弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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 主文
原競落許可決定を取り消す。
昭和三九年九月八日競売による本件競落は、許さない。
         理    由
 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の
判断は、次のとおりである。
 本件競売物件は田であるから、その競落には農地法第三条の適用があるところ、
本件競売を終局した競売期日の公告には、「Bが約二〇年前より、期限の定めな
く、賃料は一ケ年金一、四五〇円、支払期日は毎年末、その他の契約なく、賃借耕
作」と賃貸借契約が掲載され、またその競落人である債権者Aは、同条第二項第一
号に規定されている本件土地の小作農又はその世帯員ではないが、石川県知事か
ら、本件競買の適格者であることを証明され、且つ右土地所有権取得の許可を受け
ていることが記録上明らかである。而して原審が本件土地を同号にいわゆる小作農
Bの耕作する小作地であると認定(今ここでは、一応右認定の当否を問題にしな
い)していることは、右公告に徴し、これを窺知し得るところ、事実関係が果たし
て然りと<要旨第一>せば、右知事から本件競落人の競買適格証明及び所有権移転の
許可があつても、それは同条第二項第一号に抵触する違法のものであ
り、裁判所としては、それに盲従して、競落を許すべきではない(和田、橘新農地
法解説七五頁、昭三六、一〇、一二仙台高裁判決行裁集一二巻一〇号一、九六七頁
参照)。而してこのことは、右小作農及びその世帯員が、本件土地の譲り受けを希
望しないか、又は同項第二号以下の制限により、譲受人となり得ない場合において
も、同様であり、例外を認むべきではない(同法第三三条右新農地法詳解七七頁二
一七頁参照)。然らば本件競落許可決定は、競売法第三二条民事訴訟法第六七四条
第六七二条第二号により、違法<要旨第二>であり、取消を免れない。尤も右知事の
適格証明及び所有権移転の許可は、本件土地が抗告人の自作地である
とを前提とするものであること記録上明らかであり、仮に右前提事実が真実である
とすれば、本件土地の小作農又はその世帯員以外の者に競落が許されないことを連
想させる前記賃貸借契約の公告は、競買申出人を極度に制限し、競売期日の公告と
して、公告の実をなさない違法なものといわなければならない。而してこの場合に
おいても、本件競落は、債務者兼所有者である抗告人に極めて不利益であり、競売
法の準用する民事訴訟法第六七三条第六七四条第六七二条第四号の趣旨に従い、こ
れを許すべきではない。然らば原競落許可決定は、本件土地に対する自小作の認定
如何に拘らず、違法であり、取消を免れず、本件抗告は理由がある。
 よつて民事訴訟法第四一四条第三八六条に則り、原競落許可決定を取り消したう
え、競売法の準用する前記民事訴訟法の各条により、昭和三九年九月八日の競売に
よる本件競落を許さず、原裁判所をして同法第六七六条に従い、更に新競売期日を
定めしめるため、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 堀端弘士 裁判官 広瀬友信 裁判官 松田四郎)

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