弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人下飯坂潤夫の上告趣意第一点のうち、判例違反をいう点は、原
審が、被告人の出頭のもとで、四名の証人、二通の書証および三通の証拠物たる書
面を取り調べ、その結果をも総合して、第一審判決を破棄し、被告人の故意を認定
しているのであるから、所論引用の判例は事案を異にし、本件に適切でなく、その
余は、単なる訴訟法違反の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第二点のうち、違憲をいう点は、原審が、被告人を直接尋問せず、またその弁
解を聴かずに有罪判決をしたのが憲法に違反するというのであるが、憲法のいかな
る条項に違反するかを示さず、単に憲法違反をいうに過ぎないものであり、その余
は、単なる訴訟法違反の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第三点のうち、相被告人Bに関する上告趣意を引用する部分は、後記同被告人
の弁護人下飯坂潤夫の上告趣意についてと同様、上告適法の理由に当らないし、そ
の余は、量刑不当の主張であつて、上告適法の理由に当らない。
 被告人Aの弁護人岸達也の上告趣意第一の(一)(二)のうち、違憲をいう点は、
刑訴法三九〇条、三九四条が憲法に違反するというのであるが、憲法のいかなる条
項に違反するかを示さず、単に憲法違反という語を用いているに過ぎないものであ
り、その余は、単なる訴訟法違反の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当ら
ない。
 同第一点の(三)(四)のうち、違憲(三七条一項違反)をいう点は、刑訴法四
〇六条に規定する事件受理に関する手続規定の違憲の主張であつて、原判決自体の
違法をいうものではなく、その余は、単なる訴訟法違反の主張であつて、いずれも
上告適法の理由に当らない。なお、相被告人Bに関する上告趣意第一、二点を引用
する部分は、後記同被告人の弁護人岸達也の上告趣意第一、二点についてと同様、
上告適法の理由に当らない。
 同第二点のうち、判例違反をいう点は、原判決が所論の点についてなんらの判断
をも示していないものであるから、所論は前提を欠き、その余は、単なる訴訟法違
反の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当らない。なお、第二審裁判所が事
実の取り調べをした場合には、刑訴法三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の
規定(刑訴法二九三条、同規則二一一条)の準用はないと解するのが相当である(
昭和三六年七月五日第二小法廷決定、裁判集一三八号六二三頁参照。)。
 同第三点は、単なる訴訟法違反、事実誤認および量刑不当の主張であつて、いず
れも上告適法の理由に当らない。
 被告人Aの弁護人山下卯吉の上告趣意は、単なる訴訟法違反、事実誤認および量
刑不当の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当らない。
 被告人Bの弁護人下飯坂潤夫の上告趣意第一点のうち判例違反をいう点、および
上告趣意(追加)第一点について。
 所論のうち、原審における事実の取り調べが判例違反であるという点は、原審が、
被告人の出頭のもとで、四名の証人、二通の書証および三通の証拠物たる書面を取
り調べ、その結果をも総合して、第一審判決を破棄し、被告人の故意を認定してい
るのであるから、所論引用の判例は事案を異にし、本件に適切でなく、事実取り調
べの結果を判文上明白にしていないのが判例違反であるという点は、原判決が所論
の点についてなんらの判断をも示していないものであるから、所論は前提を欠き、
いずれも上告適法の理由に当らない。
 同上告趣意第一点のうちその余の点、および上告趣意(追加)第二点について。
 所論のうち、刑訴法三九〇条本文の違憲(一一条、一三条違反)をいう点は、記
録によると、原審は、刑訴法三九〇条本文ではなく同条但書により、被告人の出頭
がその権利の保護のために重要であると認めて、各公判期日に出頭を命じており、
被告人も、事実の取り調べが行なわれなかつた第一回公判期日を除き、その余の各
公判期日に出頭し、事実の取り調べに立ち会つていることが明らかであるから、所
論は、すでにその前提において失当であり、その余は、単なる訴訟法違反の主張で
あつて、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第二点ないし第四点は、後記被告人Bの弁護人岸達也の上告趣意第二点ないし
第四点についてと同様、上告適法の理由に当らない。
 被告人Bの弁護人岸達也の上告趣意第一点のうち、刑訴法三九〇条本文の違憲を
いう点は、原判決が、憲法三一条、三七条に違反する刑訴法三九〇条本文の規定に
よる訴訟手続にもとずいてなされたものであるから違憲であるというのであるが、
記録によると、原審は、同条本文ではなく同条但書により、被告人の出頭がその権
利の保護のため重要であると認めて、各公判期日に出頭を命じており、被告人も、
事実の取り調べが行なわれなかつた第一回公判期日を除き、その余の各公判期日に
出頭し、事実の取り調べに立ち会つていることが明らかであるから、所論は、すで
にその前提において失当であり、その余は、上告理由および刑訴法四〇六条の事件
受理に関する手続規定の違憲の主張であつて、原判決自体の違法をいうものではな
いから、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第二点のうち、(イ)および(ニ)は、違憲をいう点もあるが、単なる訴訟法
違反の主張を出ないものであり、(ロ)および(ハ)は、刑訴法四〇六条の事件受
理に関する手続規定の違憲の主張であつて、原判決自体の違法をいうものではない
から、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第三点のうち、判例違反をいう点は、原判決が所論の点についてなんらの判断
をも示していないものであるから、所論は前提を欠き、その余は、違憲をいう点も
あるが、実質は単なる訴訟法違反の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当ら
ない。
 同第四点は、単なる訴訟法違反、事実誤認および量刑不当の主張であつて、いず
れも上告適法の理由に当らない。
 なお、被告人Bは、昭和四〇年一月二一日に上申書と題する書面を提出したが、
上告趣意書差出期限経過後のものであるから、判断を加えない。
 また、記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり決定する。
  昭和四一年一月一八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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