弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人らの負担とする。
         理    由
 抗告代理人伊志嶺善三、同阿波根昌秀、同島袋勝也、同前田武行、同三宅俊司、
同吉田健一、同神田高、同鷲見賢一郎、同松島暁、同稲生義隆、同内藤功、同関島
保雄、同瀬野俊之、同野沢裕昭、同小部正治、同海川道郎、同石川元也、同太田隆
徳、同森下弘、同梅田章二、同伊賀興一、同斎藤浩、同西晃、同長野真一郎、同下
東信三、同岡村正淳、同諌山博、同吉村拓、同中野和信、同中村博則、同小泉幸雄、
同松岡肇、同永尾廣久、同秋月慎一、同田中利美、同前田豊、同儀同保、同丹羽雅
雄、同大川一夫、同中北龍太郎、同井上二郎、同中島光孝、同松本剛、同上原康夫、
同大久保賢一、同河内謙策、同青木護、同瑞慶山茂、同仲松正人、同八尋八郎の抗
告理由について
 抗告人らは、前文記載の事件の被告を補助するために参加を申し出たものである
ところ、右事件は地方自治法一五一条の二第三項に基づく職務執行命令訴訟として
提起されたものであることが記録上明らかである。
 都道府県知事は、法律に基づき委任された国の事務を処理する関係においては、
国の機関としての地位を有し、その事務処理については、主務大臣の指揮監督を受
けるべきものである(国家行政組織法一五条一項、地方自治法一五〇条)が、右事
務の管理執行に関する主務大臣の指揮監督につき、いわゆる上命下服の関係にある
国の本来の行政機構内部における指揮監督の方法と同様の方法を採用することは、
都道府県知事本来の地位の自主独立性を害し、ひいては地方自治の本旨にもとる結
果となるおそれがある。そこで、地方自治法一五一条の二は、都道府県知事本来の
地位の自主独立性の尊重と国の委任事務を処理する地位に対する国の指揮監督権の
実効性との間の調和を図る趣旨から、職務執行命令訴訟の制度を採用したものであ
る。そして、右訴訟においては、主務大臣の都道府県知事に対する命令の適法性が
審理の対象となり、裁判所がその適法性を是認する場合には、裁判所は、当該都道
府県知事に対し、当該事項を行うべきことを命ずる判決をすることになり(同条六
項)、右判決には、都道府県知事が判決に定められた期限までに当該事項を行わな
いときは、主務大臣が代執行権を行使することができる旨の効果が付与されており
(同条八項)、これによって、主務大臣の指揮監督権の実効性が確保されている。
 以上によれば、職務執行命令訴訟は、国の委任を受けて都道府県知事が管理執行
する事務に関する行政機構内部における意思決定過程で、行政機関の間に法令解釈
等をめぐる対立があった場合において、その対立の調整手段として法が特に認めた
客観的訴訟の性質を有するものと解され、裁判所が主務大臣の請求に理由があると
認めて、都道府県知事に対し、当該事項を行うべきことを命じた場合であっても、
行政機構内部における本来の方法によって当該事項を執行すべきことが決定された
のと同様の効果を生ずるにとどまるものというべきである。かかる訴訟については、
右指揮命令の適法性をめぐり対立する主務大臣と都道府県知事との間で訴訟が追行
されることが予定されており、本来行政機構内部における意思決定過程に介入する
ことが認められていない者が、これに関与することは法の全く予定しないところで
あるといわざるを得ない。したがって、職務執行命令訴訟については、その性質上、
民訴法の補助参加に関する規定を準用する余地はないとした原審の判断は、正当と
して是認することができる。そして、このように解しても憲法三二条の規定に違反
するものでないことは、最高裁昭和三二年(オ)第一九五号同三五年一二月七日大
法廷判決・民集一四巻一三号二九六四頁の趣旨に徴して明らかであって、憲法三二
条違反をいう論旨は理由がない。その余の論旨は、違憲をいう部分もあるが、その
実質は、原決定の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎない。
 よって、本件抗告はこれを棄却し、抗告費用は抗告人らに負担させることとし、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
  平成八年二月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    福   田       博

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