弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人若林清、同上野修の上告理由第一点について。
 原審の確定した原判示の事実関係は、挙示の証拠関係に徴し、首肯することがで
きる。そして、右事実関係のもとにおいて、所論の丙第一号証にいう「all r
ights to the design of this radio」中の「
all rights」(すべての権利)とは、訴外D(以下D社という。)と上
告人A1実業株式会社(以下上告会社という。)との間に締結された右丙第一号証
による契約の対象となつた地球儀型トランジスターラジオ受信機の意匠についての
すべての権利を意味する、とした原審の解釈判断は、正当である。原判決に所論の
違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を非難するものに
すぎず、採用することができない。
 同第二点について。
 旧意匠法(大正一〇年法律九八号)九条は、「意匠登録出願ノ際現ニ善意ニ国内
ニ於テ其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ又ハ事業設備ヲ有スル者」があれば、その者に対
し、同人が右要件を具備しているという事実自体にもとづき、当然に、当該意匠に
ついての実施権、すなわちいわゆる先使用権を認める趣旨であると解するのが相当
である。したがつて、訴外D社が本件意匠につき右法条所定の要件を具備している
以上、同社が、上告人Eの右意匠登録出願の以前に、同上告人の代表する上告会社
との間に、右意匠実施の事業に関し、所論の丙第一号証による契約を締結していた
事実があるとしても、それが右D社に対し右意匠についての先使用権を認める妨げ
となるべき理由はない。論旨は、独自の見解にもとづき原判決を非難するものにす
ぎず、採用することができない。
 同第三点について。
 旧意匠法九条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」とは、当該意匠についての実
施権を主張する者が、自己のため、自己の計算において、その意匠実施の事業をす
ることを意味するものであることは、所論のとおりである。しかしながら、それは、
単に、その者が、自己の有する事業設備を使用し、自ら直接に、右意匠にかかる物
品の製造、販売等の事業をする場合だけを指すものではなく、さらに、その者が、
事業設備を有する他人に注文して、自己のためにのみ、右意匠にかかる物品を製造
させ、その引渡を受けて、これを他に販売する場合等をも含むものと解するのが相
当である。したがつて、以上と同旨の見解に立つて、訴外D社は、上告人Eが本件
意匠の登録出願をする以前に、上告会社を介し、その意匠実施の事業をしていた者
にあたる、とした原審の解釈判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論
旨は、原審の認定にそわない事実関係にもとづいて原判決を非難し、または、独自
の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。
 同第四点について。
 被上告人らは、訴外D社の注文にもとづき、専ら同社のためにのみ、本件地球儀
型トランジスターラジオ受信機の製造、販売ないし輸出をしたにすぎないものであ
り、つまり、被上告人らは、右D社の機関的な関係において、同社の有する右ラジ
オ受信機の意匠についての先使用権を行使したにすぎないものである、とした原審
の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、首肯することができる。そして、
右事実関係のもとにおいて、被上告人らがした右ラジオ受信機の製造、販売ないし
輸出の行為は、右D社の右意匠についての先使用権行使の範囲内に属する、とした
原審の解釈判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、
論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を争い、または、原判決を正解
しないでこれを非難するものにすぎず、採用することができない。
 同第五点について。
 訴外D社が本件意匠について有する先使用権は、同社が上告会社との間に締結し
た所論の丙第一号証による契約自体の効果として認められたものではなく、右D社
が上告会社との間に右契約を締結したうえ、上告会社を介して、右意匠実施の事業
をし、旧意匠法九条所定の要件を具備した事実自体にもとづいて認められたもので
あることは、原判示に照らして、明らかであるから、右契約がその後解除され、消
滅するに至つたとしても、そのことから直ちに右D社の右先使用権も消滅するに至
つたものと解しなければならない理由はない。また、仮に右契約が解除された結果、
右D社の右意匠実施の事業が一時中止されたことがあつたとしても、それをもつて
直ちに同社の右事業が廃止され、右先使用権も消滅するに至つたものということは
できない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解を主張するものにすぎ
ず、採用することができない。
 同第六点について。
 訴外D社は、上告人Eが本件意匠の登録出願をした当時、右意匠の考案が自己に
帰属するものと信じ、したがつて、それが他人に帰属することを知らないで、上告
会社を介して、右意匠実施の事業をしていたものである、とした原審の事実認定は、
原判決挙示の証拠関係に徴し、首肯することができる。そして、右事実関係のもと
において、右D社は、上告人Eの右意匠登録出願の当時、旧意匠法九条にいう「善
意ニ」右意匠実施の事業をしていた者にあたる、とした原審の解釈判断は、正当で
ある。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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