弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役1年6か月及び罰金2500万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金20万円を1日に換算
した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人に負担させる。
理由
【犯罪事実】
被告人は,被相続人Aの長女であり,平成23年12月10日にAが死亡したこ
とにより,同人の財産を同人の妻であるB及びAの養子であるCと共同相続し,共
同相続人B及びCからの委任により,その相続に関する事務に従事していたもので
あるが,被告人,B及びCの相続財産に関し,相続税を免れようと考え,相続財産
から現金,預貯金等の一部を除外するなどの方法により相続税課税価格を減少させ
た上,相続人全員分の実際の相続税課税価格は6億9851万6000円で,この
うち被告人の実際の相続税課税価格は1億7335万1000円,Bの実際の相続
税課税価格は3億6026万7000円及びCの実際の相続税課税価格は1億64
89万8000円であった(別紙1の相続財産の内訳及び別紙2の税額計算書参照)
にもかかわらず,平成24年4月26日,愛知県一宮市ab丁目c番d号所在の所
轄一宮税務署において,同税務署長に対し,相続人全員分の相続税課税価格が合計
1億7640万6000円で,このうち被告人の相続税課税価格が8579万80
00円で,これに対する相続税額が674万5400円,Bの相続税課税価格が3
284万円で,これに対する相続税額が500円,Cの相続税課税価格が5776
万8000円で,これに対する相続税額が454万2700円である旨の内容虚偽
の相続税申告書を,その事情を知らない税理士を介して提出し,そのまま法定納期
限を徒過させ,もって不正の行為により,被告人の正規の相続税額4897万20
00円と被告人の前記申告税額との差額4222万6600円,Bの正規の相続税
額9249万8800円とBの前記申告税額との差額9249万8300円及びC
の正規の相続税額4658万4000円とCの前記申告税額との差額4204万1
300円(別紙2の税額計算書参照)をそれぞれ免れた。
【法令の適用】
1罰条
被告人の相続税を免れた点
相続税法68条1項,2項(情状による)
B及びCの各相続税を免れた点
それぞれ相続税法71条1項,68条1項,2項(情
状による)
2科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(一罪として犯情の最も
重いBの相続税を免れた罪の刑で処断〔観念的競合〕)
3刑種の選択懲役刑及び罰金刑の併科を選択
4労役場留置刑法18条(金20万円を1日に換算)
5刑の執行猶予懲役刑につき刑法25条1項
6訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文
【量刑の理由】
本件は,実父の死亡に伴う相続に当たり,相続財産の一部を隠匿して過少申告し,
被告人自身及び共同相続人である実母及び夫の各相続税を免れたという事案である。
本件のほ脱税額の合計は1億7676万円余りに上り,ほ脱率も約93.9パー
セントと高率である。被告人は,実父から生前指示されていたところに唯々諾々と
従って,実父の残した財産を守ろうなどと考え,犯行に及んだもので,その思慮に
欠けた利欲的な動機に酌量の余地は乏しく,厳しい非難を免れない。
しかし,被告人は,夫とともに,本件後に死亡した実母の関係も含め,既に然る
べき修正申告を行い,本税,加算税及び延滞税として合計2億5700万円を納付
している。そのほか,被告人が自己の罪を認めて反省の態度を示し,二度と過ちを
繰り返さない旨を述べていること,夫が今後の指導監督を誓約していること,被告
人に前科前歴はないことなど,被告人のために酌むべき事情も少なくない。
そこで,被告人に対しては,主文の刑を量定した上,懲役刑については特にその
刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑-懲役1年6か月及び罰金3000万円)
平成29年6月5日
名古屋地方裁判所刑事第4部
裁判官神田大助
※別紙1及び別紙2は添付省略

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