弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成27年11月19日判決言渡
平成27年(行コ)第252号価額変更等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第365号)
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2東京都収用委員会が平成26年5月29日付けでした赤坂A地区第一種市街地
再開発事業に係る都市再開発法73条1項12号に定める原判決別紙物件目録記
載の建物部分に関する控訴人らの借家権の価額を金0円と定める裁決を,金47
73万0556円と定めると変更する。
3被控訴人は,控訴人らに対し,4773万0556円及びこれに対する平成2
5年9月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
以下,略称については原判決の例による。
1本件は,本件再開発事業の施行地区内の建築物の一部である本件建物部分に本
件借家権を有していた控訴人ら(原告ら)が,本件再開発事業の施行者である被
控訴人(被告)に対し,法85条3項,土地収用法133条に基づき,東京都収
用委員会がした本件裁決において0円と定められた法73条1項12号の本件借
家権の価額を4773万0556円と定める旨変更することを求めるとともに,
91条補償として4773万0556円及びこれに対する権利変換期日の翌日で
ある平成25年9月26日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延
損害金の支払を求めた事案である。
2原審は,都市再開発法は,施行地区内の建築物について借家権を有する者が地
区外転出の申出をした場合において,91条補償が支払われるべき対象者に形式
的には当たるとしても,必ず借家権の消滅の対価として91条補償をしなければ
ならないとの立場をとるものではないとした上で,法80条1項の文言に照らせ
ば,施行者が91条補償により補償すべき額は,借家権の取引価格を基礎として
算定すべきものであるところ,評価基準日現在,本件再開発事業の施行地区付近
において,借家権の取引価格が成立している事実を認めるに足りる証拠はないな
どとして,91条補償による本件借家権の価額は0円であると認めるのが相当で
あるから,本件裁決は相当であると判示して,控訴人らの請求をいずれも棄却し
た。これに対し,控訴人らが控訴した。
3関係法令の定め,前提事実,主な争点と両当事者の主張は,4に当審における
控訴人らの主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案
の概要」の1から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。
4当審における控訴人らの主張
(1)原判決は,本件建物部分の明渡しが不随意の明渡しである旨判示していなが
ら,客観的な取引価格が借家権の消滅の対価であるとの考えに立っている。
しかしながら,客観的な取引価格が借家権の消滅の対価であるとの考え方は,
そもそも本件建物部分の明渡しが不随意の明渡しであることと矛盾するもので,
失当である。不随意の明渡しにおいて客観的な取引価格を問題とすること自体
が誤りであり,取引価格が存在しない限り借家権価額は0円であるとする原判
決の法解釈は,立法者意思にも反するものである。
(2)都市再開発法は,借家権者に対して,権利変換と地区外転出の申出という二
つの等価的選択肢を用意しているのであるから,権利変換を希望した者に新た
な借家権が与えられることとの均衡上,地区外転出の申出をした者には借家権
補償がされるべきであり,97条補償がされていることをもって,借家権の経
済的価値に対する補償がされているとはいえない。本件においては,本件借家
権には0円を超える借家権価額が存在し,それは割合法によれば4773万0
556円であるから,本件借家権の経済的な価値に対する補償として,控訴人
らに対して91条補償として上記金員が支払われるべきである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由
は,原判決13頁16行目の「借家権」を「地区外転出の申出をした者の消滅す
る借家権」と,16頁25行目の「借家権」を「本件借家権」とそれぞれ改め,
2に当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事
実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1に記載のとおりであるから,こ
れを引用する。
2当審における控訴人らの主張について
(1)控訴人らは,本件建物部分の明渡しは不随意の明渡しであるから,本件借家
権の価格の補償の要否を判断するに当たり,客観的な取引価格を問題とするこ
と自体誤りであり,取引価格が存在しない限り借家権価額は0円であるとする
原判決の法解釈は立法者意思にも反するものである旨主張する。
しかしながら,原判決は,借家権者が法87条2項により失う借家権の価額
は,法80条1項において,所定の評価基準日における近傍同種の建築物に関
する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額と規定されているこ
とから,この文言に従い,施行者が91条補償により補償すべき額は,借家権
の取引価格を基礎として算定すべきものであるとしたものである。また,甲3
3号証(衆議院建設委員会議事録)によれば,都市再開発法案審議における政
府委員の答弁内容は,権利変換を希望しない借家人については,施行者が直接
借家権を評価して補償すること,その借家権の評価に当たっては,近傍同種の
借家権の取引に権利金授受の慣行があるかどうかといった形によって借家権価
額の存在が認められる場合には,取引価格を中心に,賃貸借契約の諸条件を考
慮して評価するというものであって(取引価格等の「等」とはこれらの考慮要
素を指すものと解される。),近傍同種の借家権取引に照らして借家権価額が認
められない消滅借家権についてまで,他の評価方法によって補償を行うことを
明らかにしたものとは認め難いから,このような借家権について91条補償を
しないことが立法者意思に反するものともいえない。控訴人らの上記主張は,
法91条の文言を離れて独自に解釈するものであり,採用することができない。
(2)控訴人らは,都市再開発法が借家権者に対して,権利変換と地区外転出の申
出という二つの等価的選択肢を用意しており,権利変換を希望した者には新築
の施設建築物内の借家権が得られるという利益が与えられるのであるから,権
利変換と同等の選択肢である地区外転出の申出をした者にも消滅する従前の借
家権に対応する借家権補償がされるべきであり,そうしなければ著しい不均衡
が生じる旨主張する。
しかしながら,本件再開発事業において,そもそも権利変換を希望するのか,
地区外転出の申出をするのかは借家権者が自由に選択することができるもので
ある上,地区外転出の申出をした者には,97条補償として,権利変換を希望
した者には支払われない家賃差額補償額や敷金の運用益損失相当額から成る借
家人補償金を含む移転費用が支払われるものであるから(控訴人らには106
9万5720円の借家人補償金が支払われた。),地区外転出の申出をした者の
消滅する借家権価額が取引価格を有しない場合において91条補償がされない
からといって,権利変換と地区外転出の申出という二つの選択肢が経済的価値
において著しく均衡を欠くということはできない。したがって,控訴人らの上
記主張はその前提を欠き,採用することができない。
3よって,控訴人らの請求はいずれも理由がなく,原判決は相当であるから,本
件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官柴田寛之
裁判官小田靖子
裁判官矢作泰幸

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛