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平成24年12月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成23年(ワ)第5010号不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成24年9月4日
判決
原告船場テキスタイル株式会社
同訴訟代理人弁護士松村信夫
同塩田千恵子
同坂本優
同藤原正樹
同永田貴久
被告P1
同訴訟代理人弁護士田辺美紀
同奥岡眞人
同訴訟復代理人弁護士山本直
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,143万4110円及びこれに対する平成23年4月
27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,衣料製品の加工・販売事業を行う原告が,原告を退職した後に同事
業を行う被告に対し,後記イ号商品の販売が不正競争防止法2条1項3号の不
正競争に該当すると主張して同法4条に基づき損害賠償金の支払を求めると共
に,原告の商品を模倣した後記イ号商品ないし二号商品の販売が不法行為を構
成すると主張して民法709条に基づき損害賠償金の支払を求める事案である
(両請求は損害が重なり合う限度で選択的併合である。)。
1前提となる事実
以下の各事実は,当事者間に争いがないか,又は掲記の各証拠及び弁論の全
趣旨により容易に認定することができる。
当事者
原告は,衣料製品の加工及び販売を業とする株式会社である。
被告は,原告の元常務取締役で,平成21年3月31日に原告を退職した
後,P1という屋号で,上記事業を行っている。
原告の商品
ア原告商品1
原告は,平成21年1月26日,柄番「LG-N-31」の生地(以下「原告
商品1」という。)について,株式会社永橋染工場(以下「永橋染工場」
という。)に新柄彫刻依頼書を提出し,同年2月26日,永橋染工場から
納品を受け,一部はこれに縫製加工をした上で,株式会社リーグ(以下「リ
ーグ社」という。)に納品した(甲1,2)。
イ原告商品2~4
原告は,平成18年6月頃から,柄番「CT-CH-1」の生地(以下「原告
商品4」という。)をコットン株式会社(以下「コットン社」という。)に
納品していた。
また,原告は,平成19年7月10日頃,柄番「LG-N-22」の生地(以下
「原告商品3」という。)について,永橋染工場に新柄彫刻依頼書を提出し,
その後,同社から納品を受け,これに縫製加工をした上でリーグ社に納品
した(甲9)。
さらに,原告は,平成21年4月4日,柄番「CT-N-1133」の生地(以
下「原告商品2」という。)について,永橋染工場から納品を受け,これ
に縫製加工をした上でコットン社に納品した(甲5)。
被告の行為
ア被告は,平成22年12月4日,リーグ社に対し,原告商品1と同一柄
である柄番「IBL-1」の生地(以下「イ号商品」という。)を2405m販
売した(甲3,乙2)。
イ被告は,平成23年1月20日頃,原告商品2と同一柄である生地(以
下「ロ号商品」という。)について,永橋染工場から納品を受け,コットン
社に販売した(甲6)。
また,被告は,原告商品3と同一柄である生地(以下「ハ号商品」とい
う。)の縫製加工を尾辻縫製に依頼して,これをリーグ社に販売し(甲10),
さらに,原告商品4と同一柄である生地(以下「二号商品」という。)をコ
ットン社に販売した(争いない事実)。
2争点
(1)不正競争防止法2条1項3号該当を理由とする請求
ア原告商品1の開発主体(争点1-1)
イ原告の損害額(争点1-2)
一般不法行為を理由とする請求
ア一般不法行為の成否(争点2-1)
イ原告の損害額(争点2-2)
第3争点に係る当事者の主張
1不正競争防止法2条1項3号該当を理由とする請求
争点1-1(原告商品1の開発主体)
【原告の主張】
ア原告商品1は,リーグ社からの新柄作成の依頼に基づき,原告が開発し
た商品である。
原告商品1のデザインは,原告が,リーグ社との商談で,原告が当時開
発していた柄(甲15)と同様の雰囲気を持つ商品が欲しいという依頼を
受け,その内容をデザイン事務所である有限会社光彩巧房(以下「光彩巧
房」という。)のデザイナーに口頭で伝え,同デザイナーが作成したデザ
インデータにつきリーグ社の担当者の了承を得て完成されたものである。
なお,このとき,原告はデザイン事務所に委託料2万5000円(甲17,
18)を支払ったが,リーグ社からはデザイン料の支払を受けていない。
原告は,永橋染工場に上記デザインデータの新柄彫刻依頼書(甲2)を
送付して原告商品1及び同生地を使用した風呂敷を製造させ,リーグ社に
納品したものである。
イ上記各事情によれば,原告商品1の開発に資金と労力を投下したのはリ
ーグ社ではなく原告であり,原告は不正競争防止法2条1項3号該当を理
由とする請求の主体となる。なお,原告が,原告商品1を止め柄として,
リーグ社以外に販売していないとしても,そのデザイン等に関する権利が
リーグ社に帰属するわけではない。
【被告の主張】
ア原告商品1の素材(種類),サイズ,デザイン,配色は,リーグ社の指示
と希望に沿って決定されたものである。すなわち,生地の種類,サイズは,
リーグ社が決定した。また,デザインについては,リーグ社が原告に対し,
参考見本を示して見本よりも洗練されたデザインとするよう依頼し,これ
を受けて原告は光彩工房有限会社にデザイン案の作成を依頼し,同社で作
成されたデザイン案を基に,リーグ社が最終的な判断をした。配色につい
ても,リーグ社が最終的に決定した。
また,原告商品1については,リーグ社が原告からすべて買い取ること
になっており,リーグ社は売れない場合のリスクを負担していた。デザイ
ン料については,原告からリーグ社への販売価格に上乗せされる形でリー
グ社が負担していた。
イ以上によれば,原告商品1の開発に当たって,資金と労力を投下したの
は,原告ではなくリーグ社である。したがって,原告は不正競争防止法2
条1項3号該当を理由とする請求の主体にはならない。
争点1-2(原告の損害額)
【原告の主張】
以下のとおり,原告の損害額は,合計68万5185円である。
ア逸失利益
原告商品1の1mあたりの利益額は約77円である。被告は,イ号商品
を2405m販売しており,したがって,原告には18万5185円の損
害が生じた。
イ弁護士費用
弁護士費用相当の損害額は,50万円である(なお,弁護士費用につい
ては,一般不法行為を理由とする請求と併せた金額である。)。
【被告の主張】
被告がイ号商品を2405m販売したことは認め,その余の原告の主張は
否認又は争う。
2一般不法行為を理由とする請求
争点2-1(一般不法行為の成否)
【原告の主張】
原告商品2~4についても,原告商品1と同様に原告が資金と労力を投下
して開発したものであるところ,被告によるイ号商品ないし二号商品の販売
は,以下のとおり,原告商品1~4の連続的模倣行為としてされたものであ
ると同時に,退職取締役の忠実義務,競業避止義務に違反してされたもので
あることから,競業者間の公正な競争秩序を逸脱する不正競業行為であり,
不法行為を構成する。
ア連続的模倣行為
酷似的模倣は,商品開発のリスクやコストを負担することなく商品を製
造する行為であることためそれ自体に違法性があるところ,本件では,特
に模倣行為が少なくとも4つの商品について行われており,しかもその態
様はデッドコピーである。また,被告は,模倣に当たり同一の染色業者を
利用し,原告と同一の取引先に販売している。
イ退職取締役の義務違反
被告は,原告在職中に,コットン等との顧客の取引を担当しており,製
品形態,価格,染色委託先,取引先などの情報を知り得る立場にいたので
あり,退職後も自己又は第三者の利益のために使用してはならないという
信義則上の義務を負っているところ,同義務に違反した。
ウ競業禁止合意
原告は,被告が原告を退職する際に,本来必要のない退職慰労金108
0万円の支払及び被告の保有する株式の買い取りをし,その代わりとして,
被告との間で,被告は退職後に原告に迷惑を掛けるような態様での競業を
行わない旨の合意をしていたが,被告は同合意に違反した。
【被告の主張】
ア被告が,原告商品1~4と同じ柄であるイ号商品ないし二号商品をリー
グ社又はコットン社に販売するようになったのは,原告を退職した後,リ
ーグ社及びコットン社から商品の販売を依頼されたからである。
本件において,被告は原告の営業秘密を用いるなど不当な方法で営業活
動を行ったことはなく,原告の信用をおとしめるような行動もしていない
し,また,イ号商品の販売は,平成22年11月,ロ号商品の販売は平成
23年1月で原告を退職してから1年7か月以上が経過した後のことで,
被告の退職のために原告が弱体化した状態を殊更に利用したわけでもな
い。
したがって,被告の行為は,社会通念上,自由競争の範囲を逸脱した違
法なものではない。
イなお,被告は,原告においては名目取締役であったため,取締役の義務
を負わず,また被告と原告との間に競業避止合意は存在しない。
争点2-2(原告の損害額)
【原告の主張】
以下のとおり,原告の損害額は,合計161万5485円である。
ア逸失利益
ア原告商品1
上記1【原告の主張】アのとおり,原告には18万5185円の損
害が生じた。
イ原告商品2
原告商品2の1mあたりの利益額は約148.2円である。被告は,
ロ号商品を少なくとも3000m販売しており,したがって,原告には
44万4600円の損害が生じた。
ウ原告商品3
原告商品3の1mあたりの利益額は約53.5円である。被告は,ハ
号商品を少なくとも3000m販売しており,したがって,原告には1
6万0500円の損害が生じた。
エ原告商品4
原告商品4の1mあたりの利益額は約108.4円である。被告は,
ニ号商品を少なくとも3000m販売しており,したがって,原告には
32万5200円の損害が生じた。
イ弁護士費用
弁護士費用相当の損害額は,50万円である(なお,弁護士費用につい
ては,不正競争防止法条1項3号該当を理由とする請求と併せた金額で
ある。)。
【被告の主張】
原告の主張は否認又は争う。
第4当裁判所の判断
1不正競争防止法2条1項3号該当を理由とする請求について
争点1-1(原告商品1の開発主体)について
ア不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品形態を模倣した商品の譲
渡行為等を不正競争行為としているが,その趣旨は,費用,労力を投下
して商品を開発して市場に置いた者について,費用,労力を回収するの
に必要な期間,投下した費用の回収を容易にし,商品化への誘引を高め
るために,費用,労力を投下することなく商品の形態を模倣する行為を
規制することとしたものであると解される。
したがって,同号の保護を受けるべき者に当たるか否かについては,
当該商品を商品化して市場に置く際に,費用や労力を投下した者といえ
るか否かを検討する必要がある。
イ証拠(甲1,2,5,6,9~14,16~19,乙1,3の1・2。
ただし,以下の認定事実に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
アP2と被告は,かつて大阪市内の同じ商事会社に勤務していたが,
昭和51年に同社を退職し,両名のみが株主となる形で原告を設立し,
P2は代表取締役に,被告は取締役に就任した。
イ原告は,プリント加工した綿織物の卸売業を営み,その納入先とし
てリーグ社,コットン社,株式会社ロマン(以下「ロマン社」という。)
等があった。原告が綿織物の販売をするに当たっては,まず,原告が納
入先に対し柄等の提案を行って,新たな柄の作成・変更は,原告のデザ
イナー又は社外のデザイン事務所にこれを行わせた。柄が決まると,納
入先が色や生地の種類を選択し,原告は生地と柄のデータを染工場に送
り,染工場でプリントした生地を反物の形で納入先に納品し,あるいは
さらに縫製工場に送って縫製加工を行った上で納入先に納品した。
ウ原告は,新たな柄の作成を依頼するときは,永橋染工場に「新柄彫
刻依頼書」を交付し,永橋染工場は,これに基づいて専門的な型出しを
して,生地にプリント加工を行うが,その際,リーグ社からの依頼にか
かる製品については,柄番又はデザインNo.として「LG」(リーグ
社の略と推認される。)を含む番号が割り当てられ,コットン社からの
依頼にかかる製品については,柄番又はデザインNo.として「CT」
(コットン社の略と推認される。)を含む番号が割り当てられ,生地商
品コード又は型No.として「ST」(原告商号の略と推認される。)を
含む番号が割り当てられる。
エリーグ社等が,前記デザインNo.,数量,縫製加工明細,投入生地
名,加工上り規格等を指定して,原告に製品の納入を指示すると,原告
は,上記内容を売約定伝票に記入するが,その際,摘要欄に「新柄」,「リ
ピート分」等の注記を加える。原告は,リーグ社等から指定されたデザ
インのプリント加工及び縫製加工を行うよう染工場及び縫製工場に指
示するが,その際,「LG」の番号のあるデザインを使用した製品をリ
ーグ社以外に納入することはなく,「CT」の番号のあるデザインを使
用した製品をコットン社以外に納入することはない(「止め柄」と呼ば
れる。)。
オ原告で営業を担当していた被告は,平成20年10月頃,リーグ社
に対し,ロマン社に納品していた生地(甲15)を参考として提示した
ところ,リーグ社は,同生地と同じ雰囲気の柄の生地の製作を希望した
ため,被告は,同月初旬頃,原告の営業担当として光彩巧房を訪れ,ハ
ンカチ向けの新しいレイアウトで,上記参考生地の雰囲気を活かした新
たなデザインを製作するよう依頼し,光彩巧房は,同月30日,原告商
品1の柄を完成させて原告に納品し,原告から2万5000円の支払を
受けた。
カ原告は,平成21年1月26日,原告商品1の柄について,デザイ
ンNo.を「LG-N-31」と定め,これをプリント加工するための型出し
を永橋染工場に依頼した。リーグ社は,同月28日,原告に対し,デザ
インNo.を「LG-N-31」(原告商品1の柄),投入生地名をシャンタン,
仕上寸法を20インチといった指定を加えて,一部を反物のまま,一部
を縫製加工して納入するよう指示した。原告は,生地を永橋染工場に送
ってプリント加工させ,できあがった生地の一部は反物として,一部を
尾辻縫製で縫製加工させた上で,リーグ社に納品させた。
キ被告は,平成21年2月上旬,原告に辞表を提出し,保有していた
原告株式を売却し,退職金1080万円を受領して,同年3月末日,原
告を退職した。
被告は,原告退職後,P1の屋号で,リーグ社,コットン社から生地
等の注文を受け,プリント加工を永橋染工場に依頼して,製品をリーグ
社等に納入する等の事業を行っていたが,その中には,リーグ社等が原
告に依頼し,永橋染工場でプリント加工させていたのと同じデザインの
製品も含まれていた。
クリーグ社は,平成22年11月20日,被告に対し,絣こぶ引きの
品名で色と数量を指定して生地の製作を発注し,被告は,永橋染工場に
プリント加工を依頼し,永橋染工場は,原告商品1に使用したデザイン
No.「LG-N-31」の型を使用してプリント加工を行い,これをデザイン
No.「IBL-1」(被告の屋号とリーグ社の略記と推認される。)として,
同年12月4日,リーグ社指定の縫製工場に2405m(20反)を納
品した。
ウ以上を踏まえて不正競争防止法2条1項3号の適用の可否につき検討す
るに,上記認定したところによれば,原告商品1を構成する重要な要素で
ある素材や柄,色の商品形態を決定したのはリーグ社であって,原告はリ
ーグ社から注文があった数量だけを製造し,その全数をリーグ社に納入す
ることが予定され,原告が原告商品1をリーグ社以外に販売することは,
およそ予定されていなかった。
また,デザイン料やプリント加工のための型出し費用といった,原告商
品1の開発に要した費用についても,原告が受注した際に新規デザイン分
とリピート分とを区別していることに照らすと,商品を発注したリーグ社
が,原告への新規デザイン分にかかる代金の支払によって,実質的に負担
したと解するのが合理的である。
エ以上によれば,原告商品1について,費用と労力を投下して,その形態
を含め商品として開発したのはリーグ社であって,原告は,リーグ社の委
託を受けて生地等を調達し,他の業者等にリーグ社の指示を取り次いで,
その製造を受託した立場に過ぎず,原告商品1の開発主体ということはで
きない。
そうすると,リーグ社の立場では,従前原告に製造を委託していた原告
商品1について,他の業者である被告に製造を委託することも,特段の合
意がない限り自由であるし,被告の立場でも,競業避止義務の定めやリー
グ社に対する不当な勧誘といった事情がない限り,商品を開発したリーグ
社からその製造を受託することも自由であり,これが原告に対する不正競
争行為になるとは認められない。また,被告が,永橋染工場に指示して,
原告商品1に使用したデザインをイ号製品に使用させた点についても,原
告商品1の開発主体であるリーグ社からの委託に基づくものであり,永橋
染工場がリーグ社の商品である旨を付して保管していたデザインである
ことを考慮すると,この点が原告に対する不正競争行為になるとは認めら
れない。
したがって,被告がイ号商品を製造し,これを販売という形でリーグ社
に納品したことは,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為には該当
しない。
小括
以上のとおり,不正競争防止法2条1項3号該当を理由とする請求は,そ
の余の点について判断するまでもなく,理由がない。
2一般不法行為を理由とする請求について
争点2-1(一般不法行為の成否)について
ア原告は,一般不法行為を理由とする損害賠償請求に関し,平成24年2
月29日付け訴えの一部取下申立書において,イ号商品の販売について請
求は維持しつつ,ロ号商品ないし二号商品の販売についての請求を取り下
げたが,被告は,第7回弁論準備手続期日において,上記訴えの一部取下
げには同意しない旨を述べた。そこで,イ号商品ないし二号商品の販売に
かかる一般不法行為の成否について判断する。
イ原告は,被告によるイ号商品ないし二号商品の販売について,原告商品
1~4の連続的模倣行為としてされたものであると同時に,退職取締役の
忠実義務,競業避止義務に違反してされたものであることから,競業者間
の公正な競争秩序を逸脱する不正競業行為であり,不法行為を構成すると
主張する。
ウしかしながら,原告商品1について,リーグ社への販売が不正競争行為
に該当しないことは上記1のとおりであるところ,原告商品2~4につい
ても同様であって,原告は,商品化に関与したリーグ社又はコットン社の
委託に基づいてこれを製造し,販売という形でこれを納入したものと認め
るのが相当であり,特段の事情がない限り,被告によるイ号商品ないし二
号商品の販売を不法行為とすることはできない。
そして,原告は,被告との間で,競業禁止に関する合意があったと主張
するものの,これを認めるに足りる証拠はない上,仮に原告が主張するよ
うに,被告に対し,退職後に原告に迷惑を掛けるような態様での競業をし
ないようにと申し向けるやり取りがあったとしても,それによって,競業
禁止について法的拘束力のある合意が成立したということまではできず,
被告が原告と同じ事業を行ったり,原告の取引先であるリーグ社やコット
ン社から製造の委託を受けたりすることが,直ちに違法になるということ
もできない。
エしたがって,被告の行為について,競業者間の公正な競争秩序を逸脱す
るような特段の事情があるとは認められず,不法行為を構成するものとは
認められない。
小括
以上のとおり,一般不法行為を理由とする請求は,その余の点について判
断するまでもなく,理由がない。
3結論
上記のとおり,原告の請求にはすべて理由がないから,主文のとおり判決す
る。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官谷有恒
裁判官松川充康
裁判官網田圭亮

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