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裁判例


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主文
1被告は,滋賀県労働委員会の委員,滋賀県収用委員会の委員(予備委員
を除く。),滋賀県選挙管理委員会の委員(臨時補充委員を除く。)に対
し,別紙目録記載の月額報酬を支出してはならない。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨
第2事案の概要
1本件は,滋賀県の住民である原告が,被告に対し,被告が滋賀県労働委員会
(以下「滋賀県」を省略する。その他の委員会についても同様とする。),収
用委員会及び選挙管理委員会の各委員に月額報酬を支給しているのは違法であ
るとして,その支出の差止めを求めた事案である。
2前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認
められる事実)
(1)ア原告は,滋賀県の住民である。
イ被告は,滋賀県知事であり,労働委員会,収用委員会及び選挙管理委員
会の各委員(以下「本件委員ら」という。)に対して報酬を支給する権限
を有している。
ウ本件委員らは,滋賀県の非常勤の職員であり,地方公務員法上の特別職
としての身分を有する(同法3条3項2号,地方自治法180条の5第5
項)。
(2)地方自治法(以下「法」というときは,地方自治法をいう。)の規定
ア203条
1項普通地方公共団体は,その議会の議員に対し,議員報酬を支給し
なければならない。
2項普通地方公共団体の議会の議員は,職務を行うため要する費用の
弁償を受けることができる。
3項普通地方公共団体は,条例で,その議会の議員に対し,期末手当
を支給することができる。
4項議員報酬,費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は,条
例でこれを定めなければならない。
イ203条の2
1項普通地方公共団体は,その委員会の委員,非常勤の監査委員その
他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調査会等の委員その他
の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開
票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間
勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなければならない。
2項前項の職員に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給す
る。ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。
3項第1項の職員は,職務を行うため要する費用の弁償を受けること
ができる。
4項報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,条例でこれを定め
なければならない。
ウ204条
1項普通地方公共団体は,普通地方公共団体の長及びその補助機関た
る常勤の職員,委員会の常勤の委員,常勤の監査委員,議会の事務局長又
は書記長,書記その他の常勤の職員,委員会の事務局長若しくは書記長,
委員の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常
勤の職員その他普通地方公共団体の常勤の職員並びに短時間勤務職員に対
し,給料及び旅費を支給しなければならない。
2項普通地方公共団体は,条例で,前項の職員に対し,扶養手当,地
域手当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務
手当,特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。),へき地手当(これに
準ずる手当を含む。),時間外勤務手当,宿日直手当,管理職員特別勤務
手当,夜間勤務手当,休日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,
期末特別手当,寒冷地手当,特定任期付職員業績手当,任期付研究員業績
手当,義務教育等教員特別手当,定時制通信教育手当,産業教育手当,農
林漁業普及指導手当,災害派遣手当(武力攻撃災害等派遣手当を含む。)
又は退職手当を支給することができる。
3項給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定
めなければならない。
エ204条の2
普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づ
く条例に基づかずには,これをその議会の議員,第203条の2第1項の
職員及び前条第1項の職員に支給することができない。
(3)滋賀県特別職の職員の給与等に関する条例(以下「本件条例」とい
う。)の規定
本件条例は,労働委員会の委員,収用委員会の委員(予備委員を除く。以
下同じ。)及び選挙管理委員会の委員(臨時補充委員を除く。以下同じ。)
に対し,別紙目録記載のとおり,月額報酬を支給する旨定めている(1条,
4条。甲2。以下「本件規定」という。)。
本件口頭弁論終結時において,本件規定について,本件委員らに対する報
酬をその勤務日数に応じて支給する方法(以下「日額報酬制」という。)に
改める旨の改正はなされていない。
(4)原告は,平成19年9月26日,滋賀県監査委員に対し,本件委員らに
月額報酬を支給するのは違法であるとして,その差止めを求めて住民監査請
求をしたが,同監査委員は,平成19年11月15日付けで,これを棄却し
た(甲1)。
原告は,平成19年11月22日,本件訴訟を提起した。
第3争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,本件規定に基づく本件委員らに対する月額報酬の支給(以下
「本件公金支出」という。)の差止めの可否であり,これに関する当事者の主
張は,以下のとおりである。
【原告の主張】
1本件規定は,法203条の2第2項に違反し無効である。
(1)法203条の2第2項の趣旨は,非常勤の職員に対する報酬は,生活給
としての性格を有さず,純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを
有するから,勤務量,具体的には勤務日数に応じてこれを支給すべきとした
ものである。そして,同項ただし書は,勤務の実態がほとんど常勤の職員と
異ならず,常勤の職員と同様に月額ないし年額をもって支給することが合理
的である場合や,勤務日数の実態を把握することが困難であり,月額等によ
る以外に支給方法がない場合などの特別な場合について,条例の特別な定め
により,月額あるいは年額による報酬の支給(以下「月額等報酬制」とい
う。)を可能にしたものにすぎない。
(2)本件委員らの勤務実態は,次のとおりである。
ア労働委員会の委員
(ア)労働委員会の委員は,公益委員,使用者委員,労働者委員各5名と
され,任期は2年である。
(イ)労働委員会の総会は,毎月第2,第4金曜日の午後に開催されてお
り,その他,総会が開催されるのと同じ日に,公益委員会議が開催され
ることがある。
(ウ)労働委員会の委員の中には,総会への出席率が2分の1から3分の
2程度の者も存在する。
(エ)平成9年から平成19年11月22日までの間に労働委員会に申し
立てられた事件数は,不当労働行為事件が合計21件で,労働争議調整
事件のうち集団的労使紛争が合計50件,個別的労使紛争が合計32件
である。このように,労働委員会が扱う事件の総数は少なく,他方,委
員の数は15人と多いため,一人当たりの担当数はごく僅かとなり,し
かも,委員間の担当事件数には大きな差がある。
イ収用委員会の委員
(ア)収用委員会は,委員7名及び予備委員2名で構成されている。
(イ)収用委員会は,毎月第1月曜日,第3木曜日の午後に定例会が開か
れている。その出席率については,平成14年は1回欠席した者が2名,
平成15年は1回欠席した者が3名,平成16年は1回欠席した者が3
名,平成17年は2回欠席した者が2名,1回欠席した者が1名,平成
18年は1回欠席した者が2名,平成19年は欠席なしである。
(ウ)平成12年から平成18年までの収用委員会に対する裁決申請件数
及び明渡裁決申請件数は,いずれも13件である。
申立事件の審問は,1件につき2回ないし3回開かれるが,定例会と
同じ日に行われている。
ウ選挙管理委員会の委員
(ア)選挙管理委員会は,選挙管理委員4名で構成され,定例会は月1回,
午前又は午後に開催されている。また,選挙管理委員会が執行する選挙
(3年に2回の割合で行われる国会議員選挙,4年に1回の割合で行わ
れる県会議員選挙,知事選挙,海区漁業調整委員選挙)が行われる場合
には,その前後に1回ずつ臨時会が開催される。
定例会,臨時会については,事前に日程調整が行われるので,ほぼ全
員が出席している。
(イ)委員長は,年1回の都道府県選挙管理委員会総会に出席し,定例県
議会の本会議にも出席することになっている。
(3)本件委員らについて月額等報酬制を採用すべき特別の事情は存在しない。
法180条の5第5項は,普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,
法律に特別の定めがあるものを除く外,非常勤とする旨定めているところ,
本件委員らについては,法律に特別の定めはない。したがって,法律自体が,
本件委員らの勤務実態が常勤職員と異ならないとはいえないこと,本件委員
らについて日額報酬制によらないことを正当化するような特殊な事情は存在
しないことを認めているのである。実際にも,本件委員らの勤務実態は,上
記(2)のとおりであり,常勤職員と異ならないとは到底いえない。
(4)以上のとおり,本件委員らについて月額等報酬制を採用すべき特別の事
情は何ら存在しないから,本件規定は,議会がその裁量権を逸脱又は濫用し
て制定した違法かつ無効なものであることは明らかである。
(5)被告の主張について
被告は,①事件を担当した場合には,事前の検討,連絡,打ち合わせが必
要となる,②関係会議に参加するなどして自己研鑽に努めている,③年間を
通じ,事務局と緊密な連絡体制を維持しながら,適時適切な命令,指導を行
い,必要な情報,知識等について収集,整理等を行っていると主張し,本件
委員らについて月額等報酬制を採用する本件条例は,何ら違法ではないと主
張している。しかし,委員である以上,職責を果たすために自己研鑽に努め
るのは当然のことであり,事前の検討や打ち合わせは,準備的行為として,
委員会への出席や担当事件の審理の内容として考慮すれば足りるのであって,
会議への出席があるとしても,会議出席を勤務1日とカウントすれば足りる
ことである。被告が主張する事情は,月額等報酬制を採用する理由となるも
のではない。
被告は,選挙管理委員の職責は重大であり,常勤の特別職員と変わりがな
いとも主張しているが,そのような評価はあり得ない。
2本件規定は,法2条14項及び地方財政法4条に違反し無効である。
本件委員らの上記1(2)のとおりの働きぶりに比較すれば,本件規定に定め
られた報酬の額は過大というべきである。
したがって,仮に,本件規定が法203条の2第2項に違反していないとし
ても,本件規定は,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならな
い旨定めた法2条14項,及び地方公共団体の経費は,その目的を達成するた
めの必要かつ最少の限度を超えて支出をしてはならない旨定めた地方財政法4
条に違反し,無効である。
3本件公金支出は違法であり,差し止められるべきである。
上記のとおり,本件規定は,法203条の2第2項並びに法2条14項及び
地方財政法4条に違反し,無効である。
したがって,本件公金支出は,条例に基づかない報酬の支給であり,法20
4条の2の給与条例主義に違反し,違法な支出であるから差し止められるべき
である。
【被告の主張】
1法203条の2第2項違反について
(1)法203条の2第2項ただし書は,条例で特別の定めを行う限り,日額
報酬制によらなくてもよいとしているのであって,それ以外に特段の制限は
課せられていない。したがって,本件規定が法203条の2第2項に違反す
ることはあり得ない。
(2)ア仮に,法203条の2第2項によって条例の制定に何らかの制限があ
るとしても,条例制定権が憲法によって認められた権能であることにかん
がみれば,その制限は限定的にとらえるべきである。地方公共団体の議会
には,非常勤の職員に対する報酬を勤務日数以外の基準をもって支給する
旨の条例を制定することについて,広範な裁量権があるというべきであり,
議会の判断が一見して明白に不合理と認められない限り,その条例が違法
・無効とされる余地はない。
イ原告は,法203条の2第2項ただし書は,勤務の実態がほとんど常勤
の職員と異ならず,常勤の職員と同様に月額ないし年額をもって支給する
ことが合理的である場合や,勤務日数の実態を把握することが困難であり,
月額等による以外に支給方法がない場合などの特別な場合について,条例
による特別の定めにより,月額等報酬制を採用することを可能にする趣旨
のものであると主張するが,議会に与えられた裁量権は上記のとおり広範
なものであって,原告の主張は失当である。
(3)上記(1)のとおり,本件規定が法203条の2第2項に違反する余地はな
いが,仮に上記(2)アのとおりに解するとしても,以下のとおりの本件委員
らの職務内容,職責等からして,本件委員らに対して月額等報酬制を採用し
ていることが,法203条の2第2項に違反するとされる余地はない。
ア労働委員会及びその委員について
(ア)労働委員会は,労使紛争を解決するための専門的な行政委員会であ
り,不当労働行為事件の審査(労働組合法(以下「労組法」という。)
7条,27条,地方公営企業等の労働関係に関する法律(以下「地公労
法」という。)4条,16条の3),労働組合の資格審査(労組法5条,
11条),使用者の利益を代表する者の範囲の限定・告示(地公労法5
条2項),労働行為予告違反に関する処罰要求(労働関係調整法(以下
「労調法」という。)42条,同法施行令11条),労働争議のあっせ
ん,調停,仲裁(労調法10条ないし35条,地公労法4条,14条,
15条),個別的労使紛争のあっせん(個別的労使紛争に係るあっせん
に関する要綱,要領),労働協約の拡張適用の決議(労組法18条),
争議発生届の受理(労調法9条),公益事業における争議行為予告通知
の受理(労調法37条),労働争議の実情調査(労働委員会規則62条
の2)等の業務を所掌しており,その委員は,これらの業務を適正に処
理すべき責務を負っている。
(イ)労働委員会の委員は,その就任中,守秘義務等の公務員一般に課せ
られる義務のほか,以下の義務ないし制限を負う。
a禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで,又は執行を受け
ることがなくなるまでの者は,委員になることができない(労組法1
9条の4)。
b国又は地方公共団体の議会の議員等は,公益委員になることができ
ない(労組法19条の4)。
c非常勤の公益委員は,在任中,政党その他の政治団体の役員となり,
又は積極的に政治運動をすることが禁じられている(労組法19条の
6)。
d滋賀県においては,公益委員の任命については,5名の公益委員の
2名以上が同一の政党に属することとなってはならず,公益委員は,
自らの行為によってこれに反することになった場合,当然に退職する
ことになる(労組法19条の12第4項,5項)。
(ウ)労働委員会の会議は,総会と公益委員会議とがあるが,総会は原則
として,毎月第2及び第4金曜日に開催されている。公益委員会議は,
会長が必要に応じて開催することとなっており,開催する場合は総会の
当日に開催している。
(エ)労働委員会の機能は,不当労働行為事件の審査,判定を行う機能
(準司法的機能)と,労働争議のあっせん,調停,仲裁を行う機能(調
整機能)とに大別されるが,労働委員会は,労使の自主性,自律性を尊
重し,労使が団体交渉を通じて自らルールを設定し,安定した秩序ある
労使関係を確立するために必要な援助を行う機関であるから,その活動
は受動的なものとなる。
労働委員会が取り扱う事件等は,申立数に応じて変動するものである
が,申立てに適切に対応し,あるべき解決を速やかに図ることができる
よう,労働委員会の委員らは,労働法規に精通し,現実の労働慣習等に
関する知識経験を取得することを要求され,総会等で配布される資料を
基に自己研鑽を行う必要もある。
また,ひとたび事件の申立てがあれば,事案の聴き取りや,同種事案
の判断例の調査,事務局との打ち合わせなど,相当の時間を当該事件の
ために費やすことになるが,これらの業務は,必ずしも役所に赴いて行
うものではなく,自らの事務所で行ったり,ファクシミリや電話を利用
して行うことも多い。
その他,全国労働委員会等の関係会議への参加などを通じ,常に新た
な情報を得る必要もある。
(オ)以上のような労働委員会の委員の職務,職責からすれば,同委員に
ついて月額等報酬制を採用している本件規定が,違法とされる理由は何
ら存しない。
イ収用委員会及びその委員について
(ア)収用委員会は,土地の収用又は使用に関し,起業者,土地所有者等
の間の紛争を処理する準司法的機能を有する行政機関であり,収用又は
使用の裁決申請,明渡裁決の申立てがあった際,これに対応して審理,
裁決等を行う機関である。
紛争の性質上からも,特に公正中立であることが要求される機関であ
る。
(イ)収用委員会の委員は,公正中立性の要請から,収用委員会の議決に
より,心身の故障のため職務の執行ができないか,又は職務上の義務違
反その他委員たるに適しない非行があったと認められたとき以外は,そ
の意に反して罷免されない(土地収用法55条)。
(ウ)収用委員会の委員は,その就任中,以下の義務ないし制限を負う。
a禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで,又は執行を受け
ることがなくなるまでの者は,委員になることができない(土地収用
法54条)。
b地方公共団体の議会の議員,地方公共団体の長若しくは常勤の職員
若しくは地方公務員法28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を
占める職員との兼務はできない(土地収用法52条4項)。
c教育委員会,人事委員会及び公平委員会の委員を兼ねることができ
ない。
(エ)収用委員会は,毎月第1月曜日,第3木曜日の午後に定例会が開催
されているが,委員らが取り組む職務は,単なる会議への出席にとどま
るようなものではない。
収用又は使用の裁決申請や明渡裁決の申立てがあれば,その全てに対
して公平かつ適切な結論ないし解決をなし得るよう,常に研鑽に努める
ことを求められており,技術的な分野における知識,経験や新たな判断
例の知識を要求される。これらの研鑽のため,委員らは,全国土地収用
連絡協議会の総会や研究会,近畿収用委員会連絡協議会等に出席してい
る。
また,事件の申立てがあれば,審理や現地調査を実施し,起業者や土
地所有者らからの意見聴取を行うが,各委員は,申請資料をもとに,各
自の知識,経験を生かして専門的な検討を行うとともに,事務局との間
で,審理期日の定め方や裁決案の作成,修正等に関する調整等を行う必
要も多い。
(オ)以上のような収用委員会の委員の職務,職責からすれば,同委員に
ついて月額等報酬制を採用している本件規定が,違法とされる理由は何
ら存しない。
ウ選挙管理委員会及びその委員について
(ア)選挙管理委員会は,公職の選挙に関する事務を管理するために設置
されるものであり,選挙に関する事務を管理する。
同委員会が行わなければならない事務は極めて多岐にわたっており,
選挙の有無,特定の事案の発生の有無等にかかわらず,年間を通じて行
われている。選挙の効力又は当選の効力についての異議の申出に係る決
定等という準司法的機能も有するが,それは事務の一部に過ぎない。
また,選挙管理委員会の事務局職員の任命等を行う権限を有し,職員
に対する管理監督責任を負っている。
(イ)選挙管理委員会の委員は,選挙権を有する者で,人格が高潔で,政
治及び選挙に関し公正な識見を有する者のうちから,県議会における選
挙をもって選ばれる(法182条1項)。
(ウ)選挙管理委員会の委員は,その就任中,以下の義務ないし制限を負
う。
a在職中,国会議員,地方公共団体の議会の議員及び長の候補者とな
ることができない(公職選挙法89条)。
b在職中,関係区域内における農業委員会の選挙による委員の候補者
となることができない(農業委員会等に関する法律8条4項)。
c衆議院議員,参議院議員,検察官,警察官,収税官吏,公安委員会
の委員,教育委員並びに地方公共団体の議会の議員及び長との兼職は
禁じられている(法141条1項,166条1項,182条7項,地
方教育行政の組織及び運営に関する法律6条)。
d選挙権を有しなくなったとき,他の都道府県に住所を移したとき,
同一の政党等に属するものが2名以上となったときは失職する(法1
84条)。
e選挙の種類,職務の区域を問わず,一切の選挙運動が禁止され,そ
の違反には刑事罰が定められている(公職選挙法136条,241条
2項)。
(エ)選挙管理委員会は,定例会が月に1回開催されるほか,臨時会も
開催される。
選挙管理委員会の委員は,同委員会の事務を適正に執行するため,
年間を通じ,事務局と緊密な連絡体制を維持しながら,事務局に対し
て適時適切な命令,指導等を行っている。また,選挙の管理執行に際
し,状況に応じた判断や対応を適切に行うため,頻繁に行われる選挙
制度の改正内容や選挙を取り巻く情勢等の職務に必要な情報,知識等
を継続的に収集するなどしている。さらに,選挙管理委員会の定例会
や臨時会,県議会,選挙の管理執行に係る各種会議等にも出席してお
り,そのための十分な準備も必要である。
以上に加えて,選挙管理委員会の委員長は,同委員会の議決の執行,
職員の給与及び服務に関すること等を担当事務としており,同委員会
の事務に関する極めて多くの事項に関し,決済業務を行う必要がある。
(オ)以上のとおり,事務局職員の任命権を有し,行政の執行機関であ
る選挙管理委員会の事務を常時管理監督し,その全責任を負っている
選挙管理委員会の委員の職責は重大であり,常勤の特別職職員と変わ
りがないともいうべきである。
そのような選挙管理委員会の委員の職務,職責からすれば,同委員
について月額等報酬制を採用している本件規定が,違法とされる理由
は何ら存しない。
2法2条14項,地方財政法4条違反について
本件委員らに対する報酬の額について,どの程度の金額,内容をもって「最
少の経費で最大の効果」「目的を達成するための必要かつ最少の限度」とする
かは,議会が当該地方公共団体における様々な事情を考慮して,自主的,自律
的に判断すべきものである。
その判断が合理性を欠くことが一見して明らかであるような場合には,当該
判断が違法,無効とされることもあり得るかもしれないが,本件規定は,滋賀
県議会において,本件委員らの職務内容,職責,就任中の制限等を考慮した上
で設けられたものであり,その額は,他の地方公共団体における額から著しく
かけ離れたものではなく,合理性を欠くことが一見して明らかであるという余
地は全くない。
3本件公金支出の差止めの可否について
以上のとおり,本件規定は何ら違法,無効なものではないから,本件公金支
出に違法性はない。
よって,本件公金支出を差し止めるべき理由はない。
第4当裁判所の判断
1常勤の職員と非常勤の職員の給与等に関する法令の規定
(1)地方自治法の関係規定
前記第2の2(2)のとおり,地方自治法は,普通地方公共団体の議会の議
員,非常勤の職員,常勤の職員とで給与の支給について異なった制度を設け
ている。同法には,常勤の職員及び非常勤の職員についての一般的な定義規
定は置かれていないが,普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,法律
に特別の定があるものを除く外,非常勤とする旨規定されている(180条
の5第5項)。
(2)地方公務員法の関係規定
地方公務員法は,地方公務員の職を一般職と特別職とに分けるものとし
(3条1項),一般職は特別職に属する職以外の一切の職とするものとし
(同条2項),特別職は同条3項1号ないし6号に掲げる職とするものとし
ている(同項本文)。そして,同項において,特別職として,法令又は条例,
地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けら
れた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の
職で臨時又は非常勤のもの(同項2号),臨時又は非常勤の顧問,参与,調
査員,嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職(同項3号),非常勤の消防団
員及び水防団員の職(同項5号)等を規定している。同法は,一般職に属す
るすべての地方公務員(同法において「職員」というものとされている。)
について同法の規定を適用するが,特別職に属する地方公務員については,
法律に特別の定めがある場合を除く外,同法の規定を適用しないものとして
いる(4条1項,2項)。また,同法は,同法にいう職員の給与,勤務時間
その他の勤務条件として,職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共
団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められ
なければならないとし(24条3項),職員の勤務時間その他職員の給与以
外の勤務条件を定めるに当たっては,国及び他の地方公共団体の職員との間
に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない旨規定し(同
条5項),職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定める旨規定
し(同条6項),同法25条1項は,職員の給与は,同法24条6項の規定
による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,これに基づか
ずにはいかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない旨規定し,同法
25条3項5号は,給与に関する条例には,非常勤職員の職及び生活に必要
な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職がある
ときは,これらについて行う給与の調整に関する事項を規定するものとする
旨規定している。
(3)国家公務員に関する法令の関係規定
ア国家公務員法も,国家公務員の職を一般職と特別職とに分けるものとし
(2条1項),一般職は特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を
包含するものとし(同条2項),特別職は同条3項1号ないし17号に掲
げる職員の職とするものとしているが(同項本文),同項においては,特
別職として,内閣総理大臣(同項1号),国務大臣(同項2号),人事官
及び検査官(同項3号),内閣法制局長官(同項4号),就任について選
挙によることを必要とし,あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意に
よることを必要とする職員(同項9号),宮内庁長官,侍従長,東宮大夫,
式部官長及び侍従次長等(同項10号),特命全権大使,特命全権公使,
特派大使,政府代表,全権委員等(同項11号),裁判官及びその他の裁
判所職員(同項13号),国会職員(同項14号),国会議員の秘書(同
項15号),防衛省の職員(同項16号)等が掲げられているにとどまり,
これらに該当しない非常勤の国家公務員は広く一般職に属するものとして
いる。同法は,一般職に属するすべての職について同法の規定を適用する
(同条4項)が,同法の改正法律により別段の定めがされない限り,特別
職に属する職には同法の規定を適用しないものとし(同条5項),政府は,
一般職又は特別職以外の勤務者を置いてその勤務に対し俸給,給料その他
の給与を支払ってはならない旨規定している(同条6項)。また,同法に
いう職員について,職員の給与は,法律により定められる給与準則に基づ
いてされ,これに基づかずにはいかなる金銭又は有価物も支給されること
はできない旨規定し(63条1項),給与準則には俸給表が規定されなけ
ればならない旨規定し(64条1項),その65条において給与準則に定
めるべき事項について規定している。
イ国家公務員法2条に規定する一般職に属する職員の給与に関する事項に
ついては,一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。
以下「給与法」という。)が定められている。給与法は,いかなる給与も,
法律又は人事院規則に基づかずに職員に対して支払い,又は支給してはな
らないとし(3条2項),公務について生じた実費の弁償は,給与には含
まれないとし(同条3項),6条1項及び別表において俸給表の種類及び
各俸給表を定め,6条1項の俸給表は,22条及び附則3項に規定する職
員以外のすべての職員に適用するものとしている(6条2項)。そして,
同法22条は,非常勤の職員の給与について,委員,顧問若しくは参与の
職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で,常勤を要
しない職員(再任用短時間勤務職員を除く。以下同じ。)については,勤
務1日につき,3万5300円(その額により難い特別の事情があるもの
として人事院規則で定める場合にあっては,10万円)を超えない範囲内
において,各庁の長が人事院の承認を得て手当を支給することができるも
のとし(1項),同項に定める職員以外の常勤を要しない職員については,
各庁の長は,常勤の職員の給与との権衡を考慮し,予算の範囲内で,給与
を支給するものとし(2項),1項及び2項の常勤を要しない職員には,
他の法律に別段の定めがない限り,これらの項に定める給与を除く外,他
のいかなる給与も支給しない旨規定している(3項)。
ウ一般職の職員の勤務時間,休暇等に関する法律(平成6年法律第33
号。)23条は,常勤を要しない職員(再任用短時間勤務職員を除く。)
の勤務時間及び休暇に関する事項については,同法5条から22条までの
規定にかかわらず,その職務の性質等を考慮して人事院規則で定める旨規
定し,人事院規則15−15第2条は,非常勤職員の勤務時間は,日々雇
い入れられる非常勤職員については1日につき8時間を超えない範囲内に
おいて,その他の非常勤職員については常勤職員の1週間当たりの勤務時
間の4分の3を超えない範囲内において,各省各庁の長の任意に定めると
ころによる旨規定している。
2国家公務員及び地方公務員に関する法令の関係規定の変遷等
(1)国家公務員
ア昭和22年10月に制定された国家公務員法(昭和22年法律第120
号。昭和23年7月1日施行)においては,「顧問,参與,委員その他こ
れらに準ずる職員で,法律又は人事委員会規則で指定するもの」及び「單
純な労務に雇用される者」は特別職とされ(同法2条3項13号,14
号),同法の改正法律により別段の定めがされない限り同法を適用しない
ものとされた(同法2条5項)。
昭和23年5月,政府職員の新給與実施に関する法律(昭和23年法律
第46号。以下「新給与実施法」という。)が公布,施行されたが,制定
当時の新給与実施法には非常勤の職員についての定めが置かれなかった。
他方で,制定当時の国家公務員法60条は,一般職の職員の任用の特例と
して臨時的任用の制度を規定していた。
イその後,昭和23年法律第222号による国家公務員法2条3項の改正
により,顧問,参与,委員等及び単純な労務に雇用される者も一般職の職
員として国家公務員法を適用するものとされた(上記改正法は昭和23年
12月3日施行された。)。
そして,昭和23年法律第265号による改正後の新給与実施法28条
は,委員,顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに
準ずる職にある者で常勤を要しない職員については,勤務1日につき10
00円を超えない範囲内において,各庁の長が新給与実施本部長の承認を
得てその給与を支給することができる旨及びこれらの職員には他のいかな
る給与も支給しない旨規定し(なお,昭和24年法律第280号による改
正により新給与実施本部長の承認が人事院の承認に改められた。),上記
改正後の新給与実施法29条は,政府に対する不正手段による支拂請求の
防止等に関する法律(昭和22年法律第171号)2条2項の規定による
一般職種別賃金の適用を受ける職員については,新給与実施法の規定にか
かわらず,政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律の
規定に基づいて給与を支給する旨規定したが,新給与実施法28条又は2
9条の適用を受ける職員以外の非常勤の職員についての規定を欠いており,
この間隙を埋める趣旨で,人事院規則9−1(昭和24年1月1日適用)
2項において,1時間又は1日を単位として勤務する者で,常勤を要しな
い職員の給与については,新給与実施法28条に規定する者(人事院規則
9−1第1項に規定する職員を含む。)及び新給与実施法29条に規定す
る者を除いて,なお従前の例によることができる旨規定され,実態として
は従前と同様に,各庁の長の裁量により決定する給与を支給するものとさ
れていた。
ウ昭和24年5月31日,人事院規則8−7(非常勤職員の任用),8−
8(臨時職員制度の廃止)及び15−4(非常勤職員の勤務時間及び休
暇)が施行されて国家公務員における非常勤職員制度が整備され,人事院
規則15−4第1項において「非常勤職員の1週間の勤務時間は,常勤職
員の1週間の勤務時間の4分の3をこえない範囲内において任命権者の任
意に定めるところによる。」旨,その第2項において「非常勤職員につい
ては,有給休暇は認めない。」旨それぞれ規定された。
人事院規則15−4の規定の趣旨については,常勤職員と非常勤職員と
の区別を明確にし,身分,服務,給与等に関して個々的な取扱いをせざる
を得ない非常勤職員の範囲を不当に拡張することによって人事行政の統一
的体系を壊さないようにすることにあるとされ,その第1項において非常
勤職員の1週間の勤務時間を常勤職員のそれの4分の3を超えてはならな
いと規定したのも,実質的に常勤職員と異ならないものについて非常勤職
員として新給与実施法28条及び人事院規則9−1を適用することは,公
平と統一を欠くことになるからであると説明されている。また,人事院規
則15−4第1項において「4分の3」とした理由については,各行政機
関に置かれるべき職員の定員は法律で定めるものとする国家行政組織法
(昭和23年法律第120号)が昭和24年6月1日から施行されたこと
から,この定員法の枠外を作らない意図の下に,常勤職員と非常勤職員と
の勤務時間の差を最小限度4分の1としておけば,その間の混同を生じな
いと考えたものとされている。
なお,人事院規則8−7は,昭和27年6月1日に施行された人事院規
則8−12(同年5月23日公布)に引き継がれた。また,人事院規則1
5−4第1項は,昭和25年2月8日の改正により,「非常勤職員の勤務
時間は,日々雇い入れられる職員については,1日につき8時間をこえな
い範囲内において,その他の職員については常勤職員の1週間の勤務時間
の4分の3をこえない範囲内において,任命権者の任意に定めるところに
よる。」旨改められて,1日の勤務時間が常勤職員についてと同様8時間
と定められる場合であっても,これを非常勤職員とする趣旨が明確にされ
た。そして,上記改正後の人事院規則15−4は,現在の人事院規則15
−15(平成6年7月27日制定)に引き継がれた。他方で,人事院規則
8−12においては,その制定当初から,臨時的任用は常勤官職について
行うものとされている(16条)。
エ昭和25年4月,給与法が制定され,同年4月1日から適用されたが,
制定当時の給与法22条は,委員,顧問,参与等に関する新給与実施法2
8条の規定を,制定当時の給与法23条は,一般職種別賃金の適用を受け
る職員に関する新給与実施法29条の規定をそのまま引き継ぎ,これら以
外の非常勤の職員の給与についての規定は置かれなかった。
しかし,これらの非常勤の職員の給与についても,統一的に給与法に一
元的に規定されるべきであるとの考慮から,昭和25年法律第299号に
よる給与法の改正により,同改正後の給与法22条2項において,現行法
と同様に,「前項に定める職員以外の常勤を要しない職員については,各
庁の長は,常勤の職員の給與との権衡を考慮し,予算の範囲内で,給與を
支給する。」旨規定され,一般職種別賃金の適用を受ける職員に関する同
改正前の給与法23条の規定は削除された。
給与法22条が非常勤職員の給与について委員,顧問,参与等とこれら
以外の非常勤の職員とに分けて規定した趣旨については,非常勤の職員に
は,委員,顧問,参与等のように本来の職業を有しながらその傍ら公務に
参画する形の職員と,臨時的又はパートタイム的にせよ実質的に国に雇用
される形のその他の非常勤の職員との2種類があり,その性格の違いに応
じて,給与上の取扱いも自ずから異なったものとして考えていくのが適当
であるとの考慮に出たものであるとされている。そして,同条1項の規定
の趣旨については,非常勤の委員,顧問,参与等の場合は,いわばその学
識,経験等を拝借するようなものであるというその職務及び勤務の特殊性
に照らすと,それに対する報酬は,給与というよりは本質的にはむしろ謝
金に近い性格のものと考えるのが適当であり,その勤務時間を基礎に評価
するというよりは,委員会等への出席1回(すなわち勤務1日)につきい
くらという形での手当で処遇していくことが最も適当であると考えられる
ことに基づくものであるとされている。他方,同条2項の規定の趣旨につ
いては,同条1項所定の職員以外の非常勤の職員の場合は,国と実質的な
雇用関係にあるために,これらの職員の給与については,その提供する勤
務にふさわしい処遇とすることが当然に要請され,殊に常勤の職員の処遇
との均衡という面での配慮等が望まれるが,これらの非常勤の職員の雇用
及び勤務の実態は区々であり,実際問題としてあらかじめ法律等により具
体的な基準までを詳細に定め難い事情にあるので,法の規定としては「常
勤の職員の給与との権衡を考慮し」という基本的基準を示すのみにとどめ,
具体的な給与の決定は各庁の長の裁量に委ねることとしたものであるとさ
れている。
(2)地方公務員
ア昭和22年4月に制定された地方自治法(昭和22年法律第67号)は,
「給与」の章(第8章)の下に,203条において,普通地方公共団体は,
その議会の議員,選挙管理委員,議会の議員の中から選任された監査委員,
専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及
び選挙立会人に対し,報酬を支給しなければならない(同条1項),前項
の者は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる(同条2
項),報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めな
ければならない(同条3項)と規定し,また,204条において,普通地
方公共団体は,法律の定めるところにより,普通地方公共団体の長及びそ
の補助機関たる職員(専門委員を除く。),学識経験を有する者の中から
選任された監査委員,議会の書記長及び書記,選挙管理委員会の書記並び
に監査委員の事務を補助する書記に対し,給料及び旅費を支給しなければ
ならない(同条1項),給料及び旅費の額並びにその支給方法は,条例で
これを定めなければならない(同条2項)と規定していた。
イ昭和25年12月に制定された地方公務員法(昭和25年法律第261
号)は,地方公務員の職を一般職と特別職とに分け(3条1項),一般職
は特別職に属する職以外の一切の職とするものとし(同条2項),同法の
規定は一般職に属するすべての地方公務員に適用し,法律に特別の定めが
ある場合を除くほか,特別職に属する地方公務員には適用しないものとし
(4条),「法令又は條例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の
機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに
準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの」(3条3項
2号),「臨時又は非常勤の顧問,参與及びこれらの者に準ずる者の職」
(同項3号),「非常勤の消防団員及び水防団員の職」(同項5号)等を
特別職に属する職として規定していた。
また,同法は,一般職の職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条
例で定める旨規定し(24条6項),職員の給与は,同法24条6項の規
定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,これに基
づかずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない旨規定
した(25条1項)上で,同条2項において,給与に関する条例には,給
料表(1号),時間外勤務,夜間勤務及び休日勤務に対する給与に関する
事項(3号),特別地域勤務,危険作業その他特殊な勤務に対する手当及
び扶養親族を有する職員に対する手当を支給する場合においては,これら
に関する事項(4号),非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は
一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職があるときは,これら
について行う給与の調整に関する事項(5号),その他給与の支給方法及
び支給条件に関する事項(7号)等を規定するものと規定していた。
ウ地方公務員法の制定を受けて,地方公務員法の制定に伴う関係法律の整
理に関する法律(昭和26年法律第203号)により,地方自治法204
条1項の規定が,「普通地方公共団体は,普通地方公共団体の長及びその
補助機関たる職員(非常勤の者を除く。),学識経験を有する者の中から
選任された監査委員,議会の事務局長,書記長,書記その他の職員,選挙
管理委員会の書記その他の職員並びに監査委員の事務を補助する書記その
他の職員に対し,給料及び旅費を支給しなければならない。」に改められ,
「非常勤」の文言が初めて用いられた。
エその後,昭和27年法律第306号による地方自治法の一部改正(以下
「昭和27年改正」という。)により,地方自治法138条の4第1項と
して,「普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の
外,法律の定めるところにより,委員会又は委員を置く。」旨の規定が加
えられ,180条の4において,「執行機関として法律の定めるところに
より普通地方公共団体に置かなければならない委員会」(1項)として,
教育委員会(1号),選挙管理委員会(2号),人事委員会又は人事委員
会を置かない普通地方公共団体にあっては公平委員会(3号),農業委員
会(4号)が,「前項に掲げるものの外,執行機関として法律の定めると
ころにより都道府県に置かなければならない委員会及び委員」として,地
方労働委員会(1号),収用委員会(2号),海区漁業調整委員会(3
号),内水面漁場管理委員会(4号),監査委員(5号)が各規定され,
同条3項として,「前二項に掲げるものの外,法律の定めるところにより,
都道府県に,都道府県国家地方警察の運営管理を行わせるため都道府県公
安委員会を置かなければならない。」,同条4項として,「第一項に掲げ
るものの外,執行機関として,法律の定めるところにより,市及び自治体
警察を維持する町村に公安委員会を置かなければならない。」,同条5項
として,「普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,法律に特別の定
があるものを除く外,非常勤とする。」旨が規定されて,196条3項と
して,「監査委員で学識経験を有する者の中から選任されるものは,これ
を常勤とすることができる。」旨の規定が加えられた。また,選挙管理委
員会の委員の定数に関する181条2項の規定中「都道府県にあっては六
人,市町村にあっては四人」とされていた部分が,「都道府県及び第百五
十五条第二項の市にあっては四人,その他の市及び町村にあっては三人」
と改められ,委員の定数が削減された。他方,職員に対する給与等に関す
る改正として,第8章の章名が「給与その他の給付」に改められるととも
に,203条1項の規定が,「普通地方公共団体は,その議会の議員,委
員会の委員,非常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,
審議会及び調査会等の委員その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票
管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方
公共団体の非常勤の職員に対して,報酬を支給しなければならない。」に,
また,204条1項の規定が,「普通地方公共団体は,普通地方公共団体
の長及びその補助機関たる常勤の職員,委員会の常勤の委員,常勤の監査
委員,議会の事務局長又は書記長,書記その他の常勤の職員,委員会の事
務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常勤の職員
その他普通地方公共団体の常勤の職員に対し,給料及び旅費を支給しなけ
ればならない。」にそれぞれ改められた。
「地方自治法の一部を改正する法律の施行に関する件」(昭和27年9
月1日自甲第66号各都道府県知事宛自治庁長官通知)においては,昭和
27年改正の趣旨の一つとして,地方公共団体の組織及び運営の簡素化・
能率化を図って経費の節約と地方住民の負担の軽減に資することが挙げら
れており,その具体的内容として,選挙管理委員会及び監査委員の各制度
の簡素化も指摘されている。
オ昭和31年法律第147号による地方自治法の一部改正(以下「昭和3
1年改正」という。)により,地方自治法203条2項として,「前項の
職員の中議会の議員以外の者に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれ
を支給する。但し,条例で特別の定をした場合は,この限りでない。」旨
の規定が,同条4項として,「普通地方公共団体は,条例で,その議会の
議員に対し,期末手当を支給することができる。」旨の規定がそれぞれ加
えられるなど,同条2項以下の規定が改められ,また,204条2項とし
て,「普通地方公共団体は,条例で,前項の職員に対し,扶養手当,勤務
地手当,特殊勤務手当,時間外勤務手当,宿日直手当,夜間勤務手当,休
日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,寒冷地手当,石炭手当,
薪炭手当又は退職手当を支給することができる。」旨の規定が追加され,
同条3項の規定が現行法3項のとおりに改められ,204条の2として,
「普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く
条例に基かずには,これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員
に支給することができない。」旨の規定が追加された。
昭和31年改正の趣旨については,次のとおり説明されている。すなわ
ち,地方公務員法の制定後,同法の適用を受ける一般職の職員については,
その給与は,同法24条6項及び25条1項の規定により条例で定めるも
のとされたが,特別職の職員については,この規定が適用されず,また,
昭和31年改正前の地方自治法の規定により,非常勤の職員に対しては報
酬及び費用弁償の,常勤の職員に対しては給料及び旅費の支給を規定し,
これらのものについてはその額及び支給方法を条例で定めることとしてい
たものの,これらの種類以外の給与その他の給付については,何ら規定が
なかった。そこで,一般職の職員については,条例で規定しさえすれば,
いかなる種類の給与をどれだけどのような方法で支給しても差し支えなく,
また,特別職の職員については,条例の規定すらも必要とせず,単なる予
算措置のみで極めて曖昧な給与が支給されていても,適当不適当の問題は
別として何ら違法の問題は生じないとされていた。そのため,一般職及び
特別職を通じて,地方公共団体ごとの給与体系は極めて区々となり,不明
朗な給与の支給等が行われる例も決して少なくなかったことから,地方公
共団体の職員に対する給与についても,国家公務員に対する給与の基本の
体系と一致させる形で給与体系を整備し,給与の種類を法定し,ある程度
の給与の統一性を保たせるとともに,国家公務員に準ずる給与を保障し,
合わせて,給与はすべて法律又はこれに基づく条例にその根拠を置くこと
を要するものとして,その明朗化,公正化を図ったものである。
カ「地方自治法の一部を改正する法律及び地方自治法の一部を改正する法
律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の施行に関する件」(昭和3
1年8月18日自乙行発第24号各都道府県知事あて自治庁次長通達)に
おいては,昭和31年改正による地方自治法203条ないし204条の2
の改正について,同法203条2項の規定は,非常勤職員に対する報酬が,
勤務に対する反対給付としての性格を有することにかんがみ,当該報酬の
額は具体的な勤務量,すなわち,勤務日数に応じて支給されるべき旨の原
則を明らかにしたものであるが,ただし,非常勤職員の勤務の態様は多岐
にわたっているので,特別の事情のあるものについては,この原則の例外
を定めることができるものであり,議会の議員を除外したことは,国会議
員との権衡を考慮したものであり,従来どおり議会の議員については特に
法律上の原則を設けなかったものであること,同法203条4項の規定は,
同法204条の2の規定の新設に伴い,法律又はこれに基づく条例に根拠
を持たない限り,職員に対しては,給与その他の給付を一切支給すること
ができなくなるため,国会議員との権衡を考慮し,地方議会の議員に対し
ても期末手当を支給することが法律上可能であるとしたにとどまるもので
あって,この改正は,議員に対して期末手当を支給すべきものとし,又は
支給することを奨励する意図に出るものではないこと,同法204条2項
の規定は,同法204条の2の新設と相まって,地方公共団体が常勤の職
員に対して支給することができる手当の種類を限定列挙したものであり,
その趣旨は,地方公共団体における給与体系について国との均衡を保持す
ることにより地方公共団体における給与体系の公明化と適正化を図ろうと
するものであって,従来地方公共団体が条例に基づき又は単に予算措置の
みを講じて支給していた諸手当中同項に列挙された種類以外のものは,今
後一切支給することができないこと,同法204条の2の規定は,同法2
03条及び204条関係の改正と相まって,地方公共団体の給与体系の整
備を図り,その公明適正化を期したものであり,同法204条の2の新設
により,地方公共団体が職員に支給する給与その他の給付は法律上の根拠
を必要とし,法律に規定された種類についてのみ認められることとなり,
それ以外の一切の給与その他の給付の支給は禁止されるものであること,
などとされている。
キ平成20年法律第69条による地方自治法の一部改正(以下「平成20
年改正」という。)により,203条には議会の議員に関する規定だけが
残されて現行法の203条各項のとおりに改められ,その余の非常勤の職
員に関する規定は現行法の203条の2各項のとおりに改められた。
3法203条の2第2項の趣旨
前記第2の2(2)のとおり,法は,普通地方公共団体は,その議会の議員に
対しては議員報酬を,非常勤の職員に対しては報酬を,常勤の職員に対しては
給料及び旅費をそれぞれ支給しなければならないとし,条例で,議会の議員に
対しては期末手当を,常勤の職員に対しては法定の各種手当をそれぞれ支給す
ることができるとし,議会の議員に対する議員報酬,費用弁償及び期末手当の
額並びにその支給方法,非常勤の職員に対する報酬及び費用弁償の額並びにそ
の支給方法,常勤の職員に対する給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法
は,条例でこれを定めなければならないとした上で,203条の2第2項にお
いて,非常勤の職員に対する報酬についてだけ,「その勤務日数に応じてこれ
を支給する。ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。」旨
の規定を置いている。
上記2で認定したとおり,法203条の2第2項の規定については,昭和3
1年改正により,203条2項として,「前項の職員の中議会の議員以外の者
に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給する。但し,条例で特別の
定をした場合は,この限りでない。」旨の規定が置かれ,平成20年改正によ
り,203条には議会の議員に関する規定だけが残されて現行法の203条各
項のとおりに改められ,その余の非常勤の職員に関する規定が現行法の203
条の2各項のとおりに改められて,現在に至っているものであるが,このよう
な法形式に照らし,法が,普通地方公共団体の職員に対する給与のうち,非常
勤の職員に対する報酬についてだけ,「その勤務日数に応じてこれを支給する。
ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。」旨の規定を置き,
他の二者と異なる取扱いをしていることは文理上明らかである。
そこで,法が,非常勤の職員に対する報酬についてだけ,このような異なる
取扱いをした理由について検討するに,上記2で認定したところによれば,ま
ず,議会の議員との関係では,議会の議員については,歳費の制度が決定して
いる国会議員との権衡が考慮され,これに対する報酬を日額,月額,年額のい
ずれで支給するかは普通地方公共団体の自主的判断に委ねることとし,特に法
律上の原則は設けなかったものと解される。次に,常勤の職員との関係では,
常勤の職員は,地方公務員としての勤務に要する時間が普通の労働者と同程度
であり,かつ,その生活における収入の相当程度を地方公務員としての勤務に
よる収入に依存していることから,これに対する給与については,勤務実績に
対する反対給付としてだけでなく,生活給としての面も考慮する必要があり,
勤務日数のみを基礎とするのは相当でないと考えられたことによるものと解さ
れる。これに対し,非常勤の職員については,これに対する報酬は,生活給と
しての意味を全く有さず,純粋に勤務実績に対する反対給付としての性格のみ
を有することから,原則として,勤務日数に応じてこれを支給すべきものとし,
ただ,非常勤の職員については,法が一般的な定義規定を置いておらず,それ
ぞれの普通地方公共団体の実情として,勤務実態が常勤の職員と異ならず,月
額あるいは年額で報酬を支給することが相当とされる職員がいるなど,特別な
事情がある場合も想定されることから,そのような場合には,上記原則の例外
として,条例で特別の定めをすることにより,勤務日数によらないで報酬を支
給することを可能にしたものと解される。
もっとも,この点を「委員会の委員」についてみると,法は,180条の5
において,普通地方公共団体に置かなければならない委員会として,選挙管理
委員会(1項2号),労働委員会(2項2号),収用委員会(2項3号)等を
規定し,普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,法律に定があるものを
除く外,非常勤とする(5項)と規定した上で,委員会の委員に対しては報酬
(203条の2第1項,平成20年法律第69号による改正前の地方自治法2
03条1項,昭和31年法律第147号による改正前の地方自治法203条1
項も同じ)を,委員会の常勤の委員に対しては給料及び旅費をそれぞれ支給し
なければならない(204条1項,平成20年法律第69号による改正前の地
方自治法204条1項,昭和31年法律第147号による改正前の地方自治法
204条1項も同じ)とし,昭和27年改正により,委員会及び委員に関する
基本規定を制定して以来一貫して,委員会の委員を非常勤のものと常勤のもの
とで明確に区別して規定している。そして,選挙管理委員会,労働委員会,収
用委員会の各委員については,法律に常勤とし,又は常勤とすることができる
旨の規定はなく,これらの委員を政令又は条例等に基づいて常勤とすることは
できないのであるから,これらの委員に対し,常勤の委員に対するのと同様な
生活給的色彩を持つ給与を支給することは,法が予定するところではないとい
わざるを得ない。したがって,以上の諸点を考慮すると,法は,これらの委員
に対しては,その業務の繁忙度等から,勤務実態が常勤の職員と異ならないと
いえる場合に限り,上記原則の例外として,条例で特別の定めをすることによ
り,勤務日数によらないで報酬を支給することを許しているにすぎないという
べきである。
以上に検討したとおり,普通地方公共団体は,法203条の2第1項所定の
非常勤の職員に対しても,特別な事情がある場合には,同条2項本文の例外と
して,同項ただし書に基づき,条例で特別の定めをすることにより,勤務日数
によらないで報酬を支給することができるが,本件で問題となっている選挙管
理委員会,労働委員会,収用委員会の各委員については,それらの委員が法律
上明文の規定をもって非常勤とされている以上,上記のような例外的扱いは,
その勤務実態が常勤の職員と異ならないといえる場合に限られるというべきで
ある。そして,普通地方公共団体は,法令に違反しない限りにおいて,条例を
制定することができるにとどまるから(法14条1項),議会の制定した条例
が,上記のような法203条の2第2項の趣旨に反するときには,当該条例は,
法令に違反するものとして,その効力を有しないものといわなければならない。
これに対し,被告は,①法203条の2第2項ただし書は,条例で特別の定
めを行う限り,日額報酬制によらなくてもよいとしており,それ以外に特段の
制限は課せられていない,②仮に,法203条の2第2項によって条例の制定
に何らかの制限があるとしても,地方公共団体の議会には,非常勤の職員に対
する報酬を勤務日数以外の基準をもって支給する旨の条例を制定することにつ
いて,広範な裁量権があり,その裁量権は,月額等報酬制を採用すべき特別の
事情の有無に限られない旨主張する。
しかしながら,法は,議会の議員に対する議員報酬,非常勤の職員に対する
報酬,常勤の職員に対する給料及び旅費のいずれについても,その額及び支給
方法を条例で定めることとした上で,それとは別に,非常勤の職員に対する報
酬についてだけ,「その勤務日数に応じて支給する。」旨の規定を置いている
のであり,上記①のように解したのでは,203条の2第2項本文の規定は全
く意味を持たないことになるから,①の点に関する被告の主張は採用できない。
次に,②の点に関し,条例の制定について議会に裁量権があることはそのとお
りとしても,選挙管理委員会,労働委員会,収用委員会の各委員については,
それらの委員が法令上,被告が主張するような職責を負っていることを前提と
しながらも,法は,明文の規定をもってこれを非常勤としているのであり,そ
の勤務実態が常勤の職員と異ならないとはいえない場合についてまで,法が上
記の例外的扱いを許容しているとは解されないから,②の点に関する被告の主
張も採用できない。
そこで,以下,本件委員らの勤務実態について検討し,それを踏まえて,本
件規定の効力について検討する。
4本件委員らの勤務実態
(1)労働委員会の委員の勤務実態
証拠(甲6の1ないし5,乙14及び15)及び弁論の全趣旨によれば,
以下の事実が認められる。
ア労働委員会の運営及びその職務
(ア)労働委員会は,労組法19条,法180条の5第2項の規定に基づ
いて設置された労使紛争を解決するための機関であり,労組法及び労調
法に規定する権限を行使するものである。
労働委員会は,使用者委員,労働者委員及び公益委員各5名で組織さ
れており,その主たる業務は,不当労働行為事件の審査,労働組合の資
格審査並びに労働争議のあっせん,調停及び仲裁(以下「あっせん等」
という。)である。
(イ)労働委員会の職務は,委員全員をもって構成される総会及び公益委
員のみで構成される公益委員会議によって遂行されている。
(ウ)総会は,毎月第2及び第4金曜日に開催されており,主として不当
労働行為事件やあっせん等,争議の実情調査等に関する報告が行われて
いる。
(エ)公益委員会議は,不当労働行為事件の審査や労働組合の資格審査等
を扱い,必要に応じて会議が開催されることとなっているが,滋賀県に
おいては,総会と同一の日に開催されるのが通例となっている。
その会議においては,主として,不当労働行為事件や労働組合資格審
査に関する審議が行われている。
イ労働委員会の主たる職務
(ア)不当労働行為事件
a不当労働行為事件の申立てがあった場合,公益委員会議は,直ちに
調査開始を決定するとともに,公益委員の中から1名を審査委員を選
任する。審査委員は,参与委員として参加する使用者委員及び労働者
委員各1名と共に必要な調査を行う。審査委員の調査の結果,必要が
あると認められた場合には,審問が行われる。
その結果,事件が命令を発するに熟したときは,公益委員会議は,
参与委員の意見を聞いた上で救済命令等を発する。救済命令を発する
場合の公益委員による合議は期日において行われている。
また,調査,審問の過程で和解が試みられることもあり,その結果,
和解が成立する場合もある。和解協議は,調査の段階においては調査
期日に行われており,審問後に和解が試みられる場合も,同様に期日
が設けられている。
b平成10年から平成19年までの不当労働行為事件の申立件数及び
取扱件数の推移は,別表1のとおりである。
不当労働行為事件の調査は,労働者委員会の委員会室で行われる。
調査期日は,おおむね月1回程度であり,数回にわたって調査が行
われる場合が多い。
(イ)労働組合の資格審査
労働組合の資格審査は,当該労働組合が労働組合法の規定に適合する
かどうかを審査するものであり,公益委員会議が行う業務である。
平成10年から平成19年までの資格審査の取扱件数の推移は,別表
2のとおりである。
(ウ)あっせん等
平成10年から平成19年までの取扱事件数の推移は別表3のとおり
であり,平成12年以降は調停及び仲裁の取扱いはない。
労働争議のあっせんは,労働委員会会長に指名されたあっせん委員が
行っている。あっせん委員は,原則として,公益委員,使用者委員及び
労働者委員各1名ずつで構成されている。
あっせん委員は,使用者側と組合側の主張を聴取し,場合によっては
あっせん案を提示して解決を図っている。
労働争議のあっせんは,申請から1か月か2か月程度で終結する場合
が多い。
ウ労働委員会の委員の職務
(ア)労働委員会の委員は,労働委員会の構成員として総会への出席を通
じて労働委員会の職務を行い,さらに,公益委員は,公益委員会議への
出席を通じて,公益委員会議の職務を行っている。
(イ)審理委員又は参与委員として不当労働行為事件の審理を担当し,ま
た,あっせん委員としてあっせんも行っているが,その職務は主に期日
において行われている。
(ウ)専門知識の研鑽のために開催される研究会や他都道府県の労働委員
会との連絡のために開催される会議(以下「労働委員会連絡会議」とい
う。)に出席する委員もいる。
研究会は,平成18年は2回,平成19年は1回開催され,労働委員
会連絡会議は,平成18年,平成19年とも,全国規模のものが2回,
近畿地方のものが4回開催された。
(2)収用委員会の委員の勤務実態
証拠(甲7の1ないし3,乙18ないし22)及び弁論の全趣旨によれば,
以下の事実が認められる。
ア収用委員会の運営
(ア)収用委員会は,公共の利益の増進と私的財産との調整を図るため,
土地収用法51条の規定に基づいて設置された機関であり,7人の委員
によって構成されている。
定例会は,毎月第1月曜日,第3木曜日の午後に開催されている。定
例会においては,国道拡幅工事に係る相談案件の検討,他府県における
裁決例の検討等が行われている。
(イ)収用委員会の主たる職務は,起業者の申請に基づいて,起業者と土
地所有者との間の土地の収用又は使用を巡る紛争に関する審理,調査等
を行い,裁決等を行うことである。
平成12年以降の申請件数は,別表4のとおりである。
イ収用委員会の委員の職務
(ア)収用委員会の委員は,定例会に出席して,国道拡幅工事に係る相談
案件の検討,他府県における裁決例の検討等を行っている。
(イ)起業者から裁決申請があった場合には,収用委員会の構成員として,
裁決申請事件に関する職務を行っている。
大津湖南都市計画道路事業3・5・704号の事件に関する職務遂行
状況は,別紙裁決申請事件経過一覧のとおりであり,期日における審理,
現地調査,土地収用法65条に基づく調査,裁決書に関する協議等を中
心とするものである。
(ウ)その他,専門知識の研鑽のために開催される研究会や他都道府県の
収用委員会との連絡のために開催される会議(以下「収用委員会連絡協
議会」という。)に出席する委員もいる。
研究会は,春季,秋季の年2回開催で,会期は2日であり,収用委員
会連絡協議会は,全国規模のものと近畿地方のものとがあり,いずれも
年1回開催で,会期は1日である。
(3)選挙管理委員会の委員の勤務実態
証拠(乙24ないし29)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
ア選挙管理委員会の運営
(ア)選挙管理委員会は,公職の選挙に関する事務を管理するため,法1
80条の5,181条に基づいて設置された機関であり,4人の委員に
よって構成されている。
定例会は,月1回開催されており,その他に臨時会も開催されている。
(イ)選挙管理委員会は,地方公務員法6条1項に基づき,選挙管理委員
会の職員の任命,休職,免職及び懲戒等を行う権限を有している。
イ選挙管理委員会の委員の職務
(ア)選挙管理委員会の委員は,定例会及び臨時会に出席して,選挙や政
治団体等に関連する事項について議決,協議等を行っている。
(イ)選挙関係の用務への出席,各種団体の総会等への出席,県議会への
出席も選挙管理委員会の委員の職務である。
選挙管理委員会の委員が出席した選挙関係の用務の回数は,平成17
年は11回,平成18年は17回,平成19年は9回である。
各種団体の総会等のうち,選挙管理委員会の委員が出席したものの回
数は,平成17年は13回,平成18年は10回,平成19年は9回で
ある。
選挙管理委員会の委員が出席した県議会の日数は,平成17年が32
日,平成18年が27日,平成19年が15日である。
(ウ)選挙管理委員会の委員長は,以下の事務を担当している。
a委員会の議決すべき事件について,その議案を提出すること
b委員会の議決を執行すること
c公印及び書類の保管に関すること
d職員の給与及び服務に関すること
e委員会の庶務に関すること
5本件規定の効力及び本件公金支出の差止めの可否
上記4で認定した本件委員らの勤務実態は,各委員について,被告が前記
第3の【被告の主張】1(3)アないしウの各(ヱ)で主張するような事情があ
り得ることを考慮しても,到底常勤の職員と異ならないとはいえず,法が,
このような勤務実態を有する本件委員らに対し,勤務日数によらないで報酬
を支給することを許しているものとは解されない。
そうすると,本件委員らに対し,勤務日数によらないで月額報酬を支給す
ることとした本件規定は,上記4で認定した近時の勤務実態を前提とする限
り,法203条の2第2項の趣旨に反するものとして,その効力を有しない
といわざるを得ないから,本件公金支出は,法204条の2の規定に反し,
違法であるというほかはない。
しかるに,本件委員らに対する報酬をその勤務日数に応じて支給するべく,
本件規定を改正しようとする動きはなく,被告も,本件規定は何ら違法,無
効なものではないと主張しているから,今後も本件規定に基づいて,本件公
金支出が行われることが,相当な確実さをもって予測されるところである。
6結論
以上の次第で,本件公金支出の差止めを求める原告の請求は理由があるの
で,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
大津地方裁判所民事部
裁判長裁判官石原稚也
裁判官濱谷由紀
裁判官宮本浩治

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