弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役四月に処する。
     別紙目録記載の物件は之を没収する。
     被告人は政府の免許を受けないで昭和二十六年十一月中新潟県南魚沼郡
a大字bの自宅に於て焼酎約二斗を製造したものであるとの点は無罪
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人牧野芳夫作成名義の控訴趣意書記載の通りであるから之
を引用する。
 論旨第一点について、
 原判決が論旨摘録の如く「被告人は酒類製造の免許がないのにかゝわらず、一、
昭和二十六年十一月中………………焼酎約二斗を製造し、二、同年同月中…………
右焼酎二斗に味の素其の他の調味液を加え…………合成清酒三斗五升一合を製造し
た」と認定した右一及二の事実につき各別に犯罪の成立を認め併合罪として処断し
たことは弁護人所論のとおりである。
 <要旨>併し原判決が証拠に引用した被告人の検察官に対する第一回供述調書の記
載によれば被告人は当初より其の製造した原判決判示一の焼酎に調味液を加
えて全部これを合成清酒とした上販売する目的であつたことが認められるのである
から原判示一の焼酎二斗を製造した行為は同二の合成清酒三斗五升余を製造した事
実の過程行為に過ぎないのであつて独立別個の酒類製造の罪を構成すべきものでは
なく両者はこれを包括して観案し後の罪の一罪として処断するのを相当とする。
 右の如くであるから原判決が右判示一、二の事実を各独立の犯罪と認め併合罪の
規定を適用処断したのは明かに法令の適用を誤つたものであり右違法は判決に影響
を及ぼすこと明かなるものと謂わなければならないので弁護人の論旨は結局その理
由あるに帰する。然らば他の各論旨に対する判断をするまでもなく原判決は此点に
於て己に破棄を免かれない。
 仍つて刑事訴訟法第三百八十条第三百九十七条に則り原判決を破棄し同法第四百
条但書に則つて更に判決する。
 原審が適法な証拠に依つて確定した原判決の事実(但し判示一及二の事実は包括
して一罪とする)を法律に照すと被告人の右名所為は酒税法第六十条第一項罰金等
臨時措置法第二条第一項に夫々該当するところ所定刑中何れも懲役刑を選択し右は
刑法第十条に依り犯情の重い右三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告
人を懲役四月に処し主文第三項掲記の各物件は判示各犯罪に係るものであるから酒
税法第六十条第四項に依り何れも之を没収すべく本件控訴事実中原判示一の被告人
は政府の免許を受けないで昭和二十六年十一月中新潟県南魚沼郡a大字bの自宅に
於て、米、米糀、水を原料としてアルコール分一度以上の焼酎二斗位を製造したも
のであるとの点に付ては前段説示の理由に因つて罪とならず刑事訴訟法第四百四条
第三百三十六条に則り被告人に対し無罪の言渡を為すべきものとする。
 仍つて主文の通り判決する。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 稻田馨 判事 石井文治 判事 古田富彦)

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