弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人長谷川正浩、同打田正俊、同村松貞夫、同村松ちづ子の上告理由書(
一)記載の上告理由第一及び第二について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認する
ことができ、その過程に所論の違法はない。右事実関係のもとにおいて、本件契約
は三年連続の保育を内容とするものとはいえず、また、D幼稚園の設置者である被
上告人B1が本件研究会児を募集するにあたつてその募集要綱に昭和四九年度D幼
稚園四歳児組入園については所論の選考をする旨記載しなかつたことは明らかであ
るが、上告人A1の右四歳児組入園について同A2及び同A3がした入園申込を承
諾しなかつたことに信義則に違背する違法があるとはいえないとした原審の判断は、
正当として是認することができる。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、
事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎ
ず、いずれも採用することができない。
 同第三について
 所論は、原審において主張、判断を経ていない事項について原判決の違法をいう
ものにすぎない。論旨は、採用することができない。
 同上告理由書(二)記載の上告理由について
 私立幼稚園が、その教育方針に従つて幼児を教育するために、当該幼児の親権者
又は監護教育にあたる者が幼稚園の教育、経営方針に対して理解と信頼を示し幼稚
園との信頼関係を保ちうることは重要なことであるとして、これを入園申込に対し
承諾を与えるための要件とし、この要件を充足していない申込に対しては承諾を与
えないこととしても、右の信頼関係が客観的に存在しないと認められる限り、公序
良俗に反するものとはいえないと解するのが相当である。本件において、原審の確
定したところによれば、私立のD幼稚園の設置者である被上告人B1の代表役員で
あり、かつ、同幼稚園の園長である被上告人B2は、同幼稚園が昭和四八年四月か
ら設けていた本件研究会に入会していた幼児についての昭和四九年度D幼稚園四歳
児組への入園申込を承諾するためには、当該幼児の親権者又は監護教育にあたる者
が同幼稚園の教育、経営方針に対して理解と信頼を示し幼稚園との信頼関係を保ち
うることが必須であるとしたうえ、本件研究会に入会していた上告人A1について
同A2及び同A3のした右四歳児組への入園申込に対し、同A2の言動等から同上
告人にはD幼稚園の教育、経営方針に対する理解と信頼がなく、同幼稚園としては
同上告人と信頼関係を保てないと判断した結果、承諾を拒否したというものであり、
また、右承諾拒否に至るまでの被上告人B2と上告人A2及び同A3との折衝につ
いて原審が確定した事実関係のもとにおいては、同幼稚園と右上告人らとの間の信
頼関係が全く失われ、その間に意思疎通の生ずる余地がないとした原審の判断は是
認することができるから、右承諾拒否をもつて公序良俗に反するものとはいえない。
所論は、幼稚園教育においては幼稚園と幼児の両親等その監護教育にあたる者との
間に信頼関係の存することは、重視すべきものではなく、または少なくとも必要不
可欠なものではないことを前提として、原判決の違憲、違法をいうものであるが、
前述のとおり、幼稚園が、当該幼児の家庭との連絡を密にし、家庭における教育と
相まつて幼稚園教育を行うことが必要であり、したがつて、幼稚園と幼児の両親等
その監護教育にあたる者との間に信頼関係の存することは、重要なことであつてこ
れを重視すべきものといえるから、所論は前提を欠くものというべきである。原判
決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    長   島       敦

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