弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取り消す。
     本件訴を却下する。
     訴訟費用は、第一、二審とも、東京都西多摩郡a町bc番地Aの負担と
する。
         事    実
 第一 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費
用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人
は、「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。
 第二 当事者双方の事実上の陳述は、つぎに記載するほかは、原判決の事実摘示
と同一であるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決四枚目裏四行目「昭和
二六年八月二七日」を「昭和二六年八月二一日」と、同七枚目裏末行「(一)に認
定した」を「(一)に述べた」と訂正する。)。
 一、 控訴代理人の主張
 原判決事実摘示記載の「本案前の抗弁」(原判決三枚目裏八行目から同五枚目表
三行目まで)をつぎのとおり付加訂正する。
 (一) 本件訴訟は被控訴組合を代表してAが「被控訴組合代表者理事長」名義
で訴を提起している。しかしながら、Aは被控訴組合の理事でも理事長でもないか
ら、被控訴組合を代表して本訴を提起する資格なきものというべく、同人が代表し
て提起した本件訴は不適法である。
 1 Aは理事ではない。
 (1) 理事選任のための組合総会の不存在無効
 Aは、登記簿によれば、昭和三三年一二月五日理事に就任したとして、昭和三四
年三月六日自らその申請人になつて登記をなしている。しかし、昭和三三年一二月
五日に理事選任のための組合総会が開かれたことはなく、もちろんその旨の議事録
を存在していない。Aが申請した右登記申請書添付の総会議事録は全くの偽造文書
である。
 この点について、被控訴人は、実際には同年一一月二九日に選任されたものであ
ると主張しているが、その日にも総会は開かれていないし、その議事録も存在しな
い。当日なんらかの集りがあつたとしても、それはB外二、三名が集つたにすぎな
いもので公の性質を有する総会も理事会も開かれていない。かりにそれが総会と認
められるとしても、それは招集の手続、議決方法に重大な瑕疵があるから無効のも
のである。すなわち、(イ)、被控訴組合の組合員は乙五号証によれば四三六名で
あり、乙三号証の二によれば三二五名である。しかるに、右期日において実際に通
知を出したのはわずか一〇名である。したがつて、右通知には通知としての効力は
認めえない。(ロ)、また、定款第五一条によれば、総会の招集と会日との間には
少くとも五日を要することを規定している。しかるに本件においては昭和三三年一
一月二五日にこれを発送しているから会日の同月二九日までには四日しか存在して
いない。したがつて、かかる通知には通知としての効力はない。(ハ)、定款第四
九条によれば、総会は総組合員の二分の一以上出席しなければ開会することができ
ないことを規定している。しかるに、本件においては、わずか四名しか出席してい
ない。(ニ)、定款第五一条によれば、総会にはあらかじめ会議の目的である事項
を記載した書面を組合員に通知しなければならないことになつていて、この通知事
項以外は議決することができないことになつている。しかるに、被控訴人のした通
知にはなんら理事の改選事項は記載されていない。したがつて、同日の会日には理
事の選任の決議はなしえないのである。
 (2) Aの理事選任不適格
 かりにAが理事に選任されたとしても、Aは理事に選任される資格のない者であ
るから、その選任は無効である。すなわち、定款第八条によれば、被控訴人の理事
になるには、秋川建設企業組合員であることを要することになつているが、Aはそ
の組合員ではないのである。
 2 Aは理事長ではない。
 かりにAが昭和三三年一一月二九日有効に理事に選任されたとしても、当日理事
長選任の理事会が開かれていないから、Aが理事長になるはずがない。定款第三八
条第二項によれば理事が理事長一名を互選することになつている。そして、当日新
理事に選任されたのはA、B、C、D、Eの五名であり、このうちC、Dは不在の
ままである。五名の理事中三名だけであらかじめ議題を通知しておくこともなくし
て即時議題をきめて理事会を開くなどということは法律上許されない。したがつ
て、当日は理事会を開きえないのであり、理事長の選任があつたとしてもそれは無
効である。
 3 Aの任期満了による代表権の喪失
 かりにAが昭和三三年一一月二九日に適法に理事に選任されたとしても、その任
期は二年である(定款第四三条)。したがつて、その任期は昭和三五年一一月で終
了している。もつとも同条第三項によれば、任期満了後であつても後任者が就任す
るまではその任期を伸長することになつている。しかしながら、これは常識上多く
も一会計年度内に限られるべきで、かつ、後任の理事が選任される可能性のある場
合にのみ適用されるべきである。本件においては、組合が事実上解散して総会が数
年にわたり開催されないのみならず将来も永久に開催される見込がないのである。
また、Aは就任後一度も組合総会を開催しておらず、監督官庁である東京都からも
昭和三八年三月二〇日付で「現役員は適正な手続により招集された総会で選任され
ていないから選任は無効であり、おそくとも昭和三八年度の通常総会において選挙
を実施すること」等とする処置命令を受けているのに、総会を開くことなく現在に
至つている。かりにAに期限後にも代表権があるとしても、その性質上消極的やむ
をえない暫定的処置に限られるべきで、本件のように新に訴を提起する行為は新に
選任された役員に譲るべきが同条項の趣旨であると解すべきである。したがつて、
Aはすみやかに後任役員の選任手続をとるべく、それを故意に怠り理事として通常
の業務を執行することは、同条項の趣旨を悪用するもので信義則上許されない。
 (二) 本件において、Aが理事長であることを証明する書面は提出されていな
い。したがつて、本件訴は却下されるべきである。
 (三) 前記のとおり、Aは理事長ではない。したがつて、他の理事は各自組合
を代表する権限を有する。しかして、被控訴人の理事の一人Cは、昭和四一年四月
九日東京高等裁判所の訴の取下書を提出した。したがつて、本件訴訟は、訴の取下
によつて終了している。
 (四) 被控訴人の主張(四)は否認する。禁反言の原則は、取引行為について
のみ適用されるもので、本件のような総会の決議の効力を争う場合にまで適用され
るものではない。
 二、 被控訴代理人の主張
 (一) 控訴人の主張(一)は否認する。Aは、被控訴組合の理事、理事長であ
るから、本件訴は適法である。
 1 Aは理事である。
 (1) 被控訴組合は、控訴人Fが勝手に組合名義でした自転車修理業の営業等
から生じた多額の負債を整理して再建等を図るため役員の改選を議事事項とする理
事、監事および組合員代表者の会議を開くことになり、昭和三三年一一月二五日付
書面をもつて理事全員および出資者の代表的人物にあてて、同月二九日午後一時か
ら被控訴組合方において会議を開く旨の通知状を発した(甲第二七ないし第二九号
証)。そして、同日会議室において、控訴人F、G、A、理事B、監事Eらが集つ
て議案を審議した。その結果右会議において、A、B、E、C、Dを理事に、G、
Hを監事に選任し、同時にAを理事長に選任した。その後Bにおいて、当日通知を
受けながら出席しなかつた者に対して右会議の経過を説明したうえ右選任について
諒解をえた。組合は創立以来慣例として理事会によつて運営されてきたが、組合員
からはなんらの異議もなかつた。したがつて、右理事会は実質的には組合の最高の
意思決定機関であり、総会と同様の性質を有するものであつた。そこで、被控訴人
は同年一二月五日付の臨時総会議事録を作成し、昭和三四年三月六日付で右役員の
変更登記を申請し、その登記を了した。
 (2) Aは理事に選任される資格を有するものである。すなわち、被控訴組合
の理事となるには秋川建設企業組合員であることを要するとしても、Aは被控訴組
合の理事に就任する際同企業組合の組合員の資格をも取得した。定款第三九条によ
れば役員は組合員から選出されることになつているところ、Aは昭和三三年一一月
二九日理事会において被控訴人への加入を認められ組合員の資格を取得し、五〇〇
口分を出資している。のみならず、定款第八条の「組合員は秋川建設企業組合員を
もつて組織する。」との規定は、同企業組合員でなければ被控訴組合員となること
ができないという強い排他的な趣旨ではなく、たんに被控訴組合の母体となるべき
ものは同企業の組合員であるということを明示したにすぎないと解すべきである。
したがつて、同企業組合員でなくとも被控訴組合の組合員になれるのである。かり
にそうでないとしても、定款第四〇条は「特別の理由のあるときには、理事の定数
の五分の一以内を限り組合員外から総会においてこれを選挙することができる。」
と規定しているから、Aが被控訴組合の被控訴組合員でないとしても、Aは、組合
の再建のために要請されて理事に選出されたのであつて、右特別の理由があるとい
うべく、この選任にはなんら不法はない。
 2 Aは理事長である。
 前記のとおり、Aは、右同日の理事会において理事長に選任されたのである。か
りに理事長に選任されていないとしても理事として被控訴組合を代表する権限に欠
けるところはないから、本件訴は適法である。
 3 Aの任期が満了しても、定款第四三条第三項により後任者が就任するまでは
その任期が伸長されるから、Aは依然代表権を喪失していない。
 (二) 控訴人の主張(二)は否認する。
 (三) 控訴人の主張(三)は否認する。被控訴組合において代表権を有するの
は理事長のみであつて、理事に代表権はない。かりに被控訴組合が理事による各自
代表の制度をとつているとしても、Cは控訴人らと行動を共にし、自ら理事に選任
されたことはないと称しているのであるから、その者が被控訴組合を代表して訴を
取下げることは矛盾である。また、右取下は、Cが控訴人の利益のためにした被控
訴組合に対する背任行為であつて、信義則違反または権利濫用であるから、許され
ない。また、各自代表制のもとにおいては各理事が相互に矛盾する法律行為をする
ことは許されない。
 (四) 控訴人の主張は、禁反言の原則に反する。すなわち、右同日の理事会
は、前記のとおり、控訴人Fが勝手に組合名義でした自転車修理業の営業から生じ
た多額の負債を整理する目的をも有していたもので、控訴人Fの要請にもとづいて
開催されたものであるから、控訴人Fは右理事会には積極的に参加し、その際の決
定に支持を与え、後には組合の従業員として働いたこともあり、また、控訴人Iも
組合創立当初から組合員で理事を勤めたこともあつて、組合設立以来長年にわたり
厳格な総会手続によることなく、右理事会と同様の方法で役員が選任されてきたこ
とを認容してきており、それ故に、A以下の役員構成のもとに運営することに対し
てもなんら異議を述べず、むしろ、密接な関係を保ち続けてきたのである。たまた
ま今日に至つてAらと不和になつたがためににわかにその理事選任決議の不存在を
主張することは、いわゆる禁反言の原則に違反し、信義則ないし権利濫用禁止の原
則に照らし許されないところである。
 (五) 別件理事選任決議不存在確認の訴訟は第一審に東京地方裁判所八王子支
部において被告たる被控訴人が勝訴したが、控訴審たる東京高等裁判所において取
り消し、原審に差し戻された。しかし、それは送達に関する暇疵にもとづくもので
あつて、技術的な手続上の事由によるものであるから、一審判決の実体判断が不当
と宣言されたわけではない。
 第三 当事者双方の証拠の関係は、つぎに記載するほかは、原判決の事実摘示と
同一であるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決八枚目表八行目「J」を
削除する。)。
 一、 被控訴代理人は、甲第二六ないし第三三号証を提出し、当審証人Bの証言
(第一、二回)、当審における被控訴人代表者尋問の結果を援用し、乙第三号証の
一ないし五、乙第四号証の一ないし四、乙第五号証の成立はいずれも認めると述べ
た。
 二、 控訴代理人は、乙第三号証の一ないし五、乙第四号証の一ないし四、乙第
五号証を提出し、当審証人C、同Jの各証言、当審における控訴人F、同Iの各本
人尋問の結果を援用し、甲第二六、三一号証の成立はいずれも認める、甲第二七な
いし第三〇号証、第三二、三三号証の成立はいずれも知らないと述べた。
         理    由
 一 よつて按ずるに控訴代理人は、本案前の抗弁として二つの主張をしており、
その一は、本訴は被控訴組合の理事Cが被控訴組合を代表して訴を取り下げたこと
によつて終了しているとするものであり、その二は、本訴は被控訴組合を代表する
権限のないAによつて提起されているから、不適法であつて却下されるべきである
とするものである。
 (一) 控訴代理人主張の前者について判断するに、本件記録によれば、昭和四
一年四月一五日訴外Cが被控訴組合理事の資格をもつて当裁判所に同月一九日附訴
取下書を提出していることが明かであるけれども、当裁判所は、これによつて本訴
取下の効力を生じていないものと判断する。控訴代理人の右主張は訴外Aに被控訴
組合理事の資格のないことを前提とするものであつて、そのことは、後段認定のと
おり同訴外人の総会による理事選任手続が不存在であることよりして当然論定する
ことができるところであるが、右認定の事実によれば、訴外Cの理事選任もまた同
様にその手続が不存在であること明かであつて、同訴外人は被控訴組合の理事の資
格あるものといえないから、当然被控訴組合を代表する資格もあるものといえない
のである。
 (二) つぎに控訴代理人主張の本訴提起の適否について考える。
 いずれも成立に争いのない甲第一、第七号証によれば、被控訴人は、消費生活協
同組合法にもとづいて昭和二六年八月二一日設立された組合であり、その組織とし
ては、総組合員をもつて構成する総会があり、役員としては、理事五名および監事
二名が総会において組合員によつて選挙され、理事長および専務理事各一名が理事
によつて互選され、理事長は組合の事務を統理し、組合を代表すると定められてい
ることが明らかである。したがつて、被控訴人を代表する理事長は、総会において
組合員によつて選出された理事の互選によつて定まる訳であつて、これをAについ
てみると、前掲甲第七号証によれば、被控訴人の商業登記簿にはAが昭和三三年一
二月五日理事に就任した旨の記載があるが、いずれも成立に争いのない乙第三号証
の一ないし五、いずれも当審証人Bの証言(第一回)によつて成立を認めうる甲第
二七ないし第二九号証、同証言、原審証人G、当審証人Cの各証言、原審における
控訴人I本人尋問の結果、原審および当審における控訴人F本人尋問の結果、当審
における被控訴人代表者尋問の結果によれば、1.被控訴組合においては総会の運
営および役員の選任は、きわめてルーズに行われ、このようにして定められた役員
が組合を運営してきたのであつて、右商業登記簿に役員就任の日として記載され、
いわゆる総会議事録(乙第三号証の二)に被控訴組合の臨時総会が開かれた日とし
て記載されている昭和三三年一二月五日についても、理事選出のためのあるいはそ
の他の目的のための組合総会が開かれたこともなければ、Aが理事に選ばれたこと
もなく、実際は、訴外Bが同年一一月二五日被控訴組合の理事名義でD、A、K、
I(控訴人)、H、B、G、E、C、Lの一〇名に、組合の運営経営についての協
議をするため同月二九日午後一時組合会議室に参集されたい旨の通知状を発し、同
日同所に参集したA、G、E、B、F(控訴人)の間でA、D、E、CおよびBの
五名を理事に、GおよびHを監事にすることを定めたが、この議事録は作成せず、
後に、同年一二月五日組合総会の招集、開会がなかつたにもかかわらず、同日組合
総会において組合員総数三二五名のうち出席二三二名によつて行われた選挙により
右の者らが理事および監事に選出された旨の議事録を作成し、これを添付して右登
記を行つたものであること、2.同年一一月二九日の右会合には右通知を受けた一
〇名以外の組合員は一切その通知を受けておらず、したがつてまた右決定に関与し
ていないことおよび3.右昭和三三年一一月二九日の会議の招集通知発送控による
も、組合総会の招集と目すべき記載なく、唯「出資者、理事者、代表者会会議招集
通知状」と記載されているのみであり、また当日の議事事項の記載として提出され
ている書類によるも、「理事会議案」と標題にかかげられているのみで、総会の議
事たることを思わせる記載のないことを認めることができ、右認定を左右するに足
りる証拠はない。
 <要旨第二>消費生活協同組合法にもとづいて設立された組合の総会の決議または
選挙については、同法第九六条が「組合員が総組合員の一〇分の一以上
の同意を得て、総会の招集手続、議決の方法又は選挙が法令、法令に基いてする行
政庁の処分又は定款に違反することを理由として、その議決又は選挙若しくは当選
決定の日から一箇月以内に、その議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合
において、当該行政庁は、その違反の事実があると認めるときは、その議決又は選
挙若しくは当選を取り消すことができる。」と定めて別に行政庁に対する決議取消
請求の途を開き、かつ、中小企業等協同組合法第五四条のような決議取消または無
効に関する商法の規定を準用する規定をもらけなかつた趣旨からすると、総会の招
集、議決の方法または選挙に前記第九六条が定めるような瑕疵があるにすぎない場
合には右商法の規定において認められている決議取消の訴を直接裁判所に提起する
ことは許されない(裁判所がこれらの瑕疵を前提問題として判断することができな
いことはいうをまたない)が、議決の内容または選挙の結果に瑕疵があつて当然に
無効の場合および議決または選挙が不存在の場合については右規定はなんらの定め
をしていないから、この場合には、これが現在の権利関係に影響を及ぼすかぎり一
般原則に従いその旨の確認の訴を提起することが許されるのみならず、場合によつ
ては裁判所は前提問題として無効または不存在の事由を調査判断できると解するの
が相当である。そこで、右に認定したA<要旨第一>A外四名の会合が総会の実体を
有し、その決議または選挙が存在していると認めうるかどうかについてみる 第一>に、被控訴組合の総会についての定款の定めは、前掲甲第一号証によれば、総
会は原則として理事がこれを招集するが、その招集にあたつては少くとも五日前ま
でに会議の目的である事項、日時、場所を記載し、招集権者がこれに署名した書面
で組合員に通知しなければならず、急を要する軽微な事項を除いては右による通知
事項以外の議決は禁止され、かつ、総会の定足数は総組合員数の二分の一以上と
し、ただ定足数の出席がなかつたため流会になつた後二〇日以内に招集された総会
においてはその制限に服しないこととされているにすぎないことが明らかであり、
また、右A外四名の会合の行われた昭和三三年一一月二九日当時の総組合員数につ
いては、これを直接把握する資料はないが、当審証人Bの証言(第二回)によつて
成立を認めうる甲第三〇号証によれば、昭和二七年三月三一日当時で五三七名とさ
れ、成立に争いのない乙第五号証によれば昭和三八年六月一五日当時で四三六名と
されていたことが認められ、その間被控訴組合の組合員数に大きな変動があつたと
うかがうに足りる資料はないから昭和三三年一一月二九日当時の組合員数は右数字
と大きく異なるものではなかつたと推定できるところ、会合の通知を受けた人員一
〇名は総組合員数の数十分の一にすぎず、総会の定足数にはるかにみたない数であ
る、右会合を総会と呼称されたこともなければ、総会としての必要な手続がふまれ
た訳でもなく、出席した人員はそのうちのわずかに五名であつて、後日Bにおいて
当日通知を受けながら欠席した人から右会合の決定事項についての事後承認をえた
としても、右決定に関与した人が合計一〇名にすぎないことに変りはなく、右会合
の議事録すらなく、当日役員に選ばれたというAらさえ右期日と異なる昭和三三年
一二月五日に総会が開かれ選任が行われた旨の議事録を作成していて、同年一一月
二九日に総会が開かれたとは扱つていない位であるから、右会合は組合総会として
の実体を有しないものというべく、Aらを理事とする旨の右会合の決定は組合総会
の決議または選挙として存在していないものというべきである。
 被控訴人は、組合は創立以来慣例として右のような会合によつて運営されてきた
が、組合員からはなんの異議もなかつたのであるから、右会合は実質的には組合の
最高議決機関であり、総会と同様の性質を有するものであると主張し、前記認定事
実からすれば、被控訴組合が事実上その主張のような方法で運営されてきたことを
推測しえないことはないが、消費生活協同組合法、被控訴組合の定款の定めによれ
ば、組合員による総会を組合意思を決定する最高の機関とし、その招集、構成、議
決方法等を厳格に規制し、組合員の具体的意思によつて組合意思を決定することを
期していることが明らかであつて、その趣旨からすれば前記のような形態でなされ
てきた組合運営は明らかに違法のものというべく、これに対して組合員から異議が
でなかつたとの一事をもつてこれを適法視できないものといわなければならない。
したがつて、右会合を組合総会と同様の性質を有するものと目することはできない
というべきである。
 そして、他にAが理事に選出されたと認めるに足りるなんらの主張も立証もない
から、Aは、理事によつて理事長に互選されうるものではなく、その代表資格は否
定されるべきである。
 二 被控訴人は、控訴人らはAを理事、理事長に選任することに関与しかつこれ
を認めていたのであるから、本訴においてその資格を争うことは禁反言の原則に違
反し信義則ないし権利濫用禁止の原則に照らし託されないと主張するが、訴訟追行
者が法人の適法の代表者であるかどうかは、当事者の主張をまたずに裁判所におい
て常に職権で調査し、顧慮すべき事項であるから、被控訴人が主張するような事由
によつてこれが職権事項でなくなることはありえないし、そもそも禁反言の原則は
取引の場において妥当するものであつて、ことに消費生活協同組合のごとき公益的
要求の強い法人の組織に関し代表者選出に関与し、これを認めていたことをもつて
右代表者選出が不存在、無効であるのに、右関与者に対する関係ではなお代表者で
ありうるとすることは、法律関係をいちぢるしく混乱させ、ひいては法人の存立自
体を危うくするものであつて、とうていこれを認めがたいといわなければならな
い。
 三 そうだとすると、Aは被控訴組合の理事長でなく、これを代表する権限を有
しないことが明らかであるから、その提起した本件訴は、その余の判断をまつまで
もなく不適法として却下を免れないというべきである。したがつて、本件訴を適法
とし、被控訴人の請求を認容した原判決は失当であるから、これを取り消して本件
訴を却下すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条前段、第九九条を適用
して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 小川善吉 裁判官 松永信和 裁判官 川口富男)

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