弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を大津地方裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人藤修の控訴趣意第二点について。
 親告罪については、告訴がなければ公訴を提起することができないのであるが、
このように公訴権の行使を告訴権者の意志にかかる不安定状態にいつまでも放置し
ておくのは妥当でないから、刑事訴訟法第二百三十五条第一項は、犯人を知つた日
から六箇月を経過したときは告訴することができないと規定したのである。
 <要旨>ここに犯人を知るというのは、犯人の氏名までを確知することを要するの
ではなく、その何人であるかを特定し得る程度、すなわち他の者と弁別し得
る程度に認識すれば足りると解すべきである。けだし親告罪の告訴は、犯罪事実を
申告して犯人の処罰を求める意思表示であつて、その申告にあたつて必ずしも犯人
を指定することを要しないけれども、犯人が何人であるかの点は、これに対して告
訴をするかしないかの意思決定について重要な意味を持つものであるところ、右の
程度の認識さえあれば、意思決定に支障はないものと認められるからである。
 さて、原判示第二の昭和二十四年十一月二十日頃の強姦未遂事実についての告訴
は、昭和二十五年六月四日であつて、その間六箇月を経過しているところ、原判決
は、被害者は被害当時犯人を特定する程度に知つておらず、犯人を知つたのは告訴
当時であると説明していること、まさに所論のとおりである。
 そこで、原審挙示の証拠である被害者Aの告訴調書を見ると……そこで林につい
てから道の側に乳母車を置いて子供にお乳を飲ませているところえ、一人の見知ら
ぬ男が東の方から歩いて来て私の前を通り過ぎました。その男は百姓の風体でもな
く非常に身なりのきたないものですから一見してaのb方面の人だと思いました。
相手の男は始めて見たもので誰かという処までは存じませんが、丈五尺位の瘠型、
国防色の汚い上下服を着て汚い国防色の戦闘帽を冠つていました。その時は頭髪が
長く伸びて帽子の間から頭髪のはみ出ていたのは記憶します。……私が今まで警察
えお届けしなかつたのは別に身に傷つけられず被害がなかつたので、ついこの間も
同村大字cの女の方が強姦されたと聞きましたので同じ犯人だろうと思つていまし
た……とある。
 これによると被害者Aは、被害当時犯人を他の者と弁別できる程度に認識してお
つたのであるが、負傷その他の実害がなかつたので告訴をしなかつたところ、右六
月四日に本件被告人が捕えられ、警察から呼び出されて右被害当時に得た認識をそ
のまま供述して告訴したものに過ぎないのであつて、被害当時は犯人を特定する程
度に知つておらず、告訴当時に始めて犯人を知つたものである、と認定すべき筋合
ではない。同人は原裁判所の証拠調において、被告人を示されてこれが犯人である
と確言したことはすなわち被害当時に犯人を他の者と弁別し得る程度に認識してい
たからに外ならないのである。そうであるならば、原判決は、告訴者が犯人を知つ
たときから六箇月を経過しているにかかわらず然らざるものと誤認し、刑事訴訟法
第三百三十八条第四号に違反し、不法に公訴を受理したものであつて、この点の論
旨は理由がある。
 同第七点にてついて。
 原審第四回公判調書を調べてみると、同調書は記録第二五六丁以下十二葉に亘る
もので、その第一、二葉には二五六、二五七、第七葉から第十二葉までには順次二
六一乃至二六六とそれぞれ丁数が附されているけれども第三葉から第六葉までは丁
数が附されていないし、右二五七丁と二六一丁との間には三葉を容れるにすぎない
に拘らず、事実は四葉編綴されているのであつて、しかも第二五七丁裏を見ると次
葉との間の契印が肉色を異にして二重に押されておるし、また次葉に列挙の番号四
乃至十は正常な順を追つているが十一を欠如して十二、十三の番号となっている。
なお記録編綴の模様を細かく見ると現に綴紐の通してある穴以外にも穴が残つてい
て右丁数を附した第二五七丁と第二六一丁とは穴が合致するけれども、その間の四
葉については第二五七丁と第二六一丁と合致しないことがわかる。以上のような諸
点を綜合すると本件記録か第一丁起訴状から第三三七丁第二審に対する弁護届書ま
で原審記録として一切が結成整理された後において、右四葉がさしかえられたもの
と見るのが相当である。そしてかようなものは刑事訊訟法第四十八条、刑事訴訟規
則第四十六条に照し、とうてい有効な調書の内容をなすものとは解しがたい。この
四葉を除いては、原審挙示の重要な証拠が原審で適法に証拠調をしたとは認めがた
いところであつて、証拠調をしないで採証したことになり、この違法が判決に影響
を及ぼすことはもちろんであるから、この点の論旨も理由がある。
 よつて弁護人及び被告人のその余の論旨に対して判断するまでもなく刑事訴訟法
第三百九十七条によつて原判決を破棄すべきものとし、同法第四百条本文に従い、
主文のとおり判決をする。
 (裁判長判事 荻野益三郎 判事 佐膝重臣 判事 梶田幸治)

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