弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月及び罰金二万円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間
被告人を労役場に留置する。
     但し裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
     押収してある白米八六瓩玄小麦五七、五瓩玄裸麦二七五瓩玄米五九瓩籾
一八二瓩の換価金一万三千百二十四円六十二銭はこれを没収する。
         理    由
 検察官の控訴の趣意は末尾添付の原審検察官副検事山崎進一名義の控訴趣意書記
載のとおりである。
 控訴趣意一の第一乃至第三点について
 原判決は判示事実を証拠により確定した上、これに対して被告人を懲役一年と罰
金三万円に処し右懲役刑と罰金中二万円につき裁判確定の日から三年間その刑の執
行を猶予していること所論のとおりである。刑法第二十五条によれば刑の執行猶予
の要件として「三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ノ言渡ヲ受ケタル
トキハ情状ニ因リ裁判確定ノ日ヨリ一年以上五年以下ノ期間内共執行ヲ猶予スルコ
トヲ得」(罰金額五千円は罰金等臨時措置法により五万円となる)刑法第二十七条
は「刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消サルルコトナクシテ猶予ノ期間ヲ経過シタルトキハ
刑ノ言渡ハ其ノ効力ヲ失フ」と定めている。思うに刑の執行猶予の制度は自由刑に
着眼して考え出されたものであつてそのねらいどころは短期自由刑の執行により生
ずる弊害を避けんがため、刑罰の執行を休止の状態に置き一定の期間刑の言渡を受
けた者が犯罪行動に出ないときは確定的に所罰の執行を免除し場合によつては刑の
言渡そのものの効力を喪失せしめんとするものである。右の如く執行猶予は、もと
もと短期自由刑の弊害を矯めんとして出発しているものであるが、すでに重い懲役
又は禁錮に対してこれを認める以上はこれより軽い罰金刑に対しても猶予を認める
ことは理論上むしろ当然であるばかりでなく、実際上も罰金はその完納不能による
換刑として労役場留置の執行を受くることとなりこれを科せらるるものに対して著
しい苦痛を与え得るものであり、且つそれが前科として犯罪人名簿に登録せられ、
場合によつては資格制限、資格停止の効果を伴うものであることを思うときこれに
対して執行猶予を認めることは、やはり懲役、禁錮の場合と同様刑事政策上、大な
る効果のあるべきこと勿論である。すなわち刑の執行猶予の制度は単に短期自由刑
の弊害を除くというがごとき消極的なものに止まらないで実刑を科する可能性によ
る心理的な改善効果と猶予期間の経過とともに刑の言渡が効力を失うことによる犯
人の更正により大きな可能性とが執行猶予の積極的な刑事政策的意義だといわねば
ならない。かようにして執行猶予の制庭については自由刑と財産刑とを区別する理
由を失つたのである。かくしてこの執行猶予の制度は自由刑より更に財産刑へ拡張
すべきだとの刑事政策的見地から現行刑法の規定に発展したものである。従つて執
行猶予の言渡を受けたものは、その猶予の期間内、これを取消さるることなくその
期間を経過するにおいては刑の言渡は全面的にその効力を失い刑の言渡はなかつた
と同様に見做され、前科としての不利益な効果が終生続くような不合理を是正せん
ことを意図してい<要旨>るのである。そうだとすれば原判決がその言渡した罰金刑
三万円の内二万円についてはその執行を猶予しその余について、これをなさ
なかつたのは上来説述の財産刑に対する執行猶予制度の趣旨に反するばかりでな
く、他面一個の罰金刑につきそれぞれ法律効果を異にする二個の罰金刑を言渡した
ことに帰着し実質的には二個の判決とも解せられる。しかも刑法第二十五条の規定
の文理からしても「其執行ヲ猶予スルコトヲ得」とあつて「其執行」とは、もとよ
り言渡刑そのものを指称するものと解すべきが相当であるから執行猶予の言渡はそ
の言渡した刑全部につきなすべきものであることは当然である。原判決は結局法令
の適用に誤があり、その誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免
れない。論旨は理由がある。
 控訴趣意一の第四点について
 原判決には所論のように罰金等臨時措置法を適用しない違法がある。この点にお
いても前同様破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつてその余の控訴趣意に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七条を適用
して原判決を破棄し同法第四百条但書により被告事件につき更に判決をする。
 当裁判所が認定する事実は原審認定の事実(起訴状記載の公訴事実)と同一であ
り、右事実は原判決挙示の各証拠を綜合してこれを認める。法律に照らすと被告人
の判示第一の(一)乃至(八)の各所為はそれぞれ食糧管理法第九条第三十一条、
罰金等臨昨措置法第二条第一項、同法施行令第六条に、判示第二の(一)乃至
(七)の各所為はそれぞれ食糧管理法第九条第三十一条、罰金等臨時措置法第二条
第一項、同法施行令第八条、同法施行規則第二十三条に該当するが情状に因り食糧
管理法第三十四条を適用して懲役及び罰金を併科することとし、以上は刑法第四十
五条前段の併合罪であるから懲役刑については刑法第四十七条、第十条に従いその
最も重い判示第一の(七)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において、又罰
金刑については同法第四十八条に従い各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内にお
いて主文第二項のように量刑処断し、罰金を完納することができないときは同法第
十八条により金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきところ情
状に因り同法第二十五条に則り裁判確定日から三年間右懲役刑の執行を猶予すべき
ものと認め、主文第五項記載の押収物件の換価代金は同法第十九条第一項第一号第
二項則りこれを没収すべきものとする。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 白石亀 判事 藤川亮 判事 大曲壮次郎)

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