(補足説明)
1 弁護人は,被告人がD(以下「被害者」という。)を杖様のもので叩いたこと
は事実であるが,被告人と共犯者らとの間に被害者に対し暴行を加える旨の共謀は
なかったから,被告人は,自らの前記行為について暴行の責任を負うに過ぎないと
主張し,被告人も,その供述は変遷し,かつその供述の趣旨は極めて不明確である
けれども,当公判廷で概ねこれに沿う供述をするところ,前掲関係各証拠によれ
ば,弁護人が主張する点を含め,判示事実はこれを優に認めることができるのであ
るが,以下,その理由につき若干補足する。
2 関係各証拠によれば,被告人,分離前の共同被告人A,B,C及び被害者は平
成14年12月中旬ころから判示f202号室において同居していたが,それぞれ
被害者のせいで嫌な思いをしている,すでにAらにおいて被害者に制裁を加えたの
に反省していないなどとして憤慨していたが,同月18日早朝,Bらが何度かいた
ずらの110番通報をして,駆けつけた警察官に事情説明のため警察署に出向いた
後警察署から戻ったAにおいて,「何で私が警察に行かなあかんの。」などと怒り
出したことを契機に,同日午前9時30分ころから同日午前10時30分ころまで
の間,同所において,被告人,A,B及びCは,被害者に対し,判示のとおり集団
で殴る,蹴るの暴行を加えたこと,被告人においては,杖様のもので被害者の頭部
等を殴打したことが
認められる。以上の事実関係は関係者において一致して供述するところであって,
本件は,AやBらが些細なことからそれまでにも立腹して被害者に暴行を加えるな
どしていた等の関係証拠から認められる犯行に至る経緯からも明らかなように,被
害者に対する「いじめ」の感情を共有していたAやBらに被告人が同調して,被告
人らが立腹して行った明白な集団暴行事件であり,被告人をはじめ共犯者全員が実
行行為を分担遂行した犯行であると認められるのであって,被告人においても,他
の共犯者が暴行に及び,あるいは暴行に及ぶであろうことを十分に認識しつつ犯行
に加担している事案であるから,被告人らにおいて,被害者に対する暴行を加える
旨の現場共謀があったことは明白というべきである。なお,被害者の公判供述その
他の関係証拠によれ
ば,その犯行中,被告人が被害者をかばうような態度を示すこともあったものと窺
われるが,このことは,被告人の犯意が必ずしも強固なものではなかったことを示
す事実ではあっても,前記現場共謀の認定を何ら左右するものではない。また,被
告人の当公判廷における供述は変遷を繰り返しており,その供述の趣旨は曖昧で必
ずしも明らかでないのであるが,共犯者との共謀を否定する趣旨であるとするなら
ば,採用しがたいものである。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法60条,204条に該当するので,所定刑中懲役刑を選
択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し,同法21条を適用して未
決勾留日数中120日をその刑に算入することとし,なお被告人は平成14年3月
13日神戸簡易裁判所で窃盗罪により懲役1年に処せられ4年間その刑の執行を猶
予され,本件の罪はその猶予の期間内に犯したものであるが,後記のとおり,情状
に特に酌量すべきものがあるから,同法25条2項を適用してこの裁判が確定した
日から5年間その刑の執行を猶予し,同法25条の2第1項後段によりその猶予の
期間中被告人を保護観察に付し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項た
だし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(責任能力についての判断)
 弁護人は,被告人は,本件犯行当時,精神安定剤や睡眠薬とともに多量のビール
を飲酒しており,その影響により心神耗弱状態にあったから,刑が減軽されるべき
である旨主張するが,前掲関係各証拠により認められる被告人の本件犯行時及び犯
行前後の言動等に照らすと,被告人は,本件犯行当時,自己の行為の是非を弁識し
それに従って行動する能力に著しく影響を及ぼすような精神的状態にはなく,心神
耗弱の状態にはなかったものと優に認められる。弁護人の主張は理由がない。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が判示アパートの一室において,約1時間にわたり,共犯者らと
共謀の上,集団で被害者に判示の暴行を加えて傷害を負わせた事案である。
 確たる理由もなく,立腹の上,被害者に対し,共犯者らとともに集団で暴行を加
えた本件犯行は,いわゆるいじめを連想させる陰湿な犯行であって,被告人らの日
常の規範意識の乏しさのあらわれともいうべき理不尽なものであるところ,被告人
は,その程度が軽いとはいえ,実行行為を分担遂行しているのは間違いないのであ
って,被告人が,前記法令の適用欄記載のとおり,前刑の執行猶予中の身でありな
がら,その刑宣告後約9か月で本件犯行に及んだことを併せ考慮すると,その刑事
責任は重いというべきである。
 しかしながら,ドライバーで突き刺したのは共犯者Bであること,本件はA及び
B主導の犯行であり,被告人は従属的に犯行に加担したものであること,被告人自
身の行った暴行の態様はさほど悪質なものとまではいえず,その程度は比較的軽微
に止まったこと,未決勾留が相当期間に及んだこと,前記のとおり本件犯行は刑の
執行猶予中の犯行であるが,その前科は本件犯行と罪質を異にすること,他の共犯
者らとの間の刑の均衡,被告人の健康状態,被告人なりの反省の情等,被告人のた
めに情状に特に酌量すべき事情が認められるから,これらの事情を充分に考慮し,
主文のとおり量定した上,保護観察に付して,再度,その刑の執行を猶予すること
とした。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成16年2月19日
神戸地方裁判所第1刑事部
  裁 判 官       杉  森  研  二

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