弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     被告人を懲役八月に処する。
     この裁判確定の日から三年間右の刑の執行を猶予する。
         理    由
 弁護人本郷桂の上告趣意は、違憲をいう点もあるが、その実質は事実誤認と単な
る法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
 然しながら、職権を以て調査するに、本件は、「被告人がその所有にかかる土地
家屋を被害者Aに売却するに当り、右家屋に抵当権(債権額二六万円)の設定登記
のなされている事実を秘匿し、そのため、そのような事実がないものと誤信して右
土地家屋を八五万円で買受けたAからその代金の内金名下に六二万円を騙取した」
との事案につき第一審が被告人を懲役八月に処し、原審がこれを是認した事案であ
る。然しながら、被告人の経歴、その年令、本件犯行の動機、犯罪の手段、態様、
取得した金員の使途状況等諸般の情状に照らすと、原審の支持した第一審判決の刑
は重きに失するものと認められる。すなわち、記録を精査するに、被告人は本件当
時五六才に至るまで前科、非行歴なく、その妻の重病(癌)、長女の精神病治療の
為、家産傾き、借財を負うに至つたものであり、被告人は右借財整理のために、そ
の所有にかかる本件土地及び家屋を手離すこととし、その売買周旋を不動産取引業
Bに依頼したのであるが、その際、その表現は不正確ながら、同人に対し右物件はC
農協、D旅館、E銀行a支店、Fの四軒から借りた金の抵当に入つておる旨告知してお
り、Gに対する債務について設定せる抵当権のみは黙秘したけれども、この債務に
ついても、当時、被害者Aに負担を負わしめないよう、別に被告人の所有せる土地
(a町bのc番地、二九坪三合)に抵当権を移してもらうか、或はこれを第三者に売
却することにより解決しようとの目算を有していたものであり、本件取引において、
右抵当権の存在のみを故意に秘匿せる点において本件詐欺罪の成立を見たのは止む
を得ないとしても、その犯意たるや、悪性弱きものと認められるのみならず、被告
人は取得せる対価八十万円(手数料五万円を除く)の殆どすべてを前記F等に対す
る債務の支払に当てており、遊興費等に費消しておらず、他方、被害者Aが本件に
おいて支出せる金員は前記八五万円とGに対して被告人に代つて弁済した三三万円
の合計一一八万円であるところ、その取得せる本件土地建物の当時の時価は一〇〇
万円を超えるものであつて、実損の程度は二〇万円に達しないものと解せられる外、
被害者は本件取引に当り登記簿を調査する配慮に欠け周旋人まかせであつた点にお
いて手落ちなしとはいえず、犯行後被告人は実害発生防止のため誠実に努力したの
ではあるが、その生活はいよいよ窮乏の度を加え、昭和三七年一〇月(起訴同三八
年五月三〇日)からは生活扶助を受ける程の経済状態であつたため、被害弁償もで
きなかつたもので、現に満六〇才を越えるその年令、健康状態等を併せ考えれば、
原判決の支持する第一審判決が被告人を懲役八月の実刑に処したのは量刑不当であ
つて、本件は、刑の執行猶予を言渡すべき事案であり、刑訴法四一一条を適用すべ
きものといわざるを得ない。
 よつて刑訴法四一一条二号により第一審判決およびこれを維持した原判決を破棄
し、同四一三条但書に則り更に次のとおり判決する。原判決の支持する第一審判決
が適法に確定した事実に法律を適用すると、被告人の所為は刑法二四六条一項に該
当するので、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役八月に処し、なお前示情状に鑑
み同二五条を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、第一審、
原審並びに当審における訴訟費用については刑訴法一八一条一項但書により、これ
を負担させないこととし、主文のとおり判決する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 臼田彦太郎出席
  昭和四〇年四月三〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛