弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岡本元夫、同中村盛雄の上告理由第一点について。
 論旨は、上告人が、本件(ハ)の土地に対する未墾地買収令書およびその交付に
代わる公告において、その土地の所在地番a町字bc番地をd番地と表示したこと
をもつて、右処分を無効ならしめる瑕疵と判断した原判決は、自作農創設特別措置
法三四条、九条の解釈適用を誤つたものというにある。
 しかしながら、原判決は、本件(ハ)の土地につき、北海道農地委員会(以下道
農委と称する。)が当初地番をbd番地、被買収者をD銀行として未墾地買収計画
を樹立し、ついで被買収者をEと訂正し、さらに道農委の決議によつて右買収計画
を変更し、地番をc番地、所有者をF、買収期日を昭和二四年七月二日と定めて同
年一二月二八日これを公告し、上告人において右買収計画を認可して買収令書を被
上告人Bに交付しようとしたところ、同人は受領を拒絶したので、昭和二五年二月
一七日その交付に代えて公告した事実を認定し、その被買収者の氏名表示の過誤は、
処分を違法ならしめるに足りない単純な誤記としても、その地番の不一致は、対物
処分とも解しえられる未墾地買収処分の客体の相違であり、本件において、bd番
地原野二町五反の土地は、本件(ハ)の土地と登記簿上の地目、面積において同一
ではあるが、それとは別個に存在し、訴外Eの所有に属していたことは、上告人も
自認するところであるから、右買収令書並びにその交付に代わる公告に他人の所有
地の地番が誤つて表示されていることは、前叙のように、本件(ハ)の土地に対す
る買収計画の要件につき度々にわたり誤謬が繰り返えされていることに徴しても、
単純な事務取扱上の不手際による過誤と解することはできず、買収手続の効力に影
響を及ぼすべき瑕疵ある場合といわなければならない旨を判示しているのである。
右判決の認定した事実のもとにおいては、係争の買収処分の過誤は、これを本件(
ハ)の土地の単なる地番の表示の誤記にすぎないと容易に認識しうる程度のものと
はなしがたく、むしろこれを買収の対象を誤つた重大かつ明白な瑕疵と解すべく、
この点についての原判決の前叙の判断は、相当である。
 論旨は、被上告人Bは、本件(ハ)の土地の買収計画に対し異議を申し立てその
買収を熟知しておりながら、買収令書の受領を拒否したものであるから、その交付
に代わる公告に地番の誤記があつたにせよ、右(ハ)の土地の買収を十分知りえた
のであつて、その公告の誤記は処分の無効原因に値しない旨を主張するが、右公告
の表示する買収の対象が、前叙のように、本件(ハ)の土地を表示するものと認め
がたい以上、このような処分庁の一方的な過誤によつて惹起された重大かつ明白な
瑕疵ある処分について、処分庁自らはその過誤を看過して補正の手続をとることも
なく放置し、被処分者はこれを知りえたはずであるから、その瑕疵は処分の効力に
影響ないものと論ずるのは、失当というべきである(昭和三九年一〇月二三日第二
小法廷判決、民集一八巻八号一七八四頁参照)。
 なお論旨は、このほか本件(ハ)の土地についての前叙昭和二四年一二月二八日
の買収計画の公告においては、地番を正しくまた土地所有者もBと訂正していたの
であり、上告人は原審でそのように主張したのにかかわらず、原判決が右買収計画
においても所有者をFと表示した事実につき当事者間に争いのない旨を判示してい
るのは、当事者の主張しない事実を判断に供した違法があるとすべきものというが、
所論の事実につき当事者間に争いのなかつたことは、原判決の引用する第一審判決
の事実の摘示によつて明らかであり、原審においても、この点につき変更のあつた
ものとは認めがたく、したがつてその非難はあたらない。
 論旨は、いづれも、採用しがたい。
 同第二点について。
 論旨は、原判決が本件(ハ)の土地は、もし昭和二四年春における上告人の違法
な土地立入禁止の処分がなかつたとしたならば、同年一二月二八日変更された買収
計画の公告当時までには農地として耕作して収獲をあげ、未墾地買収の対象にはな
らなかつたことを認定しうるものとし、したがつてその買収は、完全な農地を未墾
地として買収した場合と同様、その買収計画、買収処分を無効と解すべき旨を判示
したことをもつて、自作農創設特別措置法三〇条の解釈適用を誤つたものであると
いうにある。
 原判決の挙示する各証拠に基づけば、本件(ハ)の土地について、もし上告人の
違法な立入禁止がなく、その変更された買収計画の公告のあつた当時まで被上告人
弥五兵衛が予定した開墾、耕作を行なつていたとしたならば、右土地はすでに農地
化完成の状況にあつたであろうと認められないことはなく、そして行政庁が自ら違
法に作出した状態を利用して、そのような状態の存在を要件とする処分を行なうこ
とは、もともとその処分を一定の要件のもとに許容した法の趣旨に適合するものと
はいいがたいから、原判決が、前叙の事実認定のもとに、上告人が本件(ハ)の土
地の開墾作業を違法に抑止しながら、右土地を未墾地の状態にあるものとして買収
する処分を瑕疵あるものと解したのは、首肯しうるところである。しかも、それは、
違法の立入禁止さえなかつたとすれば、明白に農地化されていて未墾地として買収
されるはずのない状態を現出していたものと想定しうる場合であるから、本件買収
処分は無効たるを免れないと解した原判決の判断は、所論のように失当とはなしが
たい。
 論旨は理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛