弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役10か月に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成15年11月4日ころ,神戸市長A管理にかかる神戸市a区b通
c丁目d番e号所在の市営b住宅f号棟307号室前廊下において,同所にあった
ゴルフクラブで同室玄関ドア横の窓ガラス1枚をたたき割った(損害額約1万47
00円相当)上,同窓から同室内に侵入し,そのころから同月10日午前10時3
0分ころまでの間同室内で寝泊まりし,もって,他人の物を損壊するとともに,正
当な理由がないのに同室に侵入したものである。
(証拠の標目)
(括弧内の「検」で始まる数字は証拠等関係カード記載の検察官の請求番号)
省略
(法令の適用)
 被告人の判示所為のうち器物損壊の点は刑法261条に,建造物侵入の点は同法
130条前段にそれぞれ該当するが,これは1個の行為が2個の罪名に触れる場合
であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重い器物損壊罪
の刑で処断することとし,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告
人を懲役10か月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定し
た日から3年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただ
し書を適用して被告人に負担させないこととする。
(補足説明)
 弁護人は,被告人が判示市営b住宅f号棟307号室(以下単に「307号室」
という。)に侵入したのは,神戸市の職員が,やむを得ない理由で住居を失った被
告人が求めた住居の確保等についての相談に応じてくれず住居が確保できなかった
からである等として,被告人の行為は自救行為に該当し無罪であると主張し,被告
人も公判廷で同様の陳述をしている。
 しかし,自救行為とは,一定の権利が侵害された場合に公権力の発動を待たずに
被害者自らその救済を図る行為であるところ,その前提として,権利が不法に侵害
されたこと等が要件となる。そして,この点,関係各証拠によれば,被告人は市営
住宅の公募に応募するなどの正規の入居申請手続をとっていないことが認められ,
また307号室の隣室には被告人の長男が居住しているが,このことにより被告人
に307号室を選んで入居できる権利が生じることがないことも明らかであるか
ら,被告人にはそもそも307号室に入居する権利がないと認められ,同市が被告
人のその権利を不法に侵害する前提がない。したがって,自救行為が成立するため
の他の要件について検討するまでもなく,弁護人の主張は採用できない。なお,被
告人が他の施設等への
入居が可能であるのにこれを希望しないで本件に及んだことは被告人自身がこれを
認めるところであって,他に被告人の本件犯行の違法性を阻却(正当化)しうる事
情がないことも明らかである。
(量刑の理由)
 本件は,住む所に困った被告人が空き家であった判示住宅に住み着こうと企て同
住宅の窓ガラスを割りこれに侵入した事案であるが,被告人は,かねてから神戸市
職員から本件住宅への入居要求を拒否され続けており,また他に当座の住居としう
べき場所があることを認識していたにも関わらず,既に被告人とは別に平穏に暮ら
している子どもの近くに住みたい等という動機に基づき本件犯行を行ったものであ
り,動機は短絡的,自己中心的であって酌量の余地はない。また,被告人は侵入後
1週間にわたって判示住宅に住み着いていた上,住民登録までするなど継続的に居
座る姿勢を示していたものであり,その犯行態様もよくない。そして,被告人は,
本件犯行が発覚した後も,同市職員の対応ないし同市の福祉施策が自己の要求ない
し満足を満たさない
ことを違法として非難するような姿勢に終始し,同市職員に本件犯行の責任を転嫁
するがごとき発言を繰り返しており,現在,捜査段階ではみせていた本件自体への
反省の態度も全く失っている。そうすると,被告人には本来厳しい対応が必要であ
る。しかし,被告人が貧困状態にあり住む所をいったん失ったことなど,被告人の
境遇自体には同情の余地があること,本件器物損壊による被害額は比較的少額であ
ること,判示住宅は空き家であり被告人の本件犯行により生活の平穏を脅かされた
者はいなかったこと,被告人に前科前歴がなく,本件により身柄を拘束されるなど
しており,今後同様の行為に及ぶについてはより強い反対動機形成の可能性がある
こと等の事情も認められるので,今回に限って刑の執行を猶予することとした。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成16年2月17日
神戸地方裁判所第1刑事部
   裁判官  橋 本   一

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