弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人A1の負担とする。
         理    由
 上告人A1代理人三浦強一の上告理由および上告理由(追加)の第一点および第
五点について。
 原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)によれば、原審は、本件
各土地(ただし、第一審判決添附別紙目録記載三の土地を除く。以下同じ。)は、
それぞれ被上告人が三分の一、上告人A1が三分の一、上告人A2、同A3、同A
4、同A5および訴外(第一審被告。昭和三八年一月七日死亡)D(以下、上告人
A2ら五名という。)が三分の一の各持分を有し、同人らの共有に属するものであ
る旨判示しているが、原審の右判断は正当として是認でき、その判断の過程に所論
の違法はなく、論旨は、原判示を正解しないか、または独自の見地に立つて原判決
を非難するものであつて、採用することができない。
 同第二点および第四点について。
 記録によれば、被上告人は、本件において、本件各土地は、被上告人、上告人A
1および同A2ら五名がそれぞれ三分の一の持分を有し、同人らの共有に属する旨
主張して、右各土地の分割を請求し、これに対し、上告人A1は、右各土地が自己
の単独所有であると主張し、右所有権取得の原因として予備的に昭和九年一月一日
を始期とする取得時効の完成を主張しているのであるが、原審は、右時効は、他の
共有者全員に対する関係において中断したものであるとして、上告人A1の右単独
所有の主張を排斥しているのである。
 すなわち、原判決によれば、被上告人に対する関係においては、被上告人の先代
Eが上告人A1を被告として原判示の訴(広島地方裁判所昭和二三年(ワ)第二一
号事件)を提起し、E勝訴の判決が確定したから、時効は、右訴によつて中断した
というのであるが、原審の右判断は正当として是認でき、この点に関する論旨は、
独自の見解に基づいて原判決を非難するものであつて、採用することができない。
 つぎに上告人A2ら五名に対する関係についてみるに、原判決によれば、同上告
人らは、原判示のように、昭和二八年五月二五日の第一審準備手続期日において、
被上告人の請求原因事実を認め、これによつて自らの共有持分がある旨の主張をし
たというのであるが、右の場合において、上告人A2ら五名の右共有持分の主張は、
その主張が原審で認められた本件においては、裁判上の請求に準ずるものとして、
民法一四七条一号の規定により、上告人A1の主張する二〇年の取得時効を中断す
る効力を生じたものと解すべきである。けだし、本件は、被上告人主張の前示共有
関係に基づく共有物分割請求訴訟であつて、右請求を認容する原判決が確定しても、
これによつて各持分自体について確定力を生ずるものではないが、上告人A2ら五
名がその主張のとおり前示三分の一の持分を有することも肯定され、これを基礎と
して右請求が認容されるのであるから、上告人A2らの前示主張には、時効中断の
関係においては、共有持分に基づく裁判上の請求に準じ、これと同じ効力を伴うも
のとするのが相当であるからである(最高裁判所昭和四一年(オ)第九八四号、同
四三年一一月一三日大法廷判決、民集二二巻一二号二五一〇頁参照)。原判決に所
論の違法はない。
 そして、右のとおりであるから原審が所論前訴訟により上告人A2ら五名のため
にも時効の中断を認めた判断を攻撃する論旨は、すでに判断の必要がないことに帰
し、また、昭和五年(大正五年とあるのは誤記と認める。)六月一日を始期とする
二〇年の取得時効に基づく論旨は、原審において主張されなかつた事実によつて原
判決を非難するものであつて、いずれも採用するに由がない。
 同第三点について。
 原判決によれば、本件各土地の特定について欠けるところはなく、原判決に所論
の違法はない。論旨は採ることができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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